健康診断で貧血を指摘されたとき、判定の中心になる数値はヘモグロビン(血色素量・Hb)です。貧血と判定される値は15歳以上の男性で13g/dL未満、15歳以上の女性で12g/dL未満、高齢者では11g/dL未満です。g/dL(グラム毎デシリットル)は、血液1デシリットルあたりに何グラムあるかを表す単位です。
結果票を見るときに混ざりやすい数値が3つあります。印字されている基準範囲と、健診の判定区分と、貧血の判定に用いる値です。男性の基準範囲は共用基準範囲で13.7〜16.8g/dL、健診の判定区分では13.1〜16.3g/dLと、同じヘモグロビンでも出所によって端の数値が変わります。
危険な数値がどこからかという問いに、1本の線で答えている資料はありません。健診の判定区分で要精密検査・治療に当たるのは男性12.0g/dL以下・女性11.0g/dL以下です。輸血が話に出てくる水準は病態ごとに分かれていて、国の指針はヘモグロビンの値だけで輸血の開始を決めるのは適切ではないとしています。
いくつからが貧血なのか、どこからが危険な域なのか、同じ数値でも原因の絞り方が変わるのはなぜかを、男女別の値と出所をそろえて順に見ていきます。
目次
貧血の数値は健康診断の結果票のどの項目か

貧血の数値として読む項目は、結果票の血液検査の欄に並んでいます。判定の中心になるのはヘモグロビンの値で、ほかの項目は原因を絞るために見る関連項目です。結果票の項目名とその意味、健診の種類による項目の違いの順に分けます。
| 結果票に印字される項目名 | その項目が表している値 |
|---|---|
| 血色素量・ヘモグロビン・ヘモグロビン濃度・Hb | 血液中のヘモグロビンの量 |
| 赤血球数・RBC | 血液中の赤血球の個数 |
| ヘマトクリット・Ht | 血液の容積に対して赤血球が占める割合 |
| MCV・MCH・MCHC | 赤血球1個あたりの大きさとヘモグロビンの量 |
| 白血球・WBC | 血液中の白血球の数 |
貧血の数値はヘモグロビン(血色素量)という名前で印字される
結果票でこの値に付く名前は1つに決まっていません。血色素量・ヘモグロビン・ヘモグロビン濃度・Hbは、いずれも同じ項目を指します。紙の結果票でもWebで結果を見る場合でも項目名の付け方は同じで、ヘモグロビン値と続けた様式もあります。
血色素量は、血液中に含まれるヘモグロビンの量を表します。ヘモグロビンは肺で酸素と結びつき、身体全体に酸素を運ぶはたらきを持っています。この量が足りない状態が貧血なので、酸素の運搬に関わる変化が体に出ます。
赤血球の寿命が気になる方もいます。赤血球は骨髄で作られて一定期間はたらいたあとに壊れていきますが、結果票の血液検査の欄に赤血球の寿命という項目は並んでいません。寿命そのものを測る検査ではなく、いま血液の中にある赤血球とヘモグロビンの量を測るのが健診の血液検査です。
名前が似ていて別の検査なのがヘモグロビンA1c(HbA1c)です。血色素量はヘモグロビンの量を見る項目で、HbA1cはヘモグロビンのうち糖が結びついたものの割合を%で見る項目です。測っている対象が違うため、糖代謝の欄のHbA1cはヘモグロビンA1cの記事で扱っています。

赤血球数やヘマトクリットも貧血の数値として血液検査で分かる
貧血に関わる項目はヘモグロビンだけではありません。赤血球数(RBC)は血液中の赤血球の個数、ヘマトクリット(Ht)は血液の容積に対して赤血球が占める割合です。赤血球が少ない状態ではこの2つも低く出るので、赤血球が低い・赤血球の基準値といった言葉で調べられます。
ただしこの2つで貧血を判定するのではありません。日本人間ドック・予防医療学会は、赤血球、ヘマトクリットでは決定できないためこれらの判定区分は策定していませんと述べています。貧血の判定は血色素で行うとされているためです。この2つは判定の中心ではなく、原因を絞るための関連項目です。
関連項目には、赤血球1個あたりの大きさを表すMCVや、体に貯めてある鉄の量を反映するフェリチンも入ります。判定の中心はヘモグロビン、原因の絞り込みはそれ以外の項目という役割分担です。同じ欄には白血球(WBC)も並びますが、こちらは感染や炎症に関わる項目で貧血の判定には使いません。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「Hb / 血色素量」/日本人間ドック・予防医療学会「検査表の見方 血液検査」

貧血の検査は健診の種類によって含まれないことがある
健診を受けたのに貧血の項目が結果票に無いことがあります。貧血の検査が入るかどうかは健診の種類で変わります。職場の定期健康診断と、40歳から74歳を対象にした特定健診では、血液検査の項目の決まり方が違います。
職場の定期健康診断は、労働安全衛生規則の第44条第1項が項目を列挙していて、その第6号が貧血検査です。法令に項目として置かれているため、貧血検査は基本の項目に入ります。ただし同条第2項には、厚生労働大臣が定める基準に基づいて医師が必要でないと認めるときは省略できるという定めもあります。
特定健診は組み立てが違います。実施基準の第1条が挙げる項目に貧血検査は入っておらず、第10号の「厚生労働大臣が定める項目について医師が必要と認めるときに行うもの」の側に置かれています。厚生労働省の説明でも、血色素量は特定健診では詳細な健診の項目に含まれ、医師が必要とした場合に測定されます。
つまり特定健診の受診券だけで貧血の項目が付いてくるとは限りません。過去の結果票に貧血の項目が無い年があるのは、この違いによるものです。健診の種類ごとの項目の違いという総論は白血球が多い・少ないと言われた基準値を外れたら異常?で扱っています。
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則 第44条(定期健康診断)」/e-Gov法令検索「特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準 第1条」/厚生労働省 e-ヘルスネット「Hb / 血色素量」
貧血の数値はいくつから?ヘモグロビンの基準値と重症度

貧血の数値はいくつからか。貧血の判定に用いる値と、結果票に印字された基準範囲と、健診の判定区分は別の物差しで、数値も一致しません。判定に用いる値を先に置き、基準範囲との違い、軽度から重度までの区切り、高齢者の線の順に分けます。
貧血の数値は男性と女性で別の値が示されている
貧血の判定に用いるヘモグロビンの値は、男性と女性で別に示されています。国立がん研究センターの資料では、15歳以上の男性で13g/dL未満、15歳以上の女性で12g/dL未満が貧血の基準です。
| 対象 | 貧血の判定に用いるヘモグロビンの値 |
|---|---|
| 15歳以上の男性 | 13g/dL未満 |
| 15歳以上の女性 | 12g/dL未満 |
| 高齢者 | 11g/dL未満 |
国際的な線も同じ方向です。世界保健機関(WHO)は15歳から65歳の成人について、男性130g/L未満・非妊娠女性120g/L未満を貧血と定めています。g/Lをg/dLに直すと男性13.0g/dL未満・女性12.0g/dL未満で、国内の資料の値と一致します。
男女で1g/dL違う線が引かれているため、ヘモグロビンが低いと言われた場合も血色素量が低いと言われた場合も、該当するかどうかが性別で変わります。たとえば12.5g/dLは、男性では貧血の側、女性では貧血に当たらない側に入ります。結果票の基準範囲も男女で別に設定されています。その下限をわずかに下回ることと、貧血の判定値である男性13g/dL未満・女性12g/dL未満に当たることは、別に考えます。どちらに当たるかは、性別と数値をそろえれば分かります。
WHOが年齢範囲を15歳から65歳と区切っていることにも意味があります。65歳を超える成人の区分はWHOの表に置かれていないため、高齢者の線はこの章の最後で別に扱います。
参考:国立がん研究センター がん情報サービス「貧血」/世界保健機関(WHO)「Guideline on haemoglobin cutoffs to define anaemia in individuals and populations(2024)」
貧血の数値の基準範囲と健診の判定区分は別物
結果票に印字されている基準範囲は、貧血の判定ラインではありません。日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の共用基準範囲は、一定の基準を満たす健常者の測定値のうち中央95%の区間として作られた幅です。
同じ手引きは、基準範囲についてそれ単独では診断や治療の判定の拠り所にはならないとしています。測定値を解釈するときの目安であって、そこを少し下回ったから病気だと決める線ではないという位置づけです。基準値という言葉はこの基準範囲の端の数値を指して使われるので、基準値・基準範囲・判定区分の3つは、端の数値・健常者の幅・健診のあとの振り分けという関係になります。
| 出所 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| JCCLS 共用基準範囲 | 13.7〜16.8 g/dL | 11.6〜14.8 g/dL |
| 日本人間ドック・予防医療学会 判定区分の基準範囲 | 13.1〜16.3 g/dL | 12.1〜14.5 g/dL |
実際の数値を並べると差が見えます。男性の下限は共用基準範囲が13.7g/dL、健診の判定区分が13.1g/dLで、共用基準範囲のほうが高い設定です。女性はそれぞれ11.6g/dLと12.1g/dLで、共用基準範囲のほうが低くなります。
自分の結果票で見る順序は決まっています。まず印字された基準範囲と自分の値を見比べ、次に男女別の判定の線に当たるかを見ます。基準範囲の下限を下回っていても判定の線より上なら貧血には当たらず、逆に基準範囲の中にあっても判定の線を下回る場合があります。女性の共用基準範囲の下限11.6g/dLと、貧血の判定に用いる12g/dLは、まさにその組み合わせです。
どちらかが誤りということではなく、作られた目的が違います。共用基準範囲は検査値を解釈するための目安、判定区分は健診のあとの対応を振り分けるための区分です。基準範囲そのものが施設ごとに違うという論点は検査値全般に共通するので、前の章で挙げた白血球の記事にゆずります。
参考:日本臨床検査標準協議会(JCCLS)「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲 -解説と利用の手引き-」/日本人間ドック・予防医療学会「検査表の見方 血液検査」
同じ基準範囲という言葉でも、どの資料のものかで数値が変わります。結果票に印字されている幅は、検査を行った施設が採用している基準範囲です。自分の値を見るときは、結果票に併記された幅と、貧血の判定に用いる値の両方と見比べます。
貧血の数値は軽度から重度までどこで区切られるか
貧血と判定されたあとの段階は、WHOが軽度・中等度・重度の3つに分けています。下の表の対象は15歳から65歳の男性と、妊娠していない女性です。男女で幅が違うのは軽度だけです。
| 区分 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 貧血なし | 13.0 g/dL以上 | 12.0 g/dL以上 |
| 軽度 | 11.0〜12.9 g/dL | 11.0〜11.9 g/dL |
| 中等度 | 8.0〜10.9 g/dL | 8.0〜10.9 g/dL |
| 重度 | 8.0 g/dL未満 | 8.0 g/dL未満 |
この区分は貧血の有無を分ける線と地続きです。男性は13.0g/dLを下回った時点で軽度に入り、11.0g/dLを下回ると中等度に移ります。女性は12.0g/dLを下回った時点で軽度、11.0g/dLを下回ると中等度です。
中等度と重度の幅は男女で同じで、中等度が8.0〜10.9g/dL、重度が8.0g/dL未満です。重度の貧血の症状として語られる水準は、このうち8.0g/dL未満の区分に当たります。区分の名前と数値のどちらを見るかで迷ったときは、数値を先に見ます。軽度・中等度・重度という呼び名は区切られた幅に付けられたラベルなので、自分の値がどの幅に入るかで区分が決まります。
区分の細かさにも限りがあります。WHOの表は軽度・中等度・重度の3つしかなく、中等度の幅は男女とも8.0〜10.9g/dLと3g/dL近くに及びます。10.5g/dLと8.2g/dLはどちらも中等度ですが、重度の線である8.0g/dLまでの距離が違います。区分に入ったかどうかと、幅の中のどこにいるかは別の情報です。
軽度という名前は、そのままでよいという意味ではありません。WHOは2011年の資料の注記で、軽度という呼び名は誤称で、貧血が見つかった時点で鉄欠乏はすでに進んでいるとしています。一方で2024年の指針は、重症度を示す区分の決め方を今の形から変えることは根拠が十分でないため推奨されないという立場です。区分の数値は動かない線ではなく、現時点でそろえられている物差しという前提で読みます。
参考:世界保健機関(WHO)「Guideline on haemoglobin cutoffs to define anaemia in individuals and populations(2024)」/世界保健機関(WHO)「Haemoglobin concentrations for the diagnosis of anaemia and assessment of severity(WHO/NMH/NHD/MNM/11.1)」
高齢者の貧血の数値は若い世代より低い値が使われる
高齢者には別の線が示されています。国立がん研究センターの資料は、高齢者では11g/dL未満が貧血の基準と置いています。15歳以上の男性13g/dL未満・女性12g/dL未満と比べると、男女のどちらより低い値です。
ただしこの資料は高齢者という言葉で書いていて、何歳以上かという年齢の数値を置いていません。年齢の線は資料によって違います。日本鉄バイオサイエンス学会の診療指針は、思春期前の小児および80歳以上では男女とも11g/dL以上とし、80歳という年齢まで置いています。
WHOの2024年の指針から高齢者の線を読むことはできません。成人の区分が15歳から65歳に限られていて、65歳を超える行が表に置かれていないためです。高齢者の値を見るときは、その資料が何歳以上を指しているかも確かめます。低い値が使われるからといって、下がっていてもかまわないという意味にはなりません。高齢者で11g/dL未満という線は、そこを下回ったら貧血として扱うという基準です。
参考:国立がん研究センター がん情報サービス「貧血」/日本鉄バイオサイエンス学会「鉄欠乏性貧血の診療指針 鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の診断・診断基準」
貧血の危険な数値はどこから?受診の目安と何科

貧血の数値が低いと指摘されたら、結果票を持って内科を受診するのが最初の一歩です。急いだほうがよいかどうかは数値だけでなく、真っ黒な便や真っ赤な便のように出血をうかがわせる変化があるかどうかで変わります。受診をすすめる線そのものは資料によって違うので、出所ごとに分けて並べます。
貧血の数値で受診をすすめる線は資料によって違う
どの資料にも共通しているのは、基準を下回った値をそのままにせず医療機関で原因を調べるという方向です。違うのは、どの数値から受診をすすめるかという線の引き方です。健診のあとの線として具体的な数値を持つのは日本人間ドック・予防医療学会の判定区分で、血色素の値を4つの区分に分けています。このうち下の2つが受診に関わります。
| 判定区分 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 基準範囲 | 13.1〜16.3 g/dL | 12.1〜14.5 g/dL |
| 軽度異常 | 16.4〜18.0 g/dL | 14.6〜16.0 g/dL |
| 要再検査・生活習慣改善 | 12.1〜13.0 g/dL | 11.1〜12.0 g/dL |
| 要精密検査・治療 | 12.0 g/dL以下または18.1 g/dL以上 | 11.0 g/dL以下または16.1 g/dL以上 |
この区分で読むと、男性12.0g/dL以下・女性11.0g/dL以下が要精密検査・治療に当たります。その1段上の男性12.1〜13.0g/dL・女性11.1〜12.0g/dLは要再検査・生活習慣改善で、再検査を受ける側の区分です。
ただしこれは健診のあとの振り分けであって、貧血の診断基準ではありません。12.0g/dLだから貧血という読み替えはできません。前の章の13g/dL・12g/dLという判定の線と、この判定区分は役割が別です。
厚生労働省の側は、数値ではなく症状のほうから書いています。ヘモグロビンの値が低い場合は鉄欠乏性貧血などを疑うとしたうえで、貧血のときには動悸、息切れ、顔色不良、疲労感などを呈するが、無症状の場合もあるため注意が必要としています。受診するかどうかは、数値と症状の有無のどちらか片方だけでは決まりません。
参考:日本人間ドック・予防医療学会「検査表の見方 血液検査」/厚生労働省 e-ヘルスネット「Hb / 血色素量」
健診の判定区分は、健診のあとに何をするかを振り分けるための区分です。貧血の診断に用いる値とは目的が違います。
低値側で要精密検査・治療に当たるのは男性12.0g/dL以下・女性11.0g/dL以下で、要再検査はその1段上の区分です。高値側は男性18.1g/dL以上・女性16.1g/dL以上が同じ区分に入ります。
無症状でも区分に入ることはあるため、症状がないことは受診しない理由になりません。
貧血の数値が低いときの受診先は何科の病院か
受診先は内科です。健診の結果票を持って内科を受診し、採血で貧血の有無と程度を見て、必要な追加の検査を決めていく流れになります。最初から科を絞り込む必要はありません。そして原因を調べる段階で、消化管の検査が入ることがあります。日本鉄バイオサイエンス学会の診療指針は、男性や閉経後の女性の場合には消化管からの出血を疑うとしています。そのうえで、便に血が混じっていないかを調べる便潜血検査や、胃と大腸の内視鏡検査などを行うという記述を置いています。内視鏡を自院で行っている内科なら、原因の絞り込みから精密検査までを同じ場所で進められます。
貧血の精密検査は、採血の結果とMCVやフェリチンといった関連項目の値を見てから、どこを調べるかが決まります。病院かクリニックかという選び方では、結果票を持って行ける通いやすい内科が先に来ます。より専門的な治療が必要と判断された場合は、受診した医療機関から紹介を受ける形になります。
貧血の数値がどこまで下がると入院や輸血が検討される
入院するかどうかをヘモグロビンの値で定めた一次資料はありません。入院の判断は数値だけでは決まらず、下がった原因・下がる速さ・いまの全身の状態を合わせて医師が決めます。一方で輸血については、国の指針が水準を数字で置いています。ただしこちらも1本の線ではなく、病態ごとに別の目安が示されています。
| 病態 | 指針が示している目安 |
|---|---|
| 慢性貧血 | Hb 7g/dLが輸血を行う一つの目安 |
| 慢性出血性貧血 | 原則として輸血は行わない・全身状態が良好な場合はHb 6g/dL以下が一つの目安 |
| 急性出血 | Hb 6g/dL以下では輸血はほぼ必須・10g/dLを超える場合は輸血を必要とすることはない |
| 周術期の術中 | Hb 7〜8g/dLあれば十分な酸素の供給が可能・心疾患などがある場合は10g/dL程度を維持 |
慢性貧血についての記述は、慢性貧血の場合にはHb値7g/dLが輸血を行う一つの目安とされているが、貧血の進行度、罹患期間等により必要量が異なり、一律に決めることは困難であるというものです。7という数字は一つの目安として置かれていて、そこを下回ったら輸血と決まるものではありません。
同じ指針はHb値のみで輸血の開始を決定することは適切ではないともしています。さらに鉄欠乏・ビタミンB12欠乏・葉酸欠乏による貧血は、原則として輸血を行わないとされています。足りないものを補う治療が先に来るためです。
輸血を行うかどうかは、貧血の原因・自覚症状・ヘモグロビン値などをふまえて医師が慎重に判断し、輸血以外の方法で治療ができる場合はその治療を優先するとされています。数値が1つ決まれば輸血が決まるわけではありません。
参考:厚生労働省「血液製剤の使用指針[要約]赤血球濃厚液の適正使用」/国立がん研究センター がん情報サービス「貧血」
貧血の再検査はほとんど保険診療の対象になる
健康診断そのものは、自覚症状のない状態で受ける検査なので、原則として保険適用にならず自費になります。一方で健診の結果を受けて再検査や精密検査、治療が必要になった場合の診療は、保険適用になることが一般的です。
健診で貧血を指摘されたあとの受診は、健診の費用とは別の扱いになるということです。健診結果を受けて医師が必要と判断した再検査は、一般に保険診療の対象になります。これは健診のあとの診療に共通する扱いで、受診した医療機関がどこかによって変わるものではありません。ただし適用の範囲は診療の内容によって変わるため、何がどこまで対象になるかは受診のときに確かめられます。
池袋かめさん内科では、健康診断の結果票を持参してのご相談を承っております。血液検査(貧血・肝機能・脂質・血糖)を含む健康診断と、健診後の再検査・二次検査に対応しています。採血を含む場合は検査結果が出るまでに1週間程度かかりますので、後日ご来院のうえ結果をお受け取りいただく流れです。内科の診療内容は内科診療のページに掲載しています。
貧血の数値が少し低いくらいでは症状や見た目で気づきにくい

受診の線を数値で見たところで、次に出てくるのが自分には症状がないという疑問です。貧血は少し低いくらいでは自覚しにくく、見た目の変化だけでも判断できません。この章で分けるのは次の3つです。
- 貧血のときに現れるものとして資料に挙げられている症状
- 立ちくらみのようにほかの原因と紛れるもの
- 見た目の所見として参照されるものと参照されないもの
貧血の数値が低い人ほど息切れや動悸を感じやすい
貧血のときに現れるものとして挙げられているのは、動悸、息切れ、顔色不良、疲労感などです。ヘモグロビンは酸素を運ぶはたらきを持つため、その量が足りなくなると体が酸素を多く必要とする場面で変化が出ます。階段や坂道で息が上がりやすくなるのは、その場面に当たります。
WHOの区分は軽度・中等度・重度と段階を持っていて、数値が下がるほど重い側の区分に入ります。ただし厚生労働省は無症状の場合もあるため注意が必要ともしていて、数値の低さと症状の強さが一対一で対応するわけではありません。軽度の区分に入っていても何も感じないまま過ごしている方がいます。
症状の出方には、下がった速さも関わります。国の輸血の指針が必要量について貧血の進行度や罹患期間により異なるとしているとおり、同じ値でもゆっくり下がった場合と急に下がった場合では体の反応が変わります。ゆっくり進んだ貧血では体のほうが慣れてしまい、数値のわりに自覚が乏しいことがあります。
行動の変化として挙げられるのが氷食症です。氷をかじりたくなる・氷を食べ続けてしまうという行動で、鉄欠乏性貧血でみられる症状として学会誌でも取り上げられています。見た目の変化ではなく行動の側の話なので、顔色や目の下のくまといった見た目の俗説とは分けて読みます。ただしこれがあるから貧血だと決まるものでもありません。
参考:日本血液学会「臨床血液」第55巻第4号「鉄欠乏性貧血における氷食症」

立ちくらみや倒れるのは低血圧でも起こり貧血の数値だけでは決まらない
立ちくらみや倒れることと貧血は、同じものとして語られがちです。ただし貧血の判定で見るのは血液中のヘモグロビンの量で、血圧が表しているのは動脈の内部にかかる圧力です。測っている対象そのものが違います。血圧の値は心臓から送り出される血液の量と血管の抵抗で決まるもので、ヘモグロビンの量とは別の仕組みです。
立ちくらみは貧血でも起こりますが、立ちくらみがあるから貧血だとは決まりません。立ち上がったときや歩いているときにふらつきやめまい、意識が遠のくような感覚があるときは、その場にしゃがみこんで落ち着くまで様子をみるという対処が示されています。どちらが背景にあるかは、採血の結果と血圧の測定の両方を見てから分かれます。
起立性貧血という言葉で検索されることもありますが、この名前は病名として資料に挙げられていません。立ち上がったときの症状をまとめて貧血と呼んでしまった言い方で、貧血の数値とは別の仕組みの話が混ざっています。倒れたことがあるかどうかで、貧血の数値が決まるわけではありません。
参考:厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト「血圧」/厚生労働省 e-ヘルスネット「Hb / 血色素量」/国立がん研究センター がん情報サービス「貧血」

爪や舌の変化だけでは貧血の数値は判断できない
見た目から貧血の数値を当てようとする見方は広く行われています。まぶたの裏が白い・下まぶたの色の比較・目の裏・眼瞼結膜という言葉はどれも下まぶたを裏返したときに見える粘膜という同じ部位を指していて、左右や以前の自分と比べて色が薄いかどうかを見るものです。
爪が白い・爪が反り返る・舌の表面がなめらかになるといった変化も、鉄が足りない状態で挙げられる所見です。ただしWHOの重症度区分も日本の判定区分も、区分の境はすべてヘモグロビンの数値で定められていて、見た目の所見で区分を分けている資料はありません。
| 調べられている変化 | 資料での扱い |
|---|---|
| 下まぶたを裏返して見える粘膜の色 | 鉄が足りない状態の所見として挙げられる |
| 爪の白さや反り返り・舌の表面の変化 | 同じく所見として挙げられる |
| 氷をかじりたくなること | 見た目ではなく行動として挙げられる |
| 顔色の悪さ | 症状として挙げられるがこれだけでは判断できない |
| 目の下のくま | 下まぶたの裏の粘膜とは別の部位で参照されない |
扱いが分かれるのは下の2行です。顔色不良は貧血のときに現れるものとして挙げられていますが、顔色だけでヘモグロビンの値は決まりません。目の下のくまは皮膚の側の話で、下まぶたの裏の粘膜とは別の部位なので、貧血の所見としては参照されません。どれかに当てはまれば貧血という読み方はできません。見た目で気になったときに分かるのは、採血を受ける理由があるというところまでです。
貧血の数値が検査のたびに違うのはなぜ?

前回は基準範囲の中だったのに今回は下回った。貧血の数値は採血の回ごとに動きます。どの条件が効くのかは資料で確かめられる範囲があり、そこを超える数値は示されていません。動く要因と、動く幅の読み方の2つに分けます。
貧血の数値は採血のときの姿勢や体の水分量で動くと資料にある
共用基準範囲を作るとき、JCCLSは測定値の生理的変動を抑えるために採血の条件をそろえています。条件をそろえなければ値が動くことが前提になっているということです。
| そろえている採血の条件 | 内容 |
|---|---|
| 運動 | 採血前3日以内に通常でない強い運動・筋肉労作を控える |
| 前夜の過ごし方 | 過労・過度のストレス・過度の飲食・飲酒を控える |
| 食事と時刻 | 採血前10時間以上絶食したうえで午前7〜10時に採血する |
| 姿勢 | 20分以上座位で安静にしてから採血する |
姿勢の影響は数字で示されています。長く立っていた状態で採血すると、血中の水や小分子物質が下肢の血管外に漏れ出すため、大分子成分の濃度が座位に比べて5〜10%高くなるとされています。立ちっぱなしのあとの採血は濃い側に出るということです。この5〜10%は蛋白などの大分子成分についての数字で、ヘモグロビンの変動率をそのまま表すものではありません。
体の水分量についても同じ向きの話が出てきます。ヘモグロビンの値が高い場合は多血症や脱水を疑うとされていて、水分が少ない状態では濃い側に出ます。逆に水分が多い状態では薄い側に出るため、同じ人でも採血の時点の条件で数値が前後します。年齢でも動きます。JCCLSは加齢による変化がほとんどの検査項目で認められたとしていて、全検査項目について基準値の年齢変化のプロフィール図を作っています。1回の数値だけで決めない理由はここにあります。
参考:日本臨床検査標準協議会(JCCLS)「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲 -解説と利用の手引き-」
結果票に出ている数値は、採血した1回の値です。条件をそろえた採血と、立ちっぱなしのあとの採血では、同じ人でも値が前後します。条件が違う年の結果を並べて下がったと判断する前に、採血の時刻や空腹だったかどうかも思い出すと、動きの読み方が変わります。
同じ人の貧血の数値が収まる範囲は集団の基準範囲より狭い
結果票に印字されている基準範囲は、健常者を集めて作られた幅です。一人の人の値がこの幅いっぱいに動くという意味ではありません。同じ人の値はもっと狭いところに収まっていて、その人にとっての普段の位置があります。
ただし、同じ人の値がどれだけの幅に収まるかを示した数値は、JCCLSの手引きには記載がありません。手引きに置かれているのは生理的変動という言葉と、上に挙げた採血の条件です。日によって何%動くかという数値は、この手引きには示されていません。
それでも読み方は変わります。いつも14g/dL前後だった人が12.5g/dLになっていれば、男性なら判定区分としては要再検査の側に移りますし、女性なら基準範囲の中でもその人にとっては下がった動きです。基準範囲に入っているかどうかだけでなく、前回からの動きを並べて読みます。個人の値と集団の幅の関係は、検査項目に共通する論点です。
貧血の種類はMCVの数値で分けられている

ヘモグロビンが同じ値でも、原因の絞り方は赤血球の大きさで変わります。平均赤血球容積(MCV)は赤血球1個あたりの容積を表す項目で、結果票の血液検査の欄に並んでいます。この値の位置によって貧血は小球性・正球性・大球性に分かれますが、どの型もMCVだけで原因が決まるわけではありません。MCVは原因を絞るための手掛かりで、型が決まった先の原因そのものは原因の章で扱います。この章では、型の分け方と、あわせて見る項目までを並べます。
MCVが低い小球性の貧血で多いのは鉄欠乏性貧血
| MCVの位置 | 型の呼び名 | 疑われるとされるもの |
|---|---|---|
| 基準範囲より低い | 小球性 | 鉄欠乏性貧血・慢性炎症にともなう貧血 |
| 結果票の基準範囲におさまっている | 正球性 | MCVだけでは絞りきれない |
| 基準範囲より高い | 大球性 | ビタミンB12欠乏性貧血・葉酸欠乏性貧血・過剰飲酒 |
赤血球の大きさという言葉で調べたときに出てくるのが、このMCVです。結果票に大きさという項目名は無く、MCVという略号で印字されます。小球性・正球性・大球性という呼び名も結果票には出てこないため、MCVの値と基準範囲を見比べると自分がどのあたりかが分かります。ただしMCVは型や原因を考える手掛かりで、医師はヘモグロビンやほかの検査結果と合わせて判断します。
MCVが基準範囲より低いとき、その貧血は小球性と呼ばれます。日本人間ドック・予防医療学会は、MCVの数値が低いと鉄欠乏性貧血、慢性炎症にともなう貧血が疑われるとしています。鉄が足りないと赤血球に詰めるヘモグロビンが減り、1個あたりの容積も小さくなるためです。
日本鉄バイオサイエンス学会の診療指針は、鉄欠乏性貧血では小球性低色素性貧血を呈すると述べています。小球性は赤血球が小さいこと、低色素性は赤血球に含まれるヘモグロビンが少ないことを指す言い方で、この2つが同時に起こる型という意味です。
ただし小球性なら鉄欠乏だと決まるものでもありません。同じ区分に慢性炎症にともなう貧血も入っているため、小球性と分かった段階でできるのは鉄欠乏性貧血や慢性炎症にともなう貧血などを候補に挙げるところまでです。どれに当たるかを分けるには、鉄に関わる項目の値を見る必要があります。
参考:日本人間ドック・予防医療学会「検査表の見方 血液検査」/日本鉄バイオサイエンス学会「鉄欠乏性貧血の診療指針 鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の診断・診断基準」

MCVが高い大球性の貧血ではビタミンB12や葉酸の不足を考える
MCVが基準範囲より高いとき、その貧血は大球性と呼ばれます。学会の判定では、MCVの数値が高いとビタミンB12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血、過剰飲酒が疑われるとされています。小球性とは逆に、赤血球1個あたりが大きい側へ動いている状態です。
ビタミンB12と葉酸は、赤血球を作る過程に関わる栄養素です。これが足りない状態で起こる貧血には巨赤芽球性貧血という名前が、その一部には悪性貧血という名前が付けられています。型の分類の中で出てくる呼び名であって、健診の結果票にこれらの名前が印字されることはありません。
貧血の種類という言葉でまとめられているのが、この小球性・正球性・大球性の分け方です。赤血球の大きさという1つの軸で分けているので、同じ型の中に複数の原因が並びます。それでも型が分かれば次に調べる対象が変わり、小球性なら鉄に関わる項目、大球性ならビタミンB12や葉酸に関わる項目が先に来ます。
過剰飲酒が並んでいるのも大球性の特徴です。MCVが高い側に動いているときは、飲酒の量も確かめる対象に入ります。採血の前夜の飲酒を控える条件が共用基準範囲に置かれているのは先に挙げたとおりで、こちらは習慣としての飲酒量の話です。

MCVが基準範囲内の正球性の貧血では原因が絞りきれない
MCVが結果票の基準範囲におさまっているとき、その貧血は正球性と呼ばれます。小球性と大球性では候補が挙がるのに対して、正球性ではMCVの値から候補を絞ることができません。赤血球の大きさが変わらないまま、ヘモグロビンの量だけが減っている状態です。
この型に入る名前としては腎性貧血などが挙げられますが、名前が出てくるだけで原因が決まるわけではありません。正球性と分かったときに次に見るのは、MCV以外の項目です。
- 鉄が足りているかどうかを見る項目
- 炎症が続いているかどうかを見る項目
- 腎臓のはたらきを表す項目
正球性だけが絞れない型だということでもありません。小球性でも候補が複数挙がるのと同じように、どの型であってもMCVの値だけでは原因は確定しません。MCVの役割は、次にどの項目を見るかを決めるところまでです。
貧血の数値はMCVのほかMCHやMCHCも見る
赤血球の指標はMCVだけではありません。平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)は赤血球1個に含まれるヘモグロビンの量を、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)は赤血球の容積に対するヘモグロビンの割合を表します。
| 項目 | 共用基準範囲 | 表している値 |
|---|---|---|
| MCV | 83.6〜98.2 fL | 赤血球1個あたりの容積 |
| MCH | 27.5〜33.2 pg | 赤血球1個に含まれるヘモグロビンの量 |
| MCHC | 31.7〜35.3 g/dL | 赤血球の容積に対するヘモグロビンの割合 |
fL(フェムトリットル)はごく小さな容積を表す単位、pgはごく小さな質量を表す単位です。この3つの数値は赤血球数とヘモグロビン、ヘマトクリットの値から計算されて結果票に印字されます。採血で別に測っている項目ではありません。
MCVが小さい側に動くとき、MCHやMCHCも同じ向きに動きやすくなります。鉄欠乏性貧血が小球性低色素性貧血と呼ばれるのは、容積と色素の両方が下がる組み合わせを指しているためです。3つをまとめて見ると、赤血球1個の中身がどう変わっているかが見えます。
学会の診療指針は、赤血球指標が貧血が小球性・正球性・大球性であるか、あるいは低色素性・正色素性・高色素性であるかの判別に用いられるとし、貧血の鑑別診断を行う上で有用であると位置づけています。赤血球の大きさの軸と、含まれるヘモグロビンの濃さの軸という2つで分けられるということです。
再検査では、これに鉄の状態を調べる項目が加わります。日本鉄バイオサイエンス学会の鉄欠乏性貧血の診断基準には、血清フェリチンの値と、血液中のたんぱく質が鉄と結びつけられる量を表す総鉄結合能(TIBC)の360μg/dL以上が置かれています。血清鉄やTIBCといった項目名が出てくるのはこの段階で、フェリチンの読み方は次の章で扱います。
参考:国立がん研究センター中央病院 臨床検査部「臨床検査基準値一覧」/日本臨床検査標準協議会(JCCLS)「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲 -解説と利用の手引き-」
隠れ貧血はフェリチンの数値から疑われる

ヘモグロビンが基準範囲におさまっていても、鉄が足りていないことがあります。フェリチンは体に貯めてある鉄の量を反映する項目で、健診の基本の血液検査には入っていません。隠れ貧血と呼ばれている状態は、この値から疑われます。
フェリチンは貧血の数値とは別の項目で基準値も男女で違う
フェリチンは鉄を貯めておくたんぱく質で、血液中のその量を測るのが血清フェリチンです。ヘモグロビンがいま使われている側の鉄を映すのに対して、フェリチンは貯めてある側の鉄の量を映します。測っている対象が違うため、健診の結果票にフェリチンの欄があるとは限りません。
日本鉄バイオサイエンス学会の診療指針は、フェリチンの正常域はおよそ25〜250ng/mLと比較的幅広く、かつ思春期から中年では男性が女性より高いとしています。結果票や検査の案内では正常値と書かれることもありますが、指している中身は基準値と同じです。
男女で違うという点は、ヘモグロビンの線とは理由が違います。ヘモグロビンは判定に用いる値そのものが男女別に示されていますが、フェリチンは正常域の中での高さが男性のほうが高いという形で示されています。結果票にフェリチンの欄があるときは、併記された基準値が男女どちらのものかを確かめます。
| 読み取る対象 | 示されている値 |
|---|---|
| 血清フェリチンの正常域 | およそ25〜250ng/mL |
| 潜在性鉄欠乏の診断基準 | 貧血なし・血清フェリチン12ng/mL未満 |
| 鉄欠乏性貧血の診断基準 | 貧血あり・血清フェリチン12ng/mL未満・TIBC 360μg/dL以上 |
| WHOが鉄欠乏の基準とする値 | 5歳以上の小児・青少年・成人で15ng/mL未満 |
この表で分けて読むのは、正常域と鉄欠乏の判定値が別物だという点です。正常域の下限は約25ng/mLですが、鉄欠乏と判定する線は12ng/mL未満に置かれています。正常域を下回ったことと、鉄欠乏と判定されることは同じではありません。
線が1つに決まっていないことも書かれています。学会が挙げている比較では、12ng/mL未満をカットオフにした場合の感度が25%・特異度が98%、30ng/mL未満にした場合は感度が92%・特異度が98%でした。学会はそのうえで、鉄欠乏の診断における血清フェリチンの基準値に関しては今後の更なる検討が望まれると結んでいます。
参考:日本鉄バイオサイエンス学会「鉄欠乏性貧血の診療指針 鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の診断・診断基準」
貧血の数値が基準範囲内でもフェリチンが低いことがある
ヘモグロビンが基準範囲におさまっていて、フェリチンだけが低いという組み合わせが起こります。学会の診療指針は、貧血に至る前の潜在性鉄欠乏という状態を経て、さらに鉄欠乏が進むと鉄欠乏性貧血の発症に至るとしています。貯めてある鉄が先に減り、ヘモグロビンが下がるのはそのあとです。
閉経前の女性ではこの組み合わせが起こりやすくなります。指針は、閉経前の成人女性は月経により定期的に鉄を喪失することから、高頻度で鉄欠乏状態となり、潜在性鉄欠乏に留まらず高率に鉄欠乏性貧血を発症すると説明しています。
フェリチンには逆向きの読み違いもあります。学会の診療指針は、血清フェリチンは悪性腫瘍、肝障害、感染症、炎症などの存在下では貯蔵鉄量とは無関係に上昇するため、血清フェリチンが正常範囲であっても鉄欠乏が除外できないとしています。炎症を伴う状態では、フェリチンが正常域にあることは鉄が足りている証拠になりません。
健診でフェリチンを測るかどうかは、健診の種類と追加した項目によります。基本の血液検査に入っていないため、ヘモグロビンだけを見ていると潜在性鉄欠乏の段階は結果票に出てきません。フェリチンが低い場合の症状が気になる場面もあります。潜在性鉄欠乏は貧血に至る前の段階として位置づけられているので、ヘモグロビンが基準範囲にあるうちは症状の有無で見分けられません。数値が低いと分かったあとにどう動くかは、受診して医師と決めることになります。

隠れ貧血は潜在性鉄欠乏として学会資料にあるのか
隠れ貧血という言い方は、一般の記事や検索の語として使われているもので、学会の資料にこの呼び名は置かれていません。学会の診断基準に置かれている名前は潜在性鉄欠乏です。診療指針の記述では、潜在性鉄欠乏の診断基準は貧血なし、血清フェリチン値12ng/mL未満とされています。貧血がないという条件が診断基準の側に入っているため、ヘモグロビンが基準を下回っていない人が対象になる区分です。隠れ貧血という言い方が指している状態と重なります。
ただし呼び名が重なることと、同じものだと言い切れることは別です。隠れ貧血は定義を持たない俗称なので、フェリチンが12ng/mLを下回ったら隠れ貧血という単一の線で扱うことはできません。WHOは5歳以上で15ng/mL未満を鉄欠乏の基準にしていて、報告によっては30ng/mL未満という線も使われています。調べるときの語が隠れ貧血、資料にあたるときの語が潜在性鉄欠乏ということになります。この章で扱うのは数値の読み方までで、低かったときにどう動くかは受診の章と当院の章が持っています。
貧血の数値が下がる原因は鉄の不足だけではない

貧血の数値が下がる背景は1つではありません。鉄の不足は、入ってくる量が足りない場合と、出ていく量が多い場合の両方から起こります。出ていく側の代表例が月経による鉄の喪失で、消化管からの出血も同じ側です。鉄の不足以外の背景も含めると、大きく次の3つに分かれます。
- 食事から入ってくる鉄が足りていない場合
- 出血などで体から出ていく血が多い場合
- 赤血球を作る側のはたらきに事情がある場合
男性と閉経後の女性で貧血の数値が低いときは消化管からの出血を考える
鉄が足りない貧血の背景は、性別と閉経の有無で見る方向が変わります。日本鉄バイオサイエンス学会の診療指針は、男性や閉経後の女性の場合には消化管からの出血を疑い、便潜血検査、上下部消化管の内視鏡検査などを行うとしています。
ヘモグロビンが低い原因を男性で調べると、理由の絞り方がはっきりします。男性には月経による定期的な鉄の喪失がないため、入ってくる側より出ていく側を先に疑う形になります。閉経後の女性も同じ扱いで、閉経の前と後で見る方向が入れ替わります。
疑う対象として挙げられているのは、腫瘍・潰瘍・痔疾・大腸憩室などです。少しずつ長く続く出血は自分では気づきにくく、貧血の数値だけが先に動くことがあります。月経のない人で鉄が減っているなら、どこかから出ていっていないかを調べるのが順序になります。
はっきり見える出血は急を要します。国立がん研究センターの資料は、便に血液が混じる・嘔吐してしまうといった症状も担当医に伝える対象とし、濃い茶色や真っ赤な嘔吐物、真っ赤または真っ黒な便が出るときは出血量が多く、緊急の対応が必要になることがあるとしています。
参考:国立がん研究センター がん情報サービス「貧血」/日本鉄バイオサイエンス学会「鉄欠乏性貧血の診療指針 鉄欠乏性貧血の原因」

貧血の数値から消化管の出血を胃カメラで調べる
消化管からの出血を調べる検査は、上と下で分かれます。胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で見えるのは食道・胃・十二指腸までで、大腸の内側は胃カメラでは見えません。上と下は別の検査として扱われます。
上部については、貧血があることが胃カメラを検討する理由として挙げられています。池袋かめさん内科も、胃カメラを検討すべき症状の1つとして貧血があることを挙げており、黒い便が出た場合も同じリストに並んでいます。検査の内容は胃カメラ検査のページに掲載しています。
胃カメラは、出血しているかどうかだけを見る検査ではありません。粘膜を直接観察するため、出血の跡や潰瘍、腫瘍といった出血の原因そのものを確かめられます。貧血の背景に消化管からの出血がないかを調べる検査として置かれているということです。
下部は入口が別です。健診の便潜血が陽性だった場合に、その精密検査として大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)を受けるという流れになります。学会の診療指針が上下部の内視鏡検査を挙げているとおり、鉄が足りない貧血の原因を調べる目的で下部の検査が検討されることもあります。どこまで調べるかは、症状や便の様子を見て医師が決めます。
上下の内視鏡検査が両方挙げられているのは、鉄が足りない貧血の原因を探すときに消化管の全体が対象になるためです。便潜血が陰性だったことは、下部を調べる必要がないという結論になりません。どこまで調べるかは、貧血の程度と症状を見て決まります。
女性の貧血の数値は生理で鉄が失われて下がりやすい
月経のある女性では、出ていく側の代表が生理です。学会の診療指針は、出血の原因として月経を挙げ、月経血60gによって約30mgの鉄が失われるという数字を挙げています。毎月これが繰り返されるので、入ってくる鉄が同じでも差が積み上がります。
量が多い場合は背景を見ます。指針は、過多月経では子宮筋腫などの器質的な原因がみられることがあるとも書いています。生理の量が以前より増えた・期間が長くなったという変化があるなら、貧血の数値と合わせて伝える材料になります。更年期に入る時期も量が変わる場面で、減っていく人もいれば不規則になって増える人もいるため、閉経したかどうかで見る方向が変わるという話と地続きになります。
閉経前の女性で鉄欠乏が起こりやすいことはフェリチンの章で触れたとおりです。生理前に体調が変わるという感覚と、貧血の数値が下がっていることは別の話なので、数値の確認は採血で行います。生理の量や周期の変化については、受診のときに医師へ伝えます。
腎臓の病気や慢性の炎症でも貧血の数値は低くなる
鉄が足りているのに貧血が続く場合は、赤血球を作る側や炎症の側を見ます。日本人間ドック・予防医療学会は、MCVの数値が低いと鉄欠乏性貧血と並んで慢性炎症にともなう貧血が疑われるとしています。炎症が続く状態そのものが、貧血の数値に関わるということです。
腎臓の病気も、貧血の数値が低くなる背景に入ります。腎臓で作られるエリスロポエチンという物質が赤血球のもとになる細胞に働きかけて産生を促しているため、慢性腎臓病が進むとこの産生が足りなくなって貧血が起こります。これが正球性の型に入る名前として挙げた腎性貧血です。腎臓のはたらきを表す項目の値とセットで読む対象になり、胃潰瘍や大腸がんのような出ていく側の原因とは調べる場所が変わります。
どの背景に当たるかは、ヘモグロビンの値だけでは分かれません。MCVで型を絞り、鉄に関わる項目と炎症に関わる項目、腎臓の項目を合わせて見るという順序になります。健診の結果票で分かるのはこの入口までで、そこから先は再検査の範囲です。
健診で貧血の数値を指摘されたら再検査までに何を確かめるか

再検査までの間にできることは、数値を動かすことではなく判断の材料をそろえることです。やることは次の3つに分かれます。
- 過去の健診結果と並べて値と動いた向きを見る
- 採血の日の体調と飲んでいる薬やサプリメントを書き出す
- 食事から摂る鉄の目安量と摂りすぎの扱いを知る
貧血の数値は過去1年から3年ぶんの健診結果を並べて見る
1回の数値だけでは、下がってきているのか元からこの位置なのかが分かりません。過去1年から3年ぶんの健診結果を並べると、どちらなのかが見えます。ヘモグロビンと赤血球数、MCVを同じ年のセットで並べるのが見やすい形です。2回以上の結果が並ぶ場合に見るのは、値そのものと動いた向きの両方で、基準範囲の中ほどにあった値が下限付近まで動いていれば、区分が変わっていなくても下がった動きとして読めます。
健診が年1回なら、手元の結果が1件しかないこともあります。その場合は比較の相手がないので、再検査の採血が最初の比較の相手になります。検査値を経年で見る考え方はクレアチニンが高いと言われたときの記事でも扱っています。

貧血の数値をみるときは健診当日の体調や飲んでいる薬も伝える
自分で確かめられるのは、採血の日の条件です。共用基準範囲がそろえている条件は、どれも自分の記憶で思い出せる範囲にあります。空腹だったか、前夜に飲酒したか、採血の直前まで立っていたか。
- 健診当日に食事をとった時間と内容
- 採血の前に長く立っていたかどうか
- 飲んでいる薬とサプリメントの名前と量
- 生理の時期と量や期間の変化
- 黒い便や赤い便が出たかどうか
薬やサプリメントは、製品名と飲んでいる量と期間をそろえて医師に伝えると、判断の材料になります。結果票に出ている数値と、その日の条件の両方がそろって初めて読み方が決まります。女性では生理の時期も効いてきて、採血が生理の直後に当たっていたかどうかで読み方が変わる場面があります。覚えている範囲で、受診のときに医師へ伝えます。
貧血の数値を上げる食べ物やサプリは資料でどこまで示されているか
貧血の数値を上げる食べ物を探す人は多いですが、国の資料が示しているのは鉄の摂取の目安量までです。特定の食品がヘモグロビンの値をどれだけ動かすかという数値は、食事摂取基準に置かれていません。
それどころか、逆向きの記述が置かれています。厚生労働省の報告書は、鉄欠乏でない人が鉄の摂取量を増やしても貧血の予防にはつながらないとしています。足りていない人に補うことと、足りている人が増やすことは別の話という整理です。
サプリメントについても同じ報告書が書いています。前半は鉄欠乏又は鉄欠乏性貧血の場合の鉄補給は必要であるが、医師の指示に従って実施するものという記述で、後半は個人の判断でサプリメント等を用いて鉄補給を行うことは控えるべきであるという記述です。必要な補給と自分の判断で足すことは、分けて扱われています。
貧血の数値が気になる人は食事の鉄分の目安量と摂りすぎ(過剰摂取)に注意する
鉄の1日あたりの推奨量は、年齢と性別、そして月経の有無で分けて示されています。男性は18〜29歳で7.0mg、30〜49歳で7.5mg、50〜74歳で7.0mg、75歳以上で6.5mgです。
| 年齢 | 月経のない女性の1日量 | 月経のある女性の1日量 |
|---|---|---|
| 18〜29歳 | 6.0mg | 10.0mg |
| 30〜49歳 | 6.0mg | 10.5mg |
| 50〜64歳 | 6.0mg | 10.5mg |
差が大きいのは月経の有無です。月経のある30〜49歳の女性は10.5mg、月経のない同じ年代の女性は6.0mgで、1日あたり4.5mgの開きがあります。出ていく分を見込んで目安量が上げられているということです。
摂りすぎの側は2025年版で扱いが変わりました。報告書は、胃腸症状を除き鉄の過剰摂取と健康障害との定量的な関係が明確でないため、いずれの年齢層においても耐容上限量の設定を見合わせたという記述です。上限の数値は示されていません。
ただし上限がないから多く摂ってよいという話ではありません。同じ段落が、推奨量を大きく超える鉄の補給は、合理性がなく、健康障害を生じる可能性があると続けています。過剰摂取がどのくらいからかという数値ではなく、推奨量を目安にするという形になります。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)スライド集」/厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書 ミネラル(微量ミネラル)」
過去1年から3年ぶんの健診結果を並べて、値と動いた向きの両方を見ます。結果が1件しかない場合は再検査が最初の比較の相手になります。
健診当日の食事・飲酒・採血前の姿勢と、飲んでいる薬やサプリメントの名前を書き出しておきます。
食事の鉄は推奨量が目安で、数値を動かす手段として食品やサプリメントを選ぶ話ではありません。
貧血の数値を相談したい人に当院ができること

貧血の数値を相談したいとき、当院でお受けできるのは検査と精査の範囲です。次の3つを同じ院内で受けられます。
- 血液検査(貧血・肝機能・脂質・血糖)を含む健康診断
- 健康診断で再検査や要精密検査となった場合の二次検査
- 上部の胃カメラ検査と下部の大腸カメラ検査
貧血の数値が含まれる血液検査を当院の健康診断で受けられる
当院の健康診断には3つのプランがあり、血液検査(貧血・肝機能・脂質・血糖)が含まれるのはプランA(10,000円〜)です。プランBとプランCには血液検査が入っていないため、貧血の数値を健診として測る場合はプランAになります。料金はいずれも税込の目安です。
経路は2つに分かれます。1つは健康診断として受ける場合で、自覚症状のない状態で受ける検査なので自費です。もう1つは受診して医師の判断で採血する場合で、こちらは一般に保険診療の対象になります。健診で指摘された結果票を持って受診する場合は、2つ目の経路です。なお表に記載のない検査項目についても、採血項目の追加などのご相談に応じています。健診の内容は健康診断・各種検査のページに掲載しています。
貧血があるときの胃カメラ検査を当院で実施している
当院は胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)を実施しており、胃カメラを検討すべき症状の1つに貧血があることを挙げています。黒い便が出た・胃が痛い・胸やけやげっぷが続くといった項目と同じリストに並んでいます。
スコープは口から入れる経口内視鏡が約9mm、鼻から入れる経鼻内視鏡が約5〜6mmです。経口では鎮静剤(静脈麻酔)を使って眠っているような状態で受けられ、経鼻では鎮静剤を使わずに受けることもできます。費用は3割負担で約12,000円で、いずれも予約制です。
便潜血が陽性のときの大腸カメラと日帰りのポリープ切除
健診の大腸がん検診は便潜血検査で行い、結果が陽性となった場合の精密検査として大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)をご案内しています。当院は大腸ポリープの早期発見と日帰り切除に対応しています。
当院は、日帰り手術を安全に実施するための人員配置や施設設備、緊急時の対応体制などにおいて、短期滞在手術等基本料1の施設基準を満たしており、2024年3月に関東信越厚生局に認可されております。検査のみの場合は加算はありませんが、日帰り手術を実施した際にはこの基本料1が加算されます。
費用はポリープ切除を含む場合、3割負担で27,000〜39,000円程度です。受診当日に大腸カメラ検査を受けていただくことはできません。前処置が必要な検査のため、まず事前受診で医師の診察を受けていただき、検査日程のご予約と前処置のご説明を行います。初診の方の大腸カメラ検査について、お電話での予約は承っておりません。大腸カメラの実施枠は金曜の午後で、検査の内容と流れは大腸カメラ検査のページに掲載しています。
貧血の数値の結果票を持って受診するまでの進め方
当院は健康診断の再検査・二次検査に対応しており、結果票を持参してのご相談を承っています。健康診断で再検査や要精密検査となった場合も、内科診療や胃カメラ・大腸カメラ検査を通じて継続的にサポートいたします。
採血を含む場合は、検査結果が出るまでに1週間程度かかります。後日ご来院のうえ結果をお受け取りいただく流れです。身体測定・胸部X線・尿検査のみの内容であれば、当日中に結果をお渡しできます。女性医師(副院長)による診察をご希望の方は、火曜午前・金曜の受診をおすすめしています。持ち物は健診の結果票と、マイナ保険証または資格確認書です。
貧血の数値についてよくある質問

最後に、貧血の数値についてよく調べられている質問をまとめます。
貧血の危険な数値はいくつですか?
1つの数値で決まるものではなく、どの資料を見るかで線が変わります。数値として具体的に示されているのは健診の判定区分で、男性12.0g/dL以下・女性11.0g/dL以下が要精密検査・治療に当たります。その1段上の男性12.1〜13.0g/dL・女性11.1〜12.0g/dLは要再検査の区分です。
輸血が話に出てくる水準は病態ごとに分かれていて、慢性貧血では7g/dLが一つの目安として国の指針に置かれています。ただし同じ指針が、ヘモグロビンの値だけで輸血の開始を決めるのは適切ではないという一文を置いています。出所ごとの線は受診の目安の章で並べました。
ヘモグロビンの数値が10だと貧血ですか?
成人で妊娠していない場合、10g/dLは男女どちらでも貧血に当たります。貧血の判定に用いる値は15歳以上の男性で13g/dL未満、15歳以上の女性で12g/dL未満、高齢者で11g/dL未満なので、10g/dLはこのいずれの線も下回ります。
段階としてはWHOの区分で中等度です。15歳から65歳の成人の区分では男女とも8.0〜10.9g/dLが中等度なので、10g/dLはその中に入ります。健診の判定区分でも男女いずれも要精密検査・治療に当たる値です。基準範囲との関係は基準値の章に置いています。

貧血の数値が9や8だと体にどんな変化が出ますか?
9や8という数字から症状は決まりません。貧血のときに現れるものには動悸、息切れ、顔色不良、疲労感などがありますが、自覚がないまま健診で見つかることもあります。同じ8g/dLでも、感じ方は人によって変わります。
関わるのは下がった速さです。国の指針も必要量が貧血の進行度や罹患期間により異なるとしていて、ゆっくり下がった場合は数値のわりに自覚が乏しいことがあります。症状そのものの中身は、気づきにくさを扱った章にあります。なお同じ8g/dLでもMCVによって考える原因が変わるため、原因まで知りたい場合は型の章へ進みます。
貧血の数値はいくつから入院レベルですか?
入院の判断をヘモグロビンの値で定めた一次資料はありません。数値だけでは決まらず、下がった原因・下がる速さ・いまの全身の状態を合わせて医師が判断します。何g/dLから入院という線は、どの資料にも示されていません。数値が示されているのは輸血のほうで、輸血は入院して行われることが多い処置ですが、輸血の目安と入院の基準は別のものとして扱われます。輸血の水準については次の質問で挙げます。

貧血の数値が7だと輸血が必要になりますか?
7という数字は、慢性貧血での一つの目安として国の指針に置かれています。その記述は、慢性貧血の場合にはHb値7g/dLが輸血を行う一つの目安とされているが、貧血の進行度、罹患期間等により必要量が異なり、一律に決めることは困難であるというものです。
同じ指針がHb値のみで輸血の開始を決定することは適切ではないとしており、病態ごとに別の線が示されています。慢性出血性貧血は原則として輸血を行わず、全身状態が良好な場合に6g/dL以下が一つの目安です。急性出血では6g/dL以下でほぼ必須、10g/dLを超える場合は輸血を必要とすることはないとされています。周術期の術中の7〜8g/dLは、十分な酸素の供給が可能とされる水準で、輸血を始める基準として置かれた数字ではありません。7を下回れば輸血と決まるわけではありません。
女性のヘモグロビンの正常値はいくつですか?
正常値という言葉で結果票に出ている幅は基準範囲です。女性の共用基準範囲は11.6〜14.8g/dL、健診の判定区分の基準範囲は12.1〜14.5g/dLで、出所によって端の数値が変わります。どちらも正常値と書かれることがあります。
これと貧血の判定に用いる値は別です。15歳以上の女性では12g/dL未満が貧血の基準で、基準範囲の下限とは一致しません。どちらの幅を見ているかで読み方が変わるため、基準範囲と判定区分の違いは基準値の章で分けました。
血色素量が低いと言われたのはどういう意味ですか?
血色素量はヘモグロビンの量を表す項目なので、血色素量が低いというのはヘモグロビンが少ないという指摘です。血色素量・ヘモグロビン・ヘモグロビン濃度・Hbはいずれも同じ項目を指していて、結果票での書き方が違うだけです。
低いと言われたときに見る順序は、男女別の判定の線に当たるかどうか、健診の判定区分でどこに入るか、MCVがどの位置にあるかの3つです。ヘモグロビンの値が低い場合は鉄欠乏性貧血などを疑うとされていますが、原因は鉄の不足だけではありません。

血色素量が高いと言われたらどうなりますか?
ヘモグロビンの値が高い場合は多血症や脱水を疑うとされています。貧血とは逆向きの指摘なので、見る対象も変わります。健診の判定区分では、男性18.1g/dL以上・女性16.1g/dL以上が要精密検査・治療に当たります。
採血のときに長く立っていた場合や体の水分が少ない状態では、濃い側に出ることもあります。高い側の値が出たときは貧血とは別の見方が必要になるため、結果票を持って受診するのが先になります。赤血球が多いと言われた場合も同じ流れになります。
ヘモグロビンの数値は食事で増やせますか?
国の資料が示しているのは鉄の摂取の目安量までです。特定の食品でヘモグロビンの値がどれだけ動くかという数値は、食事摂取基準に置かれていません。報告書は、鉄欠乏でない人が鉄の摂取量を増やしても貧血の予防にはつながらないと述べています。
鉄欠乏または鉄欠乏性貧血の場合の鉄補給は必要とされていますが、医師の指示に従って実施するものであり、個人の判断でサプリメント等を用いて鉄補給を行うことは控えるべきであるとされています。推奨量と摂りすぎの扱いは再検査までの章に置きました。
貧血の数値が少し低いだけでも受診したほうがよいですか?
受診の対象になります。健診の判定区分では、男性12.1〜13.0g/dL・女性11.1〜12.0g/dLが要再検査・生活習慣改善で、要精密検査の1段上の区分です。少しだけ低いという値も、この区分に入っていれば健診の側から再検査を求められている値です。
そのまま放置しない理由は2つあります。1つは下がっている理由が分からないままになることで、消化管からの出血のように自分では気づけない背景があります。もう1つはWHOが軽度という呼び名を誤称とし、貧血が見つかった時点で鉄欠乏はすでに進んでいるとしていることです。
貧血の判定に用いるヘモグロビンの値は、15歳以上の男性で13g/dL未満、15歳以上の女性で12g/dL未満、高齢者で11g/dL未満です。WHOも15歳から65歳の成人について、男性13.0g/dL未満・妊娠していない女性12.0g/dL未満と定めています。
結果票の基準範囲はこれとは別の幅です。共用基準範囲は男性13.7〜16.8g/dL・女性11.6〜14.8g/dL、健診の判定区分の基準範囲は男性13.1〜16.3g/dL・女性12.1〜14.5g/dLで、端の数値が一致しません。基準範囲におさまっているかどうかと、貧血と判定されるかどうかは別の物差しです。
危険な数値の線は資料によって違います。健診の判定区分では男性12.0g/dL以下・女性11.0g/dL以下が要精密検査・治療です。輸血の目安は病態ごとに分かれていて、入院の基準は一次資料に示されていません。
同じ数値でも原因の絞り方はMCVで変わり、小球性・正球性・大球性に分かれます。貧血がなく、血清フェリチンが12ng/mL未満なら潜在性鉄欠乏の診断基準に当たります。ただし炎症などがあるとフェリチンは上がるため、正常範囲であっても鉄欠乏は除外できません。
鉄は食事から摂るのが基本で、1日あたりの推奨量は月経のある30〜49歳の女性で10.5mg、月経のない同じ年代の女性で6.0mgです。2025年版では耐容上限量の設定が見合わせられていますが、推奨量を大きく超える補給は合理性がないとされています。
池袋かめさん内科では、血液検査(貧血・肝機能・脂質・血糖)を含む健康診断と、健診後の再検査・二次検査に対応しております。健康診断の結果票をお持ちのうえでのご相談を承っております。採血を含む場合は検査結果が出るまでに1週間程度かかりますので、後日ご来院のうえ結果をお受け取りいただく流れです。検査の内容は胃カメラ検査と健康診断・各種検査のページに掲載しています。
診療時間は9:00〜12:30と14:00〜18:00です。月曜と日祝は休診で、土曜は午前のみ診療しています。目白駅から徒歩10分、池袋駅から徒歩13分、雑司が谷駅から徒歩2分の場所にあります。女性医師(副院長)による診察をご希望の方は、火曜午前・金曜の受診をおすすめしています。診察のご予約は電話(03-3986-4466)・WEB・LINEで承っております。大腸カメラ検査は事前診察のうえで日程を決めます。

