気になる症状

機能性ディスペプシアで胃もたれが続く原因と受診の目安

食後の胃もたれやみぞおちの不調が続いていて、検査ではとくに異常が見つからなかった。そうした状態は、学会の資料にも実際に起こるものとして書かれています。

この記事の結論

機能性ディスペプシアとは、ほかの病気が見つからないことを確かめたうえで診断される状態です。どういう病気を指すのかは1章と2章で扱います。
原因は一つに特定されていません。複数の要因が重なって起こると説明されています。詳しくは6章で扱います。
受診の目安は、症状の強さと生活への影響、それに体重の減少や出血などほかの病気を疑う症状があるかどうかで考えます。症状が強いときはがまんせずに早めに相談することが勧められています。3章で詳しく扱います。

ここに挙げたのはあくまで目安です。実際にどうするかは、診察を受けたうえで医師と決めることになります。同じ訴えでも背景は人によって違い、ここに書いた内容がそのまま当てはまるとは限りません。この記事は、日本消化器病学会が公開している診療ガイドラインと患者向けのガイドに書かれている範囲で整理しています。わかっていない部分は、わかっていないままの形で示します。

参考:日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021—機能性ディスペプシア(FD)」改訂第2版(2021)

目次

機能性ディスペプシアとは 検査で異常がないのに胃の不調が続く状態です

機能性ディスペプシアとは 検査で異常がないのに胃の不調が続く状態です

この章では、機能性ディスペプシアという病名が何を指しているのかを、診療ガイドラインの定義に沿って整理します。よく並べて語られる慢性胃炎との関係や、この病名が扱わない症状の範囲まで、ここで先に押さえます。

機能性ディスペプシアは ほかの病気が見つからないことを確かめたうえで診断されます

診療ガイドラインは、機能性ディスペプシアを次のように定義しています。症状の原因となる器質的・全身性・代謝性の病気がないにもかかわらず、慢性的にみぞおちの痛みや胃もたれなど、みぞおちを中心とした腹部の症状が起こる病気。器質的な病気とは、胃潰瘍のように形として確かめられる異常のことです。

この定義で押さえておきたいのは、ほかの病気が見つからないことが診断の条件そのものに組み込まれている点です。症状の特徴だけを並べて機能性ディスペプシアと決められるわけではなく、ほかの病気がないことを確かめる手順が先に入ります。診断名がつくまでに時間がかかることがあるのは、この順序によるものです。

まれな病気というわけでもありません。ガイドラインが挙げている日本人の有病率は次のとおりです。

対象になった集団 機能性ディスペプシアの割合
健診を受けた人 11%から17%
上腹部の症状を訴えて病院を受診した人 45%から53%

2つの数値は母集団が違うため、並べて比べる性質のものではありません。学会の患者向けガイドはこの数値をもとに、機能性ディスペプシアがとてもありふれた病気であることがわかると書いています。ただし、もとになった報告はいずれも単一の施設による横断的な調査であることも、ガイドライン自身が付記しています。

機能性ディスペプシアの診断では 症状が続いた期間で線を引いていません

国際的に使われているRome IV基準では、6か月以上前から症状があり直近3か月続いていることが条件に入ります。これに対して日本の診療ガイドラインは、この期間の条件を日本の患者の診療にそのまま当てはめるのは適当でないとして、「慢性的」の判断を具体的な期間で区切らず、診察する医師の判断に委ねるという立場をとりました。

根拠として挙げられているのは国内の検討です。内視鏡で異常のないディスペプシア症状の患者2,946人を対象にした報告では、Rome III基準で機能性ディスペプシアと診断されたのは12.3%にとどまりました。その主な理由が、症状の持続期間の規定だったとされています。同じ報告では、症状が1か月までの人と6か月以上の人を比べても症状の強さと生活の質に差がなかったとされていますが、これは一つの研究の所見です。

症状が続いた期間の扱い
Rome IV基準(国際的な研究用の基準) 6か月以上前からの症状と直近3か月の持続を条件にしている
日本の診療ガイドライン 具体的な期間で区切らず診察する医師の判断に委ねている

ここでの主語はあくまで診断です。どのくらい続いたら相談したほうがよいかという判断は、これとは別の話として考えます。受診の目安のほうは「受診の目安と何科を選ぶか」の章にまとめています。

慢性胃炎と機能性ディスペプシアは同じ病気ですか?

診療ガイドラインは、症状によって定義される機能性ディスペプシアと、胃の粘膜の慢性的な炎症によって定義される慢性胃炎は同一の疾患ではないとしています。機能性ディスペプシアは症状の側から、慢性胃炎は組織の状態の側から決まる名前で、見ている次元がそもそも違います。

そのうえでガイドラインは、これまで機能性ディスペプシアの患者の多くが慢性胃炎と診断・治療されてきたとも書いています。理由の一つとして挙げられているのが、機能性ディスペプシアという保険病名が日本になかったことです。

書けるのはここまでです。ガイドラインは、組織の慢性的な炎症と症状の有無を、異なる次元の問いとして扱っています。そのうえで、両者は併存することもしないこともあるとしています。胃の粘膜の慢性的な炎症の程度と症状の程度は相関しないという報告が多い、とも記されています。

胸やけや呑酸は ガイドラインではディスペプシア症状に含まれていません

ここでいうディスペプシア症状とは、みぞおちを中心とした上腹部の症状のまとまりを指す言葉です。胃と十二指腸に由来する症状として扱われており、食道の症状は別に数えます。

診療ガイドラインは、胸やけや呑酸といった逆流の症状は食道の症状と考えられるため、ディスペプシアの症状には含めないという整理をしています。歴史的な経緯として、胃食道逆流症という概念が明確になるにつれて胃・十二指腸の症状に限定するようになってきたとも書かれています。

注意したいのは、これが用語の線引きの話だという点です。胸やけのある人に機能性ディスペプシアが起こらない、という意味ではありません。主語はこのガイドラインが言葉をどう使うかのほうにあります。胸やけや呑酸そのものの成り立ちは、逆流の側から書いた食道裂孔ヘルニアの記事にまとめています。

参考:日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021—機能性ディスペプシア(FD)」改訂第2版(2021)

定義の章で押さえた3つのこと

機能性ディスペプシアは、ほかの病気がないことを確かめる手順が診断の条件そのものに組み込まれた病名です。
診断のうえでは、症状が続いた期間で線を引いていません。
慢性胃炎とは同じ病気ではなく、胸やけや呑酸はこのガイドラインのディスペプシア症状には含まれていません

機能性ディスペプシアで起こる症状

機能性ディスペプシアで起こる症状

ここからは、どんな症状が機能性ディスペプシアの話として扱われているのかを見ていきます。症状の名前と、それがいつ強くなるか、どう分類されているかまでを順に整理します。

機能性ディスペプシアの主な症状は 食後のもたれ感やみぞおちの痛みなどです

国際的に使われているRome IV基準では、機能性ディスペプシアの症状として次の4つが挙げられています。診療ガイドラインもこの4つを引用して説明しています。

症状 どのような感じ方か
食後の膨満感 食べたあとに胃が張って重く感じる
早期満腹感 少し食べただけでおなかがいっぱいになる
みぞおちの痛み みぞおちのあたりが痛む
みぞおちの焼けるような感じ みぞおちのあたりが熱く感じる

このうち1つ以上があることが、Rome IV基準での症状の条件です。日本の診療ガイドライン自身は「みぞおちの痛みや胃もたれなど、みぞおちを中心とした腹部の症状」という書き方をしており、4つに限定した形では定義していません。

機能性ディスペプシアに初期症状という段階はあるのか

初期症状という言葉で調べられることもありますが、ガイドラインには初期と進行という段階で症状を分ける考え方は出てきません。書かれているのは上の4つの症状と、それがいつ強くなるかという話までです。

なお、胸やけや呑酸はこのリストに入っていません。理由は前の章で触れたとおり、ガイドラインが逆流の症状を食道の症状として別に扱っているためです。

胃もたれが続くことも 機能性ディスペプシアの症状に挙げられています

食べたあとに胃が重い状態が何日も続くと、食事そのものが気の重い予定に変わっていきます。この胃もたれという言葉は、診療ガイドラインが機能性ディスペプシアを定義する文のなかに実際に使われています。専門用語を読者向けに言い換えたものではなく、学会の資料がそのまま使っている語です。

胃もたれが頻繁に起こる病気を知りたいという調べ方もありますが、症状の名前から病気を一つに絞ることはできません。ここで確かめられるのは、胃もたれが続く背景として挙げられているもののなかに機能性ディスペプシアがある、という範囲です。同じ症状を起こす病気はほかにもあり、その切り分けは検査と診察の役割になります。

食事のあとに 機能性ディスペプシアの症状が強くなることがあります

Rome IV基準では、食後の膨満感と早期満腹感を主とするタイプが、食事に関連して起こる症状群としてまとめられています。食べたあとに症状が強くなるという訴えは、この枠組みのなかで扱われています。

資料をたどれるのはここまでです。朝に強い、夜に強いといった時間帯の傾向や、週に何回起こるかといった頻度については、ガイドラインに記述がありません。食事との関係を手がかりにするのは自然な見方ですが、そこから病名を絞り込めるわけではありません。

機能性ディスペプシアの症状は 起こり方で分けられていますか?

分けられています。ただし分けているのは日本のガイドラインではなく、国際的に使われているRome IV基準のほうです。この点を取り違えると、日本の診療の実態とずれた理解になります。

Rome IV基準での呼び方 主となる症状
食後愁訴症候群(PDS) 食後の膨満感と早期満腹感
心窩部痛症候群(EPS) みぞおちの痛みとみぞおちの焼けるような感じ

前に書いたとおり、日本の診療ガイドラインは自らの定義をこの4症状に限定していません。したがって、この2つの呼び名は症状の起こり方を整理するための枠組みであって、患者を2種類に振り分けるためのものではありません。どちらのタイプかによって治療が決まるという書き方も、ガイドラインはしていません。

参考:Rome Foundation「Rome IV Criteria」

ここからは視野を広げて、みぞおちの症状そのものがどこから来るのかを見ておきます。

みぞおちの症状は 胃以外の臓器が原因のこともあります

日本消化器内視鏡学会は、みぞおちには胃のほかにも多くの臓器があり、自分では胃の痛みだと思っていても実は胆道や膵臓など他の臓器に由来する症状であることも少なくないと説明しています。稀ではあるものの、心筋梗塞や大動脈瘤といった循環器の病気で症状が出ることもあるとされています。

これは機能性ディスペプシアに限った話ではなく、みぞおちの症状全般に当てはまる一般的な注意点です。同学会は、症状が強い、長く続く、体重が減る、発熱があるといった点に当てはまる場合には、担当の医師に相談するよう勧めています。内視鏡だけでなく、超音波やCTなどによる他の臓器の検査を組み合わせたほうがよい場合もあるためです。

つまり、みぞおちの症状という入口だけでは、それがどこから来ているのかを決められません。だからこそ、ほかの病気がないことを確かめる手順が先に置かれます。その手順の中身は、検査の章で具体的に扱います。

参考:日本消化器内視鏡学会「胃痛(胃もたれ)の原因は、内視鏡でわかりますか?」(2024年12月5日更新)

機能性ディスペプシアが疑われるとき 受診の目安と何科を選ぶか

機能性ディスペプシアが疑われるとき 受診の目安と何科を選ぶか

この章は、まだ病名がついていない段階の判断を扱います。手元にあるのは症状だけで、それが何なのかはこれから確かめる、という状況を想定しています。相談したほうがよいかどうかを決める材料と、どの診療科に持ち込むかを順に整理します。

機能性ディスペプシアの症状が強いときは 早めに相談することが勧められています

学会の患者向けガイドは、症状の強さが生活の質に影響するとしたうえで、症状の強い人はがまんせずに早めに治療を受けることを勧めています。治療によって症状がよくなれば生活の質も回復するので、適切な治療を受けることが大切だとも書かれています。

問題は、その「強い」がどれくらいを指すのかが数値で示されていない点です。ガイドラインに強さの基準は書かれていません。そこで手がかりになるのが、症状そのものの激しさではなく、生活のほうがどれだけ削られているかという見方です。

  • 食事の内容や量を、症状に合わせて変えている
  • 食事が近づくと気が重い、外食の予定を避けている
  • 仕事や家事の途中で、症状のために手を止めることがある
  • 市販の薬でしのぐ日が続いている

こうした形で生活が症状に合わせて縮んでいるなら、それは症状の強さを診察で伝えるための材料になります。逆に、我慢できるかどうかだけを基準にすると、慣れてしまった不調ほど後回しになります。

参考:日本消化器病学会「患者さんとご家族のための機能性ディスペプシアガイド2023」(2023)

体重の減少や出血があるときは ほかの病気がないかを先に調べます

先に、ガイドライン自身がこの話に付けている限定から書きます。ガイドラインは、これから挙げる徴候について機能性ディスペプシアの患者と器質的疾患を有する患者とで存在する割合に差がないという報告もあるため、あくまでも器質的疾患を考慮する場合の目安と考えるべきであるとしています。器質的疾患とは、1章で触れた「形として確かめられる異常のある病気」のことです。つまり、当てはまるからその病気だという読み方も、当てはまらないから心配ないという読み方も、どちらもできません。ガイドラインは、こうした徴候が見当たらない場合でも他の病気の存在は念頭に置くとしています。

そのうえで、ガイドラインが他の病気の存在を疑うべき徴候として挙げているのは次のものです。

  • 高齢になってから新たに症状が出た場合
  • 体重減少
  • 繰り返す嘔吐
  • 出血
  • 飲み込みにくさ
  • 飲み込むときの痛み
  • 腹部のしこり
  • 発熱
  • 食道がんや胃がんの家族歴

池袋かめさん内科も、胃カメラ(内視鏡検査)を検討する症状として次のものを公式ページに挙げています。

  • 黒い便が出た
  • 貧血がある

学会が挙げている徴候と当院が挙げている症状は、出典も目的も異なります。どちらか一方に当てはまらないからといって、ほかの病気がないと判断できるわけではありません。学会の側は「出血」という書き方で、当院の側は「黒い便が出た」「貧血がある」という具体的な形で示しています。

これらに当てはまる場合、まず行われるのは機能性ディスペプシアかどうかの判定ではなく、ほかの病気がないかどうかの確認です。順番が逆にならないという点だけ、ここでは押さえておいてください。

受診の目安を症状の強さと生活への影響とほかの病気を疑う症状で考えることを示した図

胃の不調と心の不調は どちらを先に相談すればよいですか?

胃の不調が続いていると、これは体の問題なのか気持ちの問題なのかで迷う方がいます。実際、心療内科と消化器内科のどちらへ行くべきかという相談は少なくありません。

診療ガイドラインが示している順序ははっきりしています。機能性ディスペプシアの診断では、症状の評価に加えて他の病気を除くことが基本になるとされています。つまり、体の側で確かめられることを先に確かめる、という並びです。

これは心の側の相談に意味がないという話ではありません。どちらか一方を選ぶ問題ではなく、先に体の側を通しておくと、その後の相談先も決めやすくなるというだけのことです。心の状態と胃の症状の関係については、ガイドラインがどこまで書いているかを原因の章で扱います。

機能性ディスペプシアは何科を受診すればよいですか?

一次情報のなかで診療科に触れているのは、国立がん研究センターのがん情報サービスです。食事がつかえる、体重が減るといった症状がある場合について、検診を待たずに内科や消化器内科などの身近な医療機関を受診するようにしましょうと書かれています。これは胃がんを疑う症状がある場合の文脈で書かれた一文ですが、相談先として内科や消化器内科が挙がっている点は、症状の入口としてそのまま使えます。

池袋かめさん内科は内科の診療所で、一般的な内科診療に加えて、消化器内科の領域である胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡検査、漢方診療や栄養療法、区の健康診断やがん検診までを同じ院内で受けられる体制を整えています。症状の相談は一般内科で、予約なしでも受診できます。検査を受ける場合の段取りについては、次の検査の章でまとめて扱います。

参考:国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん について」(2026年1月13日更新)

検査がつらそうだという不安から相談をためらう方は少なくありません。何が起きているのかを確かめる前に、まず「どのくらいつらいか」「生活のどこが削られているか」を話すところから始められます。池袋かめさん内科の内科診療は予約なしでも受診でき、症状の相談だけでも承っています。他院からの紹介状や健康診断の結果、お薬手帳をお持ちの方は、あわせてご提示ください。

検査で確かめるのは ほかの病気がないこと

検査で確かめるのは ほかの病気がないこと

前の章の流れから、ここで検査の話に入ります。ただし、その位置づけを取り違えないように先に書いておきます。必ず受けなければ診断できないわけではありません。ただし、ほかの病気が確実にないことを確かめるには内視鏡検査が必要だと、ガイドラインは説明しています

つまり検査は、病名を見つけに行く手続きではなく、ほかの病気がないことを確かめるための手続きです。ここを押さえたうえで、ここからは検査の受け方の実際に移ります。この章で順に扱うのは次の4点です。

  • 内視鏡で何を見ているのか
  • 費用と時間はどのくらいかかるのか
  • つらさをどう減らせるのか
  • どういう段取りで受けるのか

参考:日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021—機能性ディスペプシア(FD)」改訂第2版(2021)

胃カメラでは 炎症や潰瘍などがないかを見ます

日本消化器内視鏡学会は、上部消化管内視鏡について食道や胃、腸の内腔を観察し、隆起やへこみなど内面の変化を評価する目的で行うものだと説明しています。そのうえで、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、逆流性食道炎など見てわかる病気の診断に大変有用だという説明が続きます。

この「見てわかる病気」という言い方が、内視鏡でできることの範囲を示す言葉です。池袋かめさん内科の胃カメラのページでも、確かめる対象として炎症や潰瘍などが挙げられています。形として現れているものは見えるが、形に現れないものは見えないというのが、この検査の性質です。

学会の患者向けガイドは、この関係を診断の側から書いています。胃潰瘍や胃がんなどが疑われないときには胃の内視鏡検査は必須ではなく、その一方でこれらの異常が疑われるときには受けることが重要であるという書き方です。同じガイドは、腹部の症状が慢性的にあって、検査で胃がんや胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの病気が見つからない場合に機能性ディスペプシアと診断する、とも説明しています。順序を確かめておくと、機能性ディスペプシアそのものが内視鏡の画像に写るわけではありません。内視鏡が確かめているのは、ほかの病気があるかないかのほうです。

参考:日本消化器病学会「患者さんとご家族のための機能性ディスペプシアガイド2023」(2023)

胃カメラの費用と検査時間は どのくらいかかりますか?

金額と時間は、検査を先送りする理由になりやすいところです。池袋かめさん内科が公式ページに掲載している目安は次のとおりです。

項目 目安
費用(3割負担) 約12,000円
費用(1割負担) 約4,000円
検査そのものにかかる時間 5〜15分
来院から帰宅までの院内滞在時間(鎮静剤を使用した場合) 1〜2時間程度
院内滞在時間(経鼻で鎮静剤を使用しなかった場合) 30分程度

費用は診察・処方・胃カメラ検査を含めた目安で、鎮静剤の使用や生検検査、採血検査を含んだ金額として示されています。検査内容や処置の有無により費用は前後する場合があります

保険の扱いについても条件が書かれています。当院の胃カメラ検査は、医師の診察の結果「検査が必要」と判断された場合に保険適用となります。例として挙げられているのは次の場合です。

  • 自覚症状がある場合
  • 健診や人間ドックで要精密検査や再検査の判定を受けた場合
  • ピロリ菌を指摘された場合や除菌後の経過観察中である場合

症状があればそれだけで保険で受けられる、という書き方にはなっていません。まず診察が入口になる、という順序です。

胃カメラのつらさを減らすために 鼻から受ける方法や鎮静剤を使う方法があります

つらさを減らす手立ては、性質の違う2つの軸に分かれています。どちらか一方を選ぶ二者択一ではありません

内容
挿入経路 口から入れる方法(スコープは約9mm)と鼻から入れる方法(約5〜6mm)がある
鎮静の有無 鎮静剤(静脈麻酔)は希望制。咽頭麻酔は基本的に全員に行う

この2つは独立しているため、鼻から受けつつ鎮静剤も使うという組み合わせも成り立ちます。当院のページには、経鼻内視鏡は鎮静剤なしでも受けられる場合が多いと書かれています。嘔吐反射については、口から入れる方法では出やすい場合があり、鼻から入れる方法では比較的少ないとされています。

鎮静剤を使った日の注意点

鎮静剤を使用した場合、当日は自動車・バイク・自転車の運転ができません。影響が残る可能性があるためで、来院と帰宅の手段を先に決めておく必要があります。院内滞在が1〜2時間程度になるのも、この経過を見る時間を含むためです。

診察で検査日を決めてから 胃カメラを受けます

段取りは、診察が先で検査が後という順番です。胃カメラ検査は予約制で、まず診察を受けて検査日を決めます。当院のページには、検査日程を確認したうえで電話・Web・公式LINEから事前に予約するよう案内されています。一般の内科診療が予約なしで受けられるのとは扱いが異なる点に注意してください。

結果の伝え方についても書かれています。画像を見ながらの説明はその日のうちに受けられますが、組織を採って調べる生検を行った場合は、結果が出るのは1か月後以降になります。なお、結果を電話で問い合わせることはできません。

段階 内容
1 内科を受診して症状を相談する(予約なしでも受診可)
2 医師の判断で検査が必要となれば検査日を決める(予約制)
3 検査当日に画像を見ながら結果の説明を受ける
4 生検を行った場合はその結果を1か月後以降に確認する

この流れを先に知っておくと、受診の日に何がどこまで進むのかの見当がつきます。初回の受診でその場で検査まで終わると考えていると、予定が合わなくなることがあります。

予約が要るものと要らないもの
一般の内科診療は予約なしでも受けられますが、胃カメラ検査のほうは予約制です。扱いが違うため、症状の相談と検査を同じ日にまとめて済ませられるとは限りません。
鎮静剤を使う場合は当日の運転ができないので、来院と帰宅の手段も予約の段階で決めておくと動きやすくなります。

検査で病気が見つからなかったときに できること

検査で病気が見つからなかったときに できること

ここからは、検査を受けたあとの話に移ります。この章が扱うのは、結果をどう受け止め、次に何が始まるのかという部分です。食べ方や生活の工夫といった日々の手当ては別に章を設けているので、ここでは触れません。

症状があっても 内視鏡で異常が見つからないことのほうが多いとされています

ここでいう「多い」は、胃痛や胃もたれの症状があって内視鏡を受けた人のなかで、異常所見が見つかった場合と見つからなかった場合を比べたときの話です。

日本消化器内視鏡学会は、症状の種類や有無と内視鏡で異常があるかどうかは一致しないことが知られている、と説明しています。病気を持っていても無症状のことがあります。逆に、胃痛や胃もたれの症状があるからといって内視鏡で異常が見つかるとは限らず、割合からするとむしろ内視鏡で何の異常所見もないことのほうが多いくらいである、という書き方です。

同じ資料は、症状が出る仕組みには様々な因子が関連していることが推測されているとしつつ、特定の原因を突き止めるのは難しい場合がほとんどだとも書いています。原因として何が挙げられているかは、原因の章でガイドラインの語のまま扱います。異常なしという結果は、検査が空振りしたという意味ではなく、内視鏡で確かめられる範囲では見つからなかったという意味です。

参考:日本消化器内視鏡学会「胃痛(胃もたれ)の原因は、内視鏡でわかりますか?」(2024年12月5日更新)

機能性ディスペプシアでは 検査で異常がなくても生活の質が低下すると報告されています

診療ガイドラインは、機能性ディスペプシアの患者の生活の質は低下している、と断定の形で書いています。評価の方法を変えても同じ結果になると考えられており、症状の強さと生活の質の低下は相関すると報告されているとも記されています。

ここは押さえておく値打ちがあります。検査で異常が見つからなかったという事実と、生活が症状に振り回されているという事実は、両立するものとして学会の資料に書かれているということです。異常なしという結果が出ても、日々の困りごとの説明がそれで消えるわけではありません。

検査で異常がなかったと言われた方へ
内視鏡で何の異常所見もないことのほうが多いという説明と、生活の質が低下していると報告されているという説明は、どちらも学会の資料に書かれています。
この2つは矛盾しません。一方は検査で見える範囲の話で、もう一方は生活のうえで起きていることの話です
検査の結果を、症状の重さを測る物差しとして読む必要はありません。

検査が答えることと答えないことの違いを示した図

機能性ディスペプシアは 治療方針を立てられる病態だと医師から説明されます

診療ガイドラインの巻頭には、医師が患者にどう説明するかを示した注記があります。そこでは、機能性ディスペプシアが上部消化管の機能的な変調によって起こっている病態であり、生命の予後に影響する病態の可能性が低いことを説明するとされています。

続けて書かれているのが、この記事のなかでもとりわけ重い一文です。そこには2つのことが並べて置かれています。主治医が患者の訴えを医学的対応が必要な病態として受け止めたこと、その訴えに対して治療方針が立てられることを説明する。それによって患者との適切な治療的関係を構築する、という内容です。

主語を確かめておきます。これは医師が患者に説明することとされている内容であって、記事の側から読者の症状を判定する文ではありません。ただ、診察の場でこうした説明がなされる背景に学会の指針があるという事実は、説明を受ける側にとっても知っておく意味があります。同じ注記には、内視鏡検査を受ける前の状態については、ほかの病気がないと言い切るには内視鏡検査が要ることを説明する、とも書かれています。

参考:日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021—機能性ディスペプシア(FD)」改訂第2版(2021)

病名がつかないのに調子が悪いという相談も 当院で受けています

池袋かめさん内科は漢方診療のページで、多くの病院を受診しても、はっきりとした病気が見つからなかった場合、当然「なぜ?」と悩まれるケースが多くあると書いています。同じページには、漢方薬が病名がつくような状態から、病名はつかないけれど快調ではないという状態まで、幅広く用いられているという説明もあります。挙げられている例のなかには胃部不快感も入っています。

ここで言えるのは、そうした相談を受ける枠が診療のなかにあるということです。検査の結果を持って帰ったあと、どこに話を持っていけばよいのか分からないという状態が続くよりは、症状の側から相談を続けられる場所を決めておくほうが、次の一手を決めやすくなります。

機能性ディスペプシアの原因として考えられていること

機能性ディスペプシアの原因として考えられていること

冒頭で、原因は一つに特定されていないと書きました。この章では、その結論をガイドラインがどういう書き方で示しているのかを詳しく見ていきます。ここで新しい原因を付け足すことはしません。分かっていることと分かっていないことの境目を、資料の言葉で確かめる章です。

機能性ディスペプシアの原因は 一つに特定されていません

診療ガイドラインが原因について示している回答は、病態には多くの因子が複合的に関与しているものと考えられるというものです。ここで使われている「複合的」という語が要点で、いくつかの要素が重なった結果として症状が起きている、という捉え方をしています。

この書き方は、次の3つの誤読を同時に避ける形になっています。

問い ガイドラインの答え方
原因は一つに決まっているのか 多くの因子が複合的に関与していると考えられる
原因は何も分かっていないのか 分からないとは書かれていない。因子ごとに項目を立てて検討している
どれか一つで説明できるのか 単独の原因として切り出す書き方はしていない

つまり、原因不明という言葉も、これが原因という言い切りも、どちらもガイドラインの立場とは違います。書けるのは、複数の要因が重なって起こると考えられている、というところまでです。

機能性ディスペプシアの原因として複合的に関与していると書かれている領域を示した図

機能性ディスペプシアの原因はストレスですか?

ガイドラインがこの問いに与えている答えは、心理社会的因子が機能性ディスペプシアと関連することがあるというものです。「関連することがある」という言い方は、原因と結果を結ぶ表現としてはかなり弱い部類に入ります。

解説では、脳と腸管は相互に密接に関連しているとしたうえで、生活上のストレスなどの環境的・社会的な要因、不安や抑うつなどの心理的な要因、腸の運動や知覚といった働きが互いに作用していると説明されています。同時に、独立した指標は明確化されておらず、各因子が相互的に作用していると考えられるという留保も置かれています。

メンタルの問題なのかと問われることもありますが、ガイドラインの表現は「関連することがある」で止まっています。前の章の並びと同じで、心の側の話を否定しているわけでも、そこに原因を置いているわけでもありません。

機能性ディスペプシアになりやすい人については まだ一定の見解が得られていません

結論から書きます。どういう人がなりやすいのかについて、ガイドラインは一定の見解が得られていないとしています。

そのうえで、ガイドラインが挙げているものはあります。遺伝子の個人差、感染性の胃腸炎にかかったあと、女性、若年などの報告がある、という並びです。ただしガイドラインは、この列挙のあとを「一定の見解が得られていない」で閉じています。前半だけを取り出して、こういう人に多い病気だと読むことはできません。

留保はもう一つあります。ガイドラインは、これらの論文の多くは海外での研究であり、組み入れ例の定義も研究ごとに異なることから解釈に留意する必要があると書き添えています。年代や性別で線を引く説明を見かけることがあっても、その線はガイドラインの側では引かれていません。

ピロリ菌の感染がある場合の機能性ディスペプシア

ピロリ菌の感染がある場合の機能性ディスペプシア

この章は、検査の章と検査後の章の続きにあたります。ほかの病気がないことを確かめる過程でピロリ菌の感染が見つかった場合、そこから先の扱いが変わるためです。診断の枠組みの話に絞り、除菌治療そのものの適応や方法にはここでは触れません。

ピロリ菌が見つかったときは 機能性ディスペプシアとは別の枠組みで扱われます

診療ガイドラインは、ピロリ菌の感染を伴うディスペプシアの患者は、機能性ディスペプシアではなくピロリ菌関連ディスペプシアとして取り扱うとしています。症状は同じように見えても、診断名の置きどころが変わるということです。

この枠組みには考え方の筋道があります。除菌をして6か月あるいは1年経ってから症状が消えた、または改善した場合には、症状の原因がピロリ菌だったと考えるという組み立てです。裏返せば、感染が確認された段階では、症状の出どころがピロリ菌にあるのかどうかがまだ決まっていない、ということになります。

誤解しやすいのはこの期間の意味です。この6か月は、症状の治療を止めて待つ期間ではありません。ガイドラインは、除菌後の約6か月間は機能性ディスペプシアの治療を開始すべきではないということではなく、症状に対する治療は必要に応じて行うべきであると明記しています。6か月や1年という区切りは、あくまで判断のための観察期間です。

なお、感染が確認されたあとに何をどう進めるかは、章の冒頭に書いたとおりこの記事の範囲外です。診察のなかで個別に決まります。

除菌のあとに症状が軽くなることがありますが 元に戻ることもあると報告されています

日本ヘリコバクター学会は、ピロリ菌の除菌によって機能性ディスペプシアでは一部で上腹部の症状が改善するとしています。この「一部で」という限定は、診療ガイドラインの書き方とも一致しています。

診療ガイドラインが挙げている数値も、母集団と観察期間まで含めて読む必要があります。

数値 どの集団の何の割合か
55人中20人 報告でピロリ菌陽性の機能性ディスペプシアと分類された55人に除菌治療を行い、6〜7年後に症状が消失していた割合
35人中17人 同じ55人のうち、除菌後3か月の時点で症状が消失していた35人が、のちに症状の戻りを認めた割合

除菌をすれば症状がなくなる、という書き方はどちらの資料にもありません。いったん軽くなったあとに元へ戻ることもある、というところまでが書かれている範囲です。だからこそ、症状の変化を自分で判定せず、経過を診察のなかで見てもらう並びになります。

参考:日本ヘリコバクター学会「ピロリ菌に関するQ&A」

機能性ディスペプシアの治し方と これからどうなっていくのか

機能性ディスペプシアの治し方と これからどうなっていくのか

治し方を知りたいという入口には、たいていこの先どうなるのかを知りたいという問いが重なっています。この章では、ガイドラインが治療の目標をどこに置いているか、選べる手立てにどんな種類があるか、そしてこの先の見通しについて何がどこまで書かれているかを順に扱います。

機能性ディスペプシアの治療でまず目指すのは 気にならない程度まで症状が軽くなることです

診療ガイドラインは、患者が満足しうる症状改善は機能性ディスペプシアの重要な治療目標であるとしています。解説では、器質的な病変や血液検査の異常がないことから、患者が納得・満足できる十分な症状の改善が治療の主要な目標になると説明されています。

ここで基準になっているのは、検査の数値でも医師の側の判定でもなく、症状を抱えている本人がどこまで楽になったかです。目標の置き方そのものが、ほかの病気とは違う形になっています。

学会の患者向けガイドは、この目標への近づき方についても書いています。どんな治療でもすぐに完全に良くなるとは限らないため、最初は症状が今より軽くなることを目指すとよいという一文です。一足飛びにゼロを目指すのではなく、段を刻む形が示されています。

治療の目標が段を刻む形で置かれていることを示した図

機能性ディスペプシアの治し方は複数あり 医師と相談しながら選びます

診療ガイドラインは治療の章を立て、複数の手立てを一つずつ検討したうえで、それぞれに推奨の強さを示しています。主な手立ては次のとおりです。

手立ての種類 ガイドラインでの扱い
生活習慣の指導や食事療法 有用であり行うことを推奨する
薬による治療 薬の種類ごとに推奨の強さが分けて示されている
漢方薬 六君子湯は使用することを推奨する。それ以外の漢方薬は使用することを提案する
心のケアにあたる治療 有用である可能性があるとして提案されている

どれか一つが正解として決まっているわけではありません。個々の薬の名前をここで挙げないのは、それが診察を経て医師が決める領域だからです。市販の薬の扱いは「よくある質問」の章で別に触れます。

機能性ディスペプシアの治し方は誰と決めるのか

選び方そのものについても、ガイドラインは書いています。良好な患者と医師の関係を構築することは、機能性ディスペプシアの治療において有用であるという項目が立てられており、解説では患者の満足度や治療の続けやすさ、治療の効果までが改善するとされています。相談を続けられる相手を決めること自体が、治療の一部として扱われているということです。

機能性ディスペプシアには ガイドラインで漢方薬の六君子湯が推奨されています

診療ガイドラインは、漢方薬について六君子湯は有用であり、使用することを推奨するとしています。示されている推奨の強さは強、合意率は92%、エビデンスレベルはAです。六君子湯以外の漢方薬についても、有用である可能性があり使用することを提案するとされています。こちらは推奨の強さが弱、合意率100%、エビデンスレベルはBで、「推奨する」ではなく「提案する」という段の違いがあります

ただし、ガイドライン自身が根拠の中身も書いています。2014年の試験では、主要な評価項目である8週後の自覚症状の改善率に、統計のうえで明確な差は示されませんでした。2018年の試験では、全般的な治療改善効果でプラセボに対して有意だったとされています。推奨が強いことと、すべての試験で結果が一致したことは別の話として読む必要があります。

池袋かめさん内科には漢方診療の枠があり、保険診療の処方薬を使う形で診療を行っています。副院長が漢方を用いた治療を担当しており、女性医師の診察を希望される方は曜日を確認したうえで利用できます。診察の曜日や時間は変わることがあるため、漢方診療のページで最新の内容をご確認ください。どの漢方薬を用いるかは、診察のなかで医師が判断します。

参考:Mindsガイドラインライブラリ「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021-機能性ディスペプシア(FD)改訂第2版」(2021)

機能性ディスペプシアは指定難病ですか?

含まれていません。厚生労働省が公表している指定難病の一覧は全348疾病で構成されていますが、そのなかに機能性ディスペプシアはありません。難病指定という言い方で調べられることもありますが、制度上の答えとしては、この一覧に載っているかどうかがすべてです。

確認した内容 結果
一覧に含まれる疾病の総数 全348疾病(告示番号1〜348・令和7年4月から医療費助成が始まった342〜348を含む)
「ディスペプシア」を含む病名 0件
「機能性」を含む病名 0件

注意したいのは、この事実の読み方です。指定難病に含まれていないことは、症状が軽いという意味ではありません。前の章で触れたとおり、診療ガイドラインは機能性ディスペプシアの患者の生活の質は低下していると書いています。制度上どこに分類されるかという話と、日々どれだけ困っているかという話は、別の軸にあります。

参考:厚生労働省「指定難病」

機能性ディスペプシアは自然に治りますか?

先に前提を置き直します。診療ガイドラインは、機能性ディスペプシアの患者の生活の質は低下していると報告しているため、症状があるまま様子を見続けることが軽い選択だとは書かれていません。

そのうえで、自然に治るかどうかについて言い切った記述は資料の側にありません。書かれているのは治療の目標のほうで、目指すのは患者が満足しうる症状の改善とされています。先に触れたとおり、その目標も一足飛びにゼロを置くのではなく、まず今より軽くするところから段を刻む形で示されています。

どのくらいの期間で良くなるという数字も、資料には示されていません。分かっているのは、症状を軽くしていく方向で治療の枠組みが組まれていることと、その過程を医師と一緒に見ていく形になっていることです。

機能性ディスペプシアは再発することがありますが 生命予後を悪化させることはないと報告されています

診療ガイドラインの回答は1文でセットになっています。機能性ディスペプシアは再発することがあるが、死亡率の増加は報告されていない、という書き方です。解説の結語では、生命予後を悪化させることはないと考えられるとされています。

根拠として挙げられているのは、米国の一般住民30,000人年と英国の一般住民84,000人年を対象とした予後調査です。いずれもディスペプシア症状の有無で生存率に差がなく、死亡率を増加させることはなかったと報告されています。

再発の側についても数字があります。学会の患者向けガイドは、治療して症状がなくなったあとでも、数か月のあいだに5人に1人くらいが再発するとされていると書いています。同じガイドは、再発を予防する方法や、どのような人が再発するかはまだはっきりとは分かっていないとも述べています。

この章で分かることと分からないこと

分かっていること — 治療の目標は患者が満足しうる症状の改善に置かれている。手立ては複数あり、医師と相談して選ぶ。生命予後を悪化させることはないと報告されている。
分かっていないこと — どのくらいの期間で良くなるか。再発を予防する方法。どのような人が再発するか。
分からない部分があることと、できることが何もないことは別です。目標の置き方も手立ての選び方も、資料の側には示されています。

機能性ディスペプシアの症状に 自分でできること

機能性ディスペプシアの症状に 自分でできること

検査の結果をどう受け止めるかは前に扱いました。この章が扱うのは、そのあとの日々の側です。毎日の食べ方や過ごし方について資料に何が書かれているかを、書かれていない部分も含めて整理します。

機能性ディスペプシアでは 食べ方を見直すことがガイドラインで勧められています

診療ガイドラインでは、生活習慣指導や食事療法は有用であり、行うことを推奨するとされています。推奨の強さは強、合意率は100%、エビデンスレベルはBです。具体的な方法の一つとして挙げられているのが、満腹まで食べずに少量ずつ複数回に分けるという食べ方です。

推奨の理由の書き方に、この項目の性格が出ています。ガイドラインは、有用性を示すエビデンスは少ないものの、実施するにあたって不利益がなく実地臨床ではよく行われていることから推奨すると、理由をそのまま明記しています。つまり、効果が強く証明されたから推奨されているのではありません。ガイドラインが挙げている理由は、不利益が見当たらないことと、実地臨床で広く行われていることの2つです。

学会の患者向けガイドも同じ内容を平易な言葉で書いています。生活習慣や食習慣が乱れていることがあり、これらを改善することで症状が改善することがありますという書き方で、断定はされていません。

参考:日本消化器病学会「患者さんとご家族のための機能性ディスペプシアガイド2023」(2023)

避けたほうがよい食べ物や飲み物はありますか?

ガイドラインが具体策として並べているのは次の項目です。列挙をそのまま示します。

挙げられている項目 資料での扱い
高脂肪食を避ける 具体策として記載。根拠は1つのランダム化比較試験
禁煙 具体策として記載。喫煙との関連の報告はあるが、禁煙による治療効果を調べた前向き試験の報告はない
飲酒やコーヒーを避ける 具体策として記載。ただし有用性は明らかにされていないとガイドライン自身が明記

この3つは並び方が同じでも、裏づけの厚みは同じではありません。とくに飲酒とコーヒーについては、患者向けガイドが控えるよう書いている一方で、医師向けのガイドラインは有用性が明らかにされていないと書いています。やめれば良くなるという書き方は、どちらの資料にもありません

機能性ディスペプシアで特定の食品を除く方法はどう扱われているか

特定の食品を除く方法についても触れておきます。グルテンや発酵性の糖質を除く食事については、有効性がいまだ明らかだとは言い難いとされており、この記事からすすめることはしません。何かを一つ断つより、食べる量と分け方から見直すほうが資料の記述に沿っています。

機能性ディスペプシアの症状チェックは 診察で伝えるときに役立ちます

症状の記録が力を発揮するのは、自分で病名を見当づけるときではありません。診察の限られた時間で、何が起きているかを過不足なく伝えるときです。

診察のときに伝えると役立つ情報
  • どんな感じの症状か(張る・痛む・熱い・すぐ満腹になる など)
  • 食事との関係(食後に強くなるか、空腹時はどうか)
  • 生活のどこが削られているか(食事の量・仕事・外出)
  • これまでに受けた検査とその結果
  • 体重の変化や、ほかに気づいている変化

この5つは、病名を絞り込むための項目ではありません。症状の輪郭を医師と共有するための材料であり、判断そのものは診察と検査に委ねる形になります。

睡眠や運動で機能性ディスペプシアの症状が良くなるかは まだはっきり分かっていません

ここははっきり書いておきます。診療ガイドラインは、睡眠や運動についてその治療効果はエビデンスとしては示されていないと明記しています。生活習慣の項目として名前は挙がるものの、症状が良くなるかどうかは確かめられていない、という状態です。

予防の側も同じです。再発を防ぐ手立てについて、学会の患者向けガイドはまだはっきりとは分かっていないとしています。予防のためにこれをすればよいと言い切れる方法は、いまのところ資料の側に示されていません。

分かっていないことを分かっていないまま書くのは、手を打てないという意味ではありません。裏づけの厚い項目とそうでない項目の区別がついていれば、どこに力を入れるかを決めやすくなります。

機能性ディスペプシアについてよくある質問

機能性ディスペプシアについてよくある質問

最後に、機能性ディスペプシアを調べる過程でよく出てくる問いを5つ取り上げます。資料に書かれている範囲で、それぞれに答えます。

胃もたれが続くのは 胃がんの初期症状ですか?

胃もたれという症状だけから判断することはできません。国立がん研究センターのがん情報サービスは、胃がんは早期の段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合もあるとしています。代表的な症状として胃の痛みや不快感、違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振が挙げられていますが、これらは胃がんだけではなく胃炎や胃潰瘍でも起こる症状であるとも書かれています。同じ資料は、食事がつかえる、体重が減るといった症状がある場合には、検診を待たずに医療機関を受診するよう勧めています。

胃もたれは どのくらい続いたら受診したほうがよいですか?

判断の材料は期間ではありません。学会の患者向けガイドは、症状が強いときはがまんせずに早めの治療を勧めています。したがって手がかりになるのは、症状の強さと生活への影響、それに体重の減少や出血などほかの病気を疑う症状があるかどうかの3つです。症状の強さと生活への影響は「受診の目安と何科を選ぶか」の章で、ほかの病気を疑う症状のほうは同じ章の警告徴候の項で詳しく扱っています。なお、診断のうえで期間の線を引いていないという話は前の章に出てきますが、それは診断の定義についての話で、相談するかどうかの判断とは別のものです。

受診を考える材料は症状が続いた期間ではないことを示した帯

市販の胃薬を使うときに 気をつけることはありますか?

この記事からは、特定の市販薬をすすめることも、やめるように言うこともしません。気をつけたいのは薬の選び方ではなく、薬でしのげている間も症状が続いているかどうかを見失わないことです。診療ガイドラインは、症状の強さと生活の質の低下は相関すると報告しています。市販薬でその日をやり過ごす日が続いているなら、生活のほうはすでに症状に合わせて動いていることになります。体重の減少や出血など、ほかの病気を疑う症状がある場合は、そちらの確認が先になります。

症状のチェックだけで 病気を見分けられますか?

見分けることはできません。同じ症状が複数の病気で起こるため、症状の組み合わせから病名を絞り込む方法は資料の側にも示されていません。日本消化器内視鏡学会も、胃の痛みだと思っていても実は他の臓器に由来する症状であることは少なくないと説明しています。症状を書き出しておくこと自体には値打ちがありますが、それは自分で判定するためではなく、診察で医師に伝えるための材料としてです。使い方については「自分でできること」の章にまとめています。

症状のチェックだけで自分で判定するものではないことを示した帯

胃カメラで一度異常がないと言われたら もう一度受ける必要はありますか?

一律に決まってはいません。診療ガイドラインは、治療開始後も症状の改善がない場合は他の病気を考慮し、必要な検査を行うとしています。また、いったん治療に反応したものの、中止によって症状が再び出た場合には、改めて他の病気の精査を進めることが大切であるとも書かれています。つまり判断の分かれ目は、前回からどれだけ時間が経ったかではなく、治療に対して症状がどう動いたかのほうにあります。経過を診察のなかで共有していれば、この判断は医師の側から出てきます。

胃もたれやみぞおちの不調が続いているとき、最初に決まるのは病名ではありません。ほかの病気がないことを確かめる手順が先に入り、そのうえで機能性ディスペプシアという診断が置かれます。この記事では、その順序と、順序の各段階で学会の資料に何が書かれているかを追ってきました。

原因は一つに特定されておらず、複数の要因が重なって起こると考えられています。なりやすい人の像も、睡眠や運動の効果も、再発を予防する方法も、まだ一定の答えは出ていません。一方で、治療の目標は患者が満足しうる症状の改善に置かれ、生活習慣の見直しから漢方薬まで複数の手立てが検討されています。生活の質が低下することも、生命予後を悪化させることはないと報告されていることも、どちらも同じ資料に書かれています。

機能性ディスペプシアで胃もたれが続くときの考え方〜まとめ〜

受診するかどうかを決める材料は、症状が何か月続いたかではありません。症状の強さと生活への影響、そしてほかの病気を疑う症状があるかどうかの3つで考える、というのが資料に書かれている形です。

分かっていないことが多く残るのは、調べ方が足りないからではなく、確かめられている範囲がそこまでだからです。当てはまるものがあれば、まずは症状の相談から始められます。

胃カメラは、医師の診察の結果で検査が必要と判断された場合に保険適用となります。まず内科で症状を相談し、必要と判断されてから検査日を決めるという順序です。池袋かめさん内科では、症状の相談から胃カメラ検査、その後の経過の確認までを同じ院内で受けられます。鼻から受ける方法を希望される場合は経鼻内視鏡の枠があり、鎮静剤の使用と組み合わせることもできます。

検査そのものの負担を減らす方法や、そもそも検査が要る状態なのかという点も含めて、診察のなかで一緒に決めていきます。

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