大腸カメラでわかる病気

大腸憩室から起こる憩室炎と憩室出血の違い

大腸カメラやCTの結果で「大腸憩室があります」と言われ、そこではじめて憩室という言葉を知ったという方は少なくありません。お腹が痛いわけでも血便が出たわけでもないのに、病名だけが手元に残った状態です。

気になって調べてみると、憩室炎で入院した話や、憩室出血で救急を受診した話、避けたほうがよいとされる食品の一覧が次々に出てきます。ところが、それぞれがどの状態の人に向けて書かれた話なのかが示されていないため、読み進めるほど自分が今どこにいるのか分からなくなります。

この記事では、大腸憩室症・大腸憩室炎・大腸憩室出血の3つを主語で分けたうえで、日本消化管学会のガイドラインをはじめとする一次情報にどこまで書かれているのかを整理します。数値や線引きは、出典と条件をつけたまま扱います。

なお、ここに書いた内容は一般的な整理です。手元の検査結果や今ある症状をどう扱うかは、診察した医師が最終的に判断します。日本消化管学会「大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン」(2017年12月・初版)も、医師と患者のやり取りを通じて方針を決めていくための資料であり、医師の裁量を否定するものではないとしています。

憩室があると言われた方がまず押さえる4点

大腸憩室は大腸の壁にできたくぼみ(袋状のふくらみ)で、憩室があるだけの状態を大腸憩室症と呼びます。2017年版(初版)のガイドラインは、憩室があるだけの状態に対する治療を扱っていません。
そこから起こる合併症は2つです。急な腹痛や発熱で気づかれる大腸憩室炎と、腹痛を伴わない血便で気づかれる大腸憩室出血があります。
憩室を持つ人からどれくらい出血が起こるのかは、日本の研究で数値が示されています。詳しくは違いの章で扱います。
どうなったら受診なのか、どこからが救急なのかは前半の受診の章で、食事でダメなものがどこまで決まっているのかは食事の章で扱います。

目次

大腸憩室とは大腸の壁にできるくぼみ

大腸憩室とは大腸の壁にできるくぼみ

大腸憩室とは、大腸の壁の筋肉の層(固有筋層)が欠けた部分から、粘膜とその下の層(粘膜下層)が外側へ袋状に突き出した状態を指します。腸の内側から内視鏡で見ると、壁にできた小さな凹みとして観察されます。外側へ膨らんだ結果として内側が凹んで見えているだけで、腸の壁が破れているわけではありません

憩室があること自体を自分で感じ取る手がかりは乏しく、大腸カメラやCTなど別の目的で受けた検査で指摘されて、結果票の記載ではじめて知ることになります。この章では、まず言葉の意味と、憩室が大腸のどのあたりにできるのかを押さえます。

大腸憩室の読み方と大腸憩室症という病名

憩室は「けいしつ」と読みます。憩室のある状態そのものを指す病名が大腸憩室症です。

日本で大腸憩室を扱う主な診療ガイドラインは、日本消化管学会が2017年12月に発行した「大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン」(初版)です。日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本インターベンショナルラジオロジー学会の協力のもとで作成されました。

この表題の付き方には、病名の使われ方がそのまま表れています。大腸憩室症という語が外側に置かれ、その括弧の中に憩室出血と憩室炎が入っています。本文も次の3つの部立てで構成されています。

  • 大腸憩室の疫学
  • 大腸憩室出血の疫学と診断・治療
  • 大腸憩室炎の疫学と診断・治療

言葉の上下関係は次の章で詳しく扱います。

参考:日本消化管学会「大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン」(2017年12月・初版)

大腸憩室は大腸のどこにできるのか

大腸憩室のできる場所には偏りがあり、日本人では右側結腸に多いとされています。右側結腸は盲腸や上行結腸のある側、左側結腸は下行結腸やS状結腸のある側を指します。

2017年版(初版)のガイドラインでは、日本の50歳未満の憩室保有者では75%近くが右側結腸に憩室を認めるとされています。70歳以上になると、60%で左側結腸にも憩室が認められます。年齢が上がるにつれて左側の割合が増えていくという分布です。

年齢 憩室のある部位の傾向(日本)
50歳未満 75%近くが右側結腸に認められる
70歳以上 60%で左側結腸にも認められる

米国では分布が反対で、大腸憩室の80%が左側結腸にあり、そのうちS状結腸が70%を占めます。海外の解説を読むときは、前提となる部位の分布が日本とは違うことを踏まえておく必要があります。

なお、憩室のある場所は、あとで扱う大腸憩室炎(結腸憩室炎とも呼ばれます)が起こる場所とも関わります。ここで扱っているのは憩室のある場所であって、痛みの出る場所の話ではありません。

大腸憩室ができやすい場所(右側結腸と左側結腸)を示した図

大腸憩室は1個とは限らず多発することが多い

大腸憩室は1個だけできるとは限らず、多発することが多いとされています。検査結果に「多発憩室」と書かれることがあるのは、このためです。

日本大腸肛門病学会の解説では、多発した憩室が炎症・出血・穿孔・腸が狭くなるといった状態の原因となることがあると説明されています。原因となることがあるという書き方であって、憩室があればいずれそうなるという意味ではありません。

症状については、米国消化器病学会(ACG)が、大腸憩室症のある人の多くは症状がなく、憩室があること自体に気づいていないこともあると説明しています。日本消化管学会のガイドライン本文にはこの点を正面から述べた記載が見当たらないため、ここは米国の学会の説明として扱います。

参考:日本大腸肛門病学会「大腸憩室出血 虚血性腸炎」(市民のみなさまへ)

参考:米国消化器病学会(ACG)「Diverticulosis & Diverticulitis」

大腸憩室症と大腸憩室炎と大腸憩室出血は何が違う?

大腸憩室症と大腸憩室炎と大腸憩室出血は何が違う?

先に短く答えると、憩室に炎症が起きるのが大腸憩室炎(憩室炎)、憩室から出血するのが大腸憩室出血(憩室出血)です。気づかれ方も、憩室炎は急な腹痛や発熱、憩室出血は腹痛を伴わない血便と分かれます(症状の詳しい線引きは次の受診の章で扱います)。

そのうえで押さえておきたいのが、この3つの言葉が横並びではないという点です。この章では、上下関係を順に確認していきます。

大腸憩室症(憩室症)は大腸に憩室がある状態そのものを指す

大腸憩室症とは、大腸に憩室がある状態そのものを指す言葉です。前章で見たガイドラインの表題も、この語を憩室出血と憩室炎を含む上位概念として使っています。

そのため、大腸憩室症という病名は「憩室から何かが起きている状態」を表しているわけではありません。憩室があるだけの人も、過去に憩室炎を起こしたことがある人も、憩室を持っているという点では同じ大腸憩室症です。検査結果に大腸憩室症と書かれていたとしても、それだけでは何かが起きたことを意味しません。

反対に、大腸憩室症を「合併症のない状態」と読み替えるのも正しくありません。この語は状態そのものの呼び名であって、合併症の有無で線を引く言葉ではないからです。

大腸憩室炎と大腸憩室出血は大腸憩室から起こる2つの合併症

大腸憩室から起こる主な合併症は、大腸憩室炎と大腸憩室出血の2つです。どちらも憩室があるところから始まりますが、気づかれ方は次のように分かれます。

  • 大腸憩室炎: 急性の腹痛または発熱で気づかれる
  • 大腸憩室出血: 腹痛を伴わない突然の血便で気づかれる

2017年版(初版)のガイドラインでは、大腸憩室炎の診療は「大腸憩室炎を疑う急性の腹痛または発熱を有する患者」から始まる流れで整理されています。ここは腹痛かつ発熱ではなく、腹痛または発熱である点が大切です。片方しかなくても、大腸憩室炎が疑われる入口に立っていることになります。

一方、大腸憩室出血について日本大腸肛門病学会は、腹痛を伴わずに突然、鮮やかな血液または赤黒い血液が多量に出るのが特徴だと説明しています。腹痛を伴わないという点が、憩室炎との分かれ目です。

いずれも受診のきっかけになる症状です。どこからが受診で、どこからが救急なのかは次の章で扱います。

大腸憩室疾患は大腸憩室炎と大腸憩室出血をまとめた呼び方

大腸憩室疾患とは、大腸憩室出血と大腸憩室炎を指す言葉です。

注意したいのは、大腸憩室疾患は合併症を起こした状態を指す語であり、憩室があるだけの人を含まないことです。大腸憩室症が状態そのものの呼び名であるのに対し、大腸憩室疾患はそこから起きた2つを束ねた呼び名だと考えると整理しやすくなります。

言葉 何を指すか
大腸憩室 大腸の壁にできたくぼみそのもの
大腸憩室症 大腸に憩室がある状態そのもの(上位概念)
大腸憩室疾患 大腸憩室炎と大腸憩室出血をまとめた呼び方

なお、この分野のガイドラインには2026年2月に改訂第2版が発刊されています。本記事の引用は、本文が公開されている2017年版(初版)に基づいています。

参考:日本消化管学会「大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026(改訂第2版)発刊のお知らせ」

大腸憩室症・大腸憩室・大腸憩室炎・大腸憩室出血・大腸憩室疾患の関係を整理した図

大腸憩室がある人のうちどれくらいが大腸憩室炎や大腸憩室出血になるのか

もっとも気になるのは、憩室を持っている人のうちどれくらいが合併症に進むのかという点でしょう。2017年版(初版)のガイドラインは、大腸憩室保有者の累積出血率として1年で0.2%・5年で2%・10年で10%という日本のコホート研究の数値を示しています。

この3つの数値は、そのままの形で読むのが唯一の読み方です。「ほとんど起きない」とも「10年で1割も起きる」とも要約せずに、期間ごとの数値として受け取ってください。なお、この累積率が示されているのは出血についてであり、大腸憩室炎の累積発症率ではありません

大腸憩室炎の多さについては、大腸憩室炎は大腸憩室出血より3倍程度多いという記載があります。ただしこの3倍という比較の根拠は入院した患者数の比較であり、憩室を持つ人あたりの発症率を比べた数値ではありません。2つを掛け合わせて憩室炎の累積率を計算することもできません。

期間 大腸憩室保有者の累積出血率(日本)
1年 0.2%
5年 2%
10年 10%

参考:日本消化管学会「大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン」(2017年12月・初版)本文PDF

大腸憩室で受診が必要なのはどんなとき?

大腸憩室で受診が必要なのはどんなとき?

憩室があると言われた方にとって、いちばん知りたいのは「どうなったら病院へ行くのか」でしょう。2017年版(初版)のガイドラインは、大腸憩室炎の診療を急性の腹痛または発熱から始まる流れとして整理しています。ここが受診のきっかけになる線です。

大腸憩室出血のほうは別の入口を持っています。この章では、憩室炎・憩室出血・救急の3つに分けて、それぞれの受診の目安を確認します。

疑うもの 受診のきっかけになる症状 受診の目安
大腸憩室炎 急な腹痛または発熱(両方そろっている必要はない) 経過を見るより診察を受ける
大腸憩室出血 腹痛を伴わない多量の血便 受診して原因を確かめる
救急を考える状態 多量の血便に、ふらつき・血の気が引く・動悸を伴う 翌日の外来を待たずに救急

大腸憩室炎を疑うのは急な腹痛または発熱があるとき

膿瘍(膿がたまった状態)や穿孔を伴わない大腸憩室炎の症状として、ガイドラインには腹痛・憩室のある部位に限局した圧痛(押したときの痛み)・発熱・嘔気・嘔吐が挙げられています。この5つは比較的軽い側の憩室炎について書かれた項目で、膿瘍や穿孔を合併した場合の記載は別に置かれています。

  • 急にお腹が痛くなり、痛みが引かずに続いている
  • 押すと特定の場所だけが強く痛む
  • 腹痛とともに熱が出た
  • 吐き気や嘔吐を伴っている

受診の入口は腹痛または発熱であり、両方そろっている必要はありません。どちらか一方でも急に出てきたのであれば、経過を見るよりも診察を受けたほうが判断は早くなります。

一方で、この症状の並びは自己診断のための表ではありません。症状の組み合わせから憩室炎かどうかを決めることはできないため、あくまで受診のきっかけとして使ってください。

大腸憩室出血を疑うのは腹痛を伴わない多量の血便

日本大腸肛門病学会は、腹痛を伴うことなく突然に鮮やかな出血または赤黒い出血を多量に認めた場合には、憩室出血を疑うとしています。とくに高齢の方で、解熱鎮痛薬や抗血栓薬を使っている場合には強く疑う必要があるとされています。

2017年版(初版)のガイドラインにも、大腸憩室出血は痛みを伴わない血便を呈することが多いという記載があります。腹痛がないという点が、腹痛または発熱から始まる憩室炎との分かれ目です。

ただし、これは「疑います」という書き方であり、腹痛のない血便がすべて憩室出血だという意味ではありません。ガイドラインは同じ箇所で、下痢や腹痛を伴う場合には虚血性腸炎や炎症性腸疾患などの可能性が高くなり、さらに発熱があれば感染性腸炎などがより疑わしくなるとしています。血便の見た目だけで原因を決めることはできないという前提は変わりません。

参考:日本大腸肛門病学会「大腸憩室出血 虚血性腸炎」(市民のみなさまへ)

血便そのものの見分け方や、健診の便潜血が陽性だったときにどう考えるかは、心配いらない血便はあるのかで扱っています。

大腸憩室出血でふらつきや血の気が引くときは救急へ

翌日を待たずに救急を考える状態
多量の血便に、立ち上がるとふらつく、血の気が引く、動悸がするといった感覚を伴うときは、翌日の外来を待たずに救急の受診を考えてください。血便が出たときに待てるかどうかを分けるのは、出血の量と全身の状態です。

ガイドラインでは、大腸憩室出血が疑われる患者に対して診療の現場でまず行われるのは、意識障害(ふらつき)・血圧・脈拍といった全身状態の評価と安定化だとされています。この評価が出血の重症度の予測につながり、点滴や輸血が必要かどうかの判断に使われます。ふらつきや血の気が引く感じは、その評価をその場で受けるべき状態に入っているサインです。

もう一点、多量の血便がある場合は胃や十二指腸など上部の消化管からの出血の可能性もあるため、その鑑別が必要とされています。憩室があると言われているからといって、出血の場所が憩室だと決めてかかることはできません。

大腸憩室は何科にかかればよいのか

大腸憩室に関する相談先は、内科または消化器内科です。腹痛や発熱、血便といった症状は消化管以外が原因のこともあるため、まず内科で全身の状態を確認し、必要に応じて検査を進める流れになります。

診療科を選ぶうえで知っておきたいのが、憩室炎の診断には画像検査が要るという点です。ガイドラインでは、大腸憩室炎の診断は身体所見や血液検査だけでは不十分であり、CTまたは超音波といった画像検査が必要になるとされています。

つまり、診察と採血だけで憩室炎かどうかが決まるわけではありません。受診したその日に画像検査まで進むとは限らないため、症状が続くのに様子を見てしまうことのほうが判断を遅らせる要因になります。

急な腹痛や発熱・血便が続くときの相談先
急な腹痛や発熱、血便が出たときは、まず全身の状態を確認し、検査が必要かどうかを判断するところから始まります。池袋かめさん内科の内科診療は、予約なしで当日受診いただけます。
ただし発熱がある場合は発熱外来でのご案内となります。ふらつきや血の気が引く感じを伴う多量の血便のときは、当院の受診をお待ちいただくより救急への受診をご検討ください。

大腸憩室ができる原因と合併症になりやすい人

大腸憩室ができる原因と合併症になりやすい人

原因という言葉には、実は2つの別々の問いが混ざっています。憩室そのものができる要因と、憩室から合併症が起こる危険因子です。できる要因は腸にかかる圧力の話であり、危険因子は憩室炎と憩室出血で別々に整理されています。

インターネット上では「憩室炎の原因はストレス」という説明を見かけることがあります。ただし2017年版(初版)のガイドラインが大腸憩室炎の危険因子として挙げているのは喫煙と肥満であり、ストレスは危険因子として挙げられていません。記載がないことは「関係がないと証明された」という意味でもないため、ここでは一次情報に挙がっている項目だけを扱います。

大腸憩室は腸の中の圧力が高まることでできる

憩室ができる原因としては、食物繊維の摂取低下や便秘などによる腸管内圧の亢進が関与しているとされています。腸の中の圧力が高まった結果、大腸の壁の弱い部分から粘膜が外側へ押し出される、という説明です。

ここで気をつけたいのは、あくまで「関与しているとされる」という留保つきの記述である点です。便通が乱れがちだったから憩室ができた、と単純に結び付けることはできませんし、反対に食物繊維を摂れば憩室ができない、という意味にもなりません。

そして、いったんできた憩室が原因を取り除けば元に戻るという記載も、一次情報には見当たりません。この点は経過を扱う章で改めて触れます。

腸の中の圧力が高まって大腸憩室ができる仕組みの図

大腸憩室がある人は日本でどれくらいいるのか

2017年版(初版)のガイドラインには、日本の2001〜2010年の統計(平均年齢52歳)で大腸憩室の保有率は23.9%と報告されている、と記載されています。この23.9%の母数は大腸内視鏡を受けた人であり、日本人全体の有病率ではありません。

一般成人の4人に1人という形で紹介されることがありますが、それは母数の置き換えです。大腸カメラを受けた集団のうちおよそ4人に1人、と読むのが正確な形になります。

欧米では大腸憩室を持つ人がさらに多く、60歳以上では保有率が50%を超えるとされ、日本の保有率は欧米より低いとされています。ただし国内でも大腸憩室を持つ人は増加傾向にあると記載されており、検査で憩室を指摘されること自体は珍しいことではないと分かります。

参考:日本消化管学会「大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン」(2017年12月・初版)本文PDF

大腸憩室炎で危険因子とされているのは喫煙と肥満

大腸憩室炎の危険因子として、ガイドラインは喫煙と肥満を挙げています。喫煙は合併症の増悪に関与している可能性が高いとされ、肥満も関連が強いと考えられる、というのがガイドラインの整理です。そのうえで、ほかにエビデンスの高い危険因子はないと明記されています。

この「ほかにない」という一文は重要です。年齢や性別、性格、生活習慣といった属性から憩室炎になりやすい人を一覧にする根拠は、少なくとも2017年版(初版)には置かれていません。

飲酒・食物繊維・NSAIDs(解熱鎮痛薬)については相反する報告があり、大腸憩室炎の危険因子としては結論が出ていないとされています。結論が出ていないという言い方であって、関係がないと確認された項目ではない点も読み落とさないようにしてください。

大腸憩室出血に喫煙や飲酒が影響するかは分かっていない

大腸憩室出血の危険因子は、憩室炎とは別に整理されています。ガイドラインでは、肥満は大腸憩室出血のリスクとされ、日本の検討では体重やBMIそのものより内臓脂肪の増加が関与していると報告されています。

一方で、喫煙・飲酒と大腸憩室出血との関連は明らかではない、というのがガイドラインの記載です。憩室炎では喫煙が挙がるのに対し、出血では挙がらないという違いがあるため、大腸憩室のリスクは喫煙と肥満だと一括りにすることはできません

主語 ガイドラインが挙げている危険因子
大腸憩室炎 喫煙(合併症の増悪への関与)・肥満
大腸憩室出血 肥満(内臓脂肪の増加が関与)。喫煙と飲酒は関連が明らかでない

年齢と性別についても記載があります。大腸憩室出血は高齢の方に多く、日本では男性に多い傾向がみられるとされています。国内の報告では、大腸憩室出血を起こした人の年齢層は39歳未満0.1%・40〜59歳19.2%・60歳以上80.6%でした。

この内訳は出血を起こした人の中での構成比であり、その年代の人が出血する確率ではありません。また、男性に多いのはあくまで傾向としての記述で、米国のNIH(NIDDK)のデータでは男女差がないとされているため、男性の病気という言い方はできません。

大腸憩室炎はどんな症状が出てどう治療するのか

大腸憩室炎はどんな症状が出てどう治療するのか

大腸憩室炎の症状は、先に触れたとおり腹痛・憩室のある部位に限局した圧痛・発熱・嘔気・嘔吐です。痛みは急に始まり、その後も引かずに続くという形で自覚されることが多く、熱を伴うかどうかは人によって分かれます。

診療の流れも2017年版(初版)のガイドラインに示されています。急性の腹痛または発熱があれば、まず身体所見と血液検査を確認し、膿瘍・穿孔・腹膜炎を合併していないかの評価が必要な場合には画像検査を追加します。膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎と診断された場合、高熱や強い炎症反応がなければ、抗菌薬を使いながら外来で経過をみることが多いとされています。入院が必要な場合には、抗菌薬に加えて食事制限と腸管安静を行うことが多いとされています。

大腸憩室炎が起こりやすいのは右側結腸か左側結腸か

日本では60歳未満で右側結腸の憩室炎が多く、より高齢になると左側結腸の憩室炎が多いとされています。憩室そのものの分布と同じ向きの傾向です。

読みやすく整理すると、右側結腸には盲腸と上行結腸が、左側結腸には下行結腸とS状結腸が含まれます。S状結腸憩室炎は左側結腸の憩室炎、上行結腸憩室炎は右側結腸の憩室炎にあたり、下行結腸憩室炎も左側です。海外の解説では左側が中心に書かれているため、右側と書かれた検査結果を持つ方が読むとかみ合わないことがあります。

呼び方 どちら側か
上行結腸憩室炎 右側結腸
下行結腸憩室炎 左側結腸
S状結腸憩室炎 左側結腸

痛みの感じ方については、憩室のある側に痛みが出ることが多く、日本人に多い右側結腸の憩室炎では右下腹部の痛みとして自覚されることがあります。ただしここで扱っているのは憩室のある場所であって、痛みの場所から病名を決めるための対応表ではありません。右下腹部が痛いから憩室炎だ、とは言えません。

大腸憩室炎か虫垂炎かは診察と血液検査だけでは分からない

右下腹部の痛みという点で紛らわしいのが急性虫垂炎です。ガイドラインは、日本人に多い右側大腸憩室炎の診断時には急性虫垂炎との鑑別が重要であり、両者の鑑別は身体所見や血液検査だけでは不十分で、CTまたは超音波といった画像検査が必要になるとしています。

医師が診察して採血をしても、そこまでで区別がつかないことがあります。つまり、症状の出方から自分で見分けることはできません

自己判断で市販の痛み止めを使いながら様子を見ると、痛みが和らいだぶんだけ受診が遅れることもあります。薬の扱いについては、薬の章で改めて整理します。

大腸憩室炎に抗菌薬は必ず必要なのか

膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎について、ガイドラインは抗菌薬は不要とする報告もあるが日本人のデータがなく不明であり、現状では抗菌薬の投与は許容されるとしています。推奨の強さは「実施することを提案する」で、合意率は100%です。

背景として、近年の海外のランダム化比較試験では、抗菌薬を投与した場合としなかった場合で合併症や再発率に差が生じないことが示されている一方、アジア地域での同様の検討は行われていないと解説されています。

したがって、抗菌薬が要るとも要らないとも言い切れません。投与するかどうかは、診察した医師が個々の状態をみて判断する部分です。処方された抗菌薬を症状が軽くなったからと自分で中断する、といった扱いは避けてください。

大腸憩室炎に対する抗菌薬の位置づけを整理した図

大腸憩室炎で入院や手術が検討されるのはどんな場合か

大腸憩室炎の多くは保存的な治療で改善するため、繰り返すというだけで手術の適応になるとは限りません

一方で、腹膜全体に炎症が広がった汎発性腹膜炎を呈する大腸憩室炎では、救命のために緊急手術を実施することが推奨されています。憩室に強い炎症が起きて腸に穴が開く(穿孔)状態は、入院や手術が検討される状況の一つです。

入院が必要になるかどうかは、炎症の程度と合併症の有無で決まります。この判断も画像検査を含めた評価のうえで行われるため、痛みの強さだけで見積もることはできません。

なお、池袋かめさん内科は外来の内科診療を行う医療機関であり、憩室炎に対する外科手術は当院では実施していません。症状から入院や手術が必要と判断される場合は、対応できる医療機関へおつなぎする形になります。

大腸憩室炎の食事でダメなものはどこまで決まっている?

大腸憩室炎の食事でダメなものはどこまで決まっている?

憩室があると言われたあと、多くの方が最初に調べるのが食事です。結論から言うと、2017年版(初版)のガイドラインには特定の食品を避けるようにという記載はありません。食事について触れている箇所自体が、次の2つに限られます。

  • CQ28-1: 膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎の治療に食事制限と腸管安静は有効か
  • CQ30-4: 大腸憩室炎の再発を予防する有効な方法はあるか
時期 2017年版(初版)に書かれていること
入院加療を要する急性期 食事制限と腸管安静の実施を提案(エビデンスの質D)
落ち着いたあと 食物繊維摂取量の増加で再発予防効果があるとは言えない

この2つは、片方が急性期の話、もう片方が落ち着いたあとの話です。方向が正反対に見えるのはそのためで、どちらの時期の話かを外すと真逆の行動につながります。この章はすべて大腸憩室炎の食事についての話であり、大腸カメラの検査前の食事とは別の話題です。

大腸憩室炎で食事制限が提案されるのは入院が必要なとき

2017年版(初版)のガイドラインは、膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎で炎症反応や発熱などから入院加療を要する場合に、食事制限と腸管安静を実施することを提案するとしています。提案しているのはこのガイドラインであり、実際に行うかどうかを決めるのは診察した医師です。

読み落としやすいのが、この提案に付いている限定です。対象は入院加療を要する場合であり、原文には、外来で経過をみる場合に食事制限や腸管安静を行っているとは限らないのが現状だとも書かれています。憩室炎と言われたら食べてはいけない、と一般化できる記述ではありません。

推奨の裏付けも控えめです。エビデンスの質はDとされ、解説には大腸憩室炎に対して腸管安静や食事制限の効果を検討した臨床研究はない、と明記されています。食事を控えれば治まるという意味の推奨ではない、という位置づけです。

共通の目安はない

大腸憩室炎で食事を再開する時期は医師が経過をみて判断する

では、いつから元の食事に戻すのでしょうか。2017年版(初版)のガイドラインには、何日食事を控え、いつから戻すという段階や期間の記載がありません。使われているのは食事制限と腸管安静という語だけで、中身の段階までは示されていません。

そのため、食事を再開する時期は炎症の程度や経過をみて医師が個別に判断することになります。入院中であれば、採血の結果や腹痛の引き方をみて担当医がその都度決めていきます。

もし他の医療機関で具体的な日数の指示を受けているのであれば、その指示は目の前の患者の状態を見たうえでのものなので、そちらに従ってください。ここで言えるのは、共通の期間の目安が2017年版(初版)には示されていないということまでです。

大腸憩室炎の再発予防に食物繊維が有効とは言えない

急性期を離れて、落ち着いたあとの話に移ります。ここは通説と真正面から食い違う部分です。

ガイドラインは、大腸憩室炎の再発予防について現時点でエビデンスレベルの高い有効な方法はなく、今後の検討課題であるとしています。そのうえで、食物繊維の摂取量を増やすと再発率が下がるとした報告はあるものの評価方法が不明であるため、食物繊維摂取量の増加により大腸憩室炎の再発予防効果があるとは言えないと明記しています。

ここで注意したいのは、否定の向きです。有効とは言えないというのは、逆効果という意味でも、食物繊維をとらなくてよいという意味でもありません。再発を防ぐ手段として位置づけることはできない、という限定です。

もう一点、この話の主語は憩室炎の再発予防です。憩室そのものができる要因として食物繊維の摂取低下が挙げられているのは別の文脈であり、2つを同じ話として扱うと結論が逆になります。

大腸憩室で個別の食品ごとの可否は決まっていないことを示した図

大腸憩室で個別の食品ごとの可否は決まっているのか

種やナッツを避けるという通説の位置づけ

いちごやキウイの種、ナッツ、ゴマ、ポップコーンは憩室に入り込むから避けるべき、という説明が長く広まってきました。2017年版(初版)のガイドラインを全文で確認すると、これらの食品名も、避けるようにという指示も記載がありません。日本の診療ガイドラインで裏づけられた指示ではない、ということになります。

海外では、この通説に正面から答えている一次情報があります。米国のNIH(NIDDK)は、ナッツ・ポップコーン・種を避ける必要はないとしています。米国消化器病学会(ACG)も、ポップコーン・ベリー類・ナッツ・種が憩室炎のリスクを高めるものではないと明記しています。ベリー類が名指しされているため、いちごやキウイの種を避けるという説明とは正面から食い違う形です。

ただし、これらは米国の公的機関と米国の学会の見解であり、日本のガイドラインの記載ではありません。日本側の記載が無いことを海外の見解で埋めているわけではない、という点は分けて読んでください。

よく検索される食品はどう考えるか

バナナ・コーヒー・納豆・ヤクルト・ヨーグルトのように、具体的な食品名で調べられることも多くあります。これらについても、2017年版(初版)のガイドライン・NIDDK・ACGのいずれにも、食べてよい食品や避けるべき食品として名前を挙げた記載はありません

したがって、個別の食品ごとの可否は決まっていない、というのがこの問いの答えです。可否を定めた基準が存在しない以上、食べてよいとも食べてはいけないとも書くことはできません。考える軸は食品の名前ではなく、いま食事制限を要する状態かどうかという時期の区別です。一覧表の形で出回っている情報は、その出どころを確かめる必要があります。

なお、入院して食事制限を受けている最中は話が別です。その場合は担当の医師や管理栄養士の指示が優先されます。

参考:米国NIH国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)「Eating, Diet, & Nutrition for Diverticular Disease」

参考:米国消化器病学会(ACG)「Diverticulosis & Diverticulitis」

大腸憩室出血が止まる割合と必要になる治療

大腸憩室出血が止まる割合と必要になる治療

大腸憩室出血について、2017年版(初版)のガイドラインが数値で示しているのは、止まる割合・再び出血する割合・止まらないときの治療です。なぜ憩室から出血が起きるのかという仕組みについては、この記事が根拠にしている一次情報に説明が示されていないため扱いません。

この章の最後に置いた受診後24時間以内の大腸内視鏡は、治療そのものではなく受診したあとの対応の話です。どの状態でいつ行われるものなのかを含めて、順に見ていきます。

大腸憩室出血の70〜90%は自然に止まる

大腸憩室出血は保存的治療で自然に止まることが多く、ガイドラインは自然止血率を70〜90%としています。日本からの報告では、入院後に保存的治療を行って自然止血した割合は73〜88%でした。

数値の読み方には注意が要ります。これは自然に止まった割合であって、治った割合ではありません。多くが自然に止まるという事実は、自宅で様子を見てよいという意味にはなりません。入院して全身の状態を評価しながら経過を見た結果として、この割合が出ているためです。

血便が多量に出ているとき、ふらつきや血の気が引く感じを伴うときの判断は、受診の章で触れたとおりです。止まる割合の高さを、受診を先送りする理由に使わないでください。

参考:日本消化管学会「大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン」(2017年12月・初版)本文PDF

大腸憩室出血が再び起こる割合は1年で20〜35%

一度止まったあとに再び出血することもあります。ガイドラインは、本邦の大腸憩室出血の再出血率は1年後で20〜35%・2年後で33〜42%と示しています。

止血後の期間 再出血率(日本)
1年後 20〜35%
2年後 33〜42%

海外の報告は幅が大きく、米国は1年30%・2年40%と日本に近い一方、フランスの報告は1年3.8%と桁が違います。ガイドラインもこれを極めて低いと注記しているため、日本の数値として読むときは本邦のという条件を外さないほうが確かです。

なお、この再出血率は一度出血した人のその後の話であり、憩室を持っている人が初めて出血する割合とは別の数値です。前半で見た1年で0.2%・5年で2%・10年で10%は保有者の累積出血率で、母数が違います。

大腸憩室出血が止まらないときに行われる治療

自然に止まらない場合には、出血の状況に応じた治療が行われます。日本大腸肛門病学会の解説では、次のように整理されています。

  • 出血している憩室を内視鏡で見つけられた場合: クリップ法による止血が有効で安全とされる
  • 出血の量が多い場合: 選択的動脈塞栓術や緊急手術が選択される

前提になっているのは、出血している憩室を内視鏡で見つけられるかどうかです。いずれも入院のできる医療機関で行われる処置であり、外来の診察で完結する内容ではありません。

池袋かめさん内科でこれらの止血処置を行うことはありません。ここでは、一般的にどのような治療が行われるのかという説明として整理しています。

大腸憩室出血では受診後24時間以内の大腸カメラが提案されている

急性の下部消化管出血(大腸憩室出血を含む)については、出血源の同定や治療のために、受診後24時間以内に大腸内視鏡を実施することが提案されています。

「提案する」は「推奨する」より弱い

ガイドラインでは推奨の強さが区別されており、提案するは推奨するより弱い表現です。原文自体も、主要なアウトカムの改善は明らかではないが、トリアージの意義もあるため可能であれば早期に施行することを提案する、と限定しています。24時間以内に受けなければならない、と書かれているわけではありません

これは入院や救急での話

この提案が想定しているのは、出血で受診して全身の状態を評価しながら経過をみる場面です。血便が出たその足で外来の大腸カメラを予約する、という文脈の話ではありません。出血しているときの対応は、まず受診と全身の評価から始まります。

そしてもう一つ大切なのが、この24時間以内という話を、あとの章で扱う憩室炎が治ったあとの大腸内視鏡と分けて考えることです。出血の急性期に「提案」される検査と、憩室炎が治ったあとに「推奨」される検査で、状態も時期も強さも異なります。

大腸憩室があるときに気をつけたい薬

大腸憩室があるときに気をつけたい薬

食事に比べて話題になりにくいものの、一次情報でよりはっきり書かれているのが薬です。2017年版(初版)のガイドラインには、大腸憩室出血のリスクを高める薬についての記載があります。

ただし、ここから自己判断で薬をやめるという行動につなげてはいけません。この章では、何が報告されているのかと、飲んでいる薬をどう扱うかを分けて整理します。

大腸憩室出血のリスクを高めるとされるNSAIDsとアスピリン

痛み止めとして使われるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)とアスピリンは、大腸憩室出血や再出血のリスクを高めることが報告されています。日本大腸肛門病学会も、高齢の方で解熱鎮痛薬や抗血栓薬を使っている場合は憩室出血を強く疑う必要があるとしています。

一方で、薬の種類によって整理は分かれています。抗血栓薬とひとまとめにして同じ扱いにはできない、という書き方です。

  • NSAIDsとアスピリン: 大腸憩室出血と再出血のリスクを高めると報告されている
  • アスピリン以外の抗血小板薬と抗凝固薬: まだ一定の見解が得られていない

大腸憩室出血が近年増えている背景として、低用量アスピリンやNSAIDsを服用する人が増えていることが挙げられています。薬そのものが悪いという話ではなく、出血のリスクと、薬を飲む目的の両方を見て判断する必要があるということです。

大腸憩室で市販の痛み止めを自分で飲んでよいのか

市販の解熱鎮痛薬には、NSAIDsを含む製品があります。成分は製品によって異なるため、憩室があると言われている方が市販の痛み止めを常用する場合、この点は知っておいたほうがよいでしょう。

とはいえ、頭痛や生理痛で時々使うことまで一次情報が禁じているわけではありません。気をつけたいのは、腹痛に対して自分で痛み止めを使い続ける場面です。憩室炎かどうかは診察と血液検査だけでは分からないため、痛みを抑えながら様子を見ると、判断の材料が減った状態で時間だけが過ぎます。

腹痛が続くときや血便を伴うときは、市販薬で対応せずに受診してください。常用している市販薬がある場合は、受診の際に薬の名前を伝えると経過の見立てに役立ちます。

大腸憩室で抗血栓薬を自己判断で中止しない

出血のリスクを知ると、飲んでいる薬をやめたくなるかもしれません。ここは特に注意が要るところです。

やめる前に処方した医師へ相談
米国消化器病学会(ACG)は、心臓や血管のためにアスピリンを飲んでいる人は、医師に相談せずにやめてはいけないとしています。これらの薬は血栓による病気を防ぐ目的で処方されているため、自己判断での中止は別の危険につながります。

出血のリスクと、薬を続ける利益のどちらが大きいかは、処方した医師が個々の状況をみて判断する部分です。憩室があると指摘されたことは処方医に伝える価値のある情報ですが、伝えたうえで判断してもらう順番を守ってください。

薬の種類 大腸憩室出血について報告されていること 扱い方
NSAIDs・アスピリン 出血と再出血のリスクを高めると報告されている 腹痛に対して自分で使い続けない
アスピリン以外の抗血小板薬・抗凝固薬 まだ一定の見解が得られていない 自己判断で中止しない
市販の解熱鎮痛薬 NSAIDsを含む製品がある(成分は製品によって異なる) 腹痛が続くときや血便を伴うときは受診する
処方されている抗血栓薬 血栓による病気を防ぐ目的で処方されている やめる前に処方した医師へ相談する

大腸憩室のその後をどう見ていくか

大腸憩室のその後をどう見ていくか

憩室があると分かったあと、この先どうなるのかという不安は残ります。2017年版(初版)のガイドラインには、再発が大腸憩室炎の予後を悪くする要因になるとは限らないという記載があります。

この章では、憩室があるだけの状態のこの先、憩室炎を起こした人のこの先、そして憩室そのものの行方という3つの問いを順に扱います。

大腸憩室を放置するとどうなるのか

この章でよく尋ねられるのが、このまま放っておいてよいのかという問いです。先に答えを言うと、憩室があるだけの状態に対して行う治療はガイドラインに示されておらず、実際には経過を見ていくことになります。そう言える理由を、ガイドラインが何を扱っている文書なのかから確認します。

2017年版(初版)のガイドラインは、大腸憩室出血と大腸憩室炎という合併症を起こした状態の診療を対象としており、憩室があるだけの状態への治療は扱っていません。CQ1から30までを見ても、無症状で憩室を持っている人への介入を扱った項目は置かれていません。

ただし、これは治療は不要ですと書かれているという意味ではありません。記載が無いことと、必要が無いと判断されたことは別だからです。

そのうえで、経過の見通しとして手元にある数値が、違いの章で挙げた保有者の累積出血率です。10年で10%という値は10年間の累積の数値であり、短い期間での起こりやすさを示すものではありません。

大腸憩室と言われたあとの見方を整理した図

大腸憩室炎を一度起こした人の再発率は13〜47%

一度憩室炎を起こした場合はどうでしょうか。ガイドラインは、膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎の再発率を13〜47%としています。この母数は憩室炎を起こした人であり、憩室を持っている人全体ではありません。

13〜47%という幅の広さには理由があります。用いた再発の定義によって数値が異なるためで、幅そのものが研究のばらつきを表しています。幅の理由を落として真ん中の数値だけを取り出すと、意味が変わってしまいます。

なお、膿瘍を合併した大腸憩室炎を保存的に治療したあとの再発率は30〜60%と考えられています。合併症の有無で数値が変わるため、自分がどちらの話を読んでいるのかを確かめる必要があります。

そして冒頭に挙げたとおり、再発が予後を悪くする要因になるとは限らないとされています。繰り返すというだけで手術の適応にならない、という記載ともつながる部分です。

できてしまった大腸憩室は消せるのか

憩室が消えるかどうかについて、日本の一次情報は正面から答えていません。憩室ができる要因として食物繊維の摂取低下や便秘などによる腸管内圧の亢進が挙げられている一方で、できた憩室を消す方法についての記載は見当たりません

米国消化器病学会(ACG)は、一度できた憩室はなくならないと説明しています。この点は米国の学会の説明として受け取る形になりますが、憩室を消すことを目標にした食事や生活の工夫は、一次情報に裏づけがないという結論は変わりません。

したがって、この先の見方は憩室を消すことではなく、合併症を疑う症状が出たときに動けるようにしておくことになります。腹痛や発熱、腹痛を伴わない血便という2つの入口が、受診を考える主な目安です。判断に迷うときは、症状だけで決めずに医療機関へ相談してください。

大腸憩室炎が治ったあとに大腸カメラ(内視鏡検査)を受ける必要性

大腸憩室炎が治ったあとに大腸カメラ(内視鏡検査)を受ける必要性

ここまでで唯一、受けることが推奨されている検査として書かれているのが、大腸憩室炎が治ったあとの大腸内視鏡です。出血の急性期に提案されている24時間以内の内視鏡とは、状態も時期も推奨の強さも異なります。

状態 時期 ガイドラインの表現
大腸憩室出血(急性期) 受診後24時間以内 実施することを提案する
大腸憩室炎(治ったあと) 治ったあと(具体的な時期の記載なし) 一度は行うことを推奨する(合意率100%)

大腸憩室症以外の病変を否定するために一度は行うことが推奨されている

2017年版(初版)のガイドラインは、原疾患として大腸憩室症以外の病変を否定するための大腸内視鏡を、一度は行うことを推奨するとしています。合意率は100%で、実施が困難な症例を除くという限定が付いています。

大事なのは目的です。これはがんだけを見つけるための検査ではなく、がんを含めて憩室症以外の病変が隠れていないことを確かめるための検査とされています。憩室炎という診断が、ほかの原因を見落としたまま付いていないかを確認する、という考え方です。

対象になるのも、憩室があると言われた人全員ではありません。大腸憩室炎を起こし、それが治ったあとの方が対象です。憩室があるだけの状態の人に一律に勧められているわけではない、という線は落とさないでください。

治ってから何週間後という具体的な時期は、2017年版(初版)には示されていません。実際にいつ受けるかは、炎症の落ち着き方をみて主治医と相談して決める形になります。当院で受けられる大腸カメラ検査についても、まずは診察で経過を確認したうえでのご案内になります。

参考:日本消化管学会「大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン」(2017年12月・初版)本文PDF

大腸憩室炎で大腸がんが増えるとは分かっていない

一度は内視鏡をという記載を読むと、憩室炎からがんになるのではと不安になるかもしれません。ガイドラインは、大腸憩室炎と大腸癌との関連性は不明であるとしています。

不明という言葉は、関連があるとも無関係とも書かれていないという意味です。憩室炎を起こした人に大腸がんが多いとする報告がある一方で、憩室炎のあとに大腸がんの発生は特に多くなかったという報告も少なくありません。この項目のエビデンスの質はDとされており、結論を出せる段階にないという位置づけです。

それでもガイドラインが治癒後の内視鏡を推奨しているのは、がんが増えるからではありません。憩室炎のあとには大腸がんを含めて他の原因を一度確かめることが大切とされているためです。内視鏡で確認せずに経過をみた結果、あとから大腸がんが見つかった報告があることが背景にあります。増える増えないの話ではなく、見落とさないための確認だと理解しておくのが正確です。

大腸憩室のよくある質問

大腸憩室のよくある質問

最後に、検索されることの多い5つの質問に短く答えます。食事や飲み物については、答えの根拠がどこまであるのかを含めて食事の章で詳しく整理しています。

大腸憩室の原因はストレスですか?

2017年版(初版)のガイドラインが大腸憩室炎の危険因子として挙げているのは喫煙と肥満で、ほかにエビデンスの高い危険因子はないとされています。ストレスは危険因子として挙げられていません。また、憩室そのものができる要因としては、食物繊維の摂取低下や便秘などによる腸管内圧の亢進が関与しているとされています。ここにもストレスは出てきません。ただし記載がないことは、関係がないと確認されたという意味ではありません。一次情報で名前が挙がっているのは喫煙と肥満だけだ、という受け取り方が正確です。

大腸憩室炎は治る病気ですか?

膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎は、多くが保存的な治療によって改善するとされています。保存的な治療とは手術によらない治療のことで、抗菌薬の投与や、入院した場合の食事制限・腸管安静などを指します。そのため、繰り返すというだけで手術の適応にならないとも記載されています。一方で、腹膜全体に炎症が広がった場合には緊急手術が推奨されるなど、状態によって対応は変わります。また、いったん落ち着いたあとの再発率は13〜47%と報告されているため、改善したあとも症状が出たときに動けるようにしておくことが大切です。

大腸憩室出血の死亡率はどれくらいですか?

2017年版(初版)のガイドラインは、本邦の大腸憩室出血の死亡率は1%程度としています。国内のDPCデータ(いずれも入院した人が対象)では、下部消化管出血30,846例の入院中死亡率が2.5%であったのに対し、大腸憩室出血の死亡率は0.7%で、ほかの下部消化管出血より低いと報告されています。ただし高齢男性では死亡率が高くなるという記載もあります。この数値は入院に至った出血についてのものであり、憩室があると1%が亡くなる、という読み方はできません。多量の血便やふらつきがあるときに受診を急ぐ理由は、この数値とは別に成り立ちます。

数値だけで読まない

大腸憩室炎によい飲み物はありますか?

コーヒーやヤクルトのように、具体的な飲み物の名前で調べられることがよくあります。ただし、個別の飲み物の可否を定めた記載は2017年版(初版)のガイドラインにありません。米国のNIH(NIDDK)と米国消化器病学会(ACG)にも、特定の飲み物を避けるようにという記載は見当たりません。したがって、これを飲めばよいという答えも、これは避けるべきだという答えも出せないのが現状です。詳しい経緯は食事の章で扱っています。なお、入院して食事制限を受けている最中は、担当の医師の指示が優先されます。

大腸憩室があるとお酒は控えたほうがよいですか?

飲酒については、大腸憩室炎の危険因子として相反する報告があり結論が出ていないとされています。喫煙と肥満は危険因子として挙げられている一方、飲酒はそこに含まれていません。大腸憩室出血についても、喫煙・飲酒との関連は明らかではないとされています。つまり、憩室があるからお酒をやめるべきだという根拠も、飲んでも問題ないという根拠も、一次情報からは示せません。ほかの病気や服用中の薬との兼ね合いで飲酒量の相談が必要なこともあるため、気になる場合は診察の際に伝えてください。

大腸憩室から起こる憩室炎と憩室出血の違い〜まとめ〜

憩室を持っている状態そのものが大腸憩室症で、そこから起こる合併症が大腸憩室炎と大腸憩室出血です。同じ憩室を出発点にしながら、炎症として現れるか出血として現れるかで別の病名になるという関係でした。
気づき方も別々です。憩室炎は急な腹痛または発熱から疑われ、両方そろっている必要はありません。憩室出血は腹痛を伴わない多量の血便で疑われます。ふらつきや血の気が引く感じを伴うときは、翌日の外来を待たずに救急を検討する場面でした。どちらも症状から自分で見分けることはできないため、迷ったときは受診して確かめることになります。
そして、大腸憩室炎を起こして治ったあとには、憩室症以外の病変を否定するために一度は大腸内視鏡を行うことが推奨されています。憩室があるだけの方に一律に勧められているものではないという限定つきの推奨でした。ご自身がどの状態にあたるのかを確かめるところから始めてください。

憩室炎が治ったあとの大腸カメラのご相談
大腸憩室炎を起こしたあとの一度の内視鏡や、検査結果に憩室と書かれていた場合の見方について、池袋かめさん内科でご相談いただけます。大腸カメラ検査は予約制で、事前の診察が必要です。
検査は30分程度で、下剤はご自宅で服用いただきます。鎮静(静脈麻酔)は希望制で、当日に画像を見ながら結果をご説明します(生検を行った場合、病理結果は約1か月後のご説明となります)。

03-3986-4466

受付時間:9:00-12:30/14:00-18:00

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