予防接種・ワクチン

HPVワクチンは男性も接種できる?費用と副反応の目安

HPVワクチンは女性が受けるもの、という印象を持っている方は少なくありません。ただ2026年9月時点で、男性への接種も国内で薬事承認されています。豊島区は令和6年6月1日から、男性のHPVワクチンの接種費用を全額助成する制度を始めました。ただしその助成には年齢の条件があり、そこから外れる方は全額自己負担になります。

この記事で確かめられること

男性も接種できるのか、豊島区で無料になるのは誰か、無料にならない場合はいくらかかるのか。この3つが、受けるかどうかを決めるときの分かれ目になります。
あわせて、報告されている副反応の頻度と、その数字が何を数えたものなのかも整理します。

打つ意味から費用と副反応まで、公的機関が公表している資料をもとに順を追って確かめていきましょう。

目次

男性がHPVワクチンを打つ意味は?肛門がんや尖圭コンジローマのリスク

男性がHPVワクチンを打つ意味は?肛門がんや尖圭コンジローマのリスク

先に可否からお答えします。男性もHPVワクチンを接種できます。4価ワクチン(商品名はガーダシル)は令和2年に、9価ワクチン(商品名はシルガード9)は令和7年8月に、男性への接種が薬事承認されました。どのワクチンをどう打つのかは種類の章で、助成の対象になる年齢は費用の章で扱います。

打てることがはっきりすると、次に出てくるのが打つ意味です。この章では、HPVがどれくらいありふれたウイルスなのかを確かめたうえで、男性の接種に何が期待されているのかを見ていきます。

HPVは男女を問わず多くの人が感染するありふれたウイルス

東京都保健医療局は、ヒトパピローマウイルス(HPV)を主に性行為によって感染するウイルスだと説明しています。そのうえで、性行為を経験する年頃になれば男女を問わず多くの人が感染するとしています。特別な人だけがかかるウイルスという説明にはなっていません。

感染しても多くは自然に消えていきます。ただ一部は長く残り、そこから病気につながることがあります。男性が受ける意味を考えるときの出発点は、この「多くの人が一度は感染する」という前提のほうです。感染したこと自体を問題にする書き方は、公的機関の資料には出てきません。

男性のHPVワクチンに期待されるのはHPVへの感染予防

東京都保健医療局は、男性がワクチンを接種することで肛門がんや尖圭コンジローマなどの原因と考えられているHPVへの感染予防が期待できるとしています。豊島区も、男性が接種することでHPVが原因となる肛門がん及びその前駆病変と尖圭コンジローマにかかるリスクを減らすことができますと書いています。

どちらも、すでに起きている感染や病気を治すという説明ではありません。期待されるのはHPVへの新たな感染の予防であって、すでに成立した感染を治療するものではないという整理です。この点は添付文書にも明記されています。効能又は効果に関連する注意として、接種時に感染が成立しているHPVの排除及びすでに生じているHPV関連の病変の進行予防効果は期待できないと書かれています。

肛門がんと尖圭コンジローマがどういう病気なのかは、予防が期待される病気の章で詳しく見ていきます。

男性のHPVワクチンに期待されるのは新しい感染の予防と肛門がん及びその前駆病変・尖圭コンジローマのリスク低減で、すでに成立した感染の排除や生じた病変の進行予防は期待できないと添付文書に書かれていることを対比した図

男性のHPVワクチンはパートナーの子宮頸がん予防にもつながる可能性がある

自分のためだけではない、という説明も公的機関の資料に出てきます。東京都保健医療局は、男性がワクチン接種による感染予防をすることで、性交渉によるHPV感染から女性を守り子宮頸がんの予防にもつながる可能性があると説明しています。

ここで使われているのは「つながる可能性があります」という言い方です。守れる、と言い切る書き方にはなっていません。パートナーのためだけを理由に決める話でもなく、あくまで男性自身の感染予防に加わる要素として書かれています。この水準を超える説明は、公表されている資料の中には見当たりません

参考:東京都保健医療局「HPVワクチンの男性への接種について」

男性のHPVワクチンは意味ないと言われる理由

意味ないという言われ方をされることがあります。理由をたどると、次の3つに整理できます。

  • HPVワクチンが女性の子宮頸がん予防の制度として広まってきたこと
  • 男性は定期接種の対象ではなく、年齢によっては費用が全額自己負担になること
  • 男性のHPV感染は自覚症状が出にくく、防いだ実感が持ちにくいこと

3つとも、ワクチンが働かないという話ではありません。制度と実感の側の理由です。一方で、日本の男性にも肛門管がんの報告があることは、がん登録の集計から分かっています。ただしその集計だけでHPVがどれだけ関わっているかまでが分かるわけではありません。実数と関与の割合は、予防が期待される病気の章で示します。

国外に目を向けると、扱いはまた違います。東京都保健医療局によると、HPVワクチンは世界148か国で公的接種の対象になっています(令和7年2月時点)。このうちアメリカやオーストラリア、カナダ、イギリスなどを含む59か国では男性も接種の対象です。日本でも男性を定期接種の対象に加えることが検討されており、都は自治体が接種費用を助成する場合の補助事業を令和6年度から始めています。豊島区の助成も、この流れの中にあります。

打つか打たないかは、この判断材料をどう受け取るかで変わります。このあと見ていく費用と副反応まで確かめたうえで、接種を担当する医師と相談して判断することになります。

HPVの男性への感染経路と症状が出にくい理由

HPVの男性への感染経路と症状が出にくい理由

男性のHPV感染が話題になりにくいのは、気づく機会が少ないためです。この章では感染の経路を確かめたうえで、症状が出にくい理由を2つの角度から見ていきます。自覚症状が出ないまま経過することがあるという点と、型の多くは問題を起こさないという点です。この2つが重なるため、感染しているかどうかを本人が意識しにくくなります。

HPVは主に性的接触で感染する

東京都保健医療局は、HPVを主に性行為によって感染するウイルスだと説明しています。国立健康危機管理研究機構も、尖圭コンジローマの主な感染経路を性行為を中心とした粘膜を介した接触としています。皮膚や粘膜の小さな傷から入り込む形で、血液を介してうつるウイルスではありません。

感染そのものはありふれた出来事であり、行動の是非を測る材料にはなりません。予防の手立てとしては、ワクチンのほかにコンドームの使用が挙げられています。ただしコンドームで覆えない部位からの感染もあるため、それだけで感染を避けきれるわけではないとされています。

ワクチンを打てば他の対策が要らなくなるわけでもありません。添付文書は、接種に加えてHPVへの曝露や性感染症に対し注意することが重要であるとしています。ワクチンは対策の一部という位置づけで書かれています。

男性のHPV感染は自覚症状が出ないまま経過することがある

感染しても、多くの場合は痛みもかゆみも出ません。国立健康危機管理研究機構は尖圭コンジローマについて、潜伏期間を数週間から3か月程度としたうえで、自覚症状は少なく性器や肛門周囲に隆起が出現すると書いています。いぼが出て初めて気づく形になりますが、それも全員に出るわけではありません。

気づかないまま経過することがあるという点が、男性側でHPVが話題になりにくい理由のひとつです。症状が出ていないことは、感染していないことの裏づけにはなりません。この違いは、検査の章でもう一度扱います。

HPVに感染したあとは自覚症状が出ないまま経過することが多く、いぼが出て気づく場合もあるが全員ではないという分かれ方を示した図

HPVの遺伝子型は200種類以上ありほとんどは問題を起こさない

東京都保健医療局は、HPVには遺伝子型が200種類以上あるとしています。そのほとんどは問題を起こしませんが、一部は子宮頸がんのほか肛門がんや尖圭コンジローマなどの原因になることが分かっている、という説明です。国立がん研究センターのファクトシートも、HPVを200以上の遺伝子型に分類したうえで、粘膜に感染するグループを次のように整理しています。

型のグループ 代表的な型 関わるとされている状態
高リスク型 HPV16型・18型など15種類 長く残った場合にがんの発症につながる可能性がある
低リスク型 HPV6型・11型など 尖圭コンジローマの原因になる
そのほかの型 上記以外 多くは問題を起こさないとされる

※国立がん研究センターの分類による。表の型はいずれも粘膜に感染するグループのもの。

感染したかどうかよりも、どの型がどれだけ長く残るかのほうが問題になる、という構図です。ここまでの2つを合わせると、症状が出にくい理由が見えてきます。多くの型はそもそも病気を起こさず、病気につながる型に感染しても自覚症状が出ないまま経過することがあるためです。

中咽頭がんとの関係をどう読むか

国立がん研究センターは、HPV感染が子宮頸がん以外にも肛門がんや陰茎がん、中咽頭がんなどの原因になるとしています。中咽頭がんについても、発生には喫煙や飲酒のほかHPV感染が原因となっているものもあることが分かっていると書かれています。

ただし男性への接種で薬事承認されている効能又は効果に中咽頭がんは含まれていません。この記事で予防が期待される病気として扱うのは、承認の範囲にある肛門がん及びその前駆病変と尖圭コンジローマに限ります。

参考:国立がん研究センター「中咽頭がんについて」

参考:国立がん研究センター「子宮頸がんとその他のHPV関連がんの予防ファクトシート」

パートナーのHPV陽性がわかっても男性が感染した時期や経路は特定できない

パートナーの検査でHPVが見つかったとき、誰がいつうつしたのかを知りたくなることがあります。ただ感染した時期や経路をあとから特定する方法は示されていません。潜伏期間があり、感染しても症状が出ないまま長く経過することがあるためです。

東京都保健医療局が書いているとおり、HPVは性行為を経験する年頃になれば男女を問わず多くの人が感染します。陽性という結果は、そのありふれた感染を拾ったものであって、誰かの行動を示す証拠ではありません。責任の所在を探す材料にはならないという前提で受け取るほうが、その後の相談が進みやすくなります。気になる点があれば、検査を受けた医療機関で確かめる形になります。

パートナーのHPV陽性がわかっても、感染した時期も経路もあとから特定する方法は示されていないことを示した図

男性のHPVワクチンで予防が期待される病気

男性のHPVワクチンで予防が期待される病気

ここからが、男性の接種で名前が挙がっている病気の中身です。豊島区は男性の接種について、HPVが原因となる肛門がん及びその前駆病変と、性感染症の1つである尖圭コンジローマにかかるリスクを減らすことができると書いています。挙げられているのはこの2つで、どちらも薬事承認された効能又は効果の範囲に含まれます。

男性への接種で予防が期待される状態 関わるとされているHPVの型 出てくる部位
尖圭コンジローマ 6型・11型など 男性では性器や肛門周囲
肛門がん及びその前駆病変 16型・18型など 肛門管や肛門周囲

※豊島区と東京都保健医療局が男性の接種の効果として挙げている範囲。2026年9月時点。

尖圭コンジローマ(性器のいぼ)はHPVが原因で男性にも起こる性感染症

尖圭コンジローマは、HPVを病原体とする性感染症です。国立健康危機管理研究機構は原因となる型としてHPV6型や11型を挙げ、主な感染経路を性行為を中心とした粘膜を介した接触としています。感染症法では五類感染症の定点把握対象疾患に定められており、日本国内では男女の若年層の報告が多いとされています。

出てくる場所と見え方も示されています。潜伏期間は数週間から3か月程度で、男性では性器や肛門周囲に鶏冠状や乳頭状の隆起が出現します。自覚症状は少なく、違和感やかゆみ、痛みを伴うことがあるという書き方です。いぼが出ていないことは感染していないことの裏づけにはなりません

治療は外科的治療や外用薬で行われます。疑わしい症状が出た場合は早期の診断と治療、そして性的パートナーへの検査の勧奨が重要だとされています。同機構は尖圭コンジローマの予防法として、性行為の際のコンドームの使用とあわせて4価及び9価HPVワクチンを挙げています。

参考:国立健康危機管理研究機構「尖圭コンジローマ」

男性のHPVワクチンは肛門がん及びその前駆病変のリスクを減らすとされる

もう1つが肛門がんです。国立がん研究センターは肛門がんを、肛門管と肛門周囲の皮膚組織にできる悪性腫瘍の総称だと説明しています。肛門管はお尻の出口から直腸に向かう約3センチから4センチの管状の部分を指します。組織型では日本の場合、腺がんがおよそ8割、扁平上皮がんがおよそ2割と報告されています。

主な症状として挙げられているのは、肛門周囲の痛みや違和感、肛門付近の腫れやしこり、排便時の出血などです。ただし症状が出ないこともあると書かれています。診断される人が人口10万人あたり6例未満のがんで、希少がんに分類されています。

数としてはどうでしょうか。全国がん登録をもとにした集計では、2021年の肛門管がんの罹患は1,219人で、そのうち男性が571人と報告されています。同じ資料は肛門がんについて、およそ88%がHPVによるものだとしています。多い病気ではありませんが、男性にも一定数の報告があるという位置づけになります。

承認されているのは扁平上皮癌の側

添付文書に書かれている効能又は効果は、肛門癌のうち扁平上皮癌及びその前駆病変です。ここでいう前駆病変は、がんになる前の段階にあたる肛門上皮内腫瘍(AIN)1・2・3と示されています。肛門がん全体を対象にしているわけではなく、添付文書にも扁平上皮癌以外の肛門癌に対する予防効果は確認されていないと明記されています。

先に見たとおり、日本では肛門がんの組織型のうち腺がんがおよそ8割を占めます。数のうえで多いほうは対象に入っていない、という読み方になります。ここでも、リスクを減らすことが期待されるという水準を超える説明にはなっていません。

参考:国立がん研究センター「肛門がん」

参考:日本産科婦人科学会ほか「HPVワクチンの男性に対する定期接種化に関する要望」

男性のHPVワクチンが対象にするのはHPVの一部の型

対象になる型は決まっています。4価のガーダシルが含むのはHPV6型・11型・16型・18型の4つで、9価のシルガード9はこれに31型・33型・45型・52型・58型を加えた9つです。200種類以上あるHPVのすべてを対象にするわけではありません

国立がん研究センターのファクトシートも、ワクチンで予防できないHPVの型に感染する可能性があることなどを挙げて、接種してもHPV感染によるがんのリスクはゼロにはならないとしています。打てば心配がなくなる、という説明にはなっていません。

添付文書も同じ範囲で書かれています。含まれている型以外のHPV感染に起因する肛門癌やその前駆病変などについては、予防効果は確認されていないという書き方です。さらに、予防効果の持続期間は確立していないとも記載されています。何年もつのかを示した数字は、公表されている資料の中に示されていません。

そのうえで、含まれている型は病気との関わりが確かめられている型です。どこまでを引き受けるワクチンなのかを知ったうえで決めるほうが、あとから受け取り方が変わりにくくなります。型ごとの中身は種類と回数の章で改めて取り上げます。

男性のHPVワクチンは池袋かめさん内科で接種できます。池袋かめさん内科は豊島区の予防接種事業として男性のHPVワクチン任意接種費用助成を取り扱っており、対象になる年齢の方は予診票を持参すれば3回の接種完了まで無料です。対象になるかどうかが分からない場合は、ご予約の際にお伝えいただければ確認のうえご案内します。ご予約は電話(03-3986-4466)・WEB・LINEから承っております。雑司が谷駅2番出口から徒歩2分、目白駅から徒歩10分の場所にあります。

男性のHPVワクチンが豊島区で無料になるのは小学6年生から高校1年生相当の年齢

男性のHPVワクチンが豊島区で無料になるのは小学6年生から高校1年生相当の年齢

ここから制度の話に入ります。この章で答えるのは誰が無料の対象になるのかという一点です。条件を満たしたときにいくらになるのか、外れたときにいくらかかるのかは次の費用の章に譲ります。

なお制度の内容は年度で変わります。以下は2026年9月時点で豊島区と厚生労働省が公表している内容です。

豊島区が男性のHPVワクチンを全額助成する対象者と回数

豊島区は令和6年6月1日から、男性のHPVワクチン任意接種の費用の全額助成を始めています。対象になるのは、接種日時点で豊島区に住民登録のある小学校6年から高校1年生相当の男性です。区民の感染予防の促進と経済的負担の軽減が目的だと説明されています。

対象になるワクチンは4価のガーダシルと9価のシルガード9です。令和8年4月1日以降、9価も費用助成の対象になりました。過去に発行された有効期限内の予診票を持っている方は、そのまま使えるとされています。原則として同じ種類のワクチンで必要な回数分を完了させる形です。

助成の回数はひとりにつき3回の接種完了までで、そこまでが無料になります。過去に他の自治体などで3回の接種を完了した方は対象外です。ここでいう3回は助成が使える上限の回数であって、接種のスケジュールとしての回数とは意味が違います。後者は種類と回数の章で見ます。

区分 内容
対象になる方 接種日時点で豊島区に住民登録のある小学校6年から高校1年生相当の男性
対象になるワクチン 4価(ガーダシル)と9価(シルガード9)
助成の回数 ひとりにつき3回(接種完了)まで

※豊島区の公表内容による。2026年9月時点。

対象になる人の側から見ると、外れるのは次の場合です。

  • 接種日に対象年齢から外れている
  • 接種日に豊島区の住民登録がない(転出したあとを含む)
  • 過去に他の自治体などで3回の接種を完了している

このほかに予診票の有無と受ける医療機関という条件もありますが、そちらは費用の章で扱います。

参考:豊島区「男性のHPVワクチン任意接種費用全額助成」

成人男性もHPVワクチンを受けられるが豊島区の助成対象にはならない

何歳まで受けられるのか、という問いには2つの答えがあります。接種そのものができる年齢と、助成が使える年齢が別だからです。

まず接種のほうです。添付文書に書かれている接種の対象は9歳以上の者で、年齢の上限は定められていません。下限のほうには理由があり、添付文書には9歳未満の小児等を対象とした臨床試験は実施していないと記載されています。つまり成人男性も接種そのものは受けられます。

ただし年齢の上限がないことは、何歳で受けても同じ予防効果が見込めるという意味ではありません。先に触れたとおり、添付文書は接種時に感染が成立しているHPVを排除する効果は期待できないとしています。すでに性交渉の経験がある場合の考え方は、よくある質問で改めて整理します。

一方で助成のほうには線が引かれています。豊島区の対象は小学校6年から高校1年生相当の男性なので、20代や30代の方は助成の対象にはなりません。接種は受けられるが費用は全額自己負担になる、というのが成人男性の位置づけです。年齢を理由に受けられないわけではない、という点と取り違えないようにしたいところです。

同じ男性のHPVワクチンでも、豊島区の助成の対象になる年齢かどうかで無料と全額自己負担に分かれることを示した図

女性の定期接種・キャッチアップ接種と男性のHPVワクチンの任意接種は別の制度

HPVワクチンをめぐる制度は、女性と男性で別々に動いています。比べるのは女性の定期接種と男性の任意接種の2つで、そこにキャッチアップ接種という経過措置が加わります。

女性の定期接種は、小学校6年から高校1年生相当の女性を対象に続いています。予防接種法に基づく制度です。これに対して男性の接種は任意接種で、法に基づく定期接種ではありません。豊島区の助成は、この任意接種の費用を区が独自に負担するという組み立てになっています。

キャッチアップ接種は女性向けの経過措置でした。厚生労働省の公表内容によると、1回目の接種は2025年3月31日で終了し、2回目と3回目の公費での接種も2026年3月末までとされていました。2026年9月時点でキャッチアップ接種はすでに終了しています。男性の任意接種はこの制度とは別のもので、キャッチアップ接種の終了によって男性側の扱いが変わったわけでもありません。

この記事に書いた制度の内容は2026年9月時点で公表されているものです。助成の対象年齢や対象ワクチン、実施している医療機関は年度によって変わります。受ける前にお住まいの自治体の最新の案内を確かめてください。豊島区の助成については区の保健予防課が窓口になっています。

なぜ男性は定期接種ではないのか、という経緯はよくある質問で取り上げます。

参考:厚生労働省「HPVワクチンのキャッチアップ接種について」

男性のHPVワクチンの費用は?無料になる条件と自己負担の目安

男性のHPVワクチンの費用は?無料になる条件と自己負担の目安

前の章で見たのは対象になる年齢でした。この章では、その条件を満たしたときに何が無料になるのか、外れたときに費用がどれくらいかかるのかを見ていきます。分かれ目は年齢だけではなく、予診票を持っているかどうかと、どこで受けるかにもあります。

受け方 自己負担
豊島区の予診票を使い区内の指定医療機関で受ける 無料(3回の接種完了まで)
対象年齢から外れている 全額自己負担
予診票を使わない、または指定医療機関以外で受ける 全額自己負担

※豊島区の公表内容による。2026年9月時点。

豊島区の予診票(問診票)があれば男性のHPVワクチンは3回まで無料

豊島区の助成で無料になるのは、豊島区が発行した予診票を持っている場合です。区は予診票がない場合は助成を受けられないと明記しており、事前の申請が要ると案内しています。年齢の条件を満たしていても、予診票がないまま受けると全額自己負担になります。

無料になる条件をまとめると次のとおりです。

  • 接種日時点で豊島区に住民登録がある
  • 小学校6年から高校1年生相当の男性である
  • 豊島区が発行した予診票を持っている
  • 豊島区内の指定医療機関で接種する

この4つがそろったときに、3回の接種完了までが無料になります。予診票をどこでどう申請するのかという手続きの話は、当院で受ける場合の章で扱います。

無料になるのは接種を受けた場合です。区は、接種予定日に問診等の結果で接種を見合わせて予診のみとなった場合は予診に係わる費用が発生すると注記しています。当日の体調によっては、接種せずに帰ることもあり得ます。

自己負担で男性のHPVワクチンを受ける場合にかかる費用

助成の対象から外れた場合は全額自己負担です。東京都保健医療局は、男性への接種は定期接種でないため費用は接種者が全額負担になるとしたうえで、1人合計3回の接種の場合の目安を次のように示しています。

ワクチン 3回の接種にかかる費用の目安
4価(ガーダシル) 5万円から6万円程度
9価(シルガード9) 8万円から9万円程度

※東京都保健医療局が示している目安。2026年9月時点。

この金額は医療機関ごとに決まる自由診療の料金です。任意接種には公定価格がないため、実際にいくらになるかは受ける医療機関によって変わります。

上の表は東京都保健医療局が全額自己負担の場合の目安として示している金額であって、特定の医療機関の料金ではありません。当院の料金も、この目安と一致するとは限りません。実際の金額は受ける医療機関に確かめてください。

男性のHPVワクチンが保険適用にならないのは任意接種のため

自費なのはなぜか、という問いにも答えておきます。東京都保健医療局は理由を、現在、男性への接種は定期接種でないため、費用は接種者が全額負担となりと書いています。区分の問題であって、ワクチンの中身が違うからではありません。

予防接種法は定期の予防接種の対象になる疾病を定めており、ヒトパピローマウイルス感染症もそこに含まれています。ただしその定期接種の対象として実施されているのは女性の接種です。男性の接種は法に基づく定期接種としては行われていないため、任意接種として費用を本人が負担する形になります。自費で受ける任意接種という点では、帯状疱疹の初期症状の記事で扱っている帯状疱疹ワクチンと同じ扱いです。

ここでいう自己負担は、医療保険が使えるかどうかとは別の話です。前の章で見たとおり、豊島区の助成の対象になる方は同じ任意接種でも無料になります。助成は区が費用を負担する制度で、医療保険の適用とは仕組みが違います。

いつから保険が使えるようになるのかについては、公表されている資料に見通しが示されていません。書けるのは2026年9月時点で任意接種であるという事実までです。

参考:e-Gov法令検索「予防接種法」

豊島区の指定医療機関以外で受けた男性のHPVワクチンは助成対象外

受ける場所も条件のひとつです。豊島区は、区内指定医療機関以外で接種する場合は助成対象外となり全額自己負担になるとしています。区外の医療機関で受けた場合も同じ扱いです。

さらに注意したいのが、あとから払い戻す仕組みがない点です。区は助成開始前に接種した費用の償還払い制度はないと書いています。先に自己負担で受けてしまうと、条件を満たしていてもその分は戻りません。受ける前に、その医療機関が区の指定医療機関に入っているかを確かめておきたいところです。

男性のHPVワクチンは豊島区内の指定医療機関で受けた場合が助成の対象で、それ以外の医療機関で受けると対象外になることを示した図

男性が打てるHPVワクチンの種類と接種回数・間隔

男性が打てるHPVワクチンの種類と接種回数・間隔

男性が受けられるHPVワクチンは2種類です。どちらを選ぶかで、含まれる型と接種のスケジュールが変わります。比べる点は次の3つに絞れます。

  • 含まれているHPVの型の数
  • 何回打つのか
  • どれくらいの間隔をあけるのか

型の数は9価のほうが多く、回数は始める年齢によって変わるという違いがあります。以下ではこの3点を順に見ていきましょう。

男性への接種が承認されているHPVワクチンは4価(ガーダシル)と9価(シルガード9)

東京都保健医療局は、男性への接種を国が承認しているのは4価ワクチン(商品名はガーダシル)と9価ワクチン(商品名はシルガード9)だとしています。2価のワクチンは接種の対象が女性とされており、男性への承認はありません。

承認の時期は厚生労働省の資料に記載があります。令和7年9月現在の薬事承認の状況として、4価は令和2年に、9価は令和7年8月に男性への接種が承認されたと整理されています。豊島区が令和8年4月1日から9価も助成の対象に加えたのは、この承認のあとの動きにあたります。

ワクチン 含まれるHPVの型 接種対象と回数
4価(ガーダシル) 6・11・16・18型 9歳以上の者に3回
9価(シルガード9) 6・11・16・18・31・33・45・52・58型 9歳以上の男女に2回もしくは3回

※厚生労働省の資料に記載された薬事承認の状況による。令和7年9月現在。

2価のワクチンは、同じ資料で接種対象が10歳以上の女性と整理されています。男性が選べるのは表の2つで、そのうち含まれる型が多いのは9価のほうです。どちらを選ぶかは、受けられる医療機関の取り扱いや、豊島区の助成を使うかどうかによっても変わります。

参考:厚生労働省「HPVワクチンの男性への接種について」(ワクチン評価に関する小委員会 資料3-1)

4価のHPVワクチンは1回目から2か月後と6か月後の合計3回

4価のガーダシルは合計3回です。添付文書には9歳以上の者に1回0.5ミリリットルを合計3回筋肉内に注射すると書かれており、通常は2回目を初回接種の2か月後、3回目を6か月後に接種するとされています。1年以内に3回の接種を終えることが望ましいという記載もあります。

予定どおりに受けられないこともあります。その場合の最短の間隔も決まっています。

区分 2回目 3回目
標準的な間隔 初回接種の2か月後 初回接種の6か月後
予定どおりにできない場合 初回接種から1か月以上あける 2回目から3か月以上あける

※添付文書と豊島区の記載による。2026年9月時点。

ここでいう3回は接種のスケジュールとしての回数で、先に見た助成の上限とは別のものを指しています。

どこにどう打つのか

添付文書は1回0.5ミリリットルを筋肉内に注射するとしており、接種部位を通常は上腕の三角筋部または大腿前外側部としています。皮下注射ではありません。医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種できるとも書かれています。

参考:医薬品医療機器総合機構「ガーダシル水性懸濁筋注シリンジ 添付文書」

9価のHPVワクチンは1回目を15歳になるまでに受ければ合計2回

9価のシルガード9は、始める年齢によって回数が変わります。添付文書は9歳以上の者に合計3回とした一方で、9歳以上15歳未満の者は初回接種から6か月から12か月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができるとしています。2回で受けられるのは選択肢のひとつであって、自動的にそうなるわけではありません。

東京都保健医療局は、標準的なスケジュールを次のように示しています。

1回目を受ける時期 スケジュール
15歳になるまでに受ける場合 1回目の接種後から6か月の間隔をあけて合計2回
15歳になってから受ける場合 1回目の接種後から2か月、2回目の接種後から4か月の間隔をあけて合計3回

※東京都保健医療局の記載による。いずれも1年以内に接種を終えることが望ましいとされている。2026年9月時点。

添付文書には期限も書かれています。合計2回の接種をする場合は、13か月後までに接種することが望ましいとされています。

2回で終わるとは限らない条件

東京都保健医療局と添付文書は、1回目と2回目の間隔を少なくとも5か月あけるとしています。5か月未満だった場合は、3回目の接種が必要になります。その3回目は、2回目から少なくとも3か月以上あけます。
15歳になるまでに始めても、間隔が短くなれば3回になります。予定を立てる段階で、2回で終わると決めてしまわないほうが、あとの見通しが立てやすくなります。

参考:医薬品医療機器総合機構「シルガード9水性懸濁筋注シリンジ 添付文書」

HPVワクチンを4価から9価に途中で変更したいときは医師に相談

途中で種類を変えたくなることもあります。東京都保健医療局は、これまでに4価のガーダシルを1回または2回接種した方について、原則として同じ種類のワクチンを接種することを勧めますとしています。豊島区も、原則として同じ種類のワクチンで必要な回数分の接種を完了させるよう案内しています。

そのうえで都は、4価で接種を開始し途中から9価に変更することを検討している場合は医師に相談してくださいと書いています。相談という書き方になっている理由は添付文書からも読み取れます。重要な基本的注意に、本剤と他のHPVワクチンの互換性に関する安全性、免疫原性、有効性のデータはないと記載されているためです。

つまり、途中で切り替えた場合にどうなるかを示したデータそのものが公表されていません。変更してよいかどうかを一律に示した基準もありません。すでに受けた回数や間隔によって考え方が変わるため、判断は接種を受ける医療機関との相談になります。

男性のHPVワクチンで報告されている副反応(副作用)

男性のHPVワクチンで報告されている副反応(副作用)

副反応の話は、数字の読み方を間違えると受け取り方が大きくずれます。この章では、公表されている3種類の数字を分けて見ていきます。接種後によくみられる症状の頻度、まれに報告された重い症状の頻度、そして接種後に報告があった数の3つです。

先に断っておきたいことがあります。ここで扱う数字は男性だけを集計したものではありません。豊島区も東京都保健医療局も、男女を分けずに公表しています。男性でこの頻度、という読み方はできない点に注意してください。

男性のHPVワクチンの接種後は注射部位の痛みや腫れが多い

報告が多いのは、打った場所の症状です。東京都保健医療局と豊島区は、接種後に接種部位の痛みや腫れ、赤みなどが起こることがあるとしたうえで、頻度を次のように公表しています。

発生頻度 4価(ガーダシル) 9価(シルガード9)
50%以上 注射部位の疼痛 注射部位の疼痛
10%から50%未満 注射部位の紅斑・腫脹 注射部位の腫脹・紅斑、頭痛
1%から10%未満 頭痛、注射部位のそう痒感、発熱 浮動性めまい、悪心、下痢、注射部位のそう痒感・内出血、発熱、疲労など

※豊島区と東京都保健医療局の公表内容による。男女を分けた集計ではない。2026年9月時点。

50%以上の方に注射部位の痛みが報告されているという数字です。頻度としては高い一方で、いずれも打った場所の反応が中心になっています。添付文書に載っている臨床試験に基づく頻度はさらに細かく、注射部位疼痛はガーダシルで67.8%、シルガード9で88.1%と算出されています。シルガード9では注射部位の腫脹が38.2%、紅斑が32.5%です。これらは製造販売後ではなく臨床試験で算出された値なので、上の表とは母集団が違います。

接種の当日と直後に案内されていること

添付文書は、接種前に問診と検温、診察によって健康状態を調べることとしています。接種を受ける方には、接種当日は過激な運動を避け接種部位を清潔に保つよう指導するとも書かれています。

もうひとつが接種直後の失神です。添付文書では、注射による心因性反応を含む血管迷走神経反射として説明されています。転倒を避けるため、接種後30分程度は座らせるなどして状態を観察することが望ましいとされています。区も、接種後に気になる体調変化があった場合は医師に相談するよう案内しています。

HPVワクチンで重い副反応が報告された頻度は症状ごとに約96万から860万接種に1回

ここからは分母が変わります。読み違えを避けるため、先に次の節との違いを置いておきます。

この節と次の節は別のものを数えている

この節の頻度は接種回数あたりで、時点は平成25年3月です。次の節の数字は接種1万人あたりの報告数で、時点は令和6年9月末です。
分母も集計の方法も時点も違うため、2つを足したり比べたりはできません。

豊島区は、ワクチンとの関係が否定できないとされた重い副反応として、次の4つを症状ごとの頻度とともに挙げています。

症状 内容 報告された頻度
アナフィラキシー 呼吸困難やじんま疹などを症状とする重いアレルギー 約96万接種に1回
ギラン・バレー症候群 両手や足の力の入りにくさなどを症状とする末梢神経の病気 約430万接種に1回
急性散在性脳脊髄炎(ADEM) 頭痛、嘔吐、意識の低下などを症状とする脳などの神経の病気 約430万接種に1回
複合性局所疼痛症候群(CRPS) 外傷をきっかけとして慢性の痛みを生ずる原因不明の病気 約860万接種に1回

※豊島区の公表内容による。平成25年3月時点の数字であり、男女を分けた集計ではない。

きわめて稀に起こる重い副反応という位置づけで公表されています。数十万から数百万回の接種に1回という桁ですが、起こらないという意味ではありません。

添付文書の側では、重大な副反応として過敏症反応(アナフィラキシーや気管支痙攣など)、ギラン・バレー症候群、免疫性血小板減少症、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)が挙げられており、いずれも頻度は不明とされています。上の表の数字は豊島区が公表しているもので、添付文書の記載とは出どころが違います。

このほか添付文書には、発生機序は不明としたうえで、注射部位に限局しない激しい疼痛やしびれ、脱力などがあらわれ長期間症状が持続する例が報告されているという記載もあります。異常が認められた場合は、神経学的な鑑別診断を含めた診療ができる医療機関を受診させるなどの対応を行うこととされています。

HPVワクチンの接種後に症状の報告があったのは1万人あたり約4人から9人

もうひとつが、接種後に生じた症状として報告があった数です。東京都保健医療局は、因果関係があるかどうかわからないものや接種後短期間で回復した症状もふくめて、次のように公表しています。

ワクチン 報告があった数(接種1万人あたり) うち重篤と判断された数
9価(シルガード9) 約4人 約2人
2価または4価(サーバリックスまたはガーダシル) 約9人 約5人

※東京都保健医療局の公表内容による。副反応疑い報告制度における報告数で、令和6年9月末時点までの合計。男女を分けた集計ではない。

読み方に注意が必要です。これは副反応疑いとして報告された数であって、ワクチンが原因だと確かめられた症状の発生率ではありません。都自身が、因果関係があるかどうかわからないものもふくむと書いています。重篤という判断も、報告した医師や企業の判断によるものだとされています。

報告数を人数の割合として読むときの前提

分母は出荷数量から推計した接種者数です。都はサーバリックスおよびガーダシルを422万人、シルガード9を177万2千人として計算したと注記しています。推計に基づく数字である点も、あわせて押さえておきたい部分です。

男性のHPVワクチンは任意接種のため健康被害の救済制度が定期接種と異なる

万が一の備えも、制度によって中身が変わります。豊島区は男性の接種について、任意接種のため定期接種を対象とする国の予防接種健康被害救済制度は適用されないと明記しています。そのうえで、健康被害が生じたときは次の2つを活用するとしています。

  • 特別区自治体総合賠償責任保険
  • 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済制度

後者が医薬品副作用被害救済制度です。医薬品医療機器総合機構は、この制度を医薬品等を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による健康被害を受けた方に医療費等の給付を行う公的な制度だと説明しています。1980年に創設された、医薬品医療機器総合機構法に基づく制度です。

給付を受けるには、健康被害を受けた本人または遺族などが機構へ請求します。給付の種類に応じて請求の期限や必要な書類が定められているため、あてはまりそうな場合は早めに機構の相談窓口へ問い合わせてください。

2つは別々の仕組みです。どちらか一方だけがあるわけではなく、どちらを使うことになるかは被害の内容によって変わります。定期接種と同じ救済制度が使えるわけではない、という点が任意接種を選ぶときの前提になります。

参考:医薬品医療機器総合機構「医薬品副作用被害救済制度に関する業務」

男性のHPV検査は受けられる?調べればわかるとは限らない理由

男性のHPV検査は受けられる?調べればわかるとは限らない理由

打つ前に自分が感染しているかを調べておきたい、と考える方がいます。ただHPV検査をめぐっては、男性の場合に前提から確かめておきたい点があります。この章に書いたのは、公的機関の資料で確認できた範囲に限った話です。

男性のHPVを調べる方法は一般的な検査として確立していない

公的な検診として案内されているHPV検査は、子宮頸がん検診の中で行われるものです。国立がん研究センターのファクトシートも、HPV検査を子宮頸管および腟部の表面を擦過して得られた検体を用いる検査だと説明しています。検体の採り方そのものが女性の子宮頸部を前提にした組み立てになっています。

一方で、男性を対象にしたHPV検査を公的な検診や検査として案内している記載は、今回確かめた範囲では見当たりませんでした。受けられる場所がまったくないという意味ではありませんが、公的機関が男性向けの標準的な方法として示しているものは確認できていません。

国立がん研究センターがHPV検査を扱っているのも、子宮頸がん検診のアルゴリズムの中で細胞診とあわせてどう使うかという文脈です。検査には結果が出たあとに何をするかという道筋が要りますが、男性についてはその道筋を示した公的な資料が確認できていません。調べる方法の話にとどまらず、調べたあとの手順まで含めて用意されていない、というのが今の状態です。

検査キットの扱いについて

インターネット上には男性向けをうたう検査キットの案内もあります。ただしその精度や使いどころを公的機関が示した資料は確認できていません。この記事では、確かめられていないものを勧める書き方はしていません。

男性のHPV感染を検査ですべて確認できるわけではない

仮に調べられたとしても、分かることには限りがあります。以下は子宮頸がん検診で用いられる検査についての説明で、男性向けの検査の説明ではありません。国立がん研究センターは、一般的なHPV検査をハイリスクHPV検査とHPVタイピング検査に大別しています。前者は複数の型をまとめて検出するもので、個々のHPV遺伝子型の判定まではできません。結果の表示も陰性か陽性かだけになります。

もうひとつが時点の問題です。HPVの感染は一時的に終わることが多く、検査はその日に採った検体から検出できたかどうかを示すものです。陰性という結果は、これまで感染したことがないという証明にはなりません。逆に陽性だったとしても、それだけでは病気があることにはなりません。

型の数の問題もあります。ここまで見てきたとおりHPVには200種類以上の遺伝子型があり、ワクチンが対象にしているのはそのうちの4つか9つです。仮に何らかの方法で調べられたとしても、どの型がいつ入ってきたのかまでを一度の検査で並べられるわけではありません。調べれば打つべきかどうかが決まる、という順序にはならない理由がここにあります。

HPV検査でわかるのは陰性か陽性かとその日に採った検体の結果までで、型ごとの判定は別であることを示した図

男性がHPVワクチンを打つ前にHPV検査を受ける必要はある?

結論から言うと、接種の前に検査を受けるよう求めている記載は、公的機関の資料には見当たりません。添付文書にも接種前にHPV検査を行うことを条件とする規定はなく、豊島区や東京都保健医療局の案内にも検査を前提にした手順は書かれていません。

一方で、接種の前に確かめることとされている項目はあります。添付文書はこれを2つの群に分けています。

接種を受けられない例(接種不適当者)として挙げられているのは、明らかな発熱を呈している方、重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな方、成分に対して過敏症を呈したことがある方などです。医師が慎重に適否を判定する例(接種要注意者)には、血小板減少症や凝固障害がある方、基礎疾患がある方、過去に痙攣の既往がある方などが挙げられています。

いずれの群でも、接種前に行うこととされているのは問診と検温、そして診察であって、HPV検査ではありません。

この章で確認できたのは次の3点です。公的な検診として案内されているHPV検査は子宮頸がん検診の中のものであること。男性を対象にした検査の案内は、今回確かめた公的機関の資料には見当たらなかったこと。そして接種の前に検査を受けるよう求めた記載も確認できなかったことです。それ以上のことは、確かめられた事実の範囲を超えるため書いていません。

気になる症状があるときは話が別です。いぼのような隆起や違和感が出ている場合は、検査で感染の有無を調べるのではなく、その症状について医療機関で診てもらってください。

池袋かめさん内科で男性のHPVワクチンを受けるには

池袋かめさん内科で男性のHPVワクチンを受けるには

受けると決めたあとの流れも確かめておきます。豊島区の助成を使う場合は、接種の前に区へ予診票を申請する手順が入ります。ここが他の予防接種と違うところで、当日に医療機関へ行くだけでは助成を受けられません。順番としては対象の条件を確かめる→区へ予診票を申請する→指定医療機関で接種するの3段になります。以下はこの順で見ていきます。

当院は豊島区が公表する男性HPVワクチンの実施医療機関名簿に掲載されている

豊島区は、男性のHPVワクチンを助成の対象として接種できる医療機関を名簿にまとめて公表しています。令和8年5月19日現在の名簿には全部で114の施設が載っており、池袋かめさん内科もそのうちの1つとして掲載されています。

区の助成は指定医療機関で受けた場合に限られるため、この名簿に載っているかどうかが分かれ目になります。名簿には施設名と所在地、電話番号が並んでおり、当院は目白2-5-27 目白邸苑ビル2Fとして記載されています。名簿は更新されることがあるので、受ける前に区のページで最新のものを確かめてください。

参考:豊島区「男性HPVワクチン接種実施医療機関名簿」

豊島区の助成を使うには男性のHPVワクチンの接種前に予診票の申請が必要

予診票は区へ申請して受け取ります。申請の方法は電子申請と窓口の2つで、受け取るまでにかかる日数が変わります。

申請方法 発行までの所要日数 受付時間
電子申請(郵送で受け取り) 2週間程度 24時間
窓口 原則当日 平日8時半から17時

※豊島区の公表内容による。2026年9月時点。

窓口は豊島区保健所2階の総合窓口(南池袋2-1-1)と長崎健康相談所(長崎3-6-24)です。池袋保健所は令和8年5月7日に移転して豊島区保健所に名称が変わり、区役所4階の出張窓口は令和8年5月1日で終了しています。区は比較的空いている午前の来所を勧めています。

窓口で申請するときの持ち物は次のとおりです。

  • 本人確認書類
  • 母子健康手帳など接種歴のわかる書類
  • 海外で予防接種を受けたことがある場合はその記録がわかる書類

接種当日に予診票が要るという流れは、インフルエンザ予防接種など豊島区の他の予防接種と同じです。

保護者の同伴について

区は接種当日、定期接種に準じて保護者の同伴を勧めています。そのうえで13歳から15歳の方は予診票の該当欄に保護者が必要事項を記入することで、16歳以上の方は予診票に自署することで、保護者の同伴なしでも接種できるとされています。同伴なしの取り扱いが示されているのは13歳以上で、それより下の年齢についての記載はありません。小学校6年で受ける場合は、保護者の同伴を前提に考えておくことになります。

男性のHPVワクチンの費用は当院の料金ページで確認できる

自己負担になる場合の当院の料金は、料金表のページに掲載しています。任意接種は自由診療のため、金額は医療機関ごとに異なります。受ける前に金額を確かめておくと、当日の見通しが立てやすくなります。

豊島区の助成の対象になる方は、予診票を持参して当院で接種すれば3回の接種完了まで無料です。対象になるかどうかが分からない場合は、ご予約の際にお伝えいただければ確認のうえご案内します。

豊島区の助成を使って接種を受ける場合は、先に区へ予診票を申請したうえでご来院ください。池袋かめさん内科は豊島区の予防接種事業として男性のHPVワクチン任意接種費用助成を取り扱っています。一般の内科の受診については内科診療のページをご覧ください。ご予約は電話(03-3986-4466)・WEB・LINEから承っております。雑司が谷駅2番出口から徒歩2分、目白駅から徒歩10分の場所にあります。

男性のHPVワクチンについてよくある質問

男性のHPVワクチンについてよくある質問

ここでは、男性のHPVワクチンについて寄せられやすい質問を6つまとめます。

男性もHPVワクチンを打ったほうがいいですか?

受けるべきかどうかを一律に示した公的な基準は公表されていません。判断の材料になるのは、この記事の最初の章で整理した感染予防への期待と、費用や副反応の内容です。それらを踏まえて、決めるのはご本人と接種を担当する医師になります。

男性のHPVワクチンは日本ではなぜ定期接種ではないのですか?

厚生労働省の小委員会の資料によると、令和6年3月の時点で、4価を3回接種する前提で定期接種化した場合の有効性と安全性は一定程度確認されたものの、費用対効果については課題があるとされました

経緯は同じ資料に年表として整理されています。令和2年12月に4価の適応拡大が承認され、令和4年8月に小委員会で議論が始まりました。令和6年3月の評価を経て、同年5月には男性への接種の評価にあたって女性への波及効果等を含めて総合的に評価していくことが了承されています。令和7年7月には、現時点では薬事承認が得られている範囲を議論の対象とすることが了承されました。資料が示しているのはここまでで、令和7年9月の時点では検討が続いていました。

学会の側からは男性への定期接種化を求める要望が出されている段階です。いつ定期接種になるのかについては、公表されている資料に見通しが示されていません

男性がHPVワクチンを受けるべきかどうかを一律に示した公的な基準はないことを示す帯

すでに性交渉の経験がある男性がHPVワクチンを打つ意味はありますか?

確かめられている範囲でお答えします。国立がん研究センターのファクトシートは、ワクチンは感染予防を目的としていて、すでに感染している方からウイルスを排除する効果はなく、HPV関連疾患を治療するものでもないとしています。そのうえで性交渉開始後の接種の場合には予防効果が減少してしまうとも書かれています。添付文書の効能又は効果に関連する注意にも、接種時に感染が成立しているHPVの排除とすでに生じている病変の進行予防は期待できない、という同じ趣旨の記載があります。

では経験があると意味がないのか、という点については、予防効果がどの程度見込めるかを一律に判断できる資料が見当たりません。加えて、男性ではどの型に感染しているかを事前に確かめる標準的な方法も、今回確かめた公的な資料には示されていません。

つまり、すでに経験がある場合でも意味があるとは言い切れませんし、意味がないとも書かれていません。この問いに正面から答えた公的な資料は、今回確かめた範囲では見当たりませんでした。受けるかどうかは、ご自身の状況を伝えたうえで医師に相談してください。

男性のHPVワクチンで迷ったら医師に相談することをすすめる帯

男性のHPVワクチンは接種の間隔が空いたら最初からやり直しになりますか?

先に断っておくと、以下は女性の定期接種を前提とした厚生労働省のQ&Aの記述です。そのQ&Aは、規定の間隔から外れてしまった場合でも接種をやり直す必要はないとされていますと書いています。あわせて、十分な予防効果を得るためには決められた回数を完了させることが大切なので、できるだけ早めに残りの接種を受けるようにと案内しています。

男性の任意接種にそのまま当てはめられるとは、このQ&Aに書かれていません。間隔が空いてしまった場合は、これまでの接種の記録を持って医師にご相談ください。

参考:厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」

男性のHPVワクチンは何科を受診すれば打てますか?

診療科を指定した記載は、豊島区や東京都保健医療局の案内にはありません。豊島区の助成を使う場合は、区が公表する実施医療機関の名簿に載っている医療機関であることが条件になります。名簿には内科や小児科などが含まれています。当院は内科として名簿に掲載されています。

豊島区から引っ越したあとも男性のHPVワクチンの助成は使えますか?

使えません。豊島区は、豊島区から転出したあとの接種は助成対象外となり有料になるとしています。対象は接種日時点で区に住民登録がある方なので、転出した時点で条件から外れます。

転出先に同じような助成があるかどうかは自治体によって異なります。この記事では他の自治体の制度の内容までは扱っていないため、転居先の自治体の案内を確かめてください。

要点をまとめます。

男性のHPVワクチンの対象と費用〜まとめ〜

男性もHPVワクチンを接種できます。4価のガーダシルは令和2年に、9価のシルガード9は令和7年8月に、男性への接種が薬事承認されました。接種の対象は9歳以上で、年齢の上限は定められていません。

豊島区で無料になるのは、接種日時点で区に住民登録のある小学校6年から高校1年生相当の男性です。区が発行した予診票を持ち、区内の指定医療機関で受けた場合に3回の接種完了までが無料になります。

対象の年齢から外れる方は全額自己負担です。東京都保健医療局は3回合計の目安を、4価で5万円から6万円程度、9価で8万円から9万円程度としています。

副反応として多いのは注射部位の痛みや腫れです。重い副反応の頻度と接種後に報告があった数は、分母も集計の方法も時点も別の数字として公表されています。

池袋かめさん内科では、豊島区の予防接種事業として男性のHPVワクチン任意接種費用助成を取り扱っています。豊島区が公表する男性HPVワクチンの実施医療機関名簿にも掲載されています。豊島区の助成を使う場合は、接種の前に区へ予診票を申請してください。料金は料金表のページに掲載しています。体調の相談や一般の内科の受診については内科診療のページもご覧ください。

診療時間は9:00〜12:30と14:00〜18:00です。雑司が谷駅2番出口から徒歩2分、目白駅から徒歩10分の場所にあります。ご予約は電話(03-3986-4466)・WEB・LINEで承っております。

03-3986-4466

受付時間:9:00-12:30/14:00-18:00

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