チェック待ち

健康診断の前日の食事と飲酒は何時間前まで?

明日が健康診断という日の夜に、夕食を何時までに済ませればよいのか、誘われたお酒を断るべきなのかで迷う方は少なくありません。前日の過ごし方については「◯時間前まで」という数字が数多く出回っています。ただ、出典が示されていない数字や、国の文書に記載のない数字も少なくありません。

健康診断の前日で押さえる2点

食事 — 国の文書は「特定健康診査前10時間以上は、水以外の飲食物を摂取しないこと」と定めています。健診の開始時刻から10時間さかのぼって、食べ終える時刻を逆算する形です。
飲酒「何時間前まで」という時間数の基準は国の文書に書かれておらず、示されているのは「前日は控えること」という日単位の指示だけです。

参考:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」別紙4

食事には時間数があり、飲酒にはありません。この差は資料の探し方が足りないために生じているのではなく、国の文書がもともと異なる粒度で示しているためです。ここでの整理は制度上の一般論であり、実際の指示は受診先の案内を優先してください。この記事では、前日の食事とお酒、やってしまった後の対応、当日の服装と受け方、結果が届いて再検査になったときの進み方までを、法令と学会の資料に沿って順に整理します。

目次

健康診断で何を調べる?前日の過ごし方が結果に出る検査項目

健康診断で何を調べる?前日の過ごし方が結果に出る検査項目

前日の行動が結果に出るかどうかは、その日に受ける検査の中身で決まります。まずは健康診断という言葉が指している範囲から確かめておきます。

健康診断の種類と目的

一口に健康診断といっても、根拠になる制度はいくつかに分かれています。

  • 定期健康診断 — 労働安全衛生規則にもとづき、事業者が労働者に対して1年以内ごとに1回行う健診
  • 特定健康診査 — 生活習慣病の予防を目的として医療保険者が行う健診
  • 市区町村が案内する健診 — 国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者などを対象に、自治体が受診券を送って実施する健診
  • 人間ドック — 上記のような制度の枠組みとは別に、受診者が任意で受ける検査

厚生労働省の告示第242号は、健康診査の目的を疾病を早期に発見して早期治療につなげること、結果を踏まえた保健指導等により発症と重症化を予防することだと示しています。数値を1年ごとに残して変化を追うこと自体にも意味がある、という建て付けです。職域の定期健康診断では、受けた結果を事業者が記録として残し、本人にも通知します。この通知の決まりは記事の後半で扱います。

労働安全衛生規則が定めている定期健康診断の11項目

定期健康診断で行う項目は、労働安全衛生規則第44条に列挙されています。各項目の中身は第43条で定義されており、条文をそのまま並べると次のようになります。

項目 条文で定められている内容
既往歴及び業務歴の調査 これまでの病歴と従事してきた業務の確認
自覚症状及び他覚症状の有無の検査 本人が感じている症状と診察で得られる所見の確認
身長・体重・腹囲・視力及び聴力の検査 聴力は1000ヘルツと4000ヘルツの音に係る聴力
胸部エックス線検査及び喀痰検査 雇入時の健診は胸部エックス線検査のみで喀痰検査を含まない
血圧の測定 条文は項目名のみ
貧血検査 血色素量及び赤血球数の検査
肝機能検査 GOT・GPT・γ-GTPの検査
血中脂質検査 LDLコレステロール・HDLコレステロール・血清トリグリセライドの量の検査
血糖検査 条文は項目名のみ
尿検査 尿中の糖及び蛋白の有無の検査
心電図検査 条文は項目名のみ

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第43条・第44条

同じ条文の第2項には、身長や胸部エックス線検査など一部の項目について厚生労働大臣が定める基準にもとづき、医師が必要でないと認めるときは省略することができるとあります。つまり11項目がそろって実施されるとは限りません。ここに挙げた11項目はあくまで職域の定期健康診断のものであり、受ける健診の項目は受診先と健診の種類によって変わります。自営業の方や退職後の方が市区町村から案内される健診では、内容が別の枠組みで決まります。

健康診断の尿検査でわかるのは糖と蛋白

法令が定めている尿検査の中身は、はっきりしています。労働安全衛生規則第43条第10号は尿検査を尿中の糖及び蛋白の有無の検査と定義しており、特定健康診査でも項目は「尿検査(尿糖、尿蛋白)」です。つまり、法令が必須としている範囲は糖と蛋白の2つです。

制度 尿検査として定められている内容
労働安全衛生規則の定期健康診断 尿中の糖及び蛋白の有無の検査
特定健康診査 尿検査(尿糖、尿蛋白)

ここで注意したいのは、尿潜血が法定の項目にも特定健康診査の項目にも入っていないことです。尿潜血が結果票にある方も多いはずですが、それは制度で決まっている項目ではなく、受診先が独自に組んでいる検査だと考えられます。企業健診や入社時健診など自費で受ける健診では、尿検査に潜血まで含まれることがあります。

したがって「健診の尿検査は糖と蛋白だけ」という言い方は、法令上の範囲としては正しく、実際に受ける健診の中身としては足りません。健診の種類と受診先によって検査項目は変わるという前提で、手元の案内や結果票を見るほうが確かです。

結果票の項目が法令の定める項目と受診先が加えている項目に分かれることを示した図

健康診断の血液検査でみる肝機能や血糖

血液から調べる項目は、条文の上では貧血検査・肝機能検査・血中脂質検査・血糖検査の4つに分かれます。肝機能検査はGOT・GPT・γ-GTPの3つ、血中脂質検査はLDLコレステロール・HDLコレステロール・血清トリグリセライドの3つと、条文が中身まで指定しています。

貧血検査についても条文の指定は血色素量及び赤血球数の検査であって、白血球数は含まれていません。結果票に白血球数が並んでいる場合、それは受診先が加えている項目です。白血球数が高めと言われたときの読み方は白血球が多いと指摘されたときの記事で扱っています。

血糖については、厚生労働省の資料が空腹時血糖とHbA1cの両方を実施することが望ましいとしています。理由も書かれていて、絶食での受診を事前に通知していても食事を摂って来る方があり、空腹時の採血が行えないことがあるためです。HbA1cは過去1〜2か月の血糖値を反映した指標なので、当日の食事の有無に左右されにくい性質があります。

腎機能を示す血清クレアチニンは、特定健康診査では基本の項目ではなく、医師が必要と判断した場合に選ぶ詳細な健診の項目に位置づけられています。この値の読み方はクレアチニンが高いと言われたときの記事にまとめています。

血液から調べる項目が四つの区分に分かれることを示した帯

健康診断の胸部X線(レントゲン)は何のために撮るのか

条文は「胸部エックス線検査及び喀痰検査」と2つを組にしており、この組み合わせ方が撮影の目的を示しています。厚生労働省の資料には、胸部エックス線検査により病変及び結核発病のおそれがないと判断された者について医師が必要でないと認めるときは省略できる、という注記があります。逆に病変が見つかった方や結核発病のおそれがあると診断されている方に対しては、胸部エックス線検査と喀痰検査を行い、さらに必要に応じて聴診や打診などの検査を行うとされています。

つまり定期健康診断の胸部X線は、肺の病変と結核の発見を出発点に組み立てられた検査だと読めます。ただし国の文書に書かれているのは実施の条件と省略の基準であって、「胸部X線で何がわかるか」を説明した文ではありません。撮影で見えるものの範囲については、受診先の説明で確かめてください。

なお、胸部X線は労働安全衛生法にもとづく定期健康診断の項目であり、特定健康診査の項目には含まれていません。同じ「健診」でも制度が違えば撮影の有無が変わります。

前日の食事で動く検査項目と長い期間をならして見る項目を対比した図

健康診断の前日の食事が影響する検査

11項目のうち、前日から当日にかけての食事の影響を受けるのは血液検査の一部です。なお、ここから示す絶食の条件と判定の方法は、特定健康診査について国の文書が示しているものです。厚生労働省の資料は空腹時血糖と空腹時中性脂肪等の検査結果に影響を及ぼすと明記したうえで、午前に実施する場合は健診前10時間以上、水以外の飲食物をとらないよう通知することを求めています。

食事の影響は、数値が動くという形だけで現れるわけではありません。同じ資料には、判定の枠組みそのものが切り替わる仕組みが書かれています。

状況 判定の扱い
絶食10時間以上で採血した場合 空腹時血糖・空腹時中性脂肪として評価する
食事開始から3.5時間以上・絶食10時間未満で採血した場合 随時血糖・随時中性脂肪として評価する
食後に採血した場合や中性脂肪が400mg/dl以上の場合 LDLコレステロールに代えてNon-HDLコレステロールで評価できる

中性脂肪の受診勧奨判定値も、空腹時は150mg/dl、やむを得ない場合の随時では175mg/dlと別に置かれています。食べてから受けると検査ができなくなるのではなく、どの基準で読むかが変わるという設計です。

一方で、HbA1cのように長い期間をならして見る項目は、前日1回の食事で動くものではありません。前日の過ごし方が効いてくる項目と効いてこない項目があると分けて考えると、次の章で扱う絶食の時間の意味がつかみやすくなります。

健康診断の前日から当日の食事はどこまで控えるか

健康診断の前日から当日の食事はどこまで控えるか

食事についての指示は、国の文書に時間の形で書かれています。ただしその文書は特定健康診査を受ける方への事前の通知として書かれたもので、職域の定期健康診断について同じ文言が定められているわけではありません。国が受診前の注意を明文化しているのは特定健康診査についてで、職域の健診でも同様の案内が行われています。以下はその前提で読んでください。

健康診断の前日の食事の内容に国の指定はない

夕食に何を食べるか、納豆やヨーグルトはどうか、コンビニで買ったものやラーメンは避けるべきか。こうした疑問は多く検索されていますが、厚生労働省の文書に書かれているのは時間の条件だけで、食事の内容についての指定はありません。「消化のよいものを」「揚げ物を控える」といった記述も見当たりません。そこでこの記事では、個別の食品について食べてよい・避けるべきという判断を示さずにおきます。内容ではなく、いつ食べ終えるかが国の示している条件です。

健康診断の前に食事を控えるのはなぜか

理由は文書の中に書かれています。午前に健診を実施する場合の項には、空腹時血糖、空腹時中性脂肪等の検査結果に影響を及ぼすためと、絶食を求める理由が添えられています。血糖と中性脂肪は食事のあとに動く値なので、いつ食べたかがわからないままでは、その数値が何を意味するのかを読み取れなくなるという考え方です。

同じ資料には空腹時とは絶食10時間以上、食直後とは食事開始時から3.5時間未満とするという定義も置かれています。空腹時という言葉が感覚ではなく時間で決められているのは、全国どこで受けても同じ条件で採血し、同じ基準で判定するためだと考えられます。

そのため「少しだけなら大丈夫か」という問いは、量ではなく時間の問題として扱われます。文書が線を引いているのは口にした量ではなく、最後に食べてから健診までに何時間あいたかのほうだからです。条件を外れたときにどう読み替えるかは前の章の表に示したとおりで、数値が消えるのではなく判定の枠組みが差し替わります。

健康診断の絶食は何時間前からか

国の文書の文言は特定健康診査前10時間以上は、水以外の飲食物を摂取しないことです。ここで基準になっているのは前日の何時という時刻ではなく、健診までに10時間以上あけるという条件です。国の文書は、健診の開始時刻・集合時刻・採血の時刻のどれを起点にするかまでは定めていません。同じ9時開始でも、受付が早ければ採血の時刻も早くなります。そのため、受診票や案内で指定された基準時刻から逆算するのが原則になります。

参考:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」別紙4

午前に受ける場合の目安を、開始時刻から機械的に逆算すると次のようになります。

健診の開始時刻 10時間前を逆算した食べ終わりの目安
8:00 前日の22:00
9:00 前日の23:00
10:00 前日の24:00
11:00 当日の1:00

※国の文書に書かれているのは「前10時間以上」という条件のみで、起点となる時刻の指定はありません。この表は健診の開始時刻を基準にした計算例です。実際は受診票や案内に指定された基準時刻から逆算してください。

よく見かける「前日の21時まで」という言い方は、この計算のうち早い時刻を丸めたものだと考えられます。時刻を暗記するより、受診票や案内に書かれた基準時刻から10時間を逆算するほうが確かです。当院で受ける場合の食事と服薬の指示は健康診断のページに掲載しています。

健康診断の朝ごはんは午前受診と午後受診でどう変わるのか

午後に受ける場合の指示は、午前とは別に書かれています。厚生労働省の資料は、午後に実施する場合はHbA1c検査を行う場合も軽めの朝食とするとしています。そのうえで、他の検査結果への影響を軽減するため、健診まで水以外の飲食物を摂取しないことが望ましい、としています。

受診の時間帯 国の文書に示されている内容
午前に受ける場合 健診前10時間以上は水以外の飲食物を摂取しない
午後に受ける場合 軽めの朝食とし、健診まで水以外の飲食物を摂取しないことが望ましい
やむを得ず空腹時以外に採血する場合 食後3.5時間以降に採血を行う

午後の受診で朝食を抜くよう案内されるか、軽めにとるよう案内されるかは受診先によって分かれます。国の文書は軽めの朝食としていますが、受診先が独自に「昼食を抜いてお越しください」と案内している場合は、その案内が実際の条件になります。迷ったときは受診票や案内文に書かれている指示を優先してください

午前と午後で指示が変わる理由

午前の健診は前日の夕食から10時間以上あけて採血する形になりますが、午後の健診で同じ条件を求めると朝から絶食が長くなります。国の文書が午後について軽めの朝食としているのは、そのうえで採血までの時間を確保するという組み立てです。

健康診断の当日に水は飲んでいい?お茶や飴・ガムなどの扱い

国の文書の文言は「水以外の飲食物を摂取しないこと」です。水は控える対象として書かれていません。この点は誤解されやすく、水も飲んではいけないと考えて脱水気味のまま受診する方もいますが、少なくとも国の文書はそのようには定めていません。

口にするもの 国の文書での扱い
「水以外の飲食物」を控えるとされており、控える対象として書かれていない
お茶やコーヒーなどの飲み物 水以外の飲み物にあたる
飴やガム 名指しの記載はない。受診先の案内で控えるよう示されることがある

お茶やコーヒーは水そのものではないため、文言に沿えば控える側に入ります。飴やガムは、国の文書に名前が出てきません。当院では、水分は摂っていただいて構わないこと、喫煙や飴・ガムはお控えいただくことをご案内しています。当院で受ける場合の具体的な条件は健康診断のページでご確認ください。文書に書かれていないことは、受診先の案内で埋まる形になります。

健康診断の前日のお酒と運動を控える理由

健康診断の前日のお酒と運動を控える理由

タイトルでは飲酒と書きましたが、以下では日常語に近い「お酒」も併せて使います。国の文書では、お酒と運動が1つの文の中に並べて示されている点も先に押さえておきたいところです。文言はアルコールの摂取や激しい運動は、特定健康診査の前日は控えることというもので、飲酒と激しい運動が同じ扱いで並んでいます。

この章の範囲
扱うのは、国が前日に控えるよう示しているという事実と、飲酒や運動が検査値に影響しうることの2点です。国が「なぜ控えるのか」を説明した文書があるわけではありません。理由として説明できる範囲は、検査値への影響を示した学会の資料までにとどまります。

見出しに「理由」とある章でこう書くのは物足りなく見えるかもしれませんが、この記事では出典のない理由づけを足さない方針をとります。食事については前の章で見たとおり「検査結果に影響を及ぼすため」という理由が文書に添えられていました。お酒と運動の項には、その一文がありません。

健康診断の前日の飲酒に何時間前という基準はあるのか

結論から書くと、時間数の基準はありません。国の文書に示されているのは「前日は控えること」という日単位の指示だけで、「12時間前まで」「24時間前まで」といった数値はどこにも書かれていません。食事の側に「前10時間以上」という時間があるのと対照的です。

食事の側が時間で書かれているからといって、お酒の側も時間に直せるわけではありません。そのため「◯時間前ならよい」と時間に換算した目安をこの記事では示しません。「前日は控える」という日単位の指示を、時間数に置き換えずに受け取るのが、文書に沿った読み方です。

もう1つ、書かれていないことがあります。飲酒がγ-GTや中性脂肪、尿酸といった項目をどれだけ動かすのか、という項目別の説明は国の健診文書にありません。同じ資料にはγ-GTの判定値や飲酒量を尋ねる質問票が載っていますが、それらは日頃の飲酒習慣を評価するためのもので、前日1回の飲酒が検査値をどう動かすかを示したものではありません。混同して読まないよう注意が必要です。

実際にどこまで控えるかは、受診先が案内している条件で決まります。当院で受ける場合の指示は健康診断のページにまとめています。

食事は時間で示されお酒と激しい運動は日単位で示されていることを対比した図

健康診断の前日に筋トレをすると検査の数値は動くのか

運動についても、国の指示は飲酒と同じ「前日は控えること」で、しかも対象は激しい運動と限定されています。日常的な歩行や軽い体操まで控えるようにとは書かれていません。

検査値との関係については、学会の資料に記述があります。日本臨床検査専門医会は、激しい運動や筋肉注射後、脱水などでも血中CKは上昇しますと説明しています。CKはクレアチンキナーゼという酵素で、筋肉が壊れると血液中に出てくる性質があります。同じ資料は、激しい運動や筋肉注射でも血中CKは著しく高値を示すことがある、と書いています。そのため、運動歴の確認や他の検査所見と併せた判断が必要になります。また、運動や筋肉注射によって血中CKが上昇しているときには、安静にしていれば回復しますとも書かれています。

参考:日本臨床検査専門医会「CK(クレアチンキナーゼ)」ラボ No.546

ここで押さえておきたいのは、回復までの日数がこの資料に書かれていないことです。「24時間でピーク」「3〜4日で戻る」といった数値をよく見かけますが、今回参照した学会の資料には書かれていません。同じ理由で、運動が何日前から影響するかという日数もこの記事では示しません

もう1点、CKは労働安全衛生規則の法定項目にも特定健康診査の項目にも入っていません。前日の筋トレを気にする方が多いのは事実ですが、そもそもCKを測らない健診も多いということです。尿蛋白やクレアチニンなど他の項目への影響については、今回参照できた一次資料の中に記述がなかったため、個別の項目名を挙げた説明は控えます。

健康診断の前日のタバコはどう考えるか

前日の喫煙についても検索は多いのですが、前日にたばこを控えるべきだとする根拠は、公的機関や学会の資料の中に見つけられませんでした。国の文書が前日について挙げているのはアルコールと激しい運動の2つだけです。

書ける範囲は2つあります。1つは血圧の測定条件で、日本高血圧学会と日本高血圧協会の一般向け冊子は、家庭で血圧を測るときの条件として測定の前はたばこを吸わない、飲酒しない、カフェインを摂らないことを挙げています。もう1つは白血球数との関係で、日本人間ドック学会誌に掲載された2022年の論文が、喫煙は白血球数と血小板数を有意に増加させると報告しています。ただしこの論文が扱っているのは1日◯本という習慣的な喫煙量であって、当日1本吸ったときの変化ではありません。当日の喫煙については記事末のよくある質問で改めて扱います。

健康診断の前日の悪あがきに効果は?

健康診断の前日の悪あがきに効果は?

前日にできることはないか、という関心は自然なものです。ただし前の章までで見たとおり、国の文書が前日について定めているのは食事の時間とお酒・激しい運動の3点だけで、数値を良くするための行動は示されていません。ここでは検索されることの多い3つについて、資料に書かれていることと書かれていないことを分けて整理します。

健康診断の前日に水を大量に飲むとどうなるか

水そのものが制限されていないことは、前の章で見た「水以外の飲食物を摂取しないこと」という文言から読み取れます。ここで問われているのは、その水を大量に飲むことで結果が変わるのかどうかのほうです。

この点については、水を多く飲むと尿が薄まって検査に影響する、尿比重が下がる、といった説明の裏づけを、公的機関や学会の資料の中に見つけられませんでした。尿比重はそもそも労働安全衛生規則の法定項目にも特定健康診査の項目にも入っていません。測る対象として制度に置かれていない値を動かそうとする話、という形になっています。この記事では、水を多く飲むことで数値が良くなる・悪くなるという方向の断定はしません。

言えるのは、水は制限されていないという1点と、水で数値を動かせるという根拠は示されていないという1点です。制限がないことと、効果があることは別の話です。

健康診断の当日も水は制限されていないことを示した帯

健康診断の前日に体重を減らす意味はある?

身長と体重の測定方法について、労働安全衛生規則は項目名を挙げるだけで、測定の手順を定めていません。腹囲については厚生労働省の資料が立位、軽呼気時において、臍の高さで測定することと方法を定めています。立位とは立った姿勢、軽呼気時とは軽く息を吐いた状態のことです。定められているのは測り方の側であって、当日までに数値をどう動かすかではありません。

前日に食事を抜いたり水分を減らしたりして体重を落とす、という発想については、資料の側に評価がありません。前日1日の体重の増減が健診の判定にどう効くかを示した公的な資料は確認できませんでした。腹囲の測定が内臓脂肪の蓄積を見るためのものである以上、前日の増減で本来の意味が変わるとは考えにくい、という程度の推測に留まります。

むしろ国の文書が前日に求めているのは、体重を動かすことではなく採血の条件を整えることです。体重や腹囲は測ったその場の値がそのまま記録に残るのに対し、血液の項目は前日からの絶食の条件しだいで読み方まで変わります。手をかける先としてどちらが効いてくるかは、この違いから決まります。

身長と体重は測り方だけが決まっていることを示した帯

健康診断の1週間前からなら間に合うのか

1週間前から生活を整えれば数値が変わるか、という問いにも、公的な資料は答えを持っていません。国の文書が受診前の注意として明文化しているのは前日と当日のことだけで、1週間前や1か月前についての記述はありません。

ただし、検査項目の性質から言えることはあります。前の章で触れたHbA1cは1〜2か月分の血糖値をならした指標なので、直前の数日の過ごし方でその値が動くとは考えにくい項目です。反対に空腹時血糖や中性脂肪は当日の絶食条件に左右されます。同じ結果票の中に、直前の行動が効く項目と効かない項目が混ざっているという構造です。大事なのは「1週間」という区切りではなく、検査項目ごとに反映される期間が違うことです。

前日にできることとできないこと

特定健康診査について国の文書が求めているのは、10時間以上の絶食・飲酒を控えること・激しい運動を控えることの3つです。
一方で、水を大量に飲む・体重を落とす・直前の数日で数値を整えるといった行動を裏づける公的な資料は見当たりませんでした。前日の準備は数値を良く見せるためではなく、正しく読める条件を整えるためのものだと考えるほうが実際に近いはずです。

健康診断の前に食べたものやお酒が心配になったら

健康診断の前に食べたものやお酒が心配になったら

うっかり食べてしまった、飲んでしまったという場面での対処は、一般的な案内としては共通しています。食べた時刻と内容、飲んだ時刻を受付や問診で申し出て、その先の判断は受診先に委ねるという流れです。自己判断で黙って受けると、結果を読む側が条件を把握できなくなります。

伝えること
受付や問診で申し出る内容は難しいものではなく、いつ・何を口にしたかがわかれば足ります。

  • 最後に食べた時刻と、その内容
  • 最後にお酒を飲んだ時刻
  • 当日の朝に口にしたもの(飲み物を含む)

これは当院の指示ではなく、一般的な案内として書いています。受診先によっては当日の検査を一部見送る、日を改める、といった判断になることもあります。どの判断になるかを決めるのは受診先なので、まずは事実を伝えるところまでが受ける側の役割です。

健康診断の当日に朝ごはんを食べちゃったらどうなる?

食べてしまった場合でも、採血ができなくなるわけではありません。特定健康診査についての厚生労働省の資料にはやむを得ず空腹時以外に採血を行う場合には、食後3.5時間以降に採血を行うことという手順が定められています。空腹時の条件を満たせない場合の進め方が、あらかじめ用意されているということです。ただし、これは特定健康診査の手順であり、当日に採血するか日を改めるかを決めるのは受診先です。

このとき変わるのは判定の枠組みです。随時の判定に切り替えて評価する場合には、血糖は随時血糖、中性脂肪は随時中性脂肪として扱われ、受診勧奨判定値も空腹時の150mg/dlではなく175mg/dlが使われます。また食後の採血ではLDLコレステロールに代えてNon-HDLコレステロールで評価できるとされています。数値が無効になるのではなく、読み方が切り替わるという整理です。

ただし、この切り替えが行われるためには、食べた時刻が伝わっている必要があります。受付で申し出るのが大切なのはそのためです。

食べてしまったときに時刻と内容を伝えると判定の枠組みが切り替わる流れを示した図

健康診断の前日にラーメンを食べてしまったときの影響

前の章で触れたとおり、国の文書には食事の内容についての指定がありません。ラーメンを食べたことがどの検査値をどう動かすかを示した公的な資料にも、行き当たりませんでした。そのため、この記事では特定の食品を名指しして良い・悪いという評価はしません。

条件として書かれているのは時間だけです。前日の夕食にラーメンを食べたとしても、健診の開始時刻から10時間以上あいていれば、文書が求めている条件そのものは満たしています。逆に、消化のよいものを選んでいても、食べ終えた時刻が10時間前を切っていれば条件から外れます。気にするべきなのは内容より時刻という順序です。

時刻がはっきりしないときは、思い出せる範囲を伝えれば足ります。分単位で正確でなくても、10時間の前か後かが伝われば、結果を読む側は判定の枠組みを選べます。

健康診断の前日にお酒を飲んでしまったらどうなるのか

国の文書が示しているのは「前日は控えること」までで、控えられなかった場合にどうなるかを説明した記述はありません。飲んだ量や時刻に応じて検査値がどう動くかという説明も、同じく資料の側にありません。そのため、この記事では「γ-GTが◯割上がる」といった数値の提示を控えます。

書けるのは、前日に飲んだという事実を伝えておくことに意味がある、という点です。数値の背景を読む側が知っているかどうかで、結果の扱いが変わる可能性があります。前日の飲酒を申し出たうえで受けるか、日を改めるかは受診先の判断になります。

なお、水を口にすること自体は制限されていません。ただし前の章で見たとおり、水を多く飲めば数値が整うという裏づけがあるわけでもありません。喉の渇きを満たすための水と、結果を動かすための水は、別の話として分けておく必要があります。

健康診断の服装は何を着て何を外すのか

健康診断の服装は何を着て何を外すのか

服装については、検査ごとに答えが違います。心電図には学会がまとめた手技書があり、着るものと外すものが具体的に書かれています。一方で胸部X線については、学会の技術文書に服装の記述を見つけられませんでした。ここでは根拠のある検査から順に整理していきます。

健康診断の心電図で胸元をめくりやすい服

日本不整脈心電学会の臨床検査技師部会がまとめた手技書には、検査を受ける側の着衣について次のように書かれています。上半身の衣服は着たままで、服を捲り胸部を露出し、手首、足首も露出するというものです。全部脱ぐ形ではありません。

参考:日本不整脈心電学会「12誘導心電図検査手技—臨床検査技師部会のメソッド—」

同じ手技書の巻末には、心電図専門士340名を対象にした調査が載っています。上半身をどのような状態で検査しているかという問いに対し、服を着たまま捲って胸部を露出しているという回答が202名で、上半身を全て脱いで検査しているという回答は20名でした。実態としても、脱がずに捲る方法が中心だとわかります。体調や室温によっては胸にタオルをかけるなどの配慮が必要だとも書かれています。

こうした手順になるのは、電極を胸に貼る位置が細かく決まっているためです。手技書は電極を正しい位置に装着することが重要であり、装着位置が間違っている場合その心電図記録は診断に用いることが出来ない、と述べています。

先に結論を書くと、胸元と手首・足首を出せる服であれば、この手順に沿いやすくなります。電極を貼る位置は次のように決められています。

電極 装着位置
V1 第4肋間胸骨右縁
V2 第4肋間胸骨左縁
V3 V2とV4の中点
V4 第5肋間と左鎖骨中線の交点
V5 V4と同じ高さで左前腋窩線上
V6 V4と同じ高さで左中腋窩線上

胸の6か所に加えて、四肢誘導の電極を手首と足首に留めます。ここから服の選び方が導けます。上下が分かれていて、胸元をめくり上げられる服であれば、この手順に沿いやすくなります。ワンピースやボディスーツのように上下がつながった衣類だと、胸を出すために全体を脱ぐことになります。当院で受ける場合の服装の案内は健康診断のページに掲載しています。

健康診断で女性が着るブラトップは大丈夫なのか

この点について、はっきりした答えを出せる一次資料は限られています。ワイヤーやホックが胸部X線に白く写る、という説明は広く見かけますが、それを明示した学会や公的機関の記述を見つけることはできませんでした

見つかった資料の中でこれに近いのは、日本人間ドック学会誌に掲載された2010年の原著論文です。健診用のブラを導入した検討で、健診ブラ使用によりアンダー部分に若干の歪みが生じることから、乳房の大きさ・体型によっては読影に影響するケースもあったと報告されています。ここで使われているのは金具のない健診用のブラで、市販のブラトップとは対象が異なります。論文自身の結論も、読影への影響はほとんどなかったというものでした。

参考:日本人間ドック学会誌「男女混合健診における女性受診者の受診環境改善への取り組み」人間ドック25(3)

つまり資料から言えるのは、金具のない健診用のブラで一部に歪みがみられたと報告されているという一点にとどまります。論文全体の結論は読影への影響はほとんどなかったというもので、市販のブラトップや一般の衣類にまで広げられる内容ではありません。金具が写る・写らないという断定はできません。加えて、心電図の側では前の項で見たとおり胸を出す必要があるため、着脱に手間がかかる衣類は別の理由で不向きになります。

実際に何を着ていけばよいかは、受診先から届いた案内が答えになります。当院では、金属やプラスチックの付いていないブラトップであれば検査がスムーズであることを健康診断のページでご案内しています。

上下が分かれた服と上下がつながった衣類の違いを示した図

健康診断でストッキングは脱ぐよう言われるのか

心電図の手技書に、この点の記述があります。足首の露出について、ズボンの場合は捲り上げて靴下を下げるだけでよいが、パンティーストッキングは脱ぐよう依頼すると書かれています。四肢誘導の電極を足首に留める必要があるためと思われますが、理由そのものは手技書に書かれていません。

あわせて押さえておきたいのは、靴下の扱いです。同じ調査では、靴下は履いたまま足首を出して検査しているという回答が320名で、靴下を脱いで検査しているという回答は6名でした。靴下まで脱ぐ必要があるとは書かれていない、というのが資料の内容です。

ストッキングやタイツを履いていく場合は、脱ぐ場面が出てくると考えておくほうが無難です。ただし手技書に出てくる語はパンティーストッキングで、タイツという語はありません。素材や厚みによる区別が資料の側にないため、実際の扱いは受診先の案内で確かめてください。

健康診断のアクセサリーは外さないといけないのか

ここは検査によって答えが正反対になります。一律に全部外すという説明は、学会の資料と食い違います。

心電図については、手技書にネックレスやブレスレット、時計、ミサンガなどは、紛失や忘れ物の対応に苦慮する場合があるため、電極が触れなければ無理に外す必要はないと書かれています。調査でも、貴金属は全て付けたままで検査しているという回答が249名で、全身の貴金属を全て外して検査しているという回答は5名にとどまりました。

一方、X線撮影については、公的医療機関が撮影の妨げになる物を具体的に挙げています。

健康診断のレントゲンで妨げになるとされている物

国立国際医療研究センター病院の放射線診断部は、撮影範囲内に不要なものがあると診断の妨げになるとしたうえで、次の物を例として挙げています。

  • ボタン・厚手のプリントなどの衣類・ブラジャーなどの下着
  • ネックレス・ピアス・指輪・腕時計・眼鏡・入れ歯
  • ズボンのベルト・ファスナー・靴下
  • カイロ・エレキバン・湿布・コルセット

参考:国立国際医療研究センター病院 放射線診断部「X線撮影」

同じページには、これらの物が撮影範囲に含まれる際には外していただくことになると書かれています。裏を返せば、撮影範囲に入らない物まで一律に外すという書き方ではありません。状況によっては検査着に着替える案内になることもあるとされています。

検査 資料に書かれている扱い
心電図 電極が触れなければ無理に外す必要はない(日本不整脈心電学会)
X線撮影 撮影範囲に含まれる際には外す(国立国際医療研究センター病院)

同じ物でも受ける検査によって扱いが変わるということです。とはいえ当日に一つずつ判断するのは煩雑なので、外しやすいものは初めから身につけずに行くほうが手間が少なくなります。

健康診断の体重測定と服の重さ

着衣のまま体重を測ると重さの分だけ増えるのではないか、という疑問もよく見かけます。この点に規定があるのは学校健診で、学校保健安全法施行規則第7条第3項は体重は、衣服を脱ぎ、体重計のはかり台の中央に静止させて測定する。ただし、衣服を着たまま測定したときは、その衣服の重量を控除すると定めています。身長についても靴下等を脱いで測ると書かれています。

ただしこれは学校健診の規則です。成人が受ける職域の健診について、着衣の扱いを定めた規定は労働安全衛生規則にも厚生労働省の資料にも見当たりませんでした。腹囲には臍の高さで測るという方法の定めがありますが、着衣についての記載はありません。学校健診の規定をそのまま職域の健診に当てはめて読むことはできない、という整理になります。

健康診断の服装で押さえる3点

心電図では上半身を捲って胸部を出し、手首と足首も出すため、上下が分かれた服のほうが手順に沿いやすくなります。
アクセサリーは検査ごとに扱いが違い、心電図では電極が触れなければ外す必要はないと学会の手技書に書かれています
胸部X線については、撮影範囲に入る物を外すという条件つきの原則が公的医療機関から示されています。

健康診断の当日の所要時間と受け方

健康診断の当日の所要時間と受け方

当日にかかる時間や進み方は、受ける項目の数で変わります。この章では、時間が変わる仕組みと、当日に自分から伝えておく内容を扱います。

健康診断にかかる時間は何で変わるのか

前提として、受ける項目は人によって違います。記事の前半で見た省略の規定にあたる場合、身長や胸部エックス線検査など、法令が省略を認める一部の項目は実施されないことがあり、その分だけ当日に立ち寄る場所が減ります。

さらに、健診の種類そのものが違えば項目が変わります。前半で触れたとおり特定健康診査には胸部X線がなく、詳細な健診の項目として心電図・眼底検査・貧血検査・血清クレアチニン検査が別に置かれています。区の健診にがん検診を組み合わせれば、その分の時間も加わります。

つまり所要時間は受ける項目の数と、採血や採尿など待ち時間が生じる検査が含まれるかでおおよそ決まります。同じ11項目でも、その場で終わる測定が並ぶ場合と、順番待ちが挟まる場合とでは体感が変わるということです。受診先ごとの目安については案内に記載があります。当院の所要時間の目安は健康診断のページでご確認ください。

健康診断の問診票で伝えておくこと

問診で聞かれる内容には、国が定めているものがあります。厚生労働省の資料は既往歴の調査について、高血圧症、脂質異常症及び糖尿病の治療に係る薬剤の服用の有無と喫煙習慣を聴取することと定めています。服薬と喫煙習慣が問診票にある理由は、ここにあります。

これは健診を行う側に課された手順ですが、受ける側から見れば、答えを用意しておくと当日の流れが滞らない項目でもあります。問診票で向き合うことになるのは、おおむね次の内容です。このうち上の3つは国の資料や労働安全衛生規則に対応する項目で、4つ目の妊娠の可能性は受診先から確認されることがある項目です。国が必須の問診として定めているものではありません。

  • 服用中の薬の名前と、当日に飲んだかどうか
  • 喫煙習慣の有無
  • これまでにかかった病気と、従事してきた業務
  • 妊娠している可能性の有無

3つ目は、労働安全衛生規則が11項目の先頭に置いている既往歴及び業務歴の調査にあたる部分です。前の章で挙げた前日と当日の食事・飲酒の時刻も、そのまま申し出の対象になります。薬の名前を正確に伝えるのは難しいので、お薬手帳や薬の説明書を持参すると行き違いが起きません。伝え忘れて困るのは、結果を読む側が条件を知らないまま数値だけを見ることになる場面です。

健康診断で決められている尿検査の採り方

尿の採り方にも国が定めた方法があります。厚生労働省の資料は、原則として、中間尿を採尿することとしています。中間尿とは、出はじめの尿を採らずに途中の尿を容器に受ける採り方です。出はじめの尿には尿道の付近のものが混ざりやすいため、途中から採る形になっています。

同じ資料には測定までの時間の定めもあり、採取後、4時間以内に試験紙法で測定することが望ましいとされています。困難な場合は室温で24時間以内、冷蔵で48時間以内という条件も置かれています。院内で採尿する運用が多いのは、この時間の条件と関係があると考えられます。

受診先によっては、院内で採尿するため直前の排尿を控えるよう案内されることがあります。当院の案内も健康診断のページに記載しています。尿意の有無は自分で調整するしかない部分なので、案内を先に読んでおくと当日に慌てずに済みます。

出はじめの尿を採らず途中の尿を容器に受ける中間尿の採り方を示した図

生理中や妊娠中でも健康診断は受けられるのか

この2つは、資料の状況が大きく異なります。分けて見ていきます。

妊娠については、学会が示している被ばくの程度・法令が除外を定めている検査・受診先ごとの運用という3つが、それぞれ別の水準の話になります。

まず被ばくの程度について、日本放射線技術学会は胎児がX線ビーム内に入らない検査では、胎児はほとんど被ばくをしていませんと説明し、妊娠中の母親の胸部・頭頚部・四肢のX線検査を例に挙げています。撮影する部位に限定してX線を照射しているため、というのがその理由です。あわせて、100mGy以下の胎児線量では放射線被ばくによる妊娠中絶に医学的な正当性はないこと、通常の多くのX線診断検査でこの線量を超えることは極めてまれであることも書かれています。

参考:日本放射線技術学会「妊娠と医療での放射線について」

次に法令の側を見ると、学校保健安全法施行規則第13条第2項は、妊娠中の女性職員について胃の疾病及び異常の有無に関する検査項目を除くと定めています。ただしこれは学校の職員健診についての規定で、職域健診全般に広げることはできません。胸部X線について妊娠を理由に除外すると定めた規定は確認できませんでした

そして運用の側は受診先によって異なり、法令で除外されていない胸部X線についても撮影を行わない方針をとる施設があります。当院もその一つで、受付時にお申し出いただくようご案内しています。規定の有無と、実際に撮影するかどうかは別々に決まるということです。

月経中については、資料の側に踏み込んだ記述がありません。健診の尿検査は法令上は尿糖と尿蛋白で、尿潜血は法定の項目にも特定健康診査の項目にも含まれていません。月経中の尿検査への影響を示した公的な資料も、探した範囲では確認できませんでした。大腸がん検診の便潜血検査についても、国立がん研究センターの解説には月経に関する記述がありません。同じ解説が繰り返し伝えているのは、陽性となったら自己判断をせずに精密検査を受けるという点です。

子宮頸がん検診については、日本医師会が生理中の場合でも検査は出来ますが、正しい結果が得られない事もありますと説明し、生理期間は受診できないと定めている自治体もあるため各自治体の注意事項を確認するよう促しています。検査によって扱いが分かれるということです。当院では尿検査がある方について、月経期間中のご予約を避けていただくようご案内しています。

健康診断の結果はいつ届く?再検査になったときの進み方

健康診断の結果はいつ届く?再検査になったときの進み方

受けたあとの流れにも、法令で決まっている部分と決まっていない部分があります。ここを分けて把握しておくと、結果票が届いてからの判断がしやすくなります。

健康診断の結果が出るまでの日数は決まっているのか

法令が定めているのは通知の期限ではなく、遅滞なくという表現です。労働安全衛生規則第51条の4は、事業者は健康診断を受けた労働者に対し遅滞なく結果を通知しなければならないと定めていますが、何日以内という日数の規定はありません

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第51条・第51条の4

同じ規則の第51条には、健康診断個人票を作成して5年間保存しなければならないという定めがあります。あわせて第52条では、常時50人以上の労働者を使用する事業者について、定期健康診断を行ったときは遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告することが定められています。

したがって「通常は2週間ほどで届く」といった目安は、法令の定めではなく受診先や事業者の運用です。急いで書類が必要な事情がある場合は、申し込みの段階で受診先に確認しておくほうが早く済みます。

健康診断書の有効期限は誰が決めるのか

健康診断書に一律の有効期限を定めた規定は、今回参照した労働安全衛生規則の条文の中には置かれていません。前の項で触れた5年という数字は事業者が健康診断個人票を保存する期間であって、書類そのものの有効期限ではありません

では何で決まるかというと、提出先が求める条件です。就職や進学、資格の申請などで健康診断書を求める側が、次のような条件を指定します。

  • いつからいつまでに受けたものを有効とするか
  • どの検査項目が含まれている必要があるか
  • 指定の様式があるかどうか

同じ書類でも提出先が違えば通る場合と通らない場合が出てくるのは、この仕組みによります。そのため、健康診断書が必要になったときは、受ける前に提出先の要件を確認するのが先になります。期間だけでなく、必要な検査項目が足りない場合も受け直しになるため、両方を確認してください。

健康診断の再検査と精密検査(二次検査)の違い

言葉の意味は、どの制度の話かで変わります。まず人間ドックの側を見ると、日本人間ドック・予防医療学会の判定区分では5段階が示されています。

区分 内容
A 異常なし
B 軽度異常
C 要再検査・生活改善
D 要精密検査・治療
E 治療中

参考:日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」

Cの脚注には、Xか月後など再検査時期を明記し、受診者行動を明確に指示すること、経過観察や定期的検査といった不明瞭な記載は行わないことが書かれています。Dの脚注には、精密検査を行うか、治療を行うかは、紹介先が決定するとあります。つまり要精密検査という判定は、その先の中身まで決めた指示ではありません。

がん検診では、同じ言葉の使われ方が変わります。国立がん研究センターは、がん検診の結果は基本的に「がんの疑いなし」か「がんの疑いあり」のいずれかで通知されるべきであり、要再検査や要経過観察の判定は本来ありませんと説明しています。がん検診でいう要再検査は、X線写真が不明瞭で読影できなかった場合や、細胞診で検体の採り方が不適切で判定できなかった場合を指します。

同じ「再検査」でも、同学会の判定区分では数値を確かめ直すこと、がん検診では検査をやり直すことを指すという違いです。どちらの制度で言われた判定なのかを結果票で確かめてから、次の行動を決めてください。その先どの医療機関へ行くかは記事末のよくある質問で扱います。再検査で確かめ直すことの多い検査値異常の一覧は、当院の内科診療のページに掲載しています。

健康診断で要精密検査と言われて受けないとどうなるか

がん検診で要精密検査となった場合について、国立がん研究センターがこの点をはっきり書いています。要精密検査と判定されたからといってがんであるとは限らず、実際にがんと診断されるのはごくわずかであること。そのうえで、症状がない・健康だからといった理由で精密検査を受けないと、もしがんがあった場合、診断が遅れ、がんが進行してしまう恐れがあるとして、精密検査を受けるよう呼びかけています。

参考:国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について」

同じ解説には、要精密検査となった方のうち実際にがんが見つかった割合も示されています。

がん検診 要精密検査となった方のうちがんが見つかった割合
胃がん 約1.9%(約50人に1人)
大腸がん 約3.1%(約30人に1人)
肺がん 約2.8%(約35人に1人)
乳がん 約5.6%(約18人に1人)
子宮頸がん 約1.4%(約70人に1人)

割合が低いことは、確かめなくてよい理由にはなりません。数十人に1人という頻度は、受けなければ見つからない人がその中にいるという意味でもあります。なお精密検査は保険診療にあたるため、受診の際は保険証やマイナ保険証を持参してください。受け先の選び方は、記事末のよくある質問にまとめています。

豊島区の健康診断で当院ができること

豊島区の健康診断で当院ができること

ここまでは、複数の制度にある公的な規定と、受診先によって異なる部分を整理してきました。実際に受ける段になると、対象や申し込みの方法は住んでいる自治体と受診先で決まります。豊島区にお住まいの方について、当院で対応している範囲をご案内します。

区から届く健康診断の案内で確かめること

豊島区の健診は、対象になる方に区から受診券と問診票が届く形です。届いた封筒の中身と、自分がどの健診の対象なのかを最初に確かめてください。

  • 特定健診 — 40歳から74歳で豊島区国民健康保険にご加入の方
  • 長寿健診 — 75歳以上で後期高齢者医療制度にご加入の方
  • 福祉健診 — 40歳以上で生活保護・残留邦人等支援給付・震災避難者に該当する方
  • 骨粗しょう症検診 — 40・45・50・55・60・65・70歳の女性

豊島区がん検診のうち、当院で受けられるのは胃がん検診(胃カメラ検査)・大腸がん検診(便潜血検査)・前立腺がん検診(採血検査)・胃がんリスク評価(ピロリ抗体検査など)・B型C型肝炎ウイルス検査です。それぞれ対象年齢や条件が分かれているため、受診券に記載されている内容と照らし合わせてご確認ください。

当院では企業健診や入社・入学健診にも対応しています。検査項目と費用の詳細は健康診断のページをご確認ください。

健康診断の結果を持って当院に相談するとき

結果票に印が付いていた場合、次の一歩は数値を持って相談することです。当院では健診後の再検査・二次検査をお受けしています。結果票をご持参いただければ、追加で必要な検査と今後の進め方をご説明いたします。

血糖値・血圧・コレステロールなどの数値に異常を指摘された場合は、結果票を持って早めにご相談いただくと、その後に必要な検査や受診先を確認できます。前の章で見たとおり、要精密検査という判定が示しているのは行き先の入口までで、そこから何を行うかは相談を受けた側が決めます。逆に言えば、結果票さえ手元にあれば話は始められるということです。

健診の結果票を持って相談できます
池袋かめさん内科では、豊島区の特定健診・長寿健診・福祉健診・骨粗しょう症検診と、豊島区がん検診を実施しています。企業健診や入社・入学健診にも対応しております。健康診断は予約制となっておりますので、お電話・WEB・公式LINEからお申し込みください。検査項目と費用、当日の持ち物、食事と服薬の指示は健康診断のページに掲載しています。健診の結果で気になる数値があった方は、結果票をお持ちのうえご相談ください。

健康診断についてよくある質問

健康診断についてよくある質問

健康診断の当日にタバコを吸ってもいいですか?

家庭血圧の測定条件については、控えるほうがよいとする学会の記述があります。日本高血圧学会と日本高血圧協会の一般向け冊子は、家庭で血圧を測るときの条件として測定の前はたばこを吸わない・飲酒しない・カフェインを摂らないことを挙げています。喫煙習慣と白血球数の関係を報告した論文もありますが、こちらが扱っているのは1日あたりの本数という習慣的な喫煙量で、当日1本の影響を示したものではありません。受診先によっては当日の喫煙を控えるよう案内されますので、案内に記載された条件に従ってください。

参考:日本高血圧学会・日本高血圧協会 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子

健康診断の当日に薬を飲んでもいいですか?

自己判断で中止せず、受診先か処方元に確認してください。健診当日に薬を飲んでよいかどうかを示した公的な資料は見当たらず、国の文書にあるのは健診を行う側が服薬の有無を聴取するという手順のほうです。飲んだかどうかは問診で伝える項目にあたりますので、当日の服薬の有無と薬の名前がわかるものを持参すると話が早く進みます。当院の服薬についての案内は健康診断のページに掲載しています。

健康診断にコンタクトやメガネはどうすればいいですか?

受診先の案内に従ってください。労働安全衛生規則が定めているのは「視力の検査」という項目名だけで、裸眼で測るか矯正して測るかの規定はありません。学校健診については学校保健安全法施行規則に裸眼視力と眼鏡使用時の矯正視力を検査するという定めがありますが、条文に出てくるのは眼鏡でコンタクトレンズの語はなく、対象も児童生徒等です。日本眼科医会も、定期健康診断では裸眼視力と矯正視力の区別をせずに実施されることが多いと述べており、扱いは受診先によって分かれます。ふだん使っているメガネやコンタクトの情報は、当日に伝えられるようにしておくと受付での確認がすぐ済みます。

迷ったときは受診先の案内が答えになることを示した帯

健康診断でネイルは落としたほうがいいですか?

マニキュアについては、日本呼吸器学会が影響を明記しています。パルスオキシメーターで血中の酸素飽和度を測る際、マニキュアが光の透過を妨げて誤差を生じるため、除光液で落としてから装着すると書かれています。ただしこの測定は労働安全衛生規則の法定項目ではないため、健診で常に行われるものではありません。ジェルネイルについては学会や公的機関の資料に記述を見つけられなかったため、マニキュアの記述をそのまま当てはめることはできません。落とす必要があるかどうかは、受診先から届いた案内に沿ってご判断ください。

参考:日本呼吸器学会「よくわかるパルスオキシメータ」

健康診断の前日の寝不足は結果に出る?

前日1晩の寝不足が当日の測定値に出ることを示した一次情報は、見当たりませんでした。厚生労働省の睡眠ガイドが述べているのは、睡眠の問題が慢性化すると肥満・高血圧・2型糖尿病などの発症リスクが上がるという内容で、単発の寝不足が当日の血圧をどうするかという話ではありません。したがって「前日は寝不足を避けましょう」を根拠のある指示として書くことはできません。国が前日について明文化しているのは、食事の時間と飲酒・激しい運動の3点にとどまります。

健康診断と人間ドックは何が違いますか?

項目の決まり方が違います。労働安全衛生規則にもとづく定期健康診断や特定健康診査は、実施する項目が制度の側で定められています。人間ドックはこれらの制度の枠組みの外で受けるもので、検査の組み合わせは施設ごとに変わります。判定の区分については日本人間ドック・予防医療学会が示しており、この記事の前半で扱ったA〜Eの5段階がそれにあたります。受けたい検査が含まれているかは、申し込み先の案内で確認してください。

健康診断とがん検診は何が違いますか?

厚生労働省の告示第242号が、健診と検診を分けて定義しています。健診は特定の疾患自体を確認するものとは限らず、健康づくりの観点から経時的に値を把握することが望ましい検査群とされ、検診は主に特定の疾患自体を確認するための検査群とされています。がん検診はこのうちの検診にあたります。ただし「健診」という言葉が「健康診断」の略として使われることもあり、国の用語でも定期健康診断を定期健診と略す例があるため、意味が常に分かれるとまでは言えません。

健診の制度がちがえば検査項目もちがうことを示した帯

健康診断でB型肝炎はわかりますか?

法定健診や特定健康診査の検査項目には、肝炎ウイルス検査は含まれていません。労働安全衛生規則第44条の11項目にも、特定健康診査の基本的な項目・詳細な項目にも入っていないためです。一方で厚生労働省の健康増進事業実施要領は、市町村が行う健康増進事業として肝炎ウイルス検診を挙げ、検診項目を問診・C型肝炎ウイルス検査・HBs抗原検査と定めています。当院も豊島区がん検診としてB型C型肝炎ウイルス検査(20歳以上で未受診の方)を実施しており、区の事業として別に受けられる形になっています。

参考:厚生労働省「健康増進事業実施要領」

健康診断の再検査はどこで受ければいいですか?

結果票に受診先の指定があれば、それに従ってください。指定がない場合は、健診を受けた施設かかかりつけの医療機関にご確認ください。日本人間ドック・予防医療学会の判定区分には、精密検査を行うか治療を行うかは紹介先が決定すると書かれており、行き先で中身が決まる仕組みになっています。指摘された項目によって適した診療科は異なりますが、血圧・血糖・脂質など内科領域については、当院の内科診療でも再検査・二次検査に対応しておりますので、結果をお持ちのうえご相談ください。

健康診断の費用はどのくらいかかる?

制度によって扱いが分かれます。豊島区の特定健診やがん検診は受診券を使って受ける形で、企業健診や入社・入学健診は自費での受診になります。金額は検査項目の組み合わせで変わるため、この記事では具体的な費用を記載していません。当院の検査項目と費用は健康診断のページに掲載しておりますので、そちらでご確認ください。

健康診断の当日に体調が悪いときはどうすればいいですか?

まず受付でその旨をお申し出ください。当日の体調をどう扱うかを定めた公的な資料は見当たらず、検査を進めるか日を改めるかは受診先の判断になります。発熱や体調不良があると血圧や血液の値がふだんと違う出方をすることも考えられます。まず体調を伝え、予定どおり進めるか日を改めるか、受診先の判断を確認してください。予約の変更が必要な場合の連絡方法は、受診先の案内をご確認ください。

前日の準備で押さえる点は、次の3つに整理できます。いずれも、特定健康診査について国の文書が示している内容です。

項目 国の文書に書かれていること
食事 健診前10時間以上は水以外の飲食物を摂取しない。午後の健診は軽めの朝食
飲酒 前日は控える。時間数の基準はない
運動 激しい運動は前日は控える。日数の基準はない
健康診断の前日の過ごし方〜まとめ〜

特定健康診査について国の文書が示しているのは、食事には「前10時間以上」という時間の条件があり、飲酒と激しい運動には「前日は控える」という日単位の指示だけがある、という差です。この差は資料の不足ではなく、国の文書がその粒度でしか書いていないことによるものです。
やってしまった後については、時刻と内容を受付や問診で申し出るところまでが受ける側の役割で、その先の判断は受診先が行います。服装は検査ごとに扱いが変わり、心電図では上半身を捲って胸部を出す方法が学会の手技書に示されています。結果の通知に日数の規定はありません。要精密検査と言われたときは、判定の意味を確かめたうえで、結果票を持って相談するのが次の一歩になります。

数値を良く見せるための準備ではなく、正しく読める条件を整えるための準備だと考えると、前日にやることは絞り込めます。最終的な条件を決めるのは手元に届いた受診券や案内文ですので、読み返してから当日を迎えてください。

豊島区の健康診断は池袋かめさん内科へ
池袋かめさん内科の健康診断は予約制です。お電話・WEB予約・公式LINEから、ご都合のよい方法でお申し込みください。診療時間は9:00〜12:30と14:00〜18:00で、月曜と日祝は休診、土曜は午前のみです。東京メトロ副都心線「雑司が谷駅」から徒歩2分、JR「目白駅」から徒歩10分の場所にあります。

03-3986-4466

受付時間:9:00-12:30/14:00-18:00

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