健診の結果票を開くと、「糖代謝」の欄にHbA1cという項目が並んでいます。そこに5.6や6.1という数字があると、下げたほうがよいのか迷うものです。下げるとしたら、何をどのくらい続ければよいのか。まだ糖尿病と言われたわけではない、という位置にいる方ほど、次の一歩は見えにくくなります。
先に、結果票の数字ごとの答えを短く出しておきます。
5.6〜5.9 — 食事と運動を見直す段階です。高血圧や脂質異常症・肥満が重なる方には、ブドウ糖を飲んで血糖の動きを見る75gOGTTが望ましいとされていますが、全員に必要な検査ではありません。
6.0〜6.4 — 75gOGTTがすすめられる段階です。
6.5以上 — 糖尿病型にあたる数値ですが、HbA1cだけで糖尿病と確定させることはしません。血糖の検査を含む再検査に進みます。
参考:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」別紙5
もう1つ、取り組みの評価にかかる時間も先に書いておきます。HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖値を映す検査なので、数日や1週間の頑張りで変化を読み取れる値ではありません。下げにいく方法も、肥満があるかどうかで公的な資料の書き方が分かれます。短い期間だけで判断せず、自分の体格に合った方向を選ぶというのが、この記事全体を通した組み立てです。
ここからは、結果票の読み方から判定区分ごとの行動、数値が実態と食い違う場面、そして下げにいくときの期間と方法までを、公的機関と学会の資料に沿って順に整理していきます。
目次
HbA1cとは?健診結果票の糖代謝の欄に並ぶ検査値

健診の結果票の「糖代謝」の欄には、血糖・HbA1c・尿糖が並んでいます。そのうちの1つがHbA1cです。東京大学保健センターは、定期健康診断でこの3つを測定していると説明しており、糖代謝という区分名は特定の検査1つを指す言葉ではありません。まずは、その欄に並んだ数字がそれぞれ何を見ているのかから確かめておきます。
HbA1cが反映するのは過去1〜2ヶ月の平均血糖値
HbA1cは、血液中のブドウ糖がヘモグロビンとどれだけ結びついているかを割合で表した検査値です。ヘモグロビンは赤血球の中にあるたんぱく質で、作られて壊されるまでの約120日のあいだに、血液中の糖と結合していきます。糖がくっついたヘモグロビンの割合が、そのままHbA1cという数字になります。
国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは、この値が採血時から過去1、2か月間の平均血糖値を反映すると説明しています。つまりHbA1cは過去1〜2か月の平均を反映する検査であり、直近の数日だけを見て判断できる値ではありません。前の晩に食べすぎた、逆に3日前から気をつけている、といった短い範囲の出来事が、そのまま数字に出る仕組みにはなっていません。
この性質は、健診の受け方の話ともつながります。当日の朝食を抜いたかどうかで大きく動くのは空腹時血糖のほうで、HbA1cは前日1回の食事で動く項目ではありません。前日の食事や過ごし方そのものについては健康診断の前日の食事についての記事で扱っています。
そして同じ理由から、下げにいくときにも同じだけの時間の幅がかかります。何をどれだけ続けると数字に表れるのかは、記事の後半で扱います。
3つは似た並びに見えますが、それぞれ別の時間と別の経路を見ています。
- 血糖 — 採血したその時点の、血液中のブドウ糖の量
- HbA1c — 過去1、2か月の平均血糖値
- 尿糖 — 尿に糖が出ているかどうか。国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは、尿糖は通常、血糖値が160〜180mg/dLまで高くなると尿に出てくると説明しています(個人差があります)
同じ欄に並んでいるのは、糖の代謝という1つのテーマを別の角度から見ているためです。1つだけを取り出して読むと、判断を誤りやすくなります。
糖代謝の欄ではHbA1cと空腹時血糖をあわせて見る
結果票を読むときに押さえておきたいのは、HbA1cと空腹時血糖はセットで見る前提で並んでいるということです。厚生労働省の資料では、HbA1cと空腹時血糖の両方を実施することが望ましいとされています。両方を測定している場合、階層化には空腹時血糖の結果を用いると定められています。片方だけを見て終わる読み方は、資料が想定している使い方ではありません。
実際に、HbA1cは基準の範囲に収まっているのに空腹時血糖が超えている、あるいはその逆という結果票は珍しくありません。どちらか一方に印が付いていたら、もう一方の数字も同じ欄の中で確かめてください。ここでは「並んだ2つを一緒に読む」という結果票の読み方までを押さえておけば足ります。その2つの組み合わせで健診の判定がどう分かれるかは、次の章で扱います。
HbA1cと血糖値の違いは見ている期間
2つの違いは、見ている期間の長さです。同じ「血液中の糖」を扱いながら、片方はその瞬間を、もう片方は過去1、2か月の平均を見ています。
| 項目 | HbA1c | 血糖値 |
|---|---|---|
| 見ている範囲 | 過去1、2か月の平均血糖値 | 採血したその時点の値 |
| 直前の食事の影響 | 前日1回の食事では動きにくい | 食後に上がり、時間とともに下がる |
| 読み取れること | 一定期間ならした傾向 | そのときの状態 |
| 測るときの条件 | 食事の時刻に左右されにくい | 空腹時か食後かで読み方が変わる |
参考:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病と関連する検査」
血糖値だけを見ていると、たまたま調子のよい日に採血した結果に引きずられます。反対にHbA1cだけを見ていると、いま起きている大きな変化に気づくのが遅れます。2つは競合する検査ではなく、見ている時間の長さが違うだけだと考えると、結果票の並びの意味がつかみやすくなります。
HbA1cの判定区分で変わる健診のあとにすること

健診のあとにすることは、判定区分によって変わります。同じ「HbA1cが基準より高い」でも、生活を見直して来年の健診で確かめる段階と、次の検査について相談を勧められる段階と、すぐに受診を求められる段階が分かれているためです。この章では、その分かれ目と、それぞれで何をすることになるのかを見ていきます。
HbA1cが同じでも空腹時血糖でA〜Dの判定は分かれる
日本人間ドック・予防医療学会の判定区分は、空腹時血糖とHbA1cの組み合わせで決まります。A〜Dというのは、この学会が示している判定の呼び名です。同じHbA1c 5.8でも、空腹時血糖の値によって判定は変わります。
| 判定の呼び名 | 空腹時血糖(mg/dL)とHbA1c(%)の組み合わせ |
|---|---|
| A 異常なし | 空腹時血糖70〜99 かつ HbA1c 5.5以下 |
| B 軽度異常 | 空腹時血糖100〜109 かつ HbA1c 5.9以下/空腹時血糖70〜99 かつ HbA1c 5.6〜5.9 |
| C 要再検査・生活改善 | 空腹時血糖110〜125/空腹時血糖126以上 かつ HbA1c 6.4以下/空腹時血糖70〜109 かつ HbA1c 6.0以上/空腹時血糖54〜69 |
| D 次の段階の検査や治療にすすむ区分 | 空腹時血糖126以上 かつ HbA1c 6.5以上/空腹時血糖53以下 |
参考:日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」
表を眺めると、HbA1cが5.6〜5.9でもBに入る場合とCに入る場合があることがわかります。分けているのは空腹時血糖のほうです。HbA1cの数字だけを見て自分の判定を推し量ることはできないというのが、この区分の組み立てです。前の章で「2つを一緒に読む」と書いたのは、判定の仕組みがこうなっているためでもあります。
厚生労働省の資料はHbA1cが5.5までを異常なしとしたうえで、肥満がある方には減量を勧める文面を用意しています。数字に印が付いていない場合でも、体格によって声のかけ方が変わります。この判定区分は2026年4月1日に改定されており、空腹時血糖の低い側にも区分が新たに置かれました。手元の結果票が改定前のものであれば、区分の付き方がこの表と揃わない場合があります。ここから先は、HbA1cの数値帯ごとに次にすることを見ていきます。

HbA1c 5.6〜5.9で見直す生活と必要に応じた75gOGTT
この帯については、生活の見直しと、条件によっては受ける検査の2つが示されています。順に見ていきます。
まず生活の見直しについて、厚生労働省の資料はこの帯を正常よりやや高い状態と位置づけています。示されている行動は、食事の改善や運動に取り組むことと、来年度の健診で変化を確認することの2つです。取り組んだうえで次の健診で結果を見る、という1年単位の流れが置かれているとお考えください。
書かれているのはここまでで、何をどう変えるのかという具体的なやり方までは踏み込まれていません。やり方の中身は、資料が名指ししている範囲に絞って記事の後半でまとめて扱います。
もう1つの75gOGTTについては、日本糖尿病学会の説明が条件を示しています。空腹時血糖100〜109、またはHbA1c 5.6〜5.9は将来糖尿病を発症するリスクが高いグループとされ、高血圧や脂質異常症・肥満がある方は75gOGTTが望ましいとされています。条件に当てはまれば望ましい検査であって、この帯の全員に必要な検査ではありません。血圧のほうで指摘を受けている方は血圧が高めと言われたときの記事もあわせてご覧ください。
参考:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病予備群といわれたら」
ここで区別しておきたいのは、5.6〜5.9と6.0〜6.4の違いが「検査が不要か必要か」ではなく、すすめられ方の強さの違いだという点です。5.6〜5.9は条件によって望ましい、6.0〜6.4はすすめられる、という差になっています。5.6〜5.9という数字が出たことをもって糖尿病だと読むものではありません。

HbA1c 6.0〜6.4ですすめられる75gOGTT
75gOGTTは、ブドウ糖を溶かした水を飲んで、時間をおいて採血し、血糖値の動き方を見る検査です。正式にはブドウ糖負荷試験と呼ばれます。空腹時の1回の採血ではわからない、糖の処理のされ方まで見にいく検査だと考えるとつかみやすくなります。
この帯について、複数の資料が同じ方向を示しています。日本糖尿病学会は、空腹時血糖110〜125またはHbA1c 6.0〜6.4を糖尿病の疑いが否定できないグループとして75gOGTTを推奨しています。日本人間ドック・予防医療学会の判定区分にも、空腹時血糖110〜125またはHbA1c 6.0〜6.4の場合はOGTTを推奨するという注記が置かれています。厚生労働省の資料も、この帯についてブドウ糖負荷試験等について相談を勧める段階だとしています。
参考:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」血糖高値のフィードバック文例集
見落としたくないのは、すすめられているのは検査であって、診断が下りたわけではないということです。6.0〜6.4という数字は、糖尿病かどうかを確かめる段階に入ったことを示すもので、それ自体が病名ではありません。資料が使っているのも「疑いが否定できない」「推奨する」「相談を勧める」という言い方です。この記事でもその範囲を超えて書きません。
HbA1c 6.5以上で糖尿病型とされたあとに必要な再検査
6.5以上は糖尿病型と呼ばれる数値ですが、それだけで診断がつくわけではありません。国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは、糖尿病型の基準を次の4つに整理しています。
| 糖尿病型とされる基準 | 数値 |
|---|---|
| 空腹時血糖 | 126mg/dL以上 |
| HbA1c | 6.5%以上 |
| 75gOGTT 2時間値 | 200mg/dL以上 |
| 随時血糖 | 200mg/dL以上 |
参考:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病は早く見つけましょう」
診断は、この糖尿病型が同じ日または別の日に2つ確認されて初めて成立します。そしてHbA1cだけが糖尿病型だった場合は、なるべく1か月以内に再検査を行い、そのときは血糖の検査が欠かせないとされています。HbA1cを2回測って両方6.5以上でも、それだけでは診断にならないということです。
つまり6.5以上という数字を見たときにすることは、自己流で下げにいくことではなく、期限のある再検査に進むことになります。この章に出てきた「再検査」は、判定を受けた直後に何をするかという話です。数値のどこからが再検査になるのか、そして受けたあとの間隔をどう取るのかは、受診について扱う章で改めて整理します。
HbA1cの基準値は年齢や性別で変わる?数字が違って見える理由

この章に入る前に、よく混ざる3つの言葉を分けておきます。健診の判定に使う「基準値」、別の集団の分布から来た「正常値」、治療を受けている方に置かれた「目標値」の3つです。出どころが違えば、同じHbA1cでも書かれている数字が変わります。ここではまず、年齢や性別で区分が変わるのかに答え、そのうえで数字が場所によって違って見える理由を扱います。
年齢や性別が関わる資料は存在しますが、関わり方が読者の期待とずれています。
- 健診の判定に使う基準値 — 年代別・男女別の区分は置かれていない
- 発症のしやすさ — 年齢や家族歴によって差があると報告されている
- 治療中の高齢者の目標 — 年齢の区分がある。ただし対象は治療を受けている方
3つを混ぜて読むと「年代別の基準値がある」という誤解になります。以下ではこの順に見ていきます。
健診の判定にHbA1cの年代別や男女別の区分は置かれていない
答えから書くと、健診の判定に使われるHbA1cの数値に、年代別や男女別の区分は置かれていません。厚生労働省が定めている特定健診の判定値は、保健指導判定値がHbA1c 5.6%、受診勧奨判定値が6.5%の一本で、年齢や性別による書き分けがありません(空腹時血糖はそれぞれ100mg/dLと126mg/dL)。
日本人間ドック・予防医療学会の判定区分も同じで、前の章で見たとおり空腹時血糖とHbA1cの組み合わせだけで決まります。同じ判定区分の中には血色素量のように男女別の区分を持つ項目もありますが、血糖とHbA1cにはその区分が置かれていません。
参考:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」別紙5
つまり「40代の基準値」「50代女性の平均値」といった数字を探しても、公的な資料の側にその形の数値が用意されていません。この記事でも年代別や男女別のHbA1cの数値は書きません。書けないから省いたのではなく、判定の仕組みがその形をしていないためです。年齢が数値の形で入る資料は1つだけあり、それはこの章の最後で扱います。
健診の用紙とネットでHbA1cの正常値が別々に書かれている
別々に書かれているのは、それぞれが別の基準を出典にしているからです。健診の用紙に印刷された数字と、検索して出てくる数字は、そもそも同じ目的で作られていません。
| 数字の出どころ | どういう性格の数字か | HbA1cの値 |
|---|---|---|
| 特定健診の判定値(厚生労働省) | 保健指導と受診勧奨に振り分けるための線 | 5.6% / 6.5% |
| 判定区分(日本人間ドック・予防医療学会) | 空腹時血糖と組み合わせて判定を出すための区分 | A判定は5.5%以下 |
| 耐糖能正常者の基準値(日本糖尿病学会) | 糖の処理が保たれている方の分布から示された範囲 | 4.6〜6.2% |
3つはどれも正しく、目的が違うだけです。手元の結果票に5.5と書いてあり、検索先に6.2と書いてあっても、どちらかが誤りというわけではありません。
さらに、同じ日本糖尿病学会の資料はHbA1c 6.2%付近には、糖の処理が保たれている方だけでなく、まだ診断のつかない段階の方や糖尿病型の方も含まれると述べ、分布の重なりが大きいと説明しています。1本の線で人がきれいに分かれるわけではない、という但し書きです。だからこそ健診は、HbA1cという1つの数字ではなく、空腹時血糖との組み合わせで判定を出す形をとっています。
HbA1cの区分は同じでも糖尿病の発症リスクは年齢で上がる
はじめに言い直しておくと、ここでの区分とは健診の判定区分のことです。前の項で「年代別の区分は置かれていない」と書いたのは判定区分の話で、年齢そのものが無関係だという意味ではありません。判定区分は同じでも、この先どうなりやすいかは人によって違います。
国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは、日本人の40〜59歳を10年追跡した研究をもとに、2型糖尿病の発症しやすさを次のように紹介しています。
- 年齢が1歳上がるごとに、男女とも2%上昇する
- BMIが1増えるごとに17%上昇する
- 血縁者に糖尿病の方がいる場合、男性で2.0倍・女性で2.7倍
- 1日20本以上の喫煙で、男性1.4倍・女性3.0倍
- 1日1合以上の飲酒で、男性1.3倍
参考:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病予備群といわれたら」
ここで性別が出てくるのは基準値ではなく、同じ条件が男女で効き方を変えるという形です。この研究が対象にしているのは40〜59歳で、その範囲では年齢が上がるほど発症しやすくなると報告されています。判定区分としては同じ5.9でも、そのあとの見通しの立て方は一律になりません。年齢を理由に基準がゆるくなるわけではない、という点も覚えておいてください。
治療中の高齢者に定められたHbA1cの別の目標
年齢が数値の形で入る資料は、これ1つです。日本糖尿病学会は、高齢者糖尿病について65〜74歳と75歳以上で分け、さらに認知機能や日常生活動作などによるカテゴリー別に、血糖コントロールの目標を定めています。
ただしこの目標は、重症低血糖が心配される薬剤を使っている治療中の方を前提に置かれたもので、健診でHbA1cを指摘された段階の方には当てはまりません。健常な方の基準値でもありません。
そのため、この記事では高齢者向けの目標値の数字そのものは扱いません。年齢で数値が動く表が存在するのは事実ですが、それは治療の場面の話であって、健診の結果票を読むときの物差しではないためです。検索で「◯代の目標値」という数字に行き当たったときは、それが治療中の方に向けたものかどうかを先に確かめてください。
HbA1cが高くなる原因は一つではない

HbA1cが高く出る背景は、1つに絞れません。この章では①数値の出方 ②体質や体格 ③体の仕組みという3つの角度から順に見ていきます。何をすれば下がるのかという生活の話は、この章では扱わず後半の章にまとめています。
空腹時血糖が正常でもHbA1cだけが上がる場合
結果票で意外に多いのが、空腹時血糖は範囲に収まっているのにHbA1cだけが基準を超えているという組み合わせです。前の章で見た判定区分にも、空腹時血糖70〜109かつHbA1c 6.0以上という組み合わせがはっきり置かれていました。想定外の並びではなく、判定の側があらかじめ用意している形です。
理由は、2つの検査が見ている時間が違うところにあります。空腹時血糖が写し取るのは採血した1点だけなので、その1点を外れた時間帯に血糖が上がっていても、空腹時の採血では見えません。一方でHbA1cは1、2か月分をならしているため、そうした時間帯の分も平均に含まれます。糖尿病型の基準に空腹時血糖だけでなく随時血糖が並んでいるのも、空腹時の1点で全部が見えるわけではないことの表れです。
この場合に必要なのは、HbA1cだけを下げにいくことではなく、まず組み合わせで判定を確かめることです。判定区分ごとに次にすることが変わるのは、先に触れたとおりです。
HbA1cが上がりやすくなる肥満や家族歴
先に断っておくと、ここから挙げる数字はHbA1cが何%上がるかではなく、40〜59歳を追跡した研究で示された2型糖尿病の発症リスクです。要因は、自分で変えられるものと変えられないものに分かれます。両方を並べておくと、どこに手をかけるかを決めやすくなります。
| 発症リスクに関わる要因(変えられない) | 発症リスクに関わる要因(変えられる) |
|---|---|
| 年齢(1歳ごとに2%上昇) | 体格(BMIが1増えるごとに17%上昇) |
| 血縁者に糖尿病の方がいるかどうか(男性2.0倍・女性2.7倍) | 喫煙(1日20本以上で男性1.4倍・女性3.0倍) |
| 性別による効き方の差 | 飲酒(1日1合以上で男性1.3倍) |
家族歴に2倍を超える数字が並ぶと、生活を整えても仕方がないように見えるかもしれません。ただ、変えられない側の数字が大きいことと、変えられる側に意味がないことは別の話です。体格・喫煙・飲酒は、いずれも自分の側で動かせる要因として並んでいます。
肥満がある場合に何をどこまで目指すのかという具体的な数字は、方法を扱う章で正面から扱います。ここでは、上がりやすさの背景に体格と家族歴があるところまでを押さえておいてください。
HbA1cが高くなる背景にあるインスリンの働きの低下
見出しの「背景にある」を開くと、血糖を下げる方向にはたらくインスリンが、出にくくなったり効きづらくなったりしている状態という意味になります。糖尿病情報センターは、この変化が糖尿病と診断されるずっと前の段階から起きていると説明しています。効きづらくなるほうは生活習慣がインスリンの効果発揮を妨げる形(インスリン抵抗性)、出にくいほうは遺伝的に分泌しにくい体質(インスリン分泌低下)として整理されています。
参考:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病予備群といわれたら」
ここで注意したいのは、この仕組みは前の2項と切り離された第3の原因ではないということです。体格や年齢といった要因は、この働きの落ち方を通して数値に出てきます。原因を1つに絞れないと最初に書いたのは、3つが並列に並んでいるのではなく、重なり合っているためです。
なお、ストレスや睡眠不足の影響については、この章の3つとは別の要因になるため、記事末のよくある質問で改めて触れます。また、同じ結果票の腎機能の項目で指摘を受けた方に向けてはクレアチニンが高いと言われたときの記事を用意しています。
貧血や肝臓の病気でHbA1cが実際の血糖と食い違う場合

ここまでの章と、この章では軸が変わります。前の章は実際に血糖が高い場合の話でしたが、この章はHbA1cが実際の血糖より高めに、あるいは低めに出る場合です。貧血・肝臓の病気のほか、輸血や透析を受けている場合にも食い違いは起こります。
日本糖尿病学会は、HbA1c値と平均血糖値のあいだに乖離が生じる状況を、向きごとに整理しています。
| ずれの向き | あてはまる状況 |
|---|---|
| 高めに出る | 急速に改善した糖尿病/鉄欠乏状態 |
| 低めに出る | 急激に発症・増悪した糖尿病/鉄欠乏性貧血の回復期/溶血/失血後・輸血後/エリスロポエチンで治療中の腎性貧血/肝硬変/透析 |
| どちらにもなり得る | 異常ヘモグロビン症 |
表を見ると、貧血という一語の中で向きが逆になっていることがわかります。鉄が足りていない状態では高めに、その鉄欠乏性貧血が回復してきた時期には低めに出る、という並びです。「貧血だとHbA1cはどちらに出るのか」がはっきりしないまま覚えられているのは、この2つが混ざるためだと考えられます。以下では向きごとに分けて見ていきます。
鉄欠乏があるとHbA1cは高めに出る
高めに出る側に置かれているのは、鉄が不足している状態にあるときです。無条件に「貧血ならHbA1cが高くなる」という書き方ではなく、鉄欠乏状態という条件が添えられています。同じ欄には、急速に改善した糖尿病も高めに出る状況として並んでいます。
この向きが問題になるのは、実際の血糖の状態よりHbA1cが高く出ることで、必要以上に厳しい判定に見えてしまう場面です。生活を見直しても数字が思うように動かない、という受け取り方にもつながります。
健診の結果票で貧血の項目にも印が付いていた方は、2つを別々の話として読まないほうが確かです。貧血を指摘されたことがある方は、HbA1cの数字だけで自分の状態を決めず、相談のときにその点を伝えてください。そこが伝わっていれば、医療機関の側は数値の背景まで含めて判断できます。
溶血や輸血のあとのHbA1cは低めに出る
低めに出る側は、状況が複数に分かれています。赤血球が壊れている状態(溶血)と、輸血や失血のあとは、どちらもこちら側です。赤血球が新しく入れ替わると、糖と結合していた時間の短いヘモグロビンの割合が増えるため、平均を映す数字が下がる方向に働きます。
鉄欠乏性貧血の回復期がここに入っているのも同じ理由です。鉄が補われて赤血球が作られはじめると、若い赤血球が増えます。同じ人でも、貧血が続いている時期と治りかけの時期で向きが変わるということです。前の項の「高めに出る」と合わせて読むと、鉄欠乏という1つの状態の中で、時期によって数値が逆方向に振れることになります。
この欄には、エリスロポエチンで治療中の腎性貧血も並んでいます。いずれも共通しているのは、赤血球が入れ替わる速さが変わっている状況だという点です。輸血や治療を受けた時期が近い方は、その時期をあわせて伝えておくと数値の読み方が変わります。

肝硬変や透析中のHbA1cは低めに出る場合がある
先に断っておきたいことがあります。HbA1cには低い側の判定区分が置かれていません。人間ドック・予防医療学会の判定区分で低い側に線が引かれているのは空腹時血糖のほうで、HbA1cについては「ここから下は異常」という公的な線がありません。「HbA1cが低すぎるのではないか」と感じたときに照らす基準が、そもそも用意されていません。
そのうえで、低めに出る状況として資料が挙げているものの中に、肝硬変という病気と、透析という治療が並んでいます。この2つは「HbA1cが低いから疑うもの」ではなく、「あてはまる方では低めに出る場合がある」という向きで読むものです。もともと肝硬変や透析を指摘されている方が、HbA1cの数字を実態より低く受け取ってしまわないように置かれた注意だと考えると、位置づけがつかみやすくなります。
向きが逆になると、実務上の意味も逆になります。高めに出る場合は必要以上に厳しい判定に見え、低めに出る場合は実際より落ち着いているように見えてしまうわけです。低い側には公的な線がないため、数字だけを見ていると「問題なし」で通り過ぎやすくなります。あてはまる治療や病気がある方は、その事実を伝えたうえで数値を読んでもらうのが確かです。
HbA1cとは別に過去2週間を見るグリコアルブミン
では、食い違いが疑われるときに何を見るのか。代わりの物差しとして置かれているのがグリコアルブミンです。アルブミンというたんぱく質に糖が結合した割合を見る検査で、寿命が約20日と短いぶん、より短い期間を映します。
| 項目 | HbA1c | グリコアルブミン |
|---|---|---|
| 反映する期間 | 過去1、2か月の平均血糖値 | 過去約2週間の平均血糖値 |
| もとになるもの | 赤血球の中のヘモグロビン(約120日) | 血液中のアルブミン(約20日) |
| 基準値 | — | 11〜16% |
参考:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病と関連する検査」
赤血球の状態に左右される項目と、そうでない項目を持ち替えられる、というのがこの検査の役どころです。どちらを使うかを決めるのは検査を組む側なので、読む側としては「HbA1cが実態と合わない場面があり、そのときに使える検査が別にある」ところまで知っておけば足ります。
ここまでが、数字が実態とずれる場合の話です。次の章からは、数字が実態を映しているという前提で、下げにいくときの時間の話に移ります。
HbA1cは何ヶ月で下がる?1ヶ月では読めない理由

最初に、この章で答えられる範囲をはっきりさせておきます。
この章で扱えること・扱えないこと
扱えるのは、次のHbA1cをいつ見ればよいかという時期の話です。1か月で何%下がるか、3か月で何%下がるかという下げ幅の数値は、公的な資料や学会の資料に見当たりませんでした。数字を出せない部分を推測で埋めることはせず、期間の枠組みだけを整理します。
期間についての資料は、いくつかの言い方で存在しています。並べて見ると、どれも同じ方向を指していることがわかります。
| 資料が示している期間 | 何を指しているか |
|---|---|
| 過去1、2か月 | HbA1cが反映している平均血糖値の範囲 |
| 約120日 | ヘモグロビンが作られて壊されるまでの期間 |
| 1か月以上前 | 保健指導のあとの評価に使うとき、取り組み前を含む1か月以上前まで反映している。直近が無関係という意味ではない |
| 2、3か月 | 食事療法・運動療法を続けたうえで達成を判断する単位 |
1か月では読み取れないのはHbA1cの値そのものではなく、取り組みの成果のほうです。1か月経てば数字自体は出ますが、その数字が今回の取り組みを映しているとは限らない、という順序で捉えてください。
HbA1cは1か月以上前の状態を反映する
厚生労働省の資料には、この検査を評価に使うときの注意が明記されています。保健指導後の評価指標として用いる際には、当日の状態ではなく、1か月以上前の状態を反映していることに留意すべきという一文です。
参考:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」別紙4
ここで読み違えたくないのは、この一文が「直近の1か月は反映されない」と言っているわけではない点です。記事の前半で見たとおり、HbA1cが映しているのは過去1、2か月の平均血糖値でした。より前の期間まで含めて平均しているからこそ、当日や直近の状態だけを取り出して読むことができないというのが、この2つの資料の共通した中身です。直近が無関係だという意味ではありません。
言い換えると、2つの資料は同じ現象を別の角度から説明しています。「1、2か月の平均を映す」というのが値の性質の説明で、「1か月以上前の状態を反映している」というのが評価に使うときの注意です。取り組みを始めた直後に測っても、まだ取り組み前の期間が平均の中に多く残っていることになります。

HbA1cは2〜3ヶ月続けてから見直す
見出しを補って書くと、食事と運動の見直しを2〜3か月続けたうえで、次のHbA1cを見るという意味になります。HbA1cそのものを続けるわけではありません。
この期間の根拠になっているのは、日本糖尿病学会の記述です。食事療法・運動療法を2、3か月続けても目標の血糖コントロールを達成できない場合には薬物療法を行う、とされており、2、3か月が取り組みを評価する単位として置かれていることがわかります。
したがって、始めて2週間で測り直しても、結果を取り組みの成否として読むことはできません。焦って測る回数を増やすより、期間を確保するほうが値の意味が読み取れます。医療機関で経過を追う場合の間隔はまた別に置かれていて、そちらは受診について扱う章で整理します。
健診の結果票を持って相談できます
池袋かめさん内科では、血液検査(HbA1c・空腹時血糖値)による糖尿病のスクリーニングを実施しています。健康診断で血糖値の異常を指摘された方の再検査・二次検査にも対応しておりますので、結果票をお持ちのうえご相談ください。食事指導を重視した生活改善のサポートも行っています。
HbA1cを下げる方法は肥満があるかどうかで変わる

方法の話は、2段階に分けると整理しやすくなります。まず体格にかかわらず共通する2つ(飲み物と運動)があり、そのうえで肥満があるかどうかで進む先が分かれます。共通する部分から順に見ていきます。
なお、この記事で扱うのは資料に書かれている範囲だけです。何を食べるとよいかという食事の組み立て全般には踏み込まず、学会の資料が制限する側として名指ししている項目に絞ります。
HbA1cを下げるために減らす糖を含む清涼飲料水
日本糖尿病学会が生活習慣の改善として挙げている項目の中に、単純糖質の制限、とくに糖を含む清涼飲料水の制限が明記されています。単純糖質という語で示された中で、具体名が添えられているのは清涼飲料水だけです。食品名として名指しされている数少ない項目にあたります。
同じ資料が挙げている項目を並べると、次のようになります。
- 肥満の解消(現体重の5%減を目指す)
- 食事量の制限と動物性脂質の制限
- 単純糖質の制限(とくに糖を含む清涼飲料水の制限)
- 食物繊維摂取の促進と間食への配慮
- 運動の奨励・飲酒習慣の是正・禁煙
目を引くのは、制限する側が具体的に書かれている一方で、「これを食べると下がる」という食品は挙がっていないことです。ヨーグルトや特定の飲み物でHbA1cが下がると示した資料は、今回の調査では確認できませんでした。この記事で個別の食品をすすめないのは、そのためです。
飲み物は、意識しないまま量が積み上がりやすい経路です。HbA1cが1、2か月の平均である以上、毎日続いているものほど平均に効いてきます。習慣的に清涼飲料水を口にしている方は、まず頻度と量を確かめるところからになります。
HbA1cを下げるために増やす息が弾む週60分の運動
厚生労働省の身体活動・運動ガイドは、成人に向けて3つの推奨を並べています。同じ「60分」という数字が2回出てきますが、片方は運動、もう片方は歩行などの身体活動で、別々の推奨です。ここを混ぜないことが大切です。
| 何についての推奨か | 具体的な目安 |
|---|---|
| 運動 | 息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上 |
| 身体活動 | 歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当) |
| 筋力トレーニング | 週2〜3日 |
※ガイドの原文は「強度3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上」「強度3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上」という書き方で、上の目安はその言い換えとして添えられているものです。
参考:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」成人版
見出しに置いたのは1行目のほうです。運動として息が弾む程度のものを週に合計60分以上、というのが目安になります。一方の1日60分は、通勤や買い物の歩行を含む1日の身体活動の合計なので、運動の時間として60分を毎日確保するという意味ではありません。
週60分は「息が弾み汗をかく程度の運動」を1週間で合計した時間です。1日60分は「歩行またはそれと同等以上の身体活動」を1日で合計した時間で、約8,000歩に相当するとされています。運動として意識して行うものと、生活の中で積み上がるものを、別々に数えているという構造です。
同じガイドの本文には「今より少しでも多く」という言葉が繰り返し置かれています。週60分をハードルとして受け取る必要はなく、いまの量から少し増やすところが出発点だという書き方です。まったく運動していない方が、まず10分の徒歩を足すところから始めても、ガイドの方向からは外れていません。
なお、日本糖尿病学会は運動を禁止あるいは制限したほうがよい場合として、空腹時血糖250mg/dL以上や尿ケトン体が中等度以上陽性といった条件を挙げています。これは治療中の方に向けて置かれた基準であり、健診でHbA1cを指摘された段階の方に一律に当てはまるものではありません。
飲み物と運動は共通する2つでした。ここから先は、厚生労働省の資料が肥満のある方とない方で書き分けている部分に入ります。自分がどちら側にいるかで、目指す先が変わります。
肥満があるHbA1cの高い人が目指す体重5%減
肥満があり、かつHbA1cが高い方については、数字のある目標が資料に置かれています。日本糖尿病学会が挙げているのは現体重の5%減です。もとの体重を基準にした割合なので、体重が重い方ほど落とす量は多くなります。
厚生労働省の資料も同じ方向を向いていて、HbA1cが5.5%までで異常なしとされる場合でも、肥満があれば減量を勧める文面が用意されています。数値に印が付いていなくても、体格によっては取り組む対象になるということです。
あわせて、5〜10%の体重減少でも高血糖などが改善したり、糖尿病の発症が予防できたりすると報告されています。目標として示されているのが現体重の5%減、報告されているのが5〜10%の減少という並びで、どちらも急いで大きく落とすことをすすめる書き方にはなっていません。
具体的な量に置き換えると、体重70kgの方で3.5kg、80kgの方で4kgです。もとの体重に対して数kgの幅として示されている点は覚えておいてください。そして前の章で見たとおり、HbA1cが映すのは1、2か月の平均なので、この幅に届いたかどうかは短い期間では判断できません。期間を確保したうえで、体重と数値の両方を並べて見る形になります。

痩せているのにHbA1cが高い人が確かめる他のリスク
肥満がない方に向けては、資料の書き方が変わります。厚生労働省の文例には、5.6〜5.9の帯について、ほかのリスクを持っている場合や血縁者に糖尿病の方がいる場合には検査について相談を勧めるという文が置かれています。減量を軸にできないぶん、確かめる先が別に用意されている形です。
ここでいう「他のリスク」を、前の章までに出てきたもので具体化すると次のようになります。
- 血縁者に糖尿病の方がいるかどうか(男性2.0倍・女性2.7倍)
- 年齢(1歳ごとに2%上昇)
このほかにインスリンの働きの落ち方も背景にありますが、こちらは自分で確かめられるものではなく、検査や診察で評価される部分です。
痩せているからHbA1cが高くならない、という関係にはなっていません。体重を落とす方向では手をつけにくいぶん、飲み物と運動という共通の2つを続けたうえで、判定区分に応じた検査で確かめる流れになります。数値帯ごとにどこまでの検査がすすめられるかは、先に整理したとおりです。
体格が標準の範囲に収まっている方ほど、健診で数値だけを指摘されたときに次の手が見えにくくなります。減量という分かりやすい目標が置けないためです。ただ、資料の側は肥満がない方に「何もすることがない」とは書いておらず、確かめる方向の行動を用意しています。減らす対象が体重ではなく検査の空白のほうだ、と考えると進みやすくなります。
HbA1cが下がらないときにサプリや急な減量に頼らない

続けているのに数字が動かないとき、手っ取り早い方法に目が向きます。この章で扱うのは、サプリメントに頼ることと、体重を急に落とす自己流の対策の2つです。どちらも、資料の側に裏づけを見つけられませんでした。なお、この章の後半に出てくる「長く高かった血糖が急に下がるときの注意」は、体重を急に落とすこととは別の話です。混ざりやすいので、先に分けておきます。
HbA1cを下げるサプリは学会資料では確認できない
まず事実の側から書きます。HbA1cを下げると示したサプリメントについて、学会の資料の中に記述を見つけることはできませんでした。今回確認したのは、糖尿病の治療の位置づけを示した学会の資料と、健診・保健指導について国が定めた資料の範囲です。そこで挙げられているのは食事療法・運動療法・薬物療法であり、サプリメントはその並びに出てきません。
注意しておきたいのは、資料に書かれていないことと、効果がないと証明されていることは別だという点です。この記事が言えるのは「確認できなかった」までで、それ以上の断定はしません。効果を期待させる書き方も、否定する書き方も、どちらも根拠を欠くことになります。
そのうえで実際的な話をすると、サプリメントを続けている期間も、HbA1cは1、2か月の平均を映し続けます。確かめる手段は同じで、期間を置いて測り直すことです。市販薬についての疑問は、記事末のよくある質問で別に扱います。

長く高いままだったHbA1cを急に下げるときの注意
この項の注意には、はっきりした適用条件があります。日本糖尿病学会が書いているのは、長期にわたって血糖コントロールが不良であった場合には、急激な血糖値の低下により網膜症や神経障害などの合併症が悪化する場合があるので注意を要する、という内容です。
注意の対象
対象は、長い期間にわたって血糖の状態が良くなかった方です。健診で5.6〜6.4を指摘された段階の方に向けられた注意ではありません。HbA1cを下げること自体が危ないという話ではないので、そう読み替えないでください。
この章の見出しにある「急な減量」は、体重を急に落とす自己流の対策のことです。前の項で見た資料が現体重の5%減という控えめな幅を置いているのは、無理のない範囲で続けることが前提になっているためだと読めます。急いで落とすことと、長く高かった血糖が急に下がることは別の話なので、混ぜずに受け取ってください。
長く数値が高いまま経過している自覚がある方は、自分で下げにいく前に相談する順序になります。どこから受診なのかという線引きは、次の章で扱います。
HbA1cが下がらないまま次の健診を迎えるとき
サプリメントにも急な減量にも頼らずに続けてきて、それでも数字が動かないまま次の健診が近づいた場合の話です。このとき手元に残しておきたいのは、何をどれだけの期間続けたかという記録です。
- 見直しを始めた時期と、続けている内容
- 体重の推移(始めた時点と現在)
- これまでのHbA1cと空腹時血糖の数値
- 貧血を指摘されたことがあるかどうか
記録が残っていれば、次の結果票が出たときに、値が動かなかったのか、それとも取り組みの期間が足りていなかったのかを分けて考えられます。同じ数字でも、記録があるかどうかで読み取れることが変わります。
残し方は難しい形でなくてかまいません。手帳やスマートフォンのメモに、始めた月・続けている内容・体重・結果票の数値を並べておくだけで足ります。書き残していない期間はあとから埋められないので、始める時点で用意しておくのが早道です。
受診に切り替える時点についても、目安は数値の側に置かれています。前の章までに出てきた判定区分がその線で、次の章で改めて整理します。
HbA1cが高いと言われたら病院に行くべき?

この問いへの答えは、気持ちの問題ではなく数値の側に線が引かれています。まず数値の線を確かめます。そのうえで、相談先、次に測るまでの間隔、高い値が続いた場合のリスクの順に見ていきます。
HbA1cで再検査になる数値
数値帯ごとに何をすることになるかは先に整理したので、ここでは角度を変えて、どの資料が何のために線を引いているのかを並べます。同じHbA1cの数字でも、引いた側の目的が違えば意味が変わるためです。
| 線を引いている資料 | HbA1cの線 | その線が置かれている目的 |
|---|---|---|
| 厚生労働省 保健指導判定値 | 5.6% | 保健指導の対象を分ける |
| 厚生労働省 受診勧奨判定値 | 6.5% | 受診を勧める段階を分ける |
| 日本人間ドック・予防医療学会 判定区分 | 6.0%以上(空腹時血糖との組み合わせ) | 要再検査・生活改善にあたる区分を出す |
| 日本糖尿病学会 | 6.5%以上で糖尿病型 | 診断のための再検査に進む |
要になるのは、線が2本立っていることです。5.6%は保健指導のための線、6.5%は受診を勧めるための線で、役割が違います。「基準を超えた=すぐ病院」ではなく、超えたのがどちらの線かで次の行動が決まる形です。6.5%以上の場合は、自分で下げにいく段階ではなく受診する段階として書かれており、ここは資料の書き方がはっきりしています。
結果票に印が付いていても、数値が手元にあれば自分でどの帯にいるかを確かめられます。判定の呼び名も境界線の置き方も資料によって変わりますが、結果票に書かれたHbA1cと空腹時血糖の実数は、どの資料に照らす場合でも出発点になるからです。相談するときも、印の有無ではなく実数を伝えるほうが話が早く進みます。
HbA1cが高いと言われたときの相談先は医療機関や保健センター
相談先として資料が挙げているのは、医療機関(かかりつけ医)と保健センター等です。かかりつけ医がいる方は、まずそこで再検査や次の検査について相談できます。かかりつけ医がいない場合や、受診に踏み切る前に話を聞いておきたい場合には、自治体が案内している保健センター等の窓口が挙げられています。どちらも、結果票を手元に置いたまま相談できる先です。
ここで正直に書いておきたいことがあります。「何科へ行けばよいか」を名指しした一次情報には行き当たりませんでした。この記事で科名を断定しないのはそのためです。健診の結果票に受診先の指定がある場合は、まずその案内が答えになります。指定がない場合は、健診を受けた施設かかかりつけの医療機関に確かめる形になります。
HbA1c 6.5%以上で、定期的に医療機関を受診していない場合はすぐに受診するというのが、厚生労働省の文例に置かれた対応です。6.0〜6.4は検査について相談を勧める段階。5.6〜5.9は生活を見直して次の健診で確かめる段階で、ただし高血圧や脂質異常症・肥満が重なる方には75gOGTTが望ましいとされています。数値と自分の受診状況の両方で決まる、という形になっています。
HbA1cを次に測るまでにあける3〜6か月
この3〜6か月には、適用される場面がはっきり決まっています。日本糖尿病学会が示しているのは、血糖値かHbA1cの一方だけが基準を超えていて、まだ診断がつかない段階を見出したときに、3〜6か月に1回程度の間隔で代謝の状態を評価する、という取り扱いです。
つまりこれは、すべての高い値に共通する待機期間ではありません。とくに6.5以上で糖尿病型とされた場合は、前の章で見たとおり1か月以内をめどにした再検査が先に来ます。3〜6か月待つ話ではないので、そこは分けて受け取ってください。
記事の中盤で出てきた2、3か月とも、意味が違います。並べると次のようになります。
- 2、3か月 — 自分で食事と運動の見直しを続けて、取り組みを評価する単位
- 3〜6か月 — まだ診断がつかない段階の方について、医療機関で経過を見る間隔
どちらも時間の目安ですが、前者は取り組みを評価する単位、後者はまだ診断がつかない段階で状態を見る間隔です。値が動くまでの時間という意味ではそろっておらず、決める主体も違います。
HbA1cが高いまま続くと上がる心臓や血管の病気のリスク
主語を先に置いておくと、上がるのはHbA1cではなく、心臓や血管の病気のリスクのほうです。高い値が続くことの意味は、その先に何が起こりやすくなるかで語られています。
国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは、75gOGTTの2時間値が高いタイプの方について、糖の処理が保たれている方と比べて心血管疾患による死亡が2.2倍だったと紹介しています。何と比べた倍率かがはっきりしている数字なので、この記事ではここまでを引きます。
診断がつく前の段階でも差が出ていると報告されているというのが、この数字の読みどころです。だからこそ資料は、診断の前から生活の見直しや検査を勧める形をとっています。不安を煽るための数字ではなく、いま手をかける理由として置かれた数字だと受け取ってください。
もう1つ、この数字の出どころにも触れておきます。2.2倍という値は75gOGTTの2時間値で分けたときのもので、空腹時血糖やHbA1cの1つの数値だけで出された比較ではありません。この記事が判定区分の話でも組み合わせを繰り返してきたのと、同じ構造がここにも出ています。自分がどの位置にいるのかを知るには、やはり並んだ数値をそろえて見る必要があるということです。
健診でHbA1cを指摘された方への池袋かめさん内科の診療

ここまでは公的な資料と学会の資料の話でした。実際に受診する段になると、どこで何ができるのかが具体的な問題になります。池袋かめさん内科は、健診でHbA1cや血糖値の異常を指摘された方の相談をお受けしています。
先に整理しておきます。当院の健康診断のプランにはHbA1cを検査項目として掲げていません。当院でHbA1cを測るのは、内科診療の中で行う糖尿病のスクリーニングとしてです。健診で指摘を受けた方は、こちらの経路でお受けすることになります。
| 当院で対応していること | 内容 |
|---|---|
| 糖尿病のスクリーニング | 血液検査(HbA1c・空腹時血糖値)で行う |
| 健診異常の再検査・二次検査 | 健康診断の結果で異常を指摘された方が対象 |
| 食事・栄養指導 | 生活改善のサポートとして実施 |
| 豊島区の特定健診 | 区の健診として実施 |
診療の内容は内科・生活習慣病の診療ページに掲載しています。なお、当院に糖尿病を専門とする医師は在籍しておらず、救急科専門医の院長が診療にあたっています。
健診のあとの再検査として当院で行うHbA1cの検査
健診のあとの再検査は、当院で受けていただけます。結果票をお持ちいただければ、指摘された項目と数値を確認したうえで、追加で必要な検査と今後の進め方をご説明いたします。
再検査については、保険診療で受けられる場合がほとんどであることをご案内しています。保険適用の可否は診察の内容や実施する検査によって変わりますので、受診の際にご確認ください。先に触れたとおり、HbA1cだけが糖尿病型だった場合には1か月以内をめどにした再検査が資料で示されていますので、結果票を受け取ってから時間を置きすぎないほうが、数値の意味を読み取りやすくなります。
ご相談のときにお持ちいただきたいのは、結果票そのものです。判定の印だけでなく、HbA1cと空腹時血糖の実数、そして過去の健診の数値まで並んでいると、今回だけの値なのか、何年か続いている傾向なのかを分けて見られます。健診で異常を指摘されたまま放置すると生活習慣病が進むリスクがあることは、当院の診療ページでもご案内しているとおりです。
当院のスクリーニングでHbA1cとあわせて調べる空腹時血糖
当院のスクリーニングは、HbA1cと空腹時血糖値の2つを組み合わせて行います。この2つは判定が組み合わせで決まる関係にあるためです。同じ理由が、当院の検査項目の組み方にも表れているとお考えください。
「健康診断で血糖値が高いと言われた」という段階でご相談いただければ、その2つの値をそろえたうえで次を判断できます。片方だけを測り直しても、判定の全体像は見えにくいままです。
スクリーニングという言葉のとおり、ここで行うのはふるい分けにあたる検査です。この段階で診断を確定させるものではなく、次に何が必要かを決めるための材料をそろえる工程とお考えください。結果によっては、さらに詳しい検査を行ったうえで、必要に応じて専門医をご紹介いたします。のどの渇きやトイレの回数の増加といった心当たりがある方も、あわせてご相談ください。

HbA1cを下げたい方への食事指導
当院は食事・栄養指導を重視しています。ここで行うのは一般論の説明ではなく、その方の生活に合わせた個別の指導です。何をどれだけ減らすか、どこから始めるかは、体格・生活の時間帯・これまでの取り組みによって変わります。
記事の中盤で見たとおり、資料が挙げている取り組みは肥満の有無で分かれ、目指す幅も現体重を基準にした割合で示されていました。自分の場合はどの幅を目指すのかという部分は、数値と体格を見ながら決めるほうが現実的です。
当院は内科診療の全体を通して食事の見直しを重視しており、生活習慣病の治療でも食事療法と運動療法を基本に据えています。続けられる形に落とし込むところまでを一緒に決めるのが、指導の目的です。食事指導や栄養相談だけをご希望の場合の可否も含めて、まずはご相談ください。
HbA1cを下げるときのよくある質問

ここでは、下げにいく前後で出てくる、検査や判定まわりの疑問をまとめました。下げ方そのものについての疑問も1問含んでいます。
HbA1cは何歳から健診で調べますか?
一次情報で言えるのは、特定健診(メタボ健診)の対象が40歳以上74歳以下であるところまでです。特定保健指導で血糖高値と判定される線は、空腹時血糖100mg/dL以上、またはHbA1c(NGSP) 5.6%以上と定められています。一方で、それ以外の健診でHbA1cが何歳から測られるかは、健診の種類と実施する側によって変わるため一律には言えません。ご自身の結果票にHbA1cの欄があるかどうかで確かめてください。
献血でもHbA1cはわかりますか?
資料に書かれているのは、献血で検査されるのはグリコアルブミンだという点です。HbA1cとは反映する期間が違い、グリコアルブミンは過去約2週間の平均血糖値を映します。したがって、献血の結果から健診と同じ形でHbA1cを確かめることはできません。記事の中盤で触れたとおり、この2つは目的に応じて使い分けられる検査です。献血で示された数値を健診の判定区分に当てはめて読むと、見ている期間がずれたまま比べることになります。数値の推移を追いたい場合は、同じ検査どうしで並べてください。

HbA1cのNGSP値とJDS値は何が違いますか?
表記の方式が違います。HbA1cは平成25年度からNGSP値で表記されており、以前使われていたJDS値との間には `NGSP値(%) = 1.02 × JDS値(%) + 0.25%` という換算式が示されています。いまの結果票に並んでいるのはNGSP値なので、日常的に意識する場面はほとんどありません。ただし、古い記録と見比べるときには方式の違いが効いてきます。手元に何年も前の数値がある場合は、同じ物差しかどうかを確かめてから比べてください。
HbA1cが高いと自覚症状は出ますか?
診断がつく前の段階では、症状が現れないとされています。血糖が高い状態で現れる症状として資料が挙げているのは、のどの渇き・水分をよくとる・尿の量が増える・体重が減るといったもので、これらは進んだ段階の話です。2型糖尿病そのものについても、多くの場合は無症状か、症状があっても軽いと説明されています。症状がないことは、数値を放っておいてよい理由にはなりません。初期には自覚症状が乏しいことがあるため、体調の変化より先に健診の数値から気づく場合があります。体調に変わりがないという理由で結果票を伏せてしまうと、早い段階の手がかりを見送ることになります。

HbA1cを下げる市販薬はありますか?
HbA1cを下げる市販薬を示した一次情報には行き当たりませんでした。資料が治療として挙げているのは食事療法・運動療法と、それで足りない場合の薬物療法で、いずれも医療機関で判断されるものとして書かれています。前の章で扱ったサプリメントとは別の話ですが、確認できなかったという点は同じです。市販のもので数値を動かそうとするより、判定区分に応じた検査や相談に進むほうが確かです。なお、すでに処方されている薬がある方が、その扱いを自己判断で変えることは別の問題になります。服薬中の方は処方元にご確認ください。
HbA1cはストレスや睡眠不足でも上がりますか?
ストレスや睡眠不足がHbA1cを上げると示した一次情報は、今回の調査では確認できませんでした。そのため、この記事では影響の有無を断定しません。生活習慣のうち資料に記述があったのは喫煙で、厚生労働省の文例集は喫煙すると血糖値が上昇し、糖尿病に約1.4倍かかりやすくなると示しています。記事の前半で扱った上がりやすさの要因にも、喫煙は数字つきで並んでいました。

糖尿病予備軍と言われたあとのHbA1cはどうなりますか?
先に例外を書いておきます。HbA1cだけが6.5%以上だった場合は、まず1か月以内をめどに血糖の検査を含む再検査へ進みます。3〜6か月というのは、血糖値かHbA1cの一方だけが基準を超えていて、まだ診断がつかない段階で経過を見る場合の目安です。その段階では、3〜6か月に1回程度の間隔で状態を評価し、生活習慣の見直しを続けるという取り扱いが示されています。あわせて、食事・運動療法や減量をきちんと行った方は、行わなかった方と比べて2型糖尿病の発症を29〜67%程度予防できたと各国の介入研究が報告しています。これは介入研究の集団で示された割合であり、個人のHbA1cがどこまで下がるかを保証する数字ではありません。
HbA1cはどこで測れますか?
HbA1cは、医療機関の血液検査で測れます。健診で測られるかどうかは健診の種類によって変わり、結果票にHbA1cの欄があれば、その健診では測られています。欄が見当たらない場合は、その健診の項目に含まれていなかったと考えてください。市販の検査キットや薬局での測定について、公的な資料の中に位置づけを示した記述は確認できませんでした。当院での扱いは前の章に書いたとおりで、健康診断のプランではなく内科診療のスクリーニングとして測っています。
結果票のHbA1cを見たときにすることは、数値の帯によって次のように分かれます。
| 結果票のHbA1c | 資料が示している次にすること |
|---|---|
| 5.5%以下 | 異常なしとされる範囲。肥満がある場合は減量が勧められる |
| 5.6〜5.9% | 食事の改善や運動に取り組み、来年度の健診で確認する。条件が重なる方は75gOGTTが望ましい |
| 6.0〜6.4% | 75gOGTTがすすめられる。検査について相談を勧める段階 |
| 6.5%以上 | 糖尿病型。定期的な受診がなければすぐに受診し、血糖の検査を含む再検査へ |
手順にすると、①結果票のHbA1cと空腹時血糖をそろえる ②どの帯にいるかを確かめる ③その帯に置かれた行動を選ぶの3段階になります。判定はHbA1c単独では決まらないので、①を飛ばすと②の答えがずれます。分かれ目は5.6・6.0・6.5に置かれています。
③にあたる取り組みは、2、3か月続けたうえで次の値を見る形です。方法は飲み物と運動という共通の2つから入り、そこから先は肥満があるかどうかで分かれます。貧血や肝硬変・透析がある場合は数値が実態とずれることもあるため、その場合は下げにいく前に確かめる順序になります。
数字を短い期間で動かそうとするより、どの帯にいるかを確かめて、その帯に置かれた行動を選ぶほうが遠回りになりません。結果票は、次の検査や相談の内容を決めるための大事な材料です。手元に置いたまま、次の一歩をご相談ください。
健診でHbA1cを指摘された方は池袋かめさん内科へ
池袋かめさん内科では、血液検査(HbA1c・空腹時血糖値)による糖尿病のスクリーニングと、健康診断で異常を指摘された方の再検査・二次検査を行っています。食事指導を重視した生活改善のサポートにも対応しております。診療時間は9:00〜12:30と14:00〜18:00で、月曜と日祝は休診、土曜は午前のみです。東京メトロ副都心線「雑司が谷駅」から徒歩2分、JR「目白駅」から徒歩10分の場所にあります。

