大腸カメラでわかる病気

心配いらない血便はあるのか?便潜血1回陽性でも精密検査

便に血が付いていた。あるいは健康診断の結果票に便潜血陽性と書かれていた。そのどちらの場合も、多くの方が最初に調べるのは、心配いらない血便はあるのかという一点です。

痔だろうと思いたい気持ちと、もしそうでなかったらという気持ちが同時にあって、受診するかどうかを決めきれない。そうした状態でこのページを開く方は少なくありません。

調べ始めると、鮮血なら肛門の近くからの出血だという説明と、血便が出たら医療機関を受診してほしいという説明が並んで出てきます。この2つは食い違っているのではなく、答えている問いが違います。色の説明は原因として何が考えられるかという話で、受診の呼びかけはその原因を確かめる必要があるかという話です。この記事では、学会と国が公開している一次情報にどこまで書かれているかを、主語ごとに分けて整理します。

血便と便潜血陽性で迷っている方への結論

見た目や量から「これは心配いらない血便だ」と決められる目安を、確認できた一次情報は示していません。日本大腸肛門病学会は、出血の状態から多くの病気がわかるとしたうえで、それは「あくまでも目安に過ぎません」と述べています。
健診の便潜血検査についても同じ構造です。便潜血検査は2日分の便を提出する2日法で行われ、そのうち1日分、つまり1回だけの陽性でも精密検査の対象になります。厚生労働省の指針(令和7年12月24日一部改正)が定める検診結果の区分は「便潜血陰性」と「要精検」の2つだけで、1回だけ陽性という中間の区分は置かれていません。
つまり目に見える血便も、目に見えない便潜血も、行き着く問いは同じです。自分で判断してよいかどうかではなく、原因を確かめる手段があるかどうかが答えになります。

ここに書いた内容は目安であり、手元の症状や結果票をどう扱うかの最終的な判断は診察した医師が行います。症状の出方には個人差があり、同じ経過をたどるわけではありません。

参考:日本大腸肛門病学会「肛門からの出血の状態で、大腸・肛門の病気が分かりますか?」

目次

心配いらない血便はあるのか?

心配いらない血便はあるのか?

タイトルに置いた問いに、先に正面から答えます。この章では、見た目で決められるかどうかという総論を扱います。

見た目だけで心配いらないと判断できる血便はない

日本大腸肛門病学会は、肛門からの出血について「出血の状態とそれに伴う症状により、多くの病気がわかります」と述べています。ただし同じ解説はそれに続けて、それはあくまでも目安に過ぎず、症状が続くときには専門家による正確な診断を受ける必要があるとしています。

学会は、目安があること自体を否定していません。否定されているのは、目安のところで話を終わらせるほうです。

そのため、この記事では「この色ならこの病気」「この量なら受診しなくてよい」という一覧を作りません。確認できた一次情報のどこにも、受診せず経過を見てよい血便の条件は書かれていませんでした。書かれていないものを目安として提示すると、読んだ方が自分の血便をその枠に当てはめてしまいます。

言えるのは、見た目だけでは判断できないというところまでです。ここから先は、判断できないという結論を受けて何をするかという話になります。

心配のいらない状態は確かめた後に言えるという順序を示した図

心配いらないと言えるのは重大な病気を除外できたとき

心配いらない血便が存在しないという意味ではありません。心配のいらない状態は、確かめた後にはじめて言えるという順序の問題です。

同学会は、痔核や裂肛、直腸ポリープなどによる出血は大腸がん、とくに直腸がんの出血ととても良く似ているとし、そのうえで出血が続くときには大腸内視鏡検査などの精密検査が必要だとしています。似ているものを見た目で切り分けるのではなく、確かめて片方を外すという考え方です。

精密検査という言葉には、病気を見つけるという役割だけでなく、調べた範囲に病変がないことを確かめるという役割もあります。血便の相談で大腸の検査が案内されるのは、この確かめるという意味が大きい場面です。

つまり、この記事が言えることの全体像はこうなります。見た目で安心の線を引くことはできないが、線を引き直す方法はある。以降の章は、その方法に至るまでの道筋です。

痔などの良性の病気でも血便は起こる

血便は、良性の病気でも起こります。国立がん研究センターは、便に血が混じる・血が付着するといった症状について「これらの症状は、痔などの良性の病気でも起こりますが、自己判断せず、症状に気が付いたら早めに消化器科、胃腸科、肛門科などの身近な医療機関を受診しましょう」と述べています。

この一文は、良性の可能性を認めたうえで受診を勧めているところに意味があります。良性かどうかは受診してから分かることであって、受診するかどうかを決める材料にはならない、という順序がここでも保たれています。

原文にある「自己判断せず」と「早めに」という2語は、この記事全体を通した前提でもあります。次の章からは、では色や見た目をどう受け止めればよいのかという各論に入ります。

参考:国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」

血便の色や見た目をどう受け止めればよいのか

血便の色や見た目をどう受け止めればよいのか

判断できないと言われても、実際に目の前にあるのは色と量です。ここでは、その情報が何に使えて何に使えないのかを分けます。

鮮血や暗赤色の血便は出血した場所の目安にすぎず原因は一つに決まらない

まず色の呼び方から整理します。鮮血は真っ赤な血の色、暗赤色は赤黒く見える色を指す言葉で、どちらも学会の解説で使われている用語です。

日本大腸肛門病学会は、便の色が鮮血の場合は肛門や直腸からの出血、暗赤色の場合は大腸や回腸からの出血、黒色の場合は胃や十二指腸、空腸からの出血が疑われるとしています。

ただし同じ解説は、この対応関係をそのまま使えるとは述べていません。続けて書かれているのは、出血量や腸の動きによって色も変わるため一概には言えないという但し書きのほうです。

この2つはセットで読む必要があります。色と場所の対応だけを取り出すと、色から出血した場所が決まり、場所から病気が決まるという二段階の思い込みができてしまいます。実際には、色が示すのはおおまかな方向であって、原因を一つに絞り込む材料にはなりません。

反例も同じ学会が示しています。痔核や裂肛から出た血液が逆流して直腸にたまり、赤黒い血として出ることもあるとされています。赤黒いから大腸の奥からの出血だ、とは言い切れないということです。

参考:日本大腸肛門病学会「血便、便秘、下痢のあるときどんな病気が考えられるの?どんな検査をするの?」

血便の色が示すのは出血した場所のおおまかな方向だと示した図

切れ痔でも便器が真っ赤になることがある

色の次に気になるのが量です。便器の水が赤く染まるほど出ると、それだけで重い病気を思い浮かべる方が多いのですが、量と重さは直結しません。

裂肛について同学会は、出血の色は鮮紅色で、量は紙に付く程度で多くはないものの、便器が真っ赤になることもあるとしています。切れ痔でも便器が赤くなりうる、という記述が学会の解説に明記されているということです。痛みの程度にも個人差があり、排便時だけでなく排便後に長引く強い痛みを伴うこともあるとされています。

この記述が大事なのは、逆方向の誤解も同時に崩してくれるからです。量が多いから危ないという読み方も、量が少ないから平気だという読み方も、どちらも成り立ちません。紙に少し付いただけの出血をどう考えるかは、あとの章とよくある質問で扱います。

下血や黒い便という言葉は血便と指すものが違う

検索していると血便と下血という2つの言葉が混ざって出てきます。これは書き手によって表記が揺れているのではなく、名称として指すものが違います。

名称 指すもの
血便 真っ赤な鮮血便や暗赤色便
下血 黒色便

同学会は、名称としては血便が鮮血便や暗赤色便を指し、下血が黒色便を指すとしています。ただし機関によって語の運用には幅があり、国立がん研究センターの解説は「血便や下血」と併記しています。一般にはどちらも血便と呼ばれることがある、と受け取っておけば実用上は困りません。

分けておく意味があるのは、黒い便は行き先が変わることがあるという点です。同学会は、タールのように黒っぽく、においの強い便が大量に出る場合には胃・十二指腸潰瘍などの疾患が考えられるとしています。この3つの条件がそろう場合に想定されているのは胃や十二指腸のほうで、大腸の検査ではなく胃の検査が必要になる領域です。黒っぽい便がすべてこれに当たるわけではないので、色だけで自分の行き先を決めず、そのまま伝えてください。

血便について診察で医師に伝えておきたいこと

ここまでで、色も量も自分で結論を出す材料にはならないと書きました。では観察したことは無駄かというと、そうではありません。医師に伝える情報としては役に立ちます

診察の場で聞かれるのは、いつからか、どのくらいの頻度か、どんな色だったか、痛みがあったかといった内容です。自分で原因を当てるために見るのではなく、そのまま伝えるために覚えておく、という位置づけに変えるだけで、色や量の情報は生きます。

記録するとしても、項目を埋めて点数をつけるような使い方はしないでください。当てはめるための表を作った時点で、自己判断に戻ってしまいます。思い出せる範囲でかまわないので、見たままを言葉で伝えるだけで足ります。写真を撮っておいた方もいますが、無理に用意する必要はありません。

服用している薬がある場合や、これまでに大腸の検査を受けたことがある場合は、その情報も伝えてください。過去の検査結果は、今回どこまで調べるかを決めるときの材料になります。

受診を急ぐ血便と救急を考える場面

受診を急ぐ血便と救急を考える場面

色では原因を一つに決められないとすると、次に決めたいのはどれだけ急ぐかです。この章は、その線引きだけを扱います。

消防庁が救急車を呼ぶ判断材料に挙げている症状

総務省消防庁は、おとな向けの救急車利用リーフレットで、救急車を呼ぶ判断材料となる症状を部位別に示しています。その「おなか」の項目に、便に血が混ざる、または、真っ黒い便が出る、が挙げられています

同じ「おなか」の項目には、ほかに次の内容が並んでいます。いずれも救急要請を考えるときの手がかりとして挙げられているものです。

  • 突然の激しい腹痛
  • 激しい腹痛が持続する
  • 血を吐く

ここで気をつけたいのは、これが医学的な診断基準ではなく、救急要請を判断するための材料だという点です。消防庁はこの資料で、判断に迷うときの手がかりを示しています。血便が出たら救急車を呼びましょう、という案内ではありません。実際、資料そのものが、119番通報などの判断に迷った時は救急相談窓口(♯7119等)に相談するようにと締めくくっています。

なお、これはおとな向けの資料についての話です。同じシリーズでも版によって挙げられている項目は違うため、版を伏せたまま消防庁の見解として一般化することはできません。

参考:総務省消防庁「救急車利用リーフレット(おとな)」

救急要請とすぐの受診は意味が違う

血便について公的機関が出している呼びかけは、強さの違う3つの層に分かれています。同じ「すぐに」という言葉が使われていても、指している行動が違うため、混ぜて読むと判断を誤ります

呼びかけている主体 位置づけ 「すぐに」が指すもの
総務省消防庁 救急要請の判断材料 119番通報を考える場面。迷えば♯7119
国立がん研究センター 検診と診療の切り分け 次の検診を待たないという意味
学会 精密検査の必要性 出血や症状が続くときの精密検査

この表でいちばん誤読されやすいのが真ん中の層です。検診ではなくすぐに医療機関を受診してくださいという案内は、救急車を呼びなさいという意味ではありません。健診の順番を待たずに診療として受診してください、という制度上の切り分けを述べたものです。

3層目の学会の呼びかけは、出血や症状が続くときに精密検査が必要だという内容で、これも救急とは別の時間軸の話です。

判断に迷ったときの窓口として、消防庁は救急安心センター事業(♯7119)を案内しています。医師・看護師・救急救命士から電話で助言を受けられる仕組みで、緊急性が高いと判断された場合は119番通報へ転送されます。ただし全国一律の制度ではなく、実施しているのは全国41地域とされています。

項目 案内されている内容
実施している範囲 全国41地域(全国一律ではない)
東京都の運営 東京消防庁救急相談センター
対象 全年齢
利用時間 全日24時間
番号 ♯7119(23区は03-3212-2323も)

回線によって♯7119につながらない場合があるため、市外局番から始まるほうの番号も控えておくと、いざというときに迷わずに済みます。

参考:総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?」

痛みがなくても血便は1回でも検診を待たずに受診する

痛みがなかったから様子を見た、という声はよく聞きます。ところが、痛みの有無は緊急度を下げる材料として使えません。前の章で触れたとおり、痛みを感じにくい病変もあれば、痛みを伴う病気もあり、どちらであるかは症状の側からは決まらないためです。

国立がん研究センターは、血便、腹痛、便の性状や排便の回数が変化したなどの症状がある場合には、検診ではなく、すぐに医療機関を受診してくださいとしています。この案内には、何日続いたらとか、何回出たらといった条件が付いていません。

回数についても同じです。1回だけ出てその後は出ていない場合も、繰り返し出ている場合も、この案内が求めているのは同じ行動です。1回で止まったから対象外になる、という書き方は一次情報のどこにもありません。止まったこと自体は事実として伝えればよく、それで受診の要否が変わることはありません。

つまり、何日続いたら受診すればよいのかという問いへの答えは、日数や回数の線を引くことではありません。一次情報にその線は存在せず、置かれているのは検診の順番を待たないという行動のほうです。1回で止まった場合に何を確かめるかについては、記事の後半であらためて扱います。

腹痛や発熱をともなう血便は早めに受診する

血便に別の症状が重なっているときは、考えられる原因の幅が変わります。この項では、そのときに何が変わるのかに絞って書きます。

日本大腸肛門病学会は、感染性腸炎のうち大腸型について、微生物や毒素が腸の組織を傷つけることを基本的な病態とし、発熱や腹痛を伴い、血便や粘液便などを生じるとしています。腹痛や発熱と血便が一緒に出ている場合、原因として感染性腸炎などが視野に入る、というところまでが一次情報から言える範囲です。

一方、国立がん研究センターは大腸がんが進行した場合の症状として、次のような内容を挙げています。

  • 慢性的に出血することによる貧血の症状(めまいなど)
  • 腸が狭くなることによる便秘や下痢、便が細くなる、便が残る感じ、おなかが張る
  • さらに進行した場合の腸閉塞(便が出なくなる、腹痛、嘔吐)

この列挙の主語は大腸がんが進行した場合であって、血便が出た人全般の話ではありません。めまいがあるから危ないという読み替えはできませんし、逆にこれらがないから軽いという読み替えもできません。伝えるべき情報が増えたと考えて、症状の組み合わせをそのまま医師に伝えてください。

血便が出たら何科を受診すればよいのか?

血便が出たら何科を受診すればよいのか?

急ぐかどうかの見当がついたら、次に決まらないのが行き先です。どの窓口から入るのかを、ここで整理します。

血便などの症状があるときの入口は検診ではなく診療になる

行き先を考える前に、入口が2つあることを押さえておくと迷いが減ります。がん検診と診療は、同じ医療機関で受けられても制度上は別の枠組みです

がん検診 診療
対象 症状のない健康な人 症状があって受診する人
目的 まだ症状の出ていない病気を見つける いま出ている症状の原因を調べる
費用の扱い 多くを公費が負担する市区町村の事業 保険診療

国立がん研究センターは、がん検診について症状がない健康な人を対象に行われるものと定義し、症状をもとに受診して行われる検査はここでいうがん検診とは異なるとしています。血便という症状がある時点で、入口は検診ではなく診療のほうになるということです。

国のがん検診の精度管理でも同じ整理がされていて、自治体に求められる対策として、症状がある人を検診ではなく診療に誘導することが挙げられています。健診の案内が届いていても、血便が出ているならその枠で待つ必要はありません

参考:国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」

血便の受診先として消化器科や胃腸科などが挙げられている

では診療としてどこへ行くのか。一次情報は、血便はこの科と一意に決める書き方をしていません

国立がん研究センターが挙げているのは、消化器科、胃腸科、肛門科などの身近な医療機関という表現です。複数の科が並んでいて、しかも「など」が付いているところに意味があります。血便の原因は肛門に近いところから大腸の奥まで幅があり、受診前の情報だけでどの科が正解かを決められないためです。

同じ理由で、色や量から科を割り振る表もこの記事では作りません。前の章で見たとおり、色と原因は一対一で対応していないので、色から科を導く手順そのものが成立しないためです。

現実的な受け止め方としては、この3つのいずれかを掲げている医療機関であれば入口として想定されている、というところまでになります。近い、通いやすい、相談しやすいといった条件で選んでかまいません。

一つに決まらない

血便でかかりつけの内科を受診してもよいのか

実際に多いのが、大きな病院に行くほどなのか、いつもの内科でよいのかという迷いです。

内科でも相談できます。上に挙げた受診先はいずれも身近な医療機関という言葉で説明されていて、まず専門的な施設へ行くようにとは書かれていません。大事なのは、症状を伝えて必要な検査につながることのほうです。

一方で、相談した結果として大腸の検査が必要になる場面はあります。そのときに紹介が必要になるのか、同じ場所で続けられるのかは医療機関によって違います。内科の診察と大腸カメラ検査の両方に対応している医療機関であれば、相談から検査までを続けて進められます。池袋かめさん内科も内科診療大腸カメラ検査を同じ院内で行っている医療機関です。

なお、痔の治療そのものを希望する場合は、対応している診療科が別になります。この記事で扱っているのは、血便の原因を確かめるところまでです。

血便の受診先へ前もって問い合わせると確かめられることを示した図

血便の受診先に迷うときは前もって電話などで相談できる

行き先を決めきれないときや、選んだ先で大腸の検査まで相談できるか気になるときは、受診前に問い合わせるという方法があります。

国立がん研究センターは、精密検査を受ける医療機関を選ぶときの案内として、医療機関によっては検査ができない場合があるため、予約時にその検査ができるかを確認してくださいとしています。これは検診の精密検査についての案内ですが、症状があって受診する場合にも同じ確かめ方が使えます。

聞いておくと迷いが減るのは、血便の相談を受けているか、大腸の検査までその場で相談できるか、どの曜日に検査を行っているか、といった内容です。受診してから行き先が違ったと分かるより、電話1本で分かるほうが早く進みます。

池袋かめさん内科では、こうしたお問い合わせを電話でも承っています。初診の方のご予約はWeb予約と公式LINEで受け付けています。どちらの場合も、いま出ている症状と、これまでに大腸の検査を受けたことがあるかどうかを伝えていただけると案内がスムーズです。

血便が出ている方や、健診の便潜血検査で陽性と言われた方のご相談を受け付けています。池袋かめさん内科の大腸カメラ検査では、便潜血検査が陽性だった方や便通の異常・血便などの症状がある方に、大腸カメラ検査をご検討いただくご案内をしています。
まずは内科診療で症状を伺い、検査が必要かどうかを含めて一緒に判断していきます。

血便を起こす主な原因

血便を起こす主な原因

ここまでは、血便が出たときにどう動くかという話でした。ここからは知識の整理に入り、そもそも何が血便を起こすのかを見ていきます。

日本大腸肛門病学会は、血便や下血の原因は、消化管の潰瘍・炎症、腫瘍、血管性病変・虚血性病変、憩室、痔疾など多岐にわたるとしています。

原因のカテゴリ この記事で扱う代表例
痔疾 痔核・裂肛
腫瘍 大腸ポリープ・大腸がん
炎症 潰瘍性大腸炎・クローン病・感染性腸炎
血管性病変・虚血性病変・憩室 虚血性腸炎・大腸憩室(この記事では名前のみ)

この表も、この後の並び順も、多い順ではありません。学会の解説はカテゴリを挙げているだけで、順位や割合には触れていないためです。血便の原因で最も多いのは何かという問いに、一次情報から答えることはできません。

なお、大腸憩室と虚血性腸炎はここで名前を挙げるにとどめます。症状の出方や治療の話は別の記事の領域で、この記事で断片的に扱うと誤った当てはめを招くためです。大腸憩室については大腸憩室から起こる憩室炎と憩室出血の違いで扱っています。

痔核や裂肛による血便

痔核について同学会は、出血は鮮紅色で、排便時に出血し、排便終了後には自然に止まるとしています。また内痔核ができる場所には痛みを感じる神経がないため、内痔核があっても痛みは感じないとされています。裂肛については、痛みを伴い、量が少なく紙に付く程度の出血であれば裂肛の出血が疑われるとされています。

ただし、これらはいずれも疾患そのものの説明であって、目の前の出血が痔だと保証するものではありません。同学会は同じ解説のなかで、これらの出血が直腸がんの出血と見分けにくいことを挙げ、出血が続くときには大腸内視鏡検査などの精密検査が必要だとしています。

言い換えると、排便のあとに止まったから受診しなくてよい、とは学会は述べていません。痔と分かっている方が確かめる意味については、次の章で正面から扱います。

疾患そのものの説明と目の前の出血は別だと示した図

大腸ポリープや大腸がんによる血便

国立がん研究センターは、がんやポリープなどの大腸疾患があると大腸内に出血することがあるとしています。健診の便潜血検査は、この出血を調べる検査です。

押さえておきたいのは、この出血は通常は微量で目には見えないと説明されている点です。目に見える血便と、検査ではじめて分かる出血は、同じ病変から起こりうるとしても現れ方が違います。この違いは、記事後半の便潜血の章でもう一度出てきます。

ポリープが見つかった場合の切除や、その後の病理検査については、この記事では扱いません。血便の原因としてポリープやがんが挙げられている、というところまでが本章の範囲です。

潰瘍性大腸炎やクローン病による血便

国立がん研究センターは、潰瘍性大腸炎を、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる疾患だとしています。主な症状は下痢と腹痛で、血便をともなうこともあるとされています。クローン病については、小腸と大腸に起こりやすく、主に若年者にみられ、腹痛や下痢、血便、体重減少などの症状があるとされています。

主に若年者にみられるという記述はクローン病についてのもので、潰瘍性大腸炎の説明ではありません。年齢の話が混ざりやすいところなので、切り分けておきます。

日本大腸肛門病学会は、潰瘍性大腸炎では粘液と血が混じる粘血便になるとしています。ただしこれも、粘液が混じっていればこの病気だという意味ではなく、そうした出方をすることがあるという説明です。いずれも指定難病であり、診断は経過と検査を合わせて行われます。

感染性腸炎による血便

日本大腸肛門病学会は、感染性腸炎を病原微生物が腸管内に侵入・定着・増殖して発症する疾患とし、ほとんどの場合に下痢がみられるとしています。多くは食品や汚染された水による感染です。

このうち大腸型については、組織侵襲が基本的な病態のため発熱や腹痛を伴い、血便や粘液便などを生じるとされています。前の章で触れた、腹痛や発熱と血便が重なる場面に対応する記述がここにあたります。

急に始まった下痢と血便が一緒に出ている場合は、感染性腸炎が原因として視野に入ります。ただし、症状の組み合わせだけで原因が決まるわけではないという前提は、ここでも変わりません。

痔と分かっていても血便で大腸を確かめるのはなぜか?

痔と分かっていても血便で大腸を確かめるのはなぜか?

原因を並べると、痔があると分かっている方ほど話は簡単に見えてきます。ところが、実際にいちばん判断を誤りやすいのがこの状況です。その理由を、4つの角度から分けて書きます。

痔と直腸がんでは血便がよく似ている

日本大腸肛門病学会は、痔核・裂肛・直腸ポリープなどによる出血について、大腸がん、とくに直腸がんの出血ととても良く似ていると述べています。似ているという評価を下しているのは、患者側ではなく学会のほうです。

学会がこの2つを並べて挙げているのは、患者側から見える特徴が重なるからです。色や出るタイミングといった目に見える手がかりでは、この2つを分けられないということです。

裂肛についても同学会は、症状が似ている病気としてヘルペスや肛門管癌などがあるとし、一人で悩まず相談するよう述べています。痔らしい症状だから痔である、という推論がどこで崩れるのかを示した記述です。

痔があっても血便の原因は精密検査をしないと分からない

見た目が似ているなら、区別する方法は見た目の外にしかありません。

国立がん研究センターは、検診で要精密検査と判定された方に向けた案内のなかで「もともと痔がある場合でも、痔が原因で出血しているのか、あるいは大腸がんやポリープのために出血しているのかは精密検査をしないと分かりません」と述べています。同じ案内には「症状がないから大丈夫」などと自己判断はしないように、という記述も並んでいます。

この案内は便潜血検査で陽性になった方に向けたものですが、痔があっても原因の判別には検査が要るという論理そのものは、症状の場面についても学会が独立に示しています。前の項で挙げた、出血が続くときには大腸内視鏡検査などの精密検査が必要だという記述がそれにあたります。

痔があることは、今回の出血の原因が痔であることを意味しません。痔があるという事実は、別の原因が同時にないことの証明にはならないからです。

過去の痔の診断が説明できる範囲を示した図

以前に痔と診断された経験は今回の血便の説明にならない

もう一つ、時間の問題があります。何年か前に痔と診断された経験が、そのままずっと今回の出血の説明として使われてしまうことがあります。

過去の診断が説明できるのは、診断されたその時点の出血までです。数年前に確かめられたのは当時の状態であって、今回の出血が同じ原因かどうかは、そのとき調べていません。年齢も変わり、大腸の状態も変わっている可能性があります。

判断を先送りにした方を責める話ではありません。以前と同じ症状に見えることこそが、この状況の難しさそのものです。同じように見えるからこそ確かめる意味がある、という順序で受け取ってください。前に痔と言われたことがあるという情報は、受診時にそのまま伝えれば診察の材料になります。

痔があるから便潜血が陽性になったとは言い切れない

ここまでは目に見える血便の話でした。ここから記事の主語は、目に見えない出血のほうへ移ります。

便潜血検査とは
健診で行われる便潜血検査は、便のなかに含まれる微量な血液を検出する検査です。日本消化器内視鏡学会は、この検査が主に大腸がんや大腸ポリープなどによる出血を見つけるために使われていると説明しています。
拾っているのは通常は目に見えない量の出血で、便器が赤くなるような出血とは別のものを見ています。ここから先の章は、この検査で陽性と言われた場合の話です。

その便潜血検査についても、痔を理由にする受け取り方があります。痔があるから陽性になったのだろう、という考え方です。

日本消化器がん検診学会は、便潜血が陽性でも精密検査で異常が見つからないことが多々あるとしたうえで、「痔と便潜血検査にはあまり関係がありません。痔の有無にかかわらず、便潜血陽性の場合には大腸がんの可能性がありますので、必ず精密検査を受けてください」としています。

これは便潜血検査という微量の出血を調べる検査についての記述であり、目に見える血便が痔から出ることを否定しているわけではありません。主語が違うので、ここを混ぜないでください。痔があるかどうかは、便潜血が陽性になったときの説明としては使えない、というのがこの記述の意味です。

参考:日本消化器がん検診学会「市民のみなさまへ Q&A」

健診で便潜血陽性と言われたら

健診で便潜血陽性と言われたら

結果票に陽性と書かれていても、そこから何がどう進むのかまでは書かれていないことがほとんどです。制度としてどう決まっているかと、実際の手続きを順に説明します。

便潜血陽性は何を示しているのか

陽性という言葉は、便のなかに一定量以上の血液が検出されたという意味です。血液が見つかったという事実を示しているだけで、原因が何かまでは示していません

陽性でも大腸の病変が見つからないことがある

日本大腸肛門病学会は、「便潜血検査陽性の結果が出ても必ずしも大腸にポリープやがんが存在するとは限りません」としたうえで、大腸憩室や痔核などの他病変によって出血することも少なくないと説明しています。そのうえで同じ解説は、少なくとも便潜血検査陽性の方は必ず大腸内視鏡検査を受けるように、と続けています。

つまり陽性という結果は、病気の宣告ではなく、調べる対象になったという合図です。陽性でなかったことにする理由にはならない一方で、陽性だからがんだという意味でもありません。この2つを同時に持っておくのが、いちばん実態に近い受け止め方になります。

便潜血が2日法で1日分でも陽性なら精密検査を受ける

制度としてどう決まっているかを、先に並べます。

項目 定められている内容
対象 40歳以上
実施回数 原則として同一人について年1回
検査の方法 免疫便潜血検査2日法
検診結果の区分 便潜血陰性・要精検の2つ

厚生労働省の指針(令和7年12月24日一部改正)は、大腸がん検診の検診項目を問診及び便潜血検査とし、便潜血検査は免疫便潜血検査2日法により行うと定めています。2日分を採るのは、がんからの出血が間欠的で、出血するときもあればしないときもあるためです。

そのうえで国立がん研究センターは、「大腸がんは毎日出血しているわけではありませんので、1日分でも便潜血検査陽性となったら精密検査を受ける必要があります」としています。

手続きの上では、この時点で結果票の意味は確定しています。要精検と判定された以上、そのあとに置かれているのは精密検査で、間に別の段階は挟まれていません。1日分だけの陽性をどう受け止めるかについては、次の章で正面から取り上げます。

参考:厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」

便潜血検査をもう一度受けても精密検査の代わりにならない

次に多いのが、もう一度便を出して確かめてはどうか、という考え方です。手軽で負担も少ないため自然な発想ですが、制度としては別の扱いになります。

国立がん研究センターは「便潜血検査をもう一度受けることは精密検査の代わりになりません」と明記しています。厚生労働省の指針(令和7年12月24日一部改正)も、便潜血検査のみによる精密検査は、大腸がんの見落としの増加につながることから、行わないとしています。理由まで書かれているところがこの記述の要です。

国のがん検診の精度管理の定義でも同じ扱いで、便潜血検査の再検のみなど精密検査として不適切な検査が行われた場合は、精密検査を受けていないほうに分類されます。受け直して陰性が出ても、最初の陽性が取り消されるわけではないという整理になります。

これは、医療機関から再検査を提案されることが誤りだという意味ではありません。制度上、精密検査として数えられるのは何かという話です。提案された検査が精密検査にあたるのかどうかは、その場で確かめておくと迷いません。

便潜血陽性からの精密検査は保険診療で受けられる

手続きの面も見ておきます。検診と精密検査では、費用の枠組みが切り替わります

国立がん研究センターは、がん検診の精密検査は保険診療であるとし、マイナ保険証または資格確認書を持参するよう案内しています。検診結果の通知など、検診データの持参を求められることがあるため、予約時に確認することとされています。

  • 検診結果の通知(結果票)
  • マイナ保険証または資格確認書
  • 予約時に、その医療機関で検査ができるかどうかの確認

同じ案内は、どこで行われる検査なのかにも触れています。がん検診の精密検査は、大腸がんでは消化器の専門医がいる医療機関で受診して行われるとされています。これは制度としてどういう場所で実施されているかの説明であって、特定の医療機関を指した記述ではありません。

精密検査を受ける医療機関の探し方

では実際にどう探すのかというと、案内されている手順は結果通知の中身によって分かれます。

検診結果の通知に 案内されている進め方
精密検査機関のリストが同封されている そのリストを参考にする
リストが同封されていない 検診を受けた検診機関や勤務先などの窓口に相談する

どちらの場合も、最後は上の持ち物の話に戻ります。予約の時点で、その医療機関で検査ができるかどうかを確かめておくと行き違いが起きません。検診を受けた場所と精密検査を受ける場所が別になることもあるため、結果票が届いた段階で調べ始めると手戻りがありません。

池袋かめさん内科の健康診断では、大腸がん検診は便潜血検査で行い、結果が陽性となった場合は精密検査として大腸カメラ検査をご案内しています。健診から精密検査まで当院でお受けいただけます。健康診断で再検査や要精密検査と判定された方のご相談も受け付けています。

便潜血陽性を先延ばしにしてよい理由はあるのか

便潜血陽性を先延ばしにしてよい理由はあるのか

制度としては前の章のとおり決まっていますが、それでも受けないという判断は実際に起きています。そのときに挙がる理由を、一つずつ見ていきます。

2回のうち1回だけだから軽いとは言えない

いちばんよく挙がるのが、2回のうち1回は陰性だったのだから軽いはずだ、という受け取り方です。片方が陰性だったという事実が、陽性を打ち消す材料として使われている構図です。

日本消化器内視鏡学会は、この考え方を名指しで取り上げています。便潜血検査で陽性になっても「1回だけ陽性で、1回は陰性だったから大丈夫」「翌年の結果を見てから判断しよう」と放置されることが少なくないと指摘し、早期発見・早期治療のためには便潜血が1回でも陽性になったら必ず内視鏡検査を受けることが大切だとしています。同じQ&Aは、2日法のうち1回でも陽性と判定された場合は精密検査として大腸内視鏡検査を受けることが強く推奨される、とも述べています。

制度の側から見ても同じです。厚生労働省の指針(令和7年12月24日一部改正)が定める検診結果の区分は、便潜血陰性と要精検の2つしかありません。1回だけ陽性という第3の区分は用意されておらず、軽いほうの要精検という扱いも存在しません。つまり、1回だけだから軽いという判断は、読み取りが甘いのではなく、そもそも比べる先の区分がないところで下されていることになります。

陰性だった1回が意味を持たないわけではありません。ただ、そこから導けるのは、その日の便には検出されなかったということだけです。

参考:日本消化器内視鏡学会「大腸のQ&A」

便潜血陽性を翌年まで待っても情報が増えないことを示した図

翌年の検診の結果を見てから判断してよいのか

もう一つの理由が、来年もう一度受けてから決めよう、という先送りです。前の項で引用した学会のQ&Aが、これも並べて挙げていました。

この考え方の弱いところは、待っているあいだに得られる情報が何もないという点にあります。来年の結果が陰性だったとして、それは今年の陽性の原因が消えたことを意味しません。前の章で見たとおり、便潜血検査をもう一度受けることは精密検査の代わりにならないと国立がん研究センターが明記しています。1年空けたとしても、受け直しであることは変わりません。

そしてもう一つ、来年の結果はまだ出ていません。来年どちらの結果が出たとしても、今年の陽性が何から来たのかは、そこからは分からないままです。待っているあいだに今年の結果について新しい情報が増えるわけでもありません。

先に延ばすこと自体を責める話ではありません。今年の陽性について分かることは、今年のうちに調べたときにしか出てこない、というだけです。

便潜血が毎年のように陽性でも受けるかどうかを自分で決めない

毎年のように陽性が続くと、また同じことになると感じて足が止まりがちです。ここは条件によって案内が分かれるところなので、分けて書きます。

直近の大腸内視鏡検査で異常がなかった場合

国立がん研究センターは、直近の大腸内視鏡検査で異常がなく、その後の便潜血検査で陽性だった場合に再度精密検査を受ける必要があるかについて、まだ国として方針が決まっていませんとしています。そのうえで、受診するか迷っている場合は前回大腸内視鏡検査を受けた際の担当医と相談することとされています。

方針が決まっていないという記述がある以上、この記事で答えを作ることはできません。前回の検査の内容を把握している医師に相談する、というのがこの条件での案内になります。

一般に毎年のように陽性になる場合

日本消化器がん検診学会は、大腸に病気がないにもかかわらず便潜血が毎年陽性になることは多くないとしたうえで、便潜血陽性になったらその都度、精密検査が必要だとしています。それでも繰り返し陽性になる場合には主治医に相談する、と続きます。

2つの条件に共通しているのは、どちらも自分で決める話になっていないという点です。前回どこまで調べたかによって次に何をするかが変わるため、判断の材料を持っている側と話すことが案内の中身になっています。

便潜血の精密検査は受診率が低く国が市町村に周知を求めている

ここまでの理由は、どれも個人の判断のように見えます。ただ、同じ判断は全国で起きていて、国はそれを問題として扱っています。

国立がん研究センターは、大腸がん検診で精密検査が必要と判定された人のうち、実際に精密検査を受けた人の割合を集計しています。その値は71.5%で、5つのがん検診のなかで最も低い水準です。国は精検受診率を、本来はすべての対象者が受けることを目指す指標と位置づけています。

精検受診率と国が示す基準値
項目
大腸がん検診の精検受診率(令和4年度・市区町村のがん検診・便潜血検査・40歳から74歳・男女計・要精検者を分母とする) 71.5%
厚生労働省の検討会報告書(令和5年6月)が示す基準値 90.0%以上
71.5%という数字の読み方

この割合は、受けなかったことが確認された人と、受けたかどうかが把握できていない人の両方を含んだ残りから算出されています。引き算をして、残りの人が精密検査を放置したと読むことはできません
読み取れるのは、国が基準値として示している水準に届いていないという一点です。みんな受けていないから受けなくてよい、という話にもなりません。

この水準は、指針そのものにも書き込まれています。厚生労働省の指針(令和7年12月24日一部改正)は「大腸がん検診は、精密検査の受診率が他のがん検診に比べて低いことから、市町村は、その向上のため、精密検査の実施体制の整備を図るとともに、大腸がん検診において『要精検』とされた者については、必ず精密検査を受診するよう、全ての検診受診者に周知する」と定めています。

この一文は3つの点で読み違えやすいので、順に確かめておきます。まず、低いというのは他のがん検診と比べての話です。次に、受診率が低いことから周知する、という因果で前後がつながっています。そして、この文の宛先は市町村であって、患者への命令ではありません。必ずという語も、市町村に求められている周知の内容として書かれています。

指針はさらに、周知の際には精密検査を受診しないことにより、大腸がんによる死亡の危険性が高まるなどの科学的知見に基づき、十分な説明を行うこととしています。ここで言われている精密検査とは、便潜血陽性のあとに行われる大腸がん検診の精密検査のことです。国立がん研究センターも、精検受診率が低い場合は検診で早期発見が可能であったはずのがんを発見できず、検診の効果がないと説明しています。

参考:国立がん研究センター「がん検診のプロセス指標」

便潜血が陰性なら安心してよいのか?

便潜血が陰性なら安心してよいのか?

ここまでは陽性と言われた場合の話でした。では陰性と言われた場合はどうかというのが、この章の問いです。読者の立場が入れ替わりますが、扱っている検査は同じものです。

便潜血が陰性でも大腸のポリープやがんがないとは言い切れない

日本大腸肛門病学会は、「便潜血検査が陰性であったからと言って大腸にポリープやがんが全く無いとは言い切ることは出来ません。たとえ進行大腸がんがあっても便潜血検査が陰性になることもありえます」と述べています。

これは検査の性能が低いという話ではありません。便潜血検査が調べているのは便のなかの血液であって、病変そのものではないためです。出血していないタイミングの便を提出すれば、病変があっても検出されません

便潜血が陰性だったとき
言えること 提出した便から一定量以上の血液は検出されなかった
言えないこと 大腸にポリープやがんがない

国立がん研究センターは、免疫法の感度、つまり病変のある人をどれだけ陽性として拾えるかは、対象とした病変の進行度や算出方法によってかなりの差があると説明しています。数値の幅が大きいこと自体が、陰性という結果を一つの意味に固定できない理由になっています。

とはいえ、これは検査を否定する話ではありません。便潜血検査は大腸がんによる死亡率を下げる効果が確かめられている方法として推奨されていて、限界があることと有効であることは両立します。次の2つの項では、その限界をどう扱うかを条件ごとに分けます。

参考:日本大腸肛門病学会「大腸がん検診」

便潜血が陰性でも血便が出たときは受診を優先すると示した図

陰性でも血便が出るときは次の検診を待たずに受診する

まず、陰性と言われたあとに血便が出た場合です。この状況で優先されるのは、いま出ている症状のほうです。

一次情報の案内も同じ組み立てになっています。国立がん研究センターは、検診で「がんの疑いなし」と判定された場合について次回のがん検診を受けるよう案内したうえで、そのあとに血便などの症状があらわれたときは次回の検診を待つのではなく医療機関を受診するよう求めています。

言い換えると、陰性という結果を次の検診まで持ち越さないということです。結果票が保証しているのは提出した便についてであって、そのあとに起きたことまでは含まれていません。陰性だったのに血便が出た、という順序で悩む必要はなく、血便が出たという事実のほうを持って受診すれば足ります。

血便などの症状がないときも便潜血検査を定期的に受ける

もう一方の条件、症状がない場合はどうかというと、こちらは検診の受け方の話になります。

国立がん研究センターは、がん検診は症状のない健康な人を対象に行われるものだとしています。症状がないときこそ、便潜血検査が本来の役割を果たす場面だということです。

そのうえで、がんを完全に発見できる検査法はないため、がん検診は1回の受診ではなく推奨される方法で定期的に受けることが必要だとされています。1回の検診で見つからないこともあり、検診と検診の間に発生して急速に進行するがんもわずかながらある、とも説明されています。

この定期的にという条件が、前の項で見た限界への答えになっています。1回の結果で判断するのではなく、間隔を空けずに繰り返すことで検出できる機会を増やすという設計です。対象年齢と受診間隔が40歳以上・年1回と定められているのは、利益と不利益のバランスからこの受け方が望ましいとされているためです。

大腸カメラで血便の原因を確かめる流れと分かること

大腸カメラで血便の原因を確かめる流れと分かること

確かめる方法があるとここまで書いてきました。その方法の中身と、受けるまでの流れをここで説明します。

精密検査の第一選択は全大腸内視鏡検査

厚生労働省の指針(令和7年12月24日一部改正)は、大腸がん検診の精密検査の第一選択は全大腸内視鏡検査としています。全大腸内視鏡検査は、一般に大腸カメラ検査と呼ばれているものと同じ検査です。

第一選択という言葉は、順番が全員で固定されているという意味ではありません。同じ指針は、もう一つの経路も定めています。

指針が定める精密検査 内容
第一選択 全大腸内視鏡検査
全大腸内視鏡検査が困難な場合 S状結腸内視鏡検査と注腸エックス線検査(二重造影法)の併用

あわせて読むと、全大腸内視鏡検査が難しい方には別の組み立てが用意されていることが分かります。なお注腸エックス線検査については、十分な精度管理の下で専門家により実施される場合に限る、という条件が指針に付されています。検査名だけを並べて選べるものではない、ということです。

どの経路になるかは、体の状態やこれまでの治療歴を踏まえて医師が判断します。ここで述べているのは国が定めた枠組みであって、個々の医療機関の運用ではありません。

大腸の中を直接見て血便の原因を調べる

では、その検査で何を見ているのか。国立がん研究センターの説明では、下剤で大腸を空にしたあとに肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸の全部位を観察して、がんやポリープなどの病変の有無を確認するという流れになります。必要に応じて組織を採取し、悪性かどうかを診断します。

血便の相談でこの検査が案内されるのは、ここまでの章で色や量では分けられないとしてきた点を、直接見て確かめられるからです。

  • 色や量では分けられなかった出血の場所を、直接見て確かめられる
  • 痔があるかどうかとは別に、大腸の側に病変があるかを調べられる
  • 見つかった病変が悪性かどうかを、組織を採って判断できる

ただし、受ければ原因が必ず分かると言えるわけではありません。観察できる範囲や、その日の腸の状態によって結果は変わります。分かることと分からないことの線引きは、次の項で扱います。

血便の原因を調べる検査のリスクと限界

受けるかどうかを決めるには、良い面だけでは足りません。

国立がん研究センターは、全大腸内視鏡検査についてまれに出血や穿孔(腸に穴が開く)などが起こることがあるとしています。日本消化器内視鏡学会も、検査に伴って思わぬ症状が起こること(偶発症)があるとし、検査前の準備として常用薬の調整や食事の制限、下剤の内服などが必要になることを説明しています。負担がないわけではない検査だという前提は、受ける側も持っておいたほうがよい部分です。

限界のほうも一次情報に書かれています。同じ説明のなかには、ポリープが見つかっても治療せず次回の検診になることもあるという記述があります。見つかったものがすべてその場で処置されるとは限りません。

こうした不利益があることを説明したうえで受診を検討してもらう、というのが指針の求めている進め方でもあります。指針は、偽陰性や偽陽性、偶発症などを不利益として挙げ、対象者がそれらを踏まえて受診を検討できるようにすることとしています。

池袋かめさん内科では事前の診察から検査日を決める

最後に、実際に受けるまでの流れです。池袋かめさん内科では、大腸カメラ検査を受ける前に診察を行い、そこで検査日を決めます。順序は次のとおりです。

  • 診察で症状や既往を確認し、検査を行うかどうかを判断する
  • 検査日を予約する(大腸カメラ検査は毎週金曜日の午後に予約制で行っています)
  • 検査前の準備として、腸管洗浄剤(下剤)を自宅で服用していただく

検査自体の所要時間は通常30分程度で、個人差があります。ご希望された方には鎮静剤(静脈麻酔)を用いた検査も行っています。ポリープが見つかった場合には、可能な限りその場で切除を行っています。鎮静剤を使ったときの状態と当日の注意は、よくある質問で触れます。

診察の予約はWeb予約公式LINEで受け付けています。初診の方のお電話でのご予約は承っておりませんので、この2つのどちらかをご利用ください。大腸カメラ検査のページには、検査でわかる病気や進め方をまとめてあります。

血便を様子見する前に知っておきたいこと

血便を様子見する前に知っておきたいこと

ここまでで受診と検査の話をしてきました。最後に、それでもやはり様子を見てよいのではないかと考えるときに出てくる3つの理由を、振り返る形で確かめておきます。

早期の大腸がんは血便などの症状がほとんど出ない

1つめは、症状が軽いから大丈夫だろうという受け取り方です。

国立がん研究センターは、大腸がんについて早期の段階では自覚症状はほとんどないとし、進行すると便に血が混じる、便の表面に血液が付着するなどの症状があらわれ、なかでも頻度が高いのは便に血が混じる・血が付着するといった症状だとしています。

この2つの記述は矛盾していません。原文が述べているのは症状が現れる順序であって、血便が出ているから進行している、という意味ではありません。ここを取り違えると、症状の重さから病気の段階を推し量る方向に話が向かってしまいます。

言えるのは、症状の軽さは段階の指標として使えないということです。日本消化器内視鏡学会は、大腸がんは早期に発見すれば高い確率で治癒が可能な病気だとしたうえで、初期には自覚症状がほとんどないため定期的な検診による早期発見が重要だと説明しています。早期に発見すればという条件が付いているところが、この記述の要点です。

年齢が若いというだけで血便から大腸がんを除外できない

2つめは、この年齢なら考えなくてよいだろうという受け取り方です。ここは実際のデータで確かめられます。

年齢階級別の罹患率(人口10万人あたり・2023年)
年齢階級 男性 女性
30〜34歳 7.2 6.2
40〜44歳 26.8 23.4
50〜54歳 74.2 60.0
60〜64歳 204.1 116.1

国立がん研究センターの全国がん登録データによる大腸がんの罹患率から、傾向を確かめるために4つの年齢階級を抜き出しました。年齢が上がるほど大きく増えるという傾向は、この数字のとおりです。厚生労働省の指針(令和7年12月24日一部改正)も、我が国の大腸がんの死亡率及び罹患率は40歳代後半から増加を示し、特に50歳以降の増加が著しいとしています。

ただし、読み方には2つ注意が要ります。1つは、この数字の母集団が日本の人口全体であって、血便が出た人ではないという点です。血便が出た人のうち何人が大腸がんかを示した数字ではありません。もう1つは、若い年齢階級でも数字がゼロにはなっていないという点です。

若い年齢では相対的に少ない、というところまでが読み取れる内容です。少ないことと、自分が当てはまらないことは別の話になります。年齢は受診しない理由にはならず、受診したときに医師が考慮する条件の一つ、という位置づけになります。

参考:国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん 罹患統計」

血便がいったん止まっても原因が確かめられたことにはならない

3つめは、もう出ていないから大丈夫だろうという受け取り方です。出血が止まると、そのまま受診を先送りしたくなる方もいます。

止まること自体は、めずらしいことではありません。日本大腸肛門病学会は、痔核からの出血について、排便のときに出て排便が終われば自然に止まるものだと説明しています。ただし同じ学会は、そうした出血が直腸がんの出血ととても良く似ているとも述べていました。止まり方が痔の説明と一致していても、痔だと確かめたことにはならないということです。

整理すると、出血が止まったときに分かったのは、出血が止まったという事実だけです。何から出ていたのかという問いは、止まっても解けていません

止まったという情報は、受診しない理由ではなく、伝える情報として使ってください。いつ出ていつ止まったかは、診察で聞かれる内容そのものです。市販の薬で止めた場合の扱いは、このあとのよくある質問で触れます。

血便と便潜血についてよくある質問

血便と便潜血についてよくある質問

最後に、血便と便潜血について寄せられることの多い質問をまとめます。

切れ痔による出血かどうかは自分で判断できますか?

自分で判断することはできません。日本大腸肛門病学会は、出血の状態から多くの病気がわかるとしながらも、それは目安に過ぎないとしています。痔による出血と直腸がんの出血はとても良く似ているとも述べられていて、見た目で切り分ける前提が成り立ちません。

ただし、判断できないことと分からないままにするしかないことは別です。大腸の中を直接観察すれば、出血の原因を調べることができます。自分で結論を出すのではなく、確かめる手段のほうを選んでください。

血便が出たときがんの可能性はどう考えればよいですか?

確率で判断する方法はありません。血便が出た人のうち何人がどの病気だったかを示した公的な数値は、確認できた一次情報のなかにありませんでした。数字を探しても答えは出てこない、というのが実情です。

国立がん研究センターは、便に血が混じるなどの症状について、痔などの良性の病気でも起こるとしたうえで、自己判断せず早めに受診するよう案内しています。可能性の高低を見積もることではなく、原因を確かめることが答えになる問いです。

紙に血が付く程度でも受診したほうがよいですか?

量の多い少ないで受診の要否は変わりません。前の章で見たとおり、切れ痔でも便器が真っ赤になることがあると学会が述べています。出血量だけでは、原因も受診の要否も判断できません

国立がん研究センターは、血便などの症状がある場合には検診ではなくすぐに医療機関を受診してほしいとしていて、この案内に量の条件は付いていません。紙に付く程度であっても、次の健診を待たずに相談してください。

便潜血の結果に付いている記号で意味は変わりますか?

結果票に「+」や「++」などの表記が付いていることがありますが、表記のしかたは検査を行った施設によって異なるため、記号の数から重さを読み取ることはできません

制度の側から見ると、厚生労働省の指針(令和7年12月24日一部改正)には、大腸がん検診の結果の区分が2つしか置かれていません。記号の数で強さが分かれる仕組みにはなっておらず、要精検と書かれていれば次に来るのは精密検査です。表記の意味が分からない場合は、検査を受けた機関に確認してください。

記号では決まらない

便潜血検査の採便が1日分しかできなかったときはどうしますか?

まず、提出した1日分が無駄になるわけではありません。国立がん研究センターは、1日分でも便潜血検査が陽性となったら精密検査を受ける必要があるとしています。1日分の結果でも判定の材料になるということです。

一方で、2日分を採ることには理由があります。がんからの出血は間欠的で、出るときもあれば出ないときもあるため、複数回調べたほうが見つかる可能性が高くなります。提出した1日分が陰性だった場合も含めて、残りの1日分を出せるのか、採り直しができるのかは検診の実施方法によって違うので、受けた検診機関に確認してください。

血便が出ていないのに便潜血が陽性になることはありますか?

あります。日本消化器がん検診学会は、便潜血が陽性でも精密検査で大腸がんやポリープが見つからないことは多々あるとし、その多くは生理的出血だと説明しています。ごくわずかな出血は誰にでもあり、採便時に便を多く取り過ぎると陽性になりがちとも書かれています。

ただし、この説明は精密検査を受けなくてよい理由にはなりません。同じQ&Aは、痔の有無にかかわらず便潜血陽性の場合には必ず精密検査を受けてください、と続けています。原因が何であったかは、調べた後に分かることです。

市販の痔の薬で血が止まれば受診しなくてよいですか?

薬で出血が止まったとしても、何から出血していたのかは分からないままです。薬で止まったことで確かめられたのは、その出血が薬で収まったという事実までです。なお日本大腸肛門病学会は、出血が続くときには大腸内視鏡検査などの精密検査が必要だとしています。

同学会は、一人で悩まず相談するようにとも案内しています。使った薬の名前と、いつからいつまで使ったかを伝えたうえで、一度診てもらってください。

止まっても分からない

大腸カメラで異常がなかったあとの便潜血陽性はどう扱われますか?

この場合の扱いは、まだ定まっていません。国立がん研究センターは、直近の大腸内視鏡検査で異常がなく、その後の便潜血検査で陽性だった場合に再度精密検査を受ける必要があるかについて、まだ国として方針が決まっていませんと明記しています。

そのうえで、受診するか迷っている場合は前回大腸内視鏡検査を受けた際の担当医と相談することとされています。前回どこまで観察できたか、何年前だったかによって判断が変わるため、その情報を持っている医師に相談することが案内されています。

大腸カメラは受診した当日に受けられますか?

池袋かめさん内科では、受診当日に大腸カメラ検査を受けていただくことはできません。検査の前に診察を受けていただき、そこで検査日を決める流れになります。

理由は、検査前に腸管洗浄剤(下剤)を自宅で服用していただく準備が必要になるためです。大腸カメラ検査は毎週金曜日の午後に予約制で行っています。なお、初診の方のお電話でのご予約は承っておりませんので、Web予約または公式LINEをご利用ください。

うとうとした状態で大腸カメラを受けられますか?

ご希望された方には、鎮静剤(静脈麻酔)を用いた大腸カメラ検査を行っています。うとうとと眠っているような状態で検査を受けていただけますが、意識が完全になくなるわけではありません

鎮静剤を使用した場合、検査後しばらくは判断力や反応が鈍くなります。当日は車やバイク、自転車でのご来院は控えてください。使用するかどうかは事前の診察のときにご相談いただけます。

心配いらない血便はあるのかという問いへの整理〜まとめ〜

見た目や量から心配いらないと決められる目安を、確認できた一次情報は示していませんでした。日本大腸肛門病学会が述べているのは、出血の状態から病気を推測できるとしてもそれは目安に過ぎない、というところまでです。
健診の便潜血検査についても同じで、2日分のうち1日分、つまり1回だけの陽性でも精密検査の対象になります。厚生労働省の指針(令和7年12月24日一部改正)が定める検診結果の区分は便潜血陰性と要精検の2つで、1回だけ陽性という区分は置かれていません。翌年の結果を待っても、便潜血を受け直しても、原因は分からないままです。
つまり、心配いらないかどうかは確かめた後に分かることで、確かめる前に決められるものではありません。血便が出ているなら次の健診を待たずに診療として受診する、便潜血で要精検と言われたなら精密検査を受ける。この記事から持ち帰っていただきたいのは、この2つだけです。

受診のときに伝えていただきたいのは、いつからどのくらいの頻度で出ているか、色や量はどうだったか、痛みなどほかの症状があるか、これまでに大腸の検査を受けたことがあるか、という内容です。分かる範囲でかまいません。

血便が出ている方、健診で便潜血陽性と言われた方は、一度ご相談ください。池袋かめさん内科では、内科診療で症状を伺ったうえで、必要な場合は大腸カメラ検査をご案内しています。健康診断から精密検査まで当院でお受けいただけます。

ご予約はWEB予約公式LINEから、お問い合わせは電話 03-3986-4466(受付 9:00-12:30 / 14:00-18:00)で承っています。診療時間は9:00-12:30と14:00-18:00で、月曜と日祝は休診、土曜は午前のみです。

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