生活習慣病

血圧の下が高いのはいくつから?90と100で変わる受診の目安

健康診断の結果票を見ると、上の血圧は基準の中に収まっているのに、下の血圧にだけ印が付いている。そんな結果を渡されると、どれくらい重く受け止めればよいのかが分かりにくいものです。血圧の判定は「上が140以上、または下が90以上」という形で決められているため、上が基準内でも下だけが高ければ高血圧の区分に入ります

健康診断や診察室で測った血圧の目安

下の血圧が100以上、または上の血圧が160以上のときは、すぐに医療機関を受診してください。
下の血圧が90から99、または上の血圧が140から159のときは、おおむね1か月後にかかりつけの医療機関で再検査を受けてください。
家庭で測った血圧は基準が別で、上が135以上または下が85以上のときに高血圧に当てはまります。

この区切りは、厚生労働省が健診結果別の対応として示している区分と、日本高血圧学会が健診での血圧について示している目安で一致します。ただし脳卒中や心臓の病気、心房細動、慢性腎臓病、糖尿病がある方、危険因子が3つ以上重なっている方は、上が140以上または下が90以上でも至急の受診が呼びかけられています。ここに挙げた数値はあくまで目安であり、最終的な判断は診察した医師が行います。数値ごとに何をするかは、記事の中ほどであらためて整理します。

参考:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」

目次

上の血圧は正常なのに下だけ高い状態とは

上の血圧は正常なのに下だけ高い状態とは

血圧の話が分かりにくくなる理由の1つに、同じ値が場面ごとに違う名前で書かれていることがあります。最低血圧と拡張期血圧と下の血圧は、すべて同じ値を指します。3つの呼び名は次のように使い分けられているだけで、別々の検査値ではありません。

呼び名 主に使われる場面
下の血圧 日常の会話や検索
拡張期血圧 学会や行政の資料
最低血圧 健康診断の結果票

この記事では、以降は「下の血圧」に統一して書きます。そのうえで最初に押さえておきたいのが、上の血圧が140未満でも、下の血圧が90以上あれば高血圧の区分に入るという点です。診断の基準は「収縮期140以上、または拡張期90以上」と定められています。厚生労働省が示す健診後の対応区分も「収縮期160以上又は拡張期100以上」のように、上と下のどちらか一方の値で決まります。上が正常だから軽い、という読み方は成り立ちません。

下の血圧(拡張期血圧)は心臓が広がるときの値で最低血圧とも呼ばれる

心臓は収縮と拡張を繰り返して血液を送り出しているため、動脈の中の圧力は上がったり下がったりを繰り返しています。心臓が縮んで血液を押し出したときに高くなった値が上の血圧で、心臓が広がっているあいだに最低まで下がった値が下の血圧です。健康診断の結果票に「最低血圧」と書かれているのは、この値のことです。

上の血圧と下の血圧の違い(心臓が縮むときと広がるとき)

血圧の高さは、心臓が血液を押し出す力と血管の拡張によって決まり、血管の弾力性も関係するとされています。さらに腎臓や神経系、内分泌系、血管の内側から出る物質など多くの要素が調節に関わっており、食塩も重要な要素の1つです。下の血圧だけが高くなる仕組みを1本の理由で説明できないのは、こうした複数の調節が重なっているためです。

参考:国立循環器病研究センター「高血圧」

上の血圧が同じなら下が高いほど上と下の差(脈圧)は小さくなる

上と下の差は脈圧と呼ばれます。上の血圧が同じ値のまま下の血圧だけが上がれば、その差は当然小さくなります。上が130で下が70なら差は60、上が130で下が90なら差は40という関係です。上だけが高いタイプでは差が広がり、下だけが高いタイプでは差が縮まる、という見え方の違いが生まれます。

ただし、この差そのものに独立した判定の区切りがあるわけではありません。健診や診察で判定に使われるのは、上と下それぞれの数値です。差が小さいことを気にするより、下の値が90や100といった区切りをまたいでいるかどうかを先に確かめるほうが、次の行動を決めやすくなります。

血圧の上と下のどちらが高くなりやすいかは年齢によって変わる

上と下のどちらを重く見ればよいのかは、多くの方が迷うところです。年齢によって高くなりやすいほうが変わることは、日本高血圧学会らが作成した一般向け『高血圧治療ガイドライン2019』解説冊子でも説明されています。高齢になると動脈が硬くなりやすいため、心臓が収縮したときの大動脈のふくらみが少なくなり、上の血圧は上がりやすく下の血圧はむしろ低下するという内容です。年齢が上がるほど、高くなりやすい場所は上へ移っていきます。

実際の数値でも同じ傾向がみられます。厚生労働省の令和5年国民健康・栄養調査では、上の血圧は年齢とともに上がり続けるのに対し、下の血圧は年代ごとに見ると男女とも50歳代が高く、それより上の年代では低くなります。同じ人を追いかけた経過ではなく、年代ごとの分布として見たときの形です。ここから言えるのは次の2点です。

  • どちらか一方が重要だと決まっているのではなく、年齢によって高くなりやすいほうが変わる
  • 上が基準内でも下だけで高血圧の区分に入る

参考:日本高血圧学会ほか『一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子』

下の血圧はいくつから高い?測る場所や健康診断で変わる基準

下の血圧はいくつから高い?測る場所や健康診断で変わる基準

下の血圧が100を超えたら異常なのか、90ならまだ様子を見てよいのか。この問いに1つの数字で答えられないのは、測った場所と使われる制度によって当てはまる区切りが違うためです。診断の基準、特定健診の判定値、人間ドックの判定区分は、それぞれ別の目的で作られています。

診察室の血圧は上が140以上または下が90以上で高血圧

日本高血圧学会は、高血圧症の診断の基準を「上の血圧が140以上、下の血圧が90以上」としています。診察室で測った収縮期血圧140以上、または拡張期血圧90以上で高血圧と診断される、という形です。ここでも「または」であり、上が130台でも下が90以上なら該当します。

ただし、1回測って高いだけでは高血圧症とは言えず、繰り返し測って高い場合をいいます。健診で1度だけ90以上だったからといって、その場で診断が確定するわけではありません。血圧値の分類は次のとおりです。

分類 診察室血圧(上/下) 家庭血圧(上/下)
正常血圧 120未満 かつ 80未満 115未満 かつ 75未満
正常高値血圧 120-129 かつ 80未満 115-124 かつ 75未満
高値血圧 130-139 かつ/または 80-89 125-134 かつ/または 75-84
I度高血圧 140-159 かつ/または 90-99 135-144 かつ/または 85-89
II度高血圧 160-179 かつ/または 100-109 145-159 かつ/または 90-99
III度高血圧 180以上 かつ/または 110以上 160以上 かつ/または 100以上

※日本高血圧学会の分類(厚生労働省 e-ヘルスネット掲載/高血圧治療ガイドライン2019に基づく)

下の血圧だけで見ると、80-89が高値血圧、90-99がI度高血圧、100-109がII度高血圧、110以上がIII度高血圧の範囲に当たります。高値血圧は高血圧そのものではありませんが、管理の対象とされており、学会は1日6g未満を目指した減塩の重要性を強調しています。

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」

家庭血圧では下が85以上で高血圧に当てはまる

家庭血圧は診察室血圧より各段階で5mmHg低い基準が使われます。I度高血圧に当たる範囲は診察室で140-159/90-99、家庭では135-144/85-89です。家庭で測って下が85以上であれば、診察室での90に相当する位置にいることになります。

日本高血圧学会は、家庭血圧が上135以上または下85以上を高血圧としています。この範囲では、脳卒中や心筋梗塞にかかる率が基準未満の方より2倍から3倍高いとされています。ここも「または」で示されており、上が120台でも下だけ85以上なら当てはまります。家庭で測った値が85以上で続くなら、その記録が受診の判断材料になります。

健康診断では下の血圧(最低血圧)85以上が保健指導判定値

特定健診では、判定値が2段階に分けられています。拡張期血圧は85以上が保健指導判定値、90以上が受診勧奨判定値です。上の血圧はそれぞれ130以上、140以上が対応します。受診勧奨判定値を超えると、再検査や生活習慣改善指導を含めて医療機関での管理が必要な場合があるとされています。

ここで混同しやすいのが、保健指導判定値の85と、分類表の高値血圧の下限である80です。この2つは別物で、厚生労働省の資料自体が「保健指導判定値と高値血圧の基準値が異なることに留意する」と注意を促しています。結果票の85という数字は健診の判定値であって、分類表の区切りとは由来が違います。

人間ドックでは下の血圧が100以上で異常と判定される

日本人間ドック・予防医療学会の「検査表の見方」では、拡張期血圧の基準範囲を84以下、要注意を85から99、異常を100以上としています。上の血圧は基準範囲129以下、要注意130から159、異常160以上です。この基準範囲は、将来、脳・心血管疾患を発症しうる可能性を考慮したものとされています。

3つの制度を並べると、下の血圧の区切りは次のようになります。

制度 下の血圧の区切り 位置づけ
高血圧の診断基準(診察室) 90以上 高血圧と診断される値
特定健診の判定値 85以上/90以上 保健指導判定値/受診勧奨判定値
人間ドックの判定区分 85-99/100以上 要注意/異常

参考:日本人間ドック・予防医療学会「検査表の見方」

同じ85という数字でも、特定健診では保健指導の入り口、人間ドックでは要注意の入り口を指します。結果票を読むときは、どの制度の判定なのかをあわせて確認すると混乱しにくくなります。

年代によって区切りが変わるわけではない

20代でも30代でも、40代でも50代でも、60代や70代でも、そして高齢者でも、分類表に年齢区分はありません。年代ごとの平均がどう違っても、判定に使われる区切りは同じです。

治療で目指す値についても、同じ考え方が取られます。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、降圧目標を年齢によらず診察室血圧130/80未満、家庭血圧125/75未満としています。ただし、やみくもに下げるのではなく、個別の状況を考慮し、有害事象や副作用に注意しながら下げることとされています。なお、これは治療で目指す値であって、診断の基準ではありません。

参考:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025 発刊についてのお知らせ」

同じ人が測っても、測り方や測る場面によって値は動きます。だからこそ、どの帯に入るかを判断するには条件を揃えた測定が前提になり、そのうえで次に何をするかを決めることになります。

下の血圧が高いと言われたらいつ何科を受診する?

下の血圧が高いと言われたらいつ何科を受診する?

数値の帯が分かったら、次に決めるのは受診のタイミングと診療科です。ここでは厚生労働省の対応区分と日本高血圧学会の呼びかけを並べて、いつ動くかを整理します。

下の血圧100以上はすぐ受診し90から99はおおむね1か月後に再検査

以下は健康診断や診察室で測った血圧の目安です。家庭で測った値は基準の系統が別なので、そのまま当てはめないでください。

下の血圧 上の血圧 対応
100以上 または160以上 すぐに医療機関の受診を
90-99 または140-159 生活習慣を見直し、おおむね1か月後にかかりつけの医療機関で再検査
85-89 または130-139 生活習慣の改善を
85未満 かつ130未満 今後も継続して健診受診を

読み間違えやすいポイント
区分は上と下のどちらか一方で決まります。したがって上が160以上なら、下が90台であってもすぐに受診する側に入ります。下の数字だけを見て1か月待つと判断を誤るため、上の値もあわせて確かめてください。90から99の帯についても原文は「拡張期90-99または収縮期140-159」で、上が140台なら下が80台でもこの帯です。

2番目の帯について厚生労働省の原文が示す期間は、「おおむね1か月後にかかりつけの医療機関で再検査」です。日本高血圧学会も一般向けに、上が160以上または下が100以上なら、すぐに受診するよう勧めています。上が140から159または下が90から99なら、1か月程度生活習慣を見直し、下がらなければ受診する目安としています。行政と学会で数値は一致しています。学会はあわせて、自分に合った生活習慣の見直しを見つけるためにも早めの受診を考えてほしいと続けています。

ただし、脳卒中や心臓・腎臓の病気、心房細動、糖尿病がある方は例外です。厚生労働省の資料でも学会の呼びかけでも、これらに当てはまる場合や危険因子が3つ以上重なっている場合は、上が140以上または下が90以上の段階で至急の受診とされています。危険因子として挙げられているのは次の5つです。

  • 65歳以上
  • 男性
  • 喫煙
  • 脂質異常症
  • 肥満

当てはまる項目が多いと感じたら、自分で数えて判断せず医師に相談してください。

この区切りで対応が変わる理由は、血圧の帯によって脳卒中や心臓病のかかりやすさが変わるためです。その倍率は記事の後半で整理します。

参考:日本高血圧学会「血圧に関する大切なお知らせ」

家庭で85以上が続いているとき

家庭血圧の基準は上135以上または下85以上で、この目安は診察室の90や100とは系統が違います。家庭で85から89が続いているなら、診察室でも測って相談するのが現実的な進め方です。家庭の値だけで新しい受診の目安を作る必要はなく、記録を持って一度診てもらえば、どちらの系統で判断すべきかを医師が整理してくれます。

健康診断で下の血圧を指摘されたあとの再検査は内科で受けられる

健診で血圧を指摘されたあとの再検査は、内科で受けられます。二次検査という呼び方をされることもありますが、指しているものは同じです。血圧の測定に加えて、必要に応じて血液検査などを組み合わせながら、原因となる病気が隠れていないかを含めて確認していきます。

「何科に行けばよいのか分からない」という理由で先延ばしになりやすい検査ですが、日常的に内科診療と健診を行っている医療機関であれば、健診結果票を持参してそのまま相談できます。特定の診療科でなければ診られないというものではありません。

下の血圧が高いとすぐ薬になる?受診したあとはまず生活習慣の改善から

受診をためらう理由として多いのが、行ったらすぐ薬になるのではないか、という不安です。厚生労働省の資料では、受診勧奨判定値を超えた場合でも、I度高血圧であれば服薬治療よりも3か月間は生活習慣の改善を優先して行うことが一般的とされています。これは受診したうえでの話であり、受診を先延ばしにしてよいという意味ではありません。健診後の再検査はおおむね1か月後という目安とは別の話です。

一方で、次に当てはまる場合は、生活習慣の改善より先に速やかな受診が要ります。

  • 下の血圧が100以上または上の血圧が160以上の場合
  • 脳心血管病・心房細動・慢性腎臓病・糖尿病・危険因子の集積がある場合

高値血圧の範囲であっても、こうした高リスクに分類されるときには薬物療法の適応になることがあるとされており、その判断は医師が行います。

薬を使うかどうかは、医師が治療を必要と判断した場合に検討されます。その薬について日本高血圧学会は、副作用よりも血圧を下げる利益のほうが大きいことがほとんどであるとしています。薬の種類や組み合わせは個別に判断されるもので、目標に届かせるために2種類以上を使う方もいます。生活習慣の改善で何をするかについては、記事の後半でまとめて扱います。

受診のときは家庭血圧の記録を1週間分持って行く

厚生労働省の資料は、受診を勧める際に、家庭用の血圧計を持っている方へ起床後と就寝前に1週間程度の測定を呼びかけるよう示しています。その記録を持参すると、かかりつけの医師などでの診療上有益であるとされています。健診の1回の値だけでは、たまたま高かったのか、いつも高いのかを見分けられないためです。

記録に残しておきたいのは次の3つです。

  • 測った日付と時刻
  • 上と下の数値
  • 脈拍

血圧計に記録が残る機種なら、そのまま持参しても構いません。正しい測り方と記録の取り方は、このあとの測定の項目で手順として示します。

受診の前に用意しておくと話が早いもの
健康診断や人間ドックの結果票、家庭血圧の記録、服用中の薬やお薬手帳の3点です。

血圧の指摘は、放っておくと次の健診まで1年動かないままになりがちです。池袋かめさん内科の内科診療では、内科診療と健診を日常的に行う院長が相談に対応します。豊島区の特定健診や企業健診も日常的に実施しており、健診結果票を見ながらその場で血圧を測り直すこともできます。健診で指摘された項目は、同じページ内の「血液検査や健康診断の再検査・二次検査」でも受け付けています。内科診療は予約なしで当日受診できます。予約を希望する場合は、WEB予約LINE、電話(03-3986-4466)を利用できます。

下の血圧だけが高くなる理由は生活習慣や体質のほか病気のこともある

下の血圧だけが高くなる理由は生活習慣や体質のほか病気のこともある

高血圧症のおよそ90%は、原因となる特定の病気がない本態性高血圧です。本態性高血圧は、生活習慣や体質など複数の要因が組み合わさって起こると考えられています。血圧の高さには血管の広がりやすさや弾力性が関係するとされていますが、下の血圧だけが上がる仕組みを1つの原因で説明できるわけではありません。挙げられている要因を整理すると次のとおりです。

分類 挙げられている要因
食事 塩分の摂りすぎ、野菜や果物(カリウムなどのミネラル)不足
生活習慣 運動不足、睡眠不足、寝不足、過重労働、飲酒、お酒やアルコールの摂りすぎ、喫煙(タバコ)
体質・体の調節 遺伝的な体質、自律神経の調節異常、肥満
環境・心理 ストレス、緊張、寒冷
病気 甲状腺の病気、副腎の病気、睡眠時無呼吸症候群、腎動脈狭窄

ストレスや緊張が続くのは下の血圧が高くなる原因の1つ

国立循環器病研究センターは、本態性高血圧症の原因として精神的ストレスと自律神経の調節異常を挙げています。強い緊張状態が続くと、体は血管を締める方向に働き、その状態が習慣化すると血圧が高いまま定着していきます。仕事の負荷や睡眠の状況も、受診のときに医師へ伝える材料になります。

ここで扱っているのは、日常的に続いている緊張のことです。測定中の一時的な緊張で数値が動く現象は別の話で、後半の測定の項目で扱います。

塩分の摂りすぎや睡眠不足など高血圧全般に共通する原因

塩分の摂りすぎ、肥満、飲酒、運動不足、ストレス、遺伝的な体質という組み合わせは、下の血圧に限らず高血圧全般に共通する原因です。なかでも日本人にとって重要なのは食塩の過剰摂取とされています。これは日本人という集団についての説明であり、個人の原因を1つに決められるものではありません。

このほか、生活・環境の要因として運動不足、睡眠不足や寝不足、過重労働、過剰飲酒、寒冷、ストレスが挙げられています。睡眠不足は生活・環境の要因であって、病気が原因の高血圧とは区別されます。眠りが浅い日が続いて血圧が高めに出るというのは、この生活要因の側の話です。

下の血圧が高くなる主な背景(生活習慣・体質・病気)

内臓脂肪が多い肥満では上の血圧より先に下の血圧が高くなりやすい

厚生労働省 e-ヘルスネットは、日本人では肥満を伴わない高血圧が半数以上を占めるとしたうえで、若年から中年の男性を中心に、肥満、特に内臓肥満を伴う高血圧の割合が増えていると説明しています。そして、このような高血圧ではまず下の血圧が高くなりやすく、次第に上の血圧も高くなることが経験的に知られている、と書かれています。

ここで示されているのは、内臓脂肪を伴う高血圧では下が先に高くなりやすいという経験則です。今回の数値だけで、このタイプに当てはまるかどうかを判断することはできません。このタイプは血清脂質や血糖、尿酸、肝機能にも異常をきたし、メタボリックシンドロームに進みやすいとされるため、減量を始めることが大切とされています。下が高い方がみな肥満だという意味でもありません。

いびきが続く睡眠時無呼吸や甲状腺の病気で起こる二次性高血圧

高血圧には本態性高血圧のほかに、原因となる病気があって起こる二次性高血圧があります。甲状腺や副腎の病気があって血圧が上がるものが代表で、睡眠時無呼吸症候群でも二次性高血圧を合併します。腎動脈狭窄のように、外科手術により高血圧の治療が期待できるものが含まれることも知られています。

睡眠時無呼吸症候群では、眠り出すと呼吸が止まって血液中の酸素濃度が下がり、これを補うために心臓の働きが強まって高血圧となります。いびきは所見であって、睡眠時無呼吸症候群という病気そのものではありません。ただ、ひどいいびきや睡眠中の呼吸停止を指摘されているなら、血圧とあわせて医療機関で検査を受ける意味があります。二次性高血圧を疑うかどうかの判断は、診察と検査を通じて医師が行います。

下の血圧が高いのは高齢者や肥満の人だけではない

下の血圧が高いのは高齢者や肥満の人だけではない

血圧の話は年配の方や太っている方のものだ、という印象を持たれがちです。ただ、公的な統計を見ると、下の血圧が高い人の割合は年代と性別で山の位置が違い、痩せている方に高血圧がないわけでもありません。ここでは年代の側と体格の側に分けて、それぞれ何が言えるのかを確かめます。

下の血圧が高い人の割合は男性が30代から女性は50代から高くなる

厚生労働省の令和5年国民健康・栄養調査の分布表を集計すると、下の血圧が90以上だった人の割合は次のようになります。血圧を下げる薬の使用者を含む集計です。

年齢階級 男性 女性
20-29歳 4.3% 0.0%
30-39歳 9.2% 2.9%
40-49歳 12.7% 3.7%
50-59歳 26.7% 10.8%
60-69歳 14.8% 7.5%
70歳以上 7.9% 5.0%

※厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査報告」第2部の分布表から集計。高血圧の有病率ではなく、調査時に下の血圧が90以上だった人の割合

表から読み取れる傾向は次のとおりです。

  • 若い年代で下が高いのは主に男性(男性は30代で9.2%、40代で12.7%。同じ年代の女性は30代2.9%、40代3.7%で、20歳代の女性は今回の調査では該当者なし)
  • 女性で割合が上がるのは50代から(50代女性は10.8%、同じ年代の男性は26.7%)
  • 下の血圧の平均値も男女とも50歳代で高くなる(50代で男性83.1、女性76.2)

若年から中年の男性を中心に内臓肥満を伴う高血圧が増えており、そこではまず下の血圧が高くなりやすいと説明されていることと、数字の向きは合っています。

60代以降はどちらも下がっていきますが、これは同じ人を追った経過ではなく、年代ごとに見たときの分布です。集計対象が50人前後の年代もあるため、細かい差を読み込みすぎないほうがよいでしょう。

参考:厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査報告」

50代女性の平均76.2は、高値血圧に当たる80から89の手前まで来ている値です。男性より低いから心配がない、という読み方はできません。とはいえ、これは下の血圧が90以上だった人の割合と平均値の話であり、診断そのものではありません。1回の測定で高かったことと、繰り返し測って高いこととは別だからです。

高血圧全般に目を広げると、性差と年齢差の傾向はもう少しはっきりします。日本循環器学会などの2024年改訂版のガイドラインでは、高血圧の有病率について次のようにされています。

  • 男性: 30代から加齢とともに増えて70歳頃にピークとなる
  • 女性: 50代になって急速に増加し、70代では男性と同様になる
  • 若年女性での高血圧有病者数は少ない

ここで扱われているのは高血圧全般であって、下の血圧に限った話ではない点は分けて読む必要があります。

更年期に血圧が上がりやすくなるとされる仕組み

同じガイドラインでは、女性に特有の高血圧として更年期にみられる高血圧(更年期高血圧)が挙げられています。ガイドラインの説明は次のとおりです。

  • 更年期にはストレスに対する反応性が強まり、交感神経の働きが高まることから、血圧の上昇や血圧変動の増加を引き起こしうる
  • 性ホルモンの影響や、塩分の影響を受けやすくなることが関わる

厚生労働省と関係学会がまとめたガイダンスでも、閉経前後のエストロゲン(女性ホルモン)の低下に応じて、高血圧症をはじめとする生活習慣病の発症率が増加してくるとされています。いずれも高血圧全般についての説明で、更年期高血圧が下の血圧の高さを指すという記述はありません。ホルモンが減ったから血圧が上がる、と1本の線で決まるものでもないという書き方がされています。

参考:日本循環器学会ほか「2024年改訂版 多様性に配慮した循環器診療ガイドライン」

年齢が若いことは、血圧を気にしなくてよい理由にはなりません。日本循環器学会などのガイドラインでは、閉経前の女性で高血圧がある場合は、原因となる病気がある高血圧を念頭に置き、その鑑別が重要とされています。若いから大丈夫と自己判断せず、原因となる病気が隠れていないかを確かめることが大切だ、という趣旨です。また厚生労働省と関係学会のガイダンスでは、妊娠中に血圧が高いと言われたことがある方は、その後も定期的に血圧をみておくことがすすめられています。いつ相談するかは年齢や性別で変えるものではなく、測った数値がどの帯に入るかで決まります。

参考:厚生労働省・関係学会「女性のヘルスケアに関するガイダンス(中高年期編)」

痩せていても下の血圧が高くなることはある

体型の側から見ると、痩せている方に高血圧がないわけではありません。厚生労働省 e-ヘルスネットは、日本人では肥満を伴わない高血圧が半数以上を占めるとしています。これは高血圧全般についてのデータであり、痩せ型の方の高血圧も珍しくないという一般論として読むのが正確です。

内臓肥満を伴う高血圧ではまず下の血圧が高くなりやすいという説明と、この事実は矛盾しません。肥満を伴うタイプでは下が先に上がりやすい、そして肥満を伴わない高血圧も半数以上あるという2つが並んでいるだけだからです。痩せているから下の血圧は上がらない、とは言えませんし、痩せている方の下の血圧がそろって高くなるという意味でもありません。体型で自己判断せず、測った数値で判断するほうが確かです。

下の血圧が高いだけでは自覚症状はほとんど出ない

下の血圧が高いだけでは自覚症状はほとんど出ない

日本高血圧学会は、高血圧があってもほとんど症状は出ないため、家庭血圧を測定して本当の血圧を知ることが重要としています。下の血圧が90以上でも、体は普段どおり動きます。だからこそ健診の結果票が入り口になり、受診の目安も自覚症状ではなく、先に示した数値の区分で決められています。

頭痛やめまいの原因は下の血圧だけとは限らない

血圧が高いと聞いて思い浮かべやすいのは、頭痛、めまい、ふらつき、動悸です。息苦しさや胸の痛みを挙げる方もいます。ただし、これらの症状を下の血圧の高さだけに結びつけられる根拠は示されていません。同じ症状には別の原因も考えられるため、症状の有無で血圧の状態を推し量るのは難しいのが実際です。

「だるい」「だるさが抜けない」「疲れが取れない」「しんどい」「吐き気がする」といった訴えも同様です。これらが血圧と無関係だと言い切れるわけでもなく、血圧のせいだと決められるわけでもありません。症状が続くときは血圧の値とあわせて診てもらい、原因を切り分けていくほうが早く落ち着きます。

下の血圧が高いだけでは自覚症状はほとんど出ない

下の血圧が高いと気づくきっかけは健康診断や家庭での血圧測定

症状だけでは気づきにくいため、きっかけの多くは健康診断か家庭での血圧測定になります。職場の健診や自治体の特定健診で結果票を受け取ったとき、あるいは家族の血圧計で何気なく測ったときに、下の値だけが高いと分かるという流れです。

家庭で測る習慣があると、健診の1回の値がたまたま高かったのか、いつも高いのかを見分けやすくなります。血圧計を持っていない方でも、健診の結果票が手元にあれば相談の材料としては十分です。数値が残っていること自体が判断の材料になります。

下の血圧が高いのを放置するとどうなる?かかりやすくなる病気

下の血圧が高いのを放置するとどうなる?かかりやすくなる病気

下の血圧だけが高い状態を放置したときに何が起きるのかは、症状が出ない分だけ想像しにくいところです。ここでは血管に起きる変化と、示されている数値の2つに分けて見ていきます。

下の血圧が高いままだと動脈硬化が進む

血管の壁は本来弾力性がありますが、高血圧の状態が長く続くと血管は張りつめた状態におかれ、次第に厚く硬くなります。これが高血圧による動脈硬化で、大血管にも小血管にも生じます。また心臓は高い血圧に打ち勝つために無理をすることになり、心臓肥大が起こり、心不全になることもあります。

起こる病気として挙げられているのは次のとおりです。これは高血圧の区分に入った場合に共通して起こることとして示されているもので、下だけが高い方に限った予後の説明ではありません。

起こる場所 挙げられている病気
脳出血、脳梗塞
血管 大動脈瘤
腎臓 腎硬化症
心臓 心筋梗塞、心臓肥大、心不全
眼底出血
血圧が高い状態が続くと負担がかかりやすい場所(心臓・脳・腎臓・血管)

下の血圧90から99では望ましい血圧の人より脳卒中や心臓病に約3倍かかりやすい

厚生労働省の健診フィードバック文例集では、望ましい血圧レベル(収縮期120未満かつ拡張期80未満)の人と比べて、血圧の帯ごとに次のように説明することとされています。

血圧の帯 望ましい血圧の人と比べた かかりやすさ
下100以上 または 上160以上 約5倍
下90-99 または 上140-159 約3倍
下85-89 または 上130-139 約1.5倍から2倍

区分はここでも「または」なので、上が正常でも下だけでこの帯に入ります。そして帯ごとに倍率が違う点が重要です。下が100以上の方に「約3倍」と伝えると、実際より軽く受け取られてしまいます。なお、これは脳卒中や心臓病のかかりやすさを示した数値であって、死亡率ではありません。「約」も含めた目安として受け取ってください。

下の血圧が高くても問題ない?下だけでも高血圧の区分に入る

「上が正常なら問題ないのでは」という受け止め方は、区分の作り方から見ると成り立ちません。診断の基準が「上が140以上または下が90以上」であり、健診後の対応区分も上と下のどちらか一方で決まるためです。下だけが高くても高血圧の区分に入り、区分に入った以上は対応の目安が制度として決まっています

その対応は、いきなり薬という意味ではありません。I度高血圧であれば受診したうえで3か月間は生活習慣の改善を優先することが一般的とされ、一方で高リスクに分類されるときは高値血圧の範囲でも薬物療法の適応になることがあります。どちらに当たるかは診察と検査を経て医師が判断するため、受診しないままでは決まりません。では実際にいつ受診するかは、前半で示した目安のとおりです。

  • 下が100以上または上が160以上: すぐ受診
  • 下が90から99または上が140から159: おおむね1か月後に再検査

測るたびに下の血圧が違う理由と正しい測り方

測るたびに下の血圧が違う理由と正しい測り方

受診のときに持って行く記録は、条件を揃えて測ってこそ判断の材料になります。同じ人でも血圧は動くものなので、まず変わる理由を押さえてから、家庭での手順を確認していきます。

下の血圧は朝や冬に高くなる

ここで示すのは血圧全般の変動について説明されている内容で、下の血圧だけに限定したデータではありません。

血圧は常に変動しており、通常は朝の目覚めとともに上昇し、日中は高く、夜間や睡眠中は低くなります。寝起きすぐの数値と夜の数値が違うのは、体の側の自然な動きによるものです。季節の影響もあり、冬は夏より高くなります

そのため「朝だけ高い」という結果は、測り方の失敗とは限りません。起床時に高めに出るのは変動の範囲でも起こることで、大切なのは同じ時間帯で測り続けて傾向を見ることです。冬に指摘された値と夏に測った値を単純に比べると、季節の分だけ差が出ます。ただし、家庭で測って上135以上または下85以上が続く場合は、記録を持って相談してください。

家庭血圧は朝と晩に2回ずつ測って平均をとる

日本高血圧学会が示している家庭血圧の測り方は次の5項目です。

項目 内容
血圧計 上腕血圧計を選ぶ
時間帯 朝と晩に測る(朝は起床後1時間以内・朝食前・服薬前/晩は就寝直前)
姿勢 トイレを済ませ、1-2分椅子に座ってから測る
回数 同じ測定タイミングで続けて原則2回測り、その平均を取る(資料上の表記は「1機会に原則2回」)
頻度 週に5日以上測定した結果を主治医に見せる
家庭血圧の測り方のポイント

この5項目の条件が揃っていないと、日ごとの値を比較しにくくなります。できる範囲で同じ条件を揃えてください。特に服薬前・就寝直前・2回の平均・週5日以上は運用が変わる部分です。手首式ではなく上腕式が示されている点にも注意が必要です。

前の表は、家庭血圧について日本高血圧学会が示している標準の手順です。次に挙げるのは、国立循環器病研究センターが示している一般的な測定条件で、資料が別です。座ってからの時間が「1-2分」と「5分から10分」で違うのはそのためで、どちらかが誤りというわけではありません。

測る前に整えておく条件

血圧は運動・安静・入浴・排便・食事・睡眠・体調・精神的な緊張などの条件で著しく変わるため、測る前には5分から10分ほど安静にし、条件を一定にした状態で測ることが望ましいとされています。いつも同じ腕、同じ姿勢、同じ時間に測ることも示されています。

左右で血圧が10mmHg以上違う場合は、高いほうの腕で測ります。血圧計は腕と同じ高さに置き、きついシャツなどで腕の上部を締め付けないようにします。これは測り方の話であって、左右差そのものが診断の基準になるわけではありません。

参考:日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」

病院でだけ高い白衣高血圧と病院の外で高い仮面高血圧

診察室と家庭で値が食い違う状態には、2つの呼び名があります。表の中に出てくる持続性高血圧は、診察室でも家庭などでも血圧が高い状態を指す言い方です。

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呼び名 診察室の血圧 家庭などの血圧 学会が示す注意点
白衣高血圧 高い 正常 今のところ問題はないが、将来、持続性高血圧を発症する危険性もあるため定期的に受診し検査を
仮面高血圧 正常 高い 家庭血圧を測っていなければ見逃されるが、危険度は持続性高血圧と同じかそれ以上

白衣高血圧は、「今のところ問題ない」で話が終わりません。学会は将来持続性高血圧を発症する危険性もあるとして、定期的な受診と検査を呼びかけています。

仮面高血圧でいう「病院の外」は、家庭だけでなく職場や夜間も含みます。危険度は持続性高血圧と同じかそれ以上とされており、診察室の値が正常でも家庭血圧を測る理由はここにあります。

入浴や寒暖差など下の血圧が一時的に上がりやすい場面

生活習慣とは別に、その場面だけ血圧が上がることもあります。ここで挙げる場面も血圧全般について示されたもので、下の血圧だけに限定した説明ではありません。国立循環器病研究センターが挙げているのは次のような場面です。

  • 暖かい所から急に寒い所へ出たとき。血管が収縮して血圧が上がるため、冬は室内と外気との差をなるべく少なくする
  • 冷房が効き過ぎた部屋との出入り。温度差が5度以上にならないよう注意する
  • 入浴のとき。42℃以上の熱い湯は避け、40℃ぐらいのぬるめの風呂に5分から10分程度浸かる
  • 排便時のいきみ。いきむ時間が長いと血圧が上がるため、便秘の予防が勧められる

運動後や入浴後にいつもより高い数値が出たとしても、それは一時的な変化です。家庭血圧として記録するのは、こうした場面を避けた条件下で測った値になります。寒暖差の影響が大きい冬場は、脱衣所や浴室を暖めておくといった対策も血圧の急な上下を防ぐことにつながります。

下の血圧を下げる方法は運動や減塩など生活習慣の見直し

下の血圧を下げる方法は運動や減塩など生活習慣の見直し

日本高血圧学会は、減塩や運動、肥満の是正、節酒といった生活習慣の改善で血圧は下がるとしています。高血圧治療ガイドライン2019で示された生活習慣の修正は次の6項目で、下の血圧が高い方が取り組む内容もこの枠組みの中にあります。

  • 減塩(1日6g未満)
  • 野菜と果物の積極的摂取
  • 適正体重の維持(BMI25未満)
  • 運動と身体活動量の増加
  • 節酒
  • 禁煙(受動喫煙の防止も含む)

ここから先は数値の扱いに注意が要ります。下の血圧について実際の低下幅が示されているのは運動だけで、ほかの項目の数値は上の血圧のものだからです。

習慣的な運動で下の血圧が1から4mmHg下がるといわれている

厚生労働省 e-ヘルスネットによると、習慣的な運動は収縮期血圧を2から5mmHg、拡張期血圧を1から4mmHg低下させる効果があるといわれています。ここは下の血圧の低下幅がはっきり示されている数少ない部分です。

種類を有酸素運動に絞ると別の数値が示されています。習慣的な有酸素運動は上の血圧を3.5mmHg、下の血圧を2.5mmHg低下させ、高血圧患者においては上の血圧を8.3mmHg、下の血圧を5.2mmHg低下させる効果があるといわれています。2つは別の集計なので、混ぜて読まないようにしてください。

推奨されている運動の目安は次のとおりです。

  • 種類: ウォーキング(速歩)・ステップ運動・スロージョギング・ランニングなどの有酸素運動
  • 頻度と時間: できれば毎日30分以上(1回につき少なくとも10分以上を積み重ね、1日合計40分以上とする考え方も)
  • 強度: 「ややきつい」と感じる程度

強度に目安があるのは、低い強度や中くらいの強度では上の血圧の上昇がわずかなのに対し、強度が高い運動では血圧の上昇が著しくなるためです。

運動を始める前に確かめること
  • 対象はII度高血圧以下の方(III度高血圧=上180以上または下110以上に当たる場合は、血圧を下げてから実施する)
  • 虚血性心疾患や心不全などの心血管の合併症がないことを事前の検査(メディカルチェック)で確認し、運動療法の可否を確かめる
  • 体力や年齢、体重、健康状態を踏まえて運動量を決める

数値が高い段階でいきなり運動量を増やすのは避けてください。血圧の指摘を受けている段階なら、まず医師に相談してから始めるのが順序です。

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧症を改善するための運動」

高血圧の人の減塩目標は食塩1日6g未満

減塩の目標値は立場によって違い、ひとつの数字にまとまってはいません。

対象 食塩の目標
高血圧患者(日本高血圧学会) 1日6g未満
国民全体(健康日本21 第三次) 1日7g未満
成人(日本人の食事摂取基準) 男性7.5g未満/女性6.5g未満

日本人の食塩摂取量は1日10gと世界の中でも高い水準にあります。6g未満は高血圧の方に向けた目標値であって、下がる幅を示した数値ではありません。なお、1gの減塩で上の血圧は高血圧者で1mmHg、高血圧でない方で0.5mmHg低下するとされていますが、これは上の血圧についての数値です。

厚生労働省 e-ヘルスネットが示す減塩のコツは次の8つです。

  • 漬け物は控える
  • 麺類の汁は残す
  • 新鮮な食材を用いる
  • 具だくさんのみそ汁にする
  • むやみに調味料を使わない
  • 低ナトリウムの調味料を使う
  • 香辛料や香味野菜と果物の酸味を利用する
  • 外食や加工食品を控える

麺類の汁を全部残せば2から3g減らせるとされ、ラーメンなど麺類の汁を全部飲んでしまうと、それだけで6g近い食塩をとってしまうとされています。

下の血圧を下げる生活習慣の見直しの柱(減塩・運動・減量・節酒・禁煙)

野菜や果物のカリウムを増やす食事も高血圧の対策

野菜や果物、大豆製品に豊富に含まれるカリウムには、腎臓から食塩を排泄しやすくする働きがあります。カリウム摂取の目標量は18歳以上で男性3,000mg以上、女性2,600mg以上ですが、最近の国民健康・栄養調査では男女ともに400から600mgほど不足しています。1日5つ分、350g以上の野菜を食べるよう心がけることが勧められています。

『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、高血圧の改善のために開発された食事法としてDASH食が紹介されています。特徴は次のとおりです。

  • 積極的に摂る: カリウム・カルシウム・マグネシウム・食物繊維・不飽和脂肪酸(野菜や果物のほか、低脂肪の乳製品や魚、主食に全粒穀物)
  • 控える: 飽和脂肪酸・食事性コレステロール(赤身肉やお菓子、砂糖を含んだ飲料)

こうした食事によって血圧の低下や脳心血管病のリスク低減につながることが報告されています。

腎臓の病気がある方へ
腎臓の病気がある方はカリウム摂取の制限が必要な場合があるため、増やす前に主治医と相談してください。

減量や節酒の数値が示されているのは上の血圧(収縮期血圧)だけ

減量や節酒についても数値は示されていますが、いずれも上の血圧のものです。下の血圧に置き換えて読むことはできません。

項目 示されている数値 どちらの血圧か
運動 1から4mmHg低下 下の血圧
減量 BMI25以上の群と25未満の群で6から8.4mmHgの差 上の血圧
節酒 5mmHg程度低下 上の血圧
減塩 1gの減塩で1mmHg低下(高血圧者) 上の血圧
禁煙 数値は示されていない

減量の6から8.4mmHgは、BMI25以上の群と25未満の群の上の血圧の差であって、「減量すればこれだけ下がる」という数値ではありません。人それぞれ体に合った減量方法があり、急激な体重減量が正しいとは言い切れないため、どれくらいの体重を目指すか、どういう方法と期間で進めるかを医師に尋ねることが勧められています。

節酒については、純エタノール40g程度の飲酒者が半分程度に減らすと上の血圧が5mmHg程度低下するとされています。1日の飲酒量の適量は次のとおりです。

  • 男性: アルコールとして20から30mL(日本酒なら1合、ビール中びん1本、ウイスキー水割りならシングル2杯まで)
  • 女性: その半分まで

一方で、高血圧では少量の飲酒であっても発症リスクを上げてしまうことが報告されており、適量の目安はあるものの、飲まない日を設けることにも意味があります。

禁煙は生活習慣の修正6項目に入っていますが、下がる幅の数値は示されていません。喫煙により血管が収縮して一時的に血圧が上がるほか、血液の流れが悪くなり、血液が凝固しやすくなって動脈硬化の原因になります。

数値によっては、生活習慣の見直しより先に受診が要る場合もあります。先に示したとおり、下が100以上または上が160以上なら、見直しを始める前に医療機関へ向かってください。

下の血圧が高いときによくある質問

下の血圧が高いときによくある質問

健診の結果票を受け取ってから受診までのあいだに出てきやすい疑問を、7つまとめました。

下の血圧が高いのは治りますか?

高血圧は、数値をどこまで下げて保てるかという形で管理していく状態です。厚生労働省の資料では、受診勧奨判定値を超えた場合でも、I度高血圧であれば服薬治療よりも3か月間は生活習慣の改善を優先して行うことが一般的とされています。一方で、脳心血管病や慢性腎臓病、糖尿病などがあって高リスクに分類される場合は、高値血圧の範囲でも薬物療法の適応になることがあります。どちらの進め方になるかは診察と検査を経て医師が判断します。医師が治療を必要と判断して薬を使う場合について、日本高血圧学会は副作用よりも血圧を下げる利益のほうが大きいことがほとんどだとしています。

市販薬やサプリで下の血圧は下げられますか?

血圧を下げる薬を使うかどうかは、血圧の値だけでなく、合併症や危険因子を含めて医師が適応を判断します。自己判断で市販薬を選ぶ場面ではありません。特定の食品やサプリメントで下の血圧が下がると示した公的な資料も見当たらないため、数値を動かす手段として当てにするのは避けたほうがよいでしょう。食事の側からできることとして示されているのは、減塩や、野菜や果物からカリウムを増やすといった内容です。ただし腎臓の病気がある方はカリウムの制限が必要な場合があるので、主治医と相談してください。

家庭血圧が上135で下85なら病院に行くべきですか?

日本高血圧学会は、家庭血圧が上135以上または下85以上を高血圧としています。「または」なので、上が135で下が85というこの値は、どちらの側から見ても当てはまる位置です。この範囲の家庭血圧では、脳卒中や心筋梗塞にかかる率が基準未満の方より2倍から3倍高いとされています。一度は相談したほうがよい数値だといえます。なお、これは家庭血圧の基準です。同じ135/85でも診察室で測った値なら基準は140/90なので、別の帯として扱われます。受診するタイミングは、記事の前半にある数値の区分が判断材料になります。

下の血圧が高くても運動して大丈夫ですか?

運動療法の対象はII度高血圧以下の方とされており、III度高血圧(上180以上または下110以上)に当たる場合は、血圧を下げてから実施することとされています。また事前の検査を受けて虚血性心疾患や心不全などの心血管の合併症がないことを確認し、運動療法の可否を確かめたうえで、体力や年齢、体重、健康状態を踏まえて運動量を決める必要があるとされています。血圧を指摘された段階であれば、始める前に医師へ相談してください。強度は「ややきつい」と感じる程度が目安で、強度が高い運動では血圧の上昇が著しくなるとされています。

下の血圧が高いときお酒や熱いお風呂は避けるべきですか?

お酒は、量を減らすことに意味があるとされています。純エタノール40g程度の飲酒者が半分程度に減らすと上の血圧が5mmHg程度低下するとされ、適量の目安は男性でアルコールとして20から30mL、女性はその半分までです。ただし高血圧では少量の飲酒でも発症リスクを上げてしまうという報告もあります。入浴については、42℃以上の熱い湯は避け、40℃ぐらいのぬるめの風呂に5分から10分程度が勧められています。暖かい所から急に寒い所へ移ると血管が収縮して血圧が上がるため、冬は脱衣所との温度差にも気をつけてください。

下の血圧だけ高い状態に病名はありますか?

上だけが高い状態には「(孤立性)収縮期高血圧」という呼び名が血圧値の分類表にありますが、下だけが高い状態を指す名称は、学会や行政の資料に見当たりません。名前が付いていないことは、軽く扱ってよいという意味ではありません。診断の基準が「上が140以上または下が90以上」である以上、下だけが高くても高血圧の区分に入り、健診後の対応区分も同じように上と下のどちらか一方で決まります。呼び名を探すよりも、下の値が90や100といった区切りをまたいでいるかどうかで次の行動を決めるほうが確かです。

家族に高血圧の人がいると自分も下の血圧が高くなりますか?

本態性高血圧は、食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、ストレスなどの生活習慣と、遺伝的な体質が組み合わさって起こると考えられています。国立循環器病研究センターも、遺伝的な因子と生活習慣などの環境因子が関与していると説明しています。つまり家族に高血圧の方がいることは、体質の側の要素の1つではあっても、それだけで決まるものではありません。なお、この説明は高血圧全般についてのもので、家族歴が下の血圧だけを高くすると示したものではありません。家族歴がある方は、健診の血圧欄をより注意して見ておき、家庭でも測って記録しておくと変化に気づきやすくなります。

血圧の下が高いときの受診の目安〜まとめ〜

上の血圧が基準内でも、下の血圧が90以上なら高血圧の区分に入ります。そして区分に入った場合の対応は、数値ごとに決まっています。下が100以上、または上が160以上ならすぐに受診、下が90から99、または上が140から159ならおおむね1か月後にかかりつけの医療機関で再検査、下が85から89なら生活習慣の改善から、という並びです。これは健康診断や診察室で測った値についての目安で、家庭で測った値は上135以上または下85以上という別の基準で見ます。いずれも目安であり、最終的な判断は診察した医師が行います。

下の血圧の指摘は、症状がないぶん先送りになりやすいものです。ここまで読んで気になる数値が手元にあるなら、結果票と家庭血圧の記録を持って一度相談してみてください。池袋かめさん内科では、内科診療で血圧の相談を受け付けています。

診療時間は9:00-12:30と14:00-18:00で、月曜と日祝は休診、土曜は午前のみです。雑司が谷駅から徒歩2分、目白駅から徒歩10分、池袋駅から徒歩13分の場所にあります。

03-3986-4466

受付時間:9:00-12:30/14:00-18:00

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